■西川和久の不定期コラム■
以前はIntel Core i7-2670QM、15.6型フルHD液晶パネル、そしてNVIDIA GeForce GT 540Mを搭載した同社の「Prime Note Chronos VF2」の記事を掲載したが、ほぼ同じスペックで一部仕様が異なるモデル「Prime Note Chronos MR6」も同時に送られてきたので、今回はその試用レポートをお届けする。
●意外と違うVF2とMR6以前に紹介した「Prime Note Chronos VF2/ハイスタンダード」(以降VF2)の主な仕様は、Intel Core i7-2670QM、メモリ8GB、15.6型フルHD液晶パネル、NVIDIA Optimusテクノロジーに対応したIntel HD Graphics 3000+NVIDIA GeForce GT 540M(1GB)、HDD 500GB、USB 3.0×2、USB 2.0×2、Bluetooth 3.0と言った感じだ。またキーボードの上にタッチ式の機能キーやスピーカーを配置している。
対して「Prime Note Chronos MR6」の違う部分は、GeForce GT 540MではあるもののOptimusテクノロジーに非対応、しかしグラフィックメモリは2GBへ増量した。USB 3.0が1ポートへ、Bluetootが2.0+EDRへ、加えてキーボードの上に機能キーやスピーカーは無い。従って筐体のデザインも異なっている。
パッケージモデルは同じく3タイプあり、「ハイスタンダード」は、Core i7-2670QM/メモリ8GB/HDD 500GB/DVDスーパーマルチドライブで109,980円、「スタンダード」は、Core i3-2330M/他は同じ/99,980円、「プレミアム」は、Core i7-2760QM/HDD 750GB/Blu-rayドライブ/他は同じ/134,980円。VF2にあったSSDモデルは無い。今回届いたのは「ハイスタンダード」だ。主な仕様は以下の通り。
【表】ドスパラ「Prime Note Chronos MR6」の仕様CPU | Intel Core i7-2670QM(4コア/8スレッド、 2.20GHz/TB 3.10GHz、キャッシュ6MB) |
チップセット | Intel HM65 Express |
メモリ | 8GB(4GB×2)DDR3-SDRAM/PC3-10600(最大8GB)/2スロット空0 |
HDD | 500GB(5,400rpm) |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
OS | Windows 7 Home Premium(64bit)SP1 |
ディスプレイ | 15.6型フルHD液晶ディスプレイ(光沢)、1,920×1,080ドット |
グラフィックス | NVIDIA GeForce GT 540M(2GB)、HDMI、ミニD-Sub15ピン |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 2.0+EDR |
その他 | USB 3.0×1、USB 2.0×2、メモリカードスロット、 130万画素Webカメラ、音声入出力 |
サイズ/重量 | 376.5×249×356mm(幅×奥行き×高さ)/約2.6kg |
バッテリ駆動時間 | 約4.4時間 |
価格 | 109,980円 |
プロセッサは、4コア8スレッドのIntel Core i7-2670QM。キャッシュは6MBあり、クロックは2.20GHzでTurbo Boost時3.10GHzまで上昇する。チップセットはIntel HM65 Express。メモリは4GB×2の計8GB。最大容量だ。HDDは5,400rpmの500GB。OSは64bit版Windows 7 Home Premium SP1を搭載。
液晶パネルは光沢タイプのフルHD/1,920×1,080ドット。外部出力として、HDMIとミニD-Sub15ピンに対応している。
グラフィックスはメモリ2GBのNVIDIA GeForce GT 540M。先に書いたように、NVIDIA Optimusテクノロジーには対応せず、CPU内蔵のIntel HD Grahpics 3000が使えない関係上、省エネ作動時は不利になるが、メインメモリを消費しないというメリットがある。
ネットワークは有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11b/g/n。Bluetoothは2.0+EDRだ。3.0は高速化、4.0は省エネ化の特徴を持つが、現在これらに対応したデバイスはまだまだ少なく、あまりデメリットにはならないだろう。
その他インターフェイスは、USB 3.0×1、USB 2.0×2、メモリカードスロット、130万画素Webカメラ、音声入出力。VF2と比較してUSB 3.0が1ポートと、1つ減っている。USB 3.0は転送速度が速く、外部ストレージに使うのが効果的だ。デバイスとしてはUSBメモリやHDDなどが考えられるが、1つか2つかは使い方にもよるため、減ったことによる評価はユーザーによっても異なると思われる。
サイズは376.5×249×356mm(幅×奥行き×高さ)。重量約2.6kg。若干であるがサイズはVF2と比較して小さくなり、重量は0.1kg重くなっている。バッテリ駆動時間は、最大約4.4時間。こちらは0.9時間伸びている。実際はどうなのか、後半のベンチマークテストで検証したい。
仕様上いろいろプラスマイナスはあるものの、価格は今回のモデルで109,980円。VF2同クラスと比較して2,000円アップとなる。BTOにも対応し、Windows 7の全SKU、プロセッサはCore i3-2330M/Core i5-2520M/Core i7-2670QM/Core i7-2760QM/Core i7-2860QM、メモリ 4GBまたは8GB、HDD 500~1TB(5,400rpmもしくは7,200rpm)、DVDスーパーマルチドライブまたはBlu-ray Discドライブなど、幅広い構成が可能だ。ただSSDが選べないのは残念だ。
トップカバーはロゴもなく、光沢ブラック。液晶パネルのフチと、キーボードの周りも同じく光沢の黒。パームレストは非光沢の黒。そしてパネルの外側はメタリックなシルバーが囲っている。VF2は少しボッテリした感じがあったものの、MR6は若干クールなイメージだ。
裏は、大きいパネルはネジ6本、小さいパネルはネジ2本外すことによって、メモリとHDDに簡単にアクセスできる。ただし、メモリは最大の8GB搭載済みなので、小さいパネル側のHDDを交換する時に開ける程度だろう。
液晶パネルは光沢タイプの15.6型フルHD。最大輝度は非常に明るく、また最小輝度でも十分表示内容が分かる。発色はハイコントラストで鮮やか。視野角も広めで、なかなか良いパネルだ。
キーボードは最近珍しくなったパンタグラフタイプの10キー付き。実測でキーピッチは約19mm。ただし部分的に狭くなっているキーもある。中央を強く押すと全体が少したわむのが気になるものの、アイソレーションタイプがあまり好きではないユーザーにとっては嬉しいポイントとなるだろう。上にある2つのボタンは、左側が[電源]、右側が「Power USB」。Power USBは、左側のUSB 3.0ポートのみの対応となる。
パームレストとタッチパッドは十分広く、また段差が無く操作しやすい。ボタンは物理的には1本のバーになっており、左右に傾きボタン替りになるタイプだ。タッチパッドはマルチタッチに対応し、2本指でのスクロールなどに対応している。
振動、ノイズ、そして熱に関しては、筐体のサイズが大きく余裕がある分、うまく処理できているようで、負荷をかけない通常使用時にはほとんど気になることは無い。
サウンドは、最大出力は十分あるものの、エネルギーバランスがかなり高域寄り。コントロールパネルから、Realtek HDオーディオマネージャを操作し、適度な補正を行なうとバランス、そして抜けの良い音質になる。
気になる部分は、左サイドの、ミニD-Sub15ピン、Gigabit Ethernet、USB 3.0、HDMI出力が全て手前側に集中していることだ。これらのケーブルをまとめて接続すると、手前にあるだけに邪魔になる。内部のレイアウト的に難しいのかも知れないが、出来れば後方にして欲しいところだ。
●全体的にVF2より若干パフォーマンスが向上OSは64bit版Windows 7 Home Premium SP1。GPUがメモリを消費しないので、8GBフルに使える。VF2同様、IEが8のままだ。デスクトップはBTO時のプリインストールするアプリケーションにもよるだろうが、本パッケージではショートカットが4つと非常にシンプル。
HDDは5,400rpm、キャッシュ8MBの「HTS545050B9A300」。C:ドライブのみの1パーティションで約465GBが割り当てられ、435GBの空きとなっている。光学ドライブは「Slimtype DVD A DS8A4S」。VF2とは違うタイプが使われている。
ネットワーク系は全てRealtek製。ディスプレイアダプタは、Intel HD Graphics 3000が表示されず、NVIDIA GeForce GT 540Mのみデバイスマネージャに表示される。USB 3.0は同じくRenesas製だ。
起動時のデスクトップはアプリケーションへのショートカットが3つとシンプル。4コア8スレッドのCore i7-2670QMなので、CPUの使用率が8つある | HDDは500GB/5,400rpm/キャッシュ8Mの「HTS545050B9A300」。光学ドライブは「Slimtype DVD A DS8A4S」 | C:ドライブのみの1パーティション。約465GBが割り当てられている |
プリインストールされているアプリケーションは、「Microsoft Office Home and Business 2010」、「CyberLink DVD Suite V7」、「マカフィー インターネットセキュリティ 90日版」、「PC-Doctor for Windows」など。この点についてはVF2と全く同じとなる。なお今回は、これらの画面キャプチャに関しては省略している。
ただし、NVIDIA Optimusテクノロジーに対応していないため、NVIDIAコントロールパネルの表示の内容が少し異なる。また、タッチパッド用のドライバは、「Synaptics TouchPad V7.2」が使われていた。
USB 3.0ホストコントローラ情報 | Synaptics TouchPad V7.2 | NVIDIAコントロールパネル |
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、BBenchの結果を見たい。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 5.9。プロセッサ 7.5、メモリ 7.6、グラフィックス 6.7、ゲーム用グラフィックス 6.7、プライマリハードディスク 5.9。前回掲載したVF2とハードウェア的にはほぼ同じ構成なのに、プロセッサとグラフィックスが若干スコアが上がっている。
CrystalMarkは、ALU 59081、FPU 51607、MEM 46719、HDD 8876、GDI 15758、D2D 11704、OGL 36441。こちらも全てのスコアで誤差とは言い難いほど全数値がアップ。違いは「NVIDIA Optimusテクノロジー」の有無と、GPUのメモリ容量だけなのだが、この2点で何か差があるのだろうか。
BBenchは、省電力モード、バックライト最小、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/OFFでの結果だ。バッテリの残4%で12,728秒(3.5時間)。仕様上、最大4.4時間なので妥当なところ。またVF2のBBench/2.9時間からは若干伸びている。いずれにしても、このノートPCの性格的に室内での移動がメインとなり、これだけ持てば十分だろう。
以上のように「Prime Note Chronos MR6」は、VF2と比較してUSB 3.0が1つ減り1ポート、Bluetoothが3.0から2.0+EDRとそれぞれスペックダウン、替りに同じNVIDIA GeForce GT 540Mのメモリが1GBから2GBへと容量アップし、「NVIDIA Optimusテクノロジー」には未対応の姉妹モデルだ。筐体のデザインやキーボードも異なるため、受ける印象も随分違う。
「ハイスタンダード」モデルでの価格を比較すると2,000円高くなるもののほぼ同じ。もはやどちらを選ぶかは好みの問題と言えるだろう。いずれにしてもIntel HD Graphics 3000では物足らないユーザーの候補となりえる、15.6型フルHD液晶パネル搭載の2スピンドルノートPCだ。