西川和久の不定期コラム

エプソン「Endeavor ST150E」
~アーキテクチャやケースを一新した小型PC



 10月26日、エプソンから小型デスクトップPC「Endeavor ST150E」が発表された。位置付けは従来モデル「Endeavor ST125E」からのメジャーチェンジモデル。最大の特徴は、容積約2.7L、195×185×75mm(幅×奥行き×高さ)のコンパクトなボディだろう。一足早く製品版が届いたので試用レポートをお届けする。
●モバイルアーキテクチャでコンパクトなPC

 前モデルに相当する「Endeavor ST125E」は、2009年10月に発売開始。容積約2.7Lのコンパクトサイズにチップセットは、Intel GM45 Expressを採用したSocket479の一世代古いアーキテクチャだった。基本構成は、CPUにCeleron T3000(1.8GHz)、1GBメモリ、160GB HDD、DVDスーパーマルチドライブ、OSにWindows Vista Home Basicで59,850円だった。

 今回発表された「Endeavor ST150E」は、チップセットに2010年ノートPCの代名詞とも言える、Intel HM55 Expressを採用している。グラフィックスはCPU内蔵Intel HDグラフィックス。つまり、ノートPC用のアーキテクチャをそのままデスクトップPCに流用した形だ。最近のノートPCは十分高性能なので、余程のパフォーマンスや拡張性を望まない限り十分実用的なマシンとなる。BTOでいろいろな組み合わせができるが、今回届いたのは以下の通り。

□主な仕様
・OS Windows 7 Home Premium(32bit)
・CPU Intel Core i3-370M(2コア/4スレッド、2.4GHz、キャッシュ3MB)
・チップセット Intel HM55 Express
・メモリ 4GB(2GB×2使用/2スロット、空き0)
・HDD 640GB(SATA、5,400rpm)
・グラフィックス Intel HD Graphics、ミニD-sub15ピン、DVI-D
・スーパーマルチドライブ(SATA/トレータイプ)
・USB 2.0×2(フロント)/×4(リア)
・マイク入力/ヘッドフォン出力(フロント)、音声入出力、マイク入力(リア)
・Gigabit Ethernet
・PS/2ポート×1
・TPM v1.2準拠セキュリティチップ標準搭載
・ケース195×185×75mm(幅×奥行き×高さ)、重量 1.8Kg(基本構成時)
・価格:98,595円(上記の構成時)

 これらの仕様中、BTOで変更可能なのは、OSにWindows 7 Home Premium、Windows 7 Professonal。どちらも32bit/64bitの選択が可能だ。32bit/64bit同梱ではないので注意したい。

 CPUはCore i7-640M(2コア/4スレッド、2.8/3.46GHz、キャッシュ4MB)、Core i5-560M(2コア/4スレッド、2.66/3.2GHz、キャッシュ3MB)、Core i5-460M(2コア/4スレッド、2.53/2.8GHz、キャッシュ3MB)、Core i3-370M(2コア/4スレッド、2.4GHz、キャッシュ3MB)、Celeron P4600(2コア/2スレッド、2GHz、キャッシュ2MB)の5種類から選べる。

 メモリは、PC3-8500(DDR3 1,066MHz)SO-DIMが2スロットで最大8GB実装できる。コストとデュアルメモリアクセスのパフォーマンスを考えると2GB×2の計4GB構成がベストだ。

 HDDは、2.5型でHDDもしくはSSDを1基搭載可能だ。5,400rpmのHDDは160GBから640GB、SSDは64GBまたは160GBとなる。光学ドライブは、トレータイプのDVD-ROMかスーパーマルチドライブもしくは、スロットインタイプでスーパーマルチドライブも対応している。個人的にはスロットインタイプが好みなので嬉しいポイント。

 特徴的な容積約2.7Lのコンパクトなケースは、「ST125E」の重量約2.2kgから約1.8kgへと400g軽くなり、静音性はノートPC並みの約22dBをキープ。デザインも変わっている。

 消費電力は通常時「ST125E」が約21.8Wに対して、Core i7搭載時は約13.1Wと、大幅に減った。これは同社の平均的なデスクトップ「AT980E」が約28.6Wに対してほぼ半分程度に相当する。かなりエコなデスクトップPCと言えよう。

 各インターフェイス部分は基本的に「ST125E」と同じであるが、フロントにある2つのUSBの間隔を広めに、フロントにマイク端子を追加。ユーザビリティの向上を狙っている。

 リアパネルにシリアルポートがオプション、オフィス用途を考慮しHDMI出力からDVD-D出力へ変更となった。ただし、PS/2ポートは1つ(オプションでPS/2分岐ケーブルを用意)に減っている。なお、有線LANはGigabit Ethernetで、TPM v1.2準拠セキュリティチップの標準搭載などは従来通り。

 このように、サイズは変わらず、チップセットとCPUが最新アークテクチャとなり、パフォーマンスアップが期待できるマシンに仕上がっている。

フロント。トレータイプのスーパーマルチドライブ、USB 2.0×2、マイク入力、ヘッドフォン出力、HDD/POWER LED、電源スイッチ。確かにUSBポート間が若干広めだ本体背面PS/2ポート、USB 2.0×2、オプションのシリアルポート、ミニD-Sub15ピン、DVI 24ピン、Gigabit Ethernet、USB 2.0×2、ロックポート、音声入出力、電源入力内部(全体)。リアパネルのネジ2本外せば簡単に内部へアクセスできる
内部メモリ付近。2GBのメモリが2枚見える。直ぐ後ろにエアダクトがある内部SATA付近。スーパーマルチドライブの下に2.5型のHDDをマウントしている内部のマウンタを外したところ)。マウンタ部分のネジ3本外すと、ロジックボードにアクセスできる。とてもシンプルな作りだ
ACアダプタの出力は90W。長辺約13cmと少し大きめだ。コネクタ部分はメガネタイプ。付属のACケーブルもホワイト付属のキーボード/マウス。どちらもUSBインターフェイスだったが、基本構成ではキーボードがPS/2となる本体の幅。実測で約19cm。デスクトップPCとしてはかなり小型だ
旧Mac miniとの比較。一回りST150Eの方が大きい。光学ドライブの幅はほぼ同じなので、これを中心に比較すると分かりやす10キー付きのフルサイズキーボードと比較すると、幅は半分にも満たない一般的な20型ディスプレイとの比較。これだけ小さいとディスプレイの裏に置いても邪魔にならない

 第一印象はデスクトップPCとしてはかなり小さい。Mac miniとの写真では「ST150E」が大きく見えてしまうものの、付属のキーボードや20型の液晶ディスプレイと比較すれば、そのコンパクトさは一目瞭然。ホワイトのケースは仕上げもなかなか丁寧でどこに置いてもマッチしそうな雰囲気だ。

 静音性に関しては起動時、少しファンが回って音がするものの、低負荷時は確かにノートPC並みに静かになる。オフィスはもちろんのこと、深夜自宅で使っても大丈夫だろう。

 小型に加え、もう1つの特徴として、メンテナンス性が挙げられる。まずリアパネルの2つのネジを外すと簡単に内部にアクセスできる。正面向かって右側にメモリスロットが2つあり、サクッと交換可能だ。手馴れた人ならここまでで数分かからないだろう。更に、光学ドライブとHDDを固定しているマウンタは、ネジ3つで外すことができる。HDDは光学ドライブの下側にマウント。この状態でシステムボード全てが見え、とてもシンプルな構造になっていることが分かる。電源ユニットが外部になっているためケーブルの数も少なく、熱もほとんど持たない。

 今回送られてきたキーボードとマウスはUSB接続タイプだった。このキーボードはBTO選択だが、左右上には、USBポートが1つずつあり、2ポートUSB HUBになっている。ここへマウスを接続すれば、ケーブルは1本にまとめることができる。標準構成ではPS/2のコンパクトタイプだが差額も少ないので、これを選ぶのも良いだろう。

●ビジネス用途として必要十分なパフォーマンス

 今回OSは32bit版のWindows 7 Home Premiumだったので、メモリ4GB中、1GBが使えない領域となっている。互換性などの問題が無い限り、4GB以上のメモリを搭載する時は、64bit版を使いたいところ。

 HDDは2.5型のSamsungの「HM641JI」を搭載。5,400rpmで容量640GB、キャッシュは8MB。パーティションはC:ドライブ1つ。約593GBが割当てられている。後述するプリインストールされているアプリケーションも少なく、ほとんどの領域をユーザーが利用可能だ。光学ドライブはティアックの「DV-W28S-V」だった。

デスクトップ。同社お馴染みの壁紙と、オリジナルユーティリティへのショートカットが並んでいるデバイスマネージャ/主要デバイス。HDDはSamsungの「HM641JI」(5,400rpm/640GB/キャッシュ8MB)、光学ドライブはティアックの「DV-W28S-V」ドライブ構成。C:ドライブワンパーティション、約593GBが割当てられている

 インストール済みのアプリケーションは、同社製として、「PCお役立ちナビ」、「初期設定ツール」、「リカバリーツール」、「ホットキー設定ユーティリティ」など。この「ホットキー設定ユーティリティ」は、付属キーボード[U1]/[U2]/[U3]の機能キーを割り当てる。他社製としては、「Nero StartSmart Essentinals」、「InterVideo WinDVD for EPSON」、「McAfee セキュリティーセンター」などとなる。基本的にあまりいろいろ入ってなくシンプルな構成だ。

 また、「リカバリーDVD」、「リカバリーツールCD」、「USB109キーボードユーティリティCD」のメディア3枚が付属する。

ホットキー設定ユーティリティPCお役立ちナビNero StartSmart Essentinals

 ベンチマークテストとしてWindows エクスペリエンス インデックス、そしてCrystalMark 2004R3でシステムの結果を見たい。まず、Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 4.6。プロセッサ 6.4、メモリ 7.2、グラフィックス 4.6、ゲーム用グラフィックス 5.2、プライマリハードディスク 5.9。一番遅いのはグラフィックスとなる。Core i3-370M、Intel HM55 Express、内蔵 Intel HDグラフィックスとしては標準的なスコアだ。HDDも5,400rpmタイプなので一般的な5.9。

 CrystalMark 2004R3の結果は、Mark 103,787、ALU 27,164、FPU 31,385、MEM 23,219、HDD 9,851、GDI 8,372、D2D 1,669、OGL 2,127。OSが32bitか64bitかで若干変わるものの、システム的には妥当なところ。PCI Express x16など拡張バスが無いのでグラフィックスの強化はできないが、ビジネス用途であれば十分なパフォーマンスだと思われる。

 試しにYouTubeで1080p動画を再生したところ大丈夫だった。なお、出荷状態ではAdobe Flash Playerがインストールされていない。

Windows エクスペリエンス インデックスは総合 4.6。プロセッサ 6.4、メモリ 7.2、グラフィックス 4.6、ゲーム用グラフィックス 5.2、プライマリハードディスク 5.9CrystalMark総合。Mark 103,787、ALU 27,164、FPU 31,385、MEM 23,219、HDD 9,851、GDI 8,372、D2D 1,669、OGL 2,127YouTube/1080p。ハードウェアアクセサレーションに対応した、Adobe Flash Player 10.1と組み合わせて問題無く再生できる

 以上のように「Endeavor ST150E」は、最新のモバイルアーキテクチャを採用し、省エネ/静音と、容積約2.7Lにまとまった非常にコンパクトなPCだ。

 BTOでCPUやHDDなどいろいろな構成を選べるのも嬉しいポイント。ビジネス用途はもちろん、小型PCに興味のあるパーソナルユーザーにもお勧めの製品といえよう。