西川和久の不定期コラム

NTTドコモ(サムスン)「GALAXY Tab 10.1 LTE SC-01D」
~Android 3.2を搭載した10.1型タブレット



 NTTドコモは10月12日、Androidタブレットとして、サムスン電子製の「GALAXY Tab 10.1 LTE SC-01D」と富士通製の「ARROWS Tab LTE F-01D」を発表。それぞれ10月15日と10月19日から発売となった。早速編集部から「GALAXY Tab 10.1 LTE SC-01D」が送られてきたので、試用レポートをお届けする。

●ハードウェア編

 現在NTTドコモが扱っているタブレットは、3G対応の「GALAXY Tab SC-01C」、「Optimus Pad L-06C」、Xi対応の「GALAXY Tab 10.1 LTE SC-01D」、「ARROWS Tab LTE F-01D」、そして12月発売予定の「GALAXY Tab 7.0 Plus SC-02D」の5機種。サムスン電子製が3台、LGエレクトロニクス製が1台、富士通製が1台と言う構成だ。液晶パネルのサイズ別では、10.1型×2、7型×2、8.9型×1というラインナップもなかなか興味深い。加えて28日発売となる3G対応のソニー製タブレット、「Tablet S」と「Tablet P」もウェブ上には掲載されている。

 今回送られてきたのは、「GALAXY Tab 10.1 LTE SC-01D」。受信時最大37.5Mbps(一部の屋内施設では最大75Mbps)/送信時最大12.5Mbpsの超高速データ通信Xiに対応するのが特徴の最新モデルだ。OSはAndroid 3.2を搭載。筆者が所有するWi-Fi版のApple iPad 2(以下iPad 2)と主な仕様比較は以下の通り。

【表】iPad 2(Wi-Fiモデル)との仕様比較
 iPad2GALAXY Tab 10.1 LTE SC-01D
ディスプレイ9.7型/1,024×768ドット10.1型/1,280×800ドット
プロセッサ1GHz デュアルコア Apple A51.5GHz デュアルコア APQ8060
メモリ512MB1GB
本体ストレージ16/32/64GB16GB
外部ストレージ無し
カメラVGA/720p2メガピクセル/3メガピクセル、AF、LEDフラッシュ
Wi-FiIEEE 802.11a/b/g/n
Bluetooth2.1+EDR3.0+HS
WWANN/AXi(LTE)/3G(下り最大14Mbps、上り最大5.7Mbps)、テザリング対応
外部コネクタDockコネクタ、ヘッドフォン出力アダプタ接続用コネクタ、SIMスロット、ヘッドフォン出力
サイズ241.2×185.7×8.8mm257×175×8.6mm
重量601g約565g
価格44,800/52,800/60,800円オープンプライス

 液晶パネルは、iPad 2の9.7型/1,024×768ドットに対して10.1型/1,280×800ドット。サイズの違いは小さいが、解像度は一回り違う。発色は明るくそしてコントラストも高く、IPSではないものの、クオリティは非常に高い。特に肌色が自然なのが気に入った。

 プロセッサはデュアルコアのAPQ8060。クロックは1.5GHzとなっている。メモリは1GB搭載。iPad 2はデュアルコアのApple A5、クロックは1GHzだ。ただし、プロセッサのアーキテクチャやOSが異なるため、単純にクロックが高いから速いと言うわけでもない。同じAndroidでは、MOTOROLA「XOOM Wi-Fi TBi11M」(以下XOOM)は、デュアルコアのNVIDIA Tegra 2でクロックは1GHzとなっており、こちらは速度差が気になるところだ。

 本体のストレージは16GB。ほかに32GB製品があることや、SDカードスロットがないことを考えると、少し容量不足な感じもあるが、筆者がiPad 2を使っている経験上、多くのデータはクラウドもしくは家の中のDLNAサーバーなどにあり、ローカルにはあまり容量を必要としない。この辺りは使い方にもよると思われるが、タブレットが出来ることを考えると、さほど心配することは無いだろう。

 無線LANはIEEE 802.11a/b/g/nで、Bluetooth 3.0+HSも搭載。WWANネットワークは冒頭で書いたように、Xi(LTE)と3G(下り最大14Mbps、上り最大5.7Mbps)。テザリングにも対応しているのが嬉しいポイント。GPSも内蔵している。

 カメラは前面が200万画素、背面がLEDフラッシュとAF付きの300万画素のものを搭載。ちなみに、以前、iPad 2やXOOMの記事を掲載した時に書いたが、このサイズのタブレットで写真やムービーを撮るのはあまり現実的ではなく、あるとすればSkypeなどテレビ電話替わりに使う程度だと思われる。

 インターフェイスは、アダプタ接続用コネクタ、SIMスロット、ヘッドフォン出力。SDカードスロットやUSB、HDMIなどの端子は一切無く、オプションの「卓上ホルダ」経由もしくは、「USB接続ケーブル Sc01[ASC59035]」、「SDカードリーダー Sc01[ASC59093]」、「USB変換アダプタ Sc01[ASC59080]」、「HDMI変換ケーブル Sc02[ASC59107]」などを別途用意する必要がある。付属品はACアダプタのみだ。

 余談になるが、今回、諸事情で、SIMやACアダプタも含め、一切オプション品が無い状態で、本体のみをWi-Fi環境で評価している。内蔵バッテリの容量は7,000mAhもあり、少々使ってもあまり減らないので問題無いが、困ったのは画面キャプチャだ。標準で撮影機能はあるが、USBケーブルが無いとPCへデータを送ることができない。考えた結果、FTPクライアントをAndroidマーケットからダウンロードし、サーバーへ転送して何とか解決した。

表。上中央に200万画素のカメラ。下中央側面にアダプタ接続用コネクタ裏。上中央に300万画素のカメラとLEDフラッシュ。スピーカーは左右側面にあるコネクタ部。microUSBやHDMIポートなどは本体側に無く、全てこのコネクタから変換アダプタ経由で接続する
上部側面。手元から電源スイッチ、音量、少し離れてヘッドフォン端子、SIMスロットXOOMとの比較。液晶パネルは同じ10.1型だが、XOOMの方が若干フットプリントは小さい。厚みは圧倒的にGALAXY Tab 10.1 LTE SC-01Dの方が薄いiPad 2との比較。パネルサイズと縦横比が違うため、iPad 2は幅は短く、奥行きは長くなる。厚みはほぼ同じだが、持ったときGALAXY Tab 10.1 LTE SC-01Dの方が少し軽く思える

 ボタン類は、電源と音量調整のみ。筐体左右側面にスピーカーと、スッキリしたレイアウトだ。筐体色は「Pure White」。写真から分かるように、液晶パネルのフチは黒、側面はシルバー、裏面はホワイトとなっている。

 サウンドは、最大出力時でそこそこのパワーがあり、音楽や映画は結構楽しめる。スピーカーのサイズが小さいだけに大迫力の低音は望めないものの、中域を中心とした割と聴きやすい音作りだ。さらにクオリティを上げたい時は、Bluetooth経由で外部スピーカーを接続すればいいだろう。

 サイズは257×175×8.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量約565g。iPad 2の241.2×185.7×8.8mm、601gと比較して、幅は広く、奥行きは狭い。また若干軽くなっている。数十gの違いなので、物理的には大差無いものの、持った感じは少しGALAXY Tab 10.1 LTE SC-01Dの方が軽く感じた。

 気になる作動速度であるが、ブラウザの表示速度比較をXOOMと、iPad 2で行なったのが以下の動画だ。なお、表示している広告が違ったり、iPad 2に関しては画面解像度も違うので参考程度に見て欲しい。他の部分も含め、実際触った感じはXOOMとはほぼ同等、iPad 2の方が一呼吸速いと言ったところだろうか。プロセッサが違っうため、一概にクロック数が高いから有利とはならないようだ。

 試しに自宅のDLNAサーバーにある1080p動画を、「UPnPlay」と「MoboPlayer」アプリを使って再生させたところ、XOOMでは激しくコマ落ちしたが、GALAXY Tab 10.1 LTE SC-01Dでは(iPad 2も)問題無く再生できた。動画再生能力については本機の方が優れていると思われる。

【動画】MOTOROLA「XOOM Wi-Fi TBi11M」との比較。広告などの出方が違うのでこの動画だけでは分かり難いと思うが、何度か試したところほぼ同等だった

【動画】Apple「iPad 2」との比較。こちらはiPad 2が一呼吸速い。他の部分の操作などもiPad 2の方がサクサク動く

●ソフトウェア周り

 OSはタブレット用のAndroid 3.2を搭載。従って多くの部分はXOOMと同じだが、例えば、下のバー中央にある「^」を押すと、タスクマネージャ、カレンダー、世界時計、ペンメモ、電卓、音楽プレーヤーのアイコンが現れ、瞬時に情報を見たり、設定でモーション起動をONにすると、ギャラリーとブラウザで両端を長押ししたまま本体を前後に傾け画面を拡大縮小できる「チルト」、ホームやアプリケーション編集モードで、本体を左右に傾けアイコンを他のページに移動させる「パンニング」が使用できるなど、独自の拡張が行なわれている。ちょっとしたアイディアものだが、実際使ってみるとそれなりに便利だ。

 さらに今回非常に助かったのが「画面キャプチャ機能」だ。通常Android機は、独自にこの機能を持たない限り、PCへSDKをインストールし、USBで接続、PCから画面キャプチャの操作をするのだが、今回付属品が一切無かったのでこの手法は使えない。しかしGALAXY Tab 10.1 LTE SC-01Dは、「Recent Apps」ボタンの右横にソフトウェアボタンが1つ追加され、これをタップする事により、ワンタッチで画面キャプチャを撮影できる。撮ったデータは“/ルート/ScreenCapture”に保存される。

 そのほか、NTTドコモ固有の機能として、「dマーケット」、「spモード」、「エリアメール」、「WORLD WING」などにも対応している。

 初期起動画面は掲載した画面キャプチャからも分かるように、うまく、そして綺麗にまとめられている。Andorid系のデバイスはメーカーにもよるが、割と雑多にアプリなどが並んでいるケースもあり、このスッキリさは好印象だ。

ホーム画面(2/5)。ブックマークウィジェットと、Eメールウィジェット。下にはアプリのショートカットが並ぶホーム画面(3/5)。起動時のホーム画面。時計、天気、ギャラリーウィジェット。下には日頃よく使いそうなアプリのショートカットが並ぶホーム画面(4/5)。Social Hub、カレンダーウィジェット。下にはアプリのショートカットは無い。1/5と5/5のホーム画面には何も配置していない
設定でモーション起動をONにすると、ギャラリーとブラウザなどで、チルト操作で画面を拡大縮小できる搭載アプリ(1/2)。エリアメールやBeeTVなど、ドコモならではのアプリがある搭載アプリ(2/2)。ただし全てのアプリがインストール済みではなく、一部はAndroidマーケットへのショートカットになっている
この部分はHoneycombの標準とほぼ同じ。ウィジェットに関しては5ページ分あるドコモマーケットAndroid 3.2、カーネルバージョン 2.6.35.11-pref

 搭載しているアプリケーションは、アラーム、エリアメール、オリコンスタイル、カメラ、カレンダー、ギャラリー、ジークラウド、ダウンロード、トーク、ドコモマーケット、ドコモ海外利用、ナビ、ビデオマーケット、フォトエディター、ブック、ブラウザ、プレイス、ペンメモ、マーケット、マイファイル、マガストア、マップ、メモ、AllShare、Backup、BeeTV、BOOK☆WALKER、BOOKストア2Dfacto、BookLive! for GALAXY、Eメール、ecoモード、Evernote、Fanplus、Flash Player、Gガイド番組表、Game Hub、Gmail、Google検索、Hulu、JOOKEY、Latitude、My NTTドコモアプリ、MySoundカラオケ、Polaris Office、Pulse、Qik Video、Samsung App、SMS、Social Hub、spモードメール、Twonky Mobile Special、VirusScan、YouTube、音楽プレイヤー、音声検索、楽天オークション、辞典、取扱説明書、書籍・コミック E☆エブリスタ、世界時計、設定、地図アプリ、電子書籍、電卓、電話帳、電話帳コピーツール、動画……と盛り沢山。とりあえずこれだけあれば、何も困らずタブレットライフをスタートできる。

 ただし、一部Androidマーケットのショートカットのみでインストールはされていない。また、「Samsung App」などSIMが入っていないと起動しないものもあった。

 気になったのはタブレットに最適化(2ペインもしくは画面をフルに使用)されたアプリ/サービスと、スマートフォン用(1ペイン)のアプリ/サービスが混ざっていて、それらを同時に使用すると、何か別のデバイスを触っている様な違和感を覚える。この辺りの調整はAndroid 4.0(以降)に期待と言ったところか。

 標準搭載のアプリの中でも「Social Hub」はメール、Facebook、Twitter、LinkedIn、mixiのメッセージやフィードを同時に扱え便利。この手のアプリはいろいろあるが、mixiに対応しているのが珍しいところ。

 DLNAに関してはこのリスト中にあった「Twonky Mobile Special」がダウンロードする形で用意され、本体内の写真や動画などを、DLNAに対応している家庭用液晶TVで観る事が出来る。

Game Hub。Hubとなっているので少し期待したものの、単にもモバゲーのログイン画面で、しかもタブレット用のUIになってないのは残念Social Hub(1/2)。SNSは、Facebook、Twitter、LinkedIn、mixiに対応しているSocial Hub(2/2)。フィードとメッセージに別けられ、アカウントで登録したものが一同に見られるので便利
Polaris Office(1/3)。Microsoft Officeのファイル形式に対応したオフィススイートの起動画面Polaris Office(2/3)。スプレッドシートを選んだところ。初期設定のセルのサイズが少し大きい気がするPolaris Office(3/3)。テンプレートも用意され、簡単に作業を始めることができる
Hulu。最近日本に上陸した動画配信サービス。アプリはインストールされておらずダウンロードが必要Pulse。筆者も利用しているフィードリーダー。まとめて観れるので非常に便利。iOS版もあるBeeTV。エイベックス・エンタテインメントと同社の合弁会社で、エイベックス通信放送が運営する携帯電話専門の動画配信サイト。画面はタブレットに最適化されていない


 以上のようににGALAXY Tab 10.1 LTE SC-01Dは、デュアルコア1.5GHzのパワーで軽快に動作するほか、ドコモオリジナルや実用的なアプリケーションを適度に搭載した10.1型のAndroidタブレットだ。加えて重量約565g、厚みも8.6mmと持ち運びも楽だ。

 ストレージ容量が16GBだったり、オプションのアダプタが無いと何もインターフェイスを接続できないなど、一見不安要素もあるものの、容量の件はクラウドやサーバーにデータがあるケースが多く、毎日iPad 2を使っている筆者でさえも充電以外は全くケーブルを接続しないので、特に問題にならないだろう。

 貸出機にはSIMも含め付属品が一切無かったこともあり、Xiを試せなかったのは残念ではあるが、Android搭載タブレットとして魅力的な逸品だ。