■西川和久の不定期コラム■
2月22日、レノボ・ジャパンはAMD Fusion APU搭載の液晶一体型PC「Lenovo C205」を発表した。18.5型のHDパネル、一通りのインターフェイスも揃って店頭予想価格は5万円前後とかなり安い。試作機が送られて来たので試用レポートをお届けする。
●AMD E-350を搭載した一体型PC
2011年に入ってから、AMD Fusion APU/E-350を搭載したマザーボード、ノートPC……と、レビューが続いているが、今回は液晶一体型PCだ。このプロセッサの低消費電力という特性上、ノートPCに次いで用途的に期待できるカテゴリだ。
AMD E-350の仕様をおさらいすると、2コアで1.6GHzのクロック、キャッシュは512KB×2の計1MB。TDPは18WでAMD64やAMD-Vに対応。そして内蔵グラフィックスとしては初めてDirectX 11に対応した「AMD Radeon HD 6310」が統合されている。このGPUにはIntel HD Graphics 2000/3000のように、ビデオハードウェアエンコーダは搭載していないものの、ATI Streamが使えるため、対応しているソフトウェアがあれば動画のエンコードなどが高速に行なえる。
E-350自体はクロックやTDPから、去年までネットブックなどで使われたAtomプロセッサと競合するもので、グラフィックスがかなり強力な分、E-350に圧倒的なアドバンテージがある。加えて、チップセットAMD A50M Fusion コントローラ Hubは、全てのSATAが6Gbpsになっているのも特徴的だ。Lenovo C205の主な仕様は以下の通り。
【表】レノボ「Lenovo C205」の仕様CPU | AMD E-350(2コア、1.6GHz、キャッシュ 512KB×2、TDP 18W) |
チップセット | AMD A50M Fusion コントローラ Hub |
メモリ | 2GB(2,048MB×1) PC3-10600 DDR3 SODIMM (最大2GB)/2スロット空1 |
HDD | 320GB(5,400rpm) |
OS | Windows 7 Home Premium(64bit) |
ディスプレイ | 18.5型液晶ディスプレイ(非光沢)、1,366×768ドット |
グラフィックス | AMD Radeon HD 6310 グラフィックス |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
その他 | USB 2.0×5(側面×2/背面×3)、5in1メディアスロット、 マイク入力、ヘッドフォン出力、Webカメラ、PS/2ポート |
サイズ/重量 | 461×167×385mm(幅×奥行き×高さ)/約5.8kg |
店頭予想価格 | 5万円前後 |
メモリは2GB。2スロットあり、2GB×1で1スロットが空き。同社がPDFで公開している仕様によると、標準2GB/最大2GB。「出荷後、お客様がメモリを増設することはできません」と、書かれているが、比較的簡単にメモリスロットへアクセスできるため、+2GBの計4GBの増設は容易だ。OSは64bit版のWindows 7 Home Premium。仮に4GB搭載しても全てのメモリを利用できる。
液晶パネルは、18.5型HD解像度の1,366×768ドット。このクラスとしては珍しく非光沢のパネルが使われている。好みにもよるだろうが、周りの映り込みなどが無く、個人的には嬉しいポイント。ただし、HDMI入力/出力、ミニD-Sub15ピンなどの外部との接続には対応していない。
ネットワークは、有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11b/g/n。安価なモデルの有線LANは100Base-TXまでのものが多いので、この点についてもノングレアパネル同様、ポイントは高い。
ストレージはHDDに5,400rpm/3Gbpsの320GB、そして光学ドライブにDVDスーパーマルチドライブを搭載している。先に挙げたように、チップセット自体はSATA 6Gbpsに対応しているので、3Gbpsのドライブを使っているのは惜しい部分であるが、この辺りはコストとの兼ね合いなのだろう。
そのほかのインターフェイスとしては、USB 2.0×5(側面×2/背面×3)、5in1メディアスロット、マイク入力、ヘッドフォン出力、Webカメラ、PS/2ポート。付属キーボードのインターフェイスがPS/2なので、PS/2ポートが1つ用意されている。一方、付属マウスはUSB接続となっている。
サイズは461×167×385mm(幅×奥行き×高さ)、重さ約5.8kg。このクラスの液晶一体型PCとしては一般的なもの。パネル部分は前に5度、後ろに20度傾けることができる。
カラーバリエーションホワイト(77293AJ)とブラック(77294AJ)の2種類。店頭予想価格は5万円前後だ。ネットで調べたところ、多くのショップで5万円を下回っている。こうなるとAMD E-350搭載のマザーボード(一般的に単体で販売しているマザーボードの方が高機能だが)、メモリ、OS、HDD、DVDスーパーマルチドライブ、Wi-Fiユニット、キーボードやマウス、液晶ディスプレイ、そしてケースまで含めると、とてもこの価格帯では収まらない。正にお買い得な液晶一体型PCと言えよう。ホビー用途はもちろん、デスクの上にポンと置けるビジネス用途にも安価で導入できる。
ボディのデザインは丸みをうまく活かしており、価格を考えると十分なクオリティで、チープな感じは一切無い。ただ、起動すると電源ボタン、Lenovoのロゴ、HDDアクセスLEDなどが結構眩しく光り気になってしまう。もう少し輝度を抑えてもいいのではないだろうか。
18.5型の液晶パネルは、非光沢なので映り込みが少なく、快適に作業できる半面、写真や動画に関してはどうしても地味な発色となる。ただし発色自体は(高級ディスプレイとは比較できないものの)割りと正確。視野角は上下が狭く、色が段々浅くなるように変化する。従って角度をうまく調整し、視線とパネルが平行になるよう、セットするのがベストだ。
パネル自体は軽く触ってもグラグラすることも無くしっかり固定され、前後の角度調整もスムーズに行なえる。
付属のマウスとキーボードは、本端とデザインを合わせてあり、机の上にならべてもマッチする。キータッチやマウスの感触などは価格相応と言ったところ。
振動やノイズは皆無だ。発熱もAMD E-350のTDPが低いため全く気にならないレベルになっている。消費電力は標準17.24W/最大45.22Wで、ENERGY STARに適合する。
パネル下側に埋め込まれたステレオスピーカーは、SRS Premium SoundをONにすると、スピーカー同士の幅以上に音が広がる。エネルギーバランスは中域が中心で、少し荒い感じもするが(「さしすせそ」が引っかかる)、出力は十分あり、音楽や動画を楽しむことができる。
全体的に価格を考えると、仕上げは良い方で、「安価だから仕方ないか……」と思った部分は特に無く、コストパフォーマンスは高いと言えるだろう。
●価格の割りに高いグラフィックス性能OSは64bit版Windows 7 Home Premium。グラフィックスがメモリを共有するため、2GB搭載時、実質は1.75GB。使ってみると結構頻繁にHDDアクセスランプが光っているのがわかる。やはりWindows 7を快適に使うのにメモリ2GB未満は少なく、できれば+2GBの計4GBとして運用したいところだ。
HDDは「ST9320325AS」で、320GB/5,400rpm/3Gbps/キャッシュ8MB。光学ドライブは「AD7710H」。有線LANは「Realtek PCIe GBE Family Controller」が使われている。ディスプレイアダプタを見ると「WRESTLER 9802」と見慣れない文字があり、調べたところ、AMD Radeon HD 6310 GraphicsのASIC名がWRESTLER、IDが9802(9803もある)という意味のようだ。
C:ドライブは約49GB、D:ドライブは約223GBの2パーティション。C:ドライブは約34GBが空き、D:ドライブは未使用。C:ドライブの約49GBは、用途にもよるが、あれこれアプリケーションを入れ出すと少し不安な容量だ。できれば64GB程度割当てた方が良さそうな気がする。
インストール済のソフトウェアは、Microsoft Windows Live Toolbar & Search、Power2Go 6.0、Mcafee Pearl 1.1、i-フィルター 5.0、 SRS Premium Sound。同社のツール系としては、Lenovo Vantage Technology Start Center、 Lenovo Dynamic Brightness System、 Lenovo Eye Distance System、 Lenovo Rescue System 3.0、Lenovo HDオーディオマネージャなどがあげられる。
この中でLenovo Vantage Technology Start Centerは、ランチャー的なもので、同社のツールを起動したり、ヘルプを参照することができ、キーボード右上にある[LVT]ボタンでも起動できる。 Lenovo Dynamic Brightness Systemは環境光に合わせて自動的にディスプレイの輝度を調整するシステム。 Lenovo Eye Distance Systemは、ディスプレイに近付き過ぎると警告が出る仕掛けとなっている。
Lenovo Vantage Technology Start Center | Lenovo Dynamic Brightness System | Lenovo Eye Distance System |
Lenovo Rescue System 3.0 | Lenovo HDオーディオマネージャ | SRS Premium Sound |
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMarkの結果を見たい。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 3.8。プロセッサ 3.8、メモリ 4.9、グラフィックス 4.1、ゲーム用グラフィックス 5.6、プライマリハードディスク 5.5。以前記事にしたAMD E-350搭載機と比較して若干低い部分もあるがほぼ同じ値だ。ゲーム用グラフィックスは高スコアだが、プロセッサやメモリはクラス並みのスコアに留まっている。
CrystalMarkは、ALU 9845、FPU 8960、MEM 6971、HDD 8250、GDI 3723、D2D 1926、OGL 8978。D2DとOGLは桁違いに速い。前回掲載したIntel Core i7-2630QM内蔵Intel HD Graphics 3000より高い値だ。AMD Radeon HD 6310の高性能さがこれからもはっきり分かる。
YouTubeの再生は、ビデオドライバのバージョンがATIの最新版より古かったので(Flash Player 10.2リリース以前のタイムスタンプ2010/12/20)、2011/02/15版のドライバをインストールしテストしたところ、1080pの窓表示/全画面とも、コマ落ち無しで30fpsがOKだった。もちろんパネルがHD解像度なので意味はないものの、720pでは更にCPU使用率は低くなり、快適に観ることができる。
Windows エクスペリエンス インデックスは総合 3.8。プロセッサ 3.8、メモリ 4.9、グラフィックス 4.1、ゲーム用グラフィックス 5.6、プライマリハードディスク 5.5 | CrystalMarkは、ALU 9845、FPU 8960、MEM 6971、HDD 8250、GDI 3723、D2D 1926、OGL 8978 |
以上のようにレノボC205は、普段使いなら問題のないパワーを持つAMD E-350を搭載し、18.5型の非光沢液晶パネル、Gigabit Ethernetを含め一通り揃ったインターフェイスなどを備え、店頭予想価格が5万円前後と、OS代まで含めると、自作するより安上がりだ。メーカー保証は効かなくなるものの、メモリを+2GBで計4GBにして使えば、更に快適に動くだろう。
ホビー用途はもちろん、ビジネス用途でもデスクへ置いて使える安価なPCとしてお勧めのPCだ。