西川和久の不定期コラム

USB 3.0、Bluetooth 3.0+HSなど最新デバイス搭載!
ASUSTeK「Eee PC 1018P」



 Windows 7登場以降、Celeron SU2300を搭載したCULVノートPCなどに押され気味で、以前ほどAtomプロセッサを搭載したネットブックが流行らなくなっているが、今回USB 3.0やBluetooth 3.0+HSなど、最新のデバイスに対応した面白そうなミニノートPC「Eee PC 1018P」がASUSTeKから登場した。さっそく使用レポートをお届けしたい。


●最新デバイス搭載

 ASUSTeKは「Eee PC」シリーズに「1018P」と「1016P」の2モデルを追加し、8月21日に発売した。Eee PCは既に数多くのモデルがあるので、筆者ですらもう全てを把握できていないが、今回ご紹介する「1018P」は、これまでのネットブックとは一味も二味も違う内容になっている。主な仕様は以下の通り。

【表】ASUS Eee PC 1018P仕様
CPUIntel Atom N475(1コア/1.83GHz/キャッシュ512MB)
チップセットIntel NM10 Express
メモリ2GB/DDR3-667(PC3-5300)、1スロット空き0、最大2GB
HDD320GB(5,400rpm)
OSWindows 7 Home Premium(32bit)
ディスプレイ10.1型ワイド液晶ディスプレイ、1,024×600ドット
GPU内蔵Intel GMA 3150、ミニD-Sub15ピン
ネットワークGigabit Ethernet、IEEE802.11b/g/n、Bluetooth 3.0+HS
その他USB 3.0×2、USB 2.0×1、SDカードスロット、Webカメラ、音声入出力、指紋センサー
サイズ/重量262×179×18~21mm(幅×奥行き×高さ)/約1.1kg
バッテリ駆動時間最長約6.0時間
価格59,800円

 CPUは6月に発表されたDDR3に対応したAtom N475。クロック1.83GHz、1コア/2スレッド、キャッシュ512KB。Intel64にも対応しているので64bit版のWindowsを動かすことも可能であるが、VTは非対応となっている。同じクロックのAtom N470プロセッサは多くの仕様が同じであるもののDDR2のみ。パフォーマンスの向上が期待できる。

 チップセットはIntel NM10 Express。メモリは最大2GBで、既に2GB実装済みだ。グラフィックスは内蔵Intel GMA 3150。現在Intel HDグラフィックスが最新なので、コア的には2世代古いことになる。メインメモリ共有タイプで最大256MB使用する。液晶パネルは10.1型の光沢タイプだ。解像度は1,024×600ドット(WSVGA)。外部出力はミニD-Sub15ピンのみで、デジタル出力はない。

 ネットワーク関連は、有線LANはGigabit Ethernet対応だ。多くのAtomプロセッサ搭載機やミニノートPCなどが100BASE-TXまでなので、NASなどの利用を考えるとポイントが高い。無線LANはIEEE 11b/g/n。そしてBluetoothは3.0+HSと最新版だ。このBluetooth 3.0+HSの特徴は、Wi-Fiを利用した高速通信。つまり、Wi-Fiを利用するためネットワークに接続しなくても、Bluetoothによる認証のみでアドホック通信が可能となる。最大データ伝送速度は、従来の3Mbpsと比較して8倍程度の24Mbpsに引き上げられている。2009年の4月の仕様が公開されていることもあり、そろそろ対応機器が出てくる頃だ。1018Pがあればいち早くこれを体験できる。

 その他のインターフェイスは、USB 2.0×1、USB 3.0×2、Webカメラ、SDカードスロット、音声入出力、そして指紋センサーとなる。最近デスクトップPCでUSB 3.0に対応したものは少し出てきたが、ノートPC、しかもミニノートPCとしては珍しい。USB2.0と比較して、高速データ転送が出来るため、ストレス無く外部HDDなどを使用できる。またUSB2.0側は電源OFF時でもiPhoneなどを充電できる「USB Charge+」を搭載している。指紋センサーはビジネス用途では必修だ。

 カラーバリエーションはブラックとホワイトの2種類。OSはWindows 7 Home Premium 32bit版のみの対応。もともとメモリは最大2GBなので特に64bit版にこだわる必要は無い。

天板。アルミヘアライン仕上げのブラック。なかなかクールなデザインだ正面。HDDアクセスLEDや正面斜め下にはスピーカーが無くシンプル。パネルの上中央にWebカメラのON/OFFシャッターがある底面。簡単にメモリにはアクセスできるものの、すでに最大限の2GBなので交換する必要は無い。HDDは、軽く見た感じでは、外すのは大変そうだ
左側面。ミニD-Sub15ピン、USB 2.0×1、ロックポート。このUSBポートは電源OFF時でもiPhoneなどを充電できる「USB Charge+」搭載キーボード。アイソレーションタイプのキーボード。右側に指紋センサーが見える。中央のHDDアクセスLEDなどの上のメッシュ部分にステレオスピーカーが埋め込まれている右側面。SDカードスロット、音声入出力、USB 3.0×2、Ethernet、電源入力
キーピッチは実測で約18mmバッテリ、ACアダプタ。ACアダプタはかなり小型だ。バッテリは4セルのリチウムポリマーバッテリ重量は実測で1,137g

 パッケージから取り出した第一印象は「これちょっといいかも!」だ。アルミヘアライン仕上げで高級感のあるブラックはなかなかクールでかっこ良く、しかも軽くて薄い。液晶パネルのフチやパームレストも同じデザインになっている。それ以外の部分はプラスチックでマットな黒なのだが、安っぽい感じも無く、全体的なバランスを崩していない。

 サイズは262×179×18~21mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.1kgと、軽さもさることながら、スリムなボディでカバンなどに入れてもかさばらない。ただ1つ弊害として、Ethernetのコネクタは、通常蓋が半分閉まっている状態だ。下側に開きケーブルを接続しなければならない。

 キーボードはアイソレーション・タイプ。ガッチリ作られており、たわむことは皆無。キーピッチは約18mmで少し狭いものの、クリック感やストロークがちょうど良く、筆者的には好み。タッチパッドはボタンも一体化した一枚の板になっている。この関係もあり、クリック感が少し重いのが残念なところか。

 液晶パネルは光沢タイプの10.1型。輝度を最大にするとかなり明るく、逆にバックライトを最小にしてにしても十分見える。コントラストも高く発色も鮮やかだ。よくある青っぽい感じも無い。コンテンツを楽しむなら輝度を最大、事務処理をするなら輝度を落として使うといった感じだろうか。いずれにしてもなかなか良く出来たパネルと言えよう。1,024×600ドット(WSVGA)なのでWebを表示する時は少し縦が狭いものの、ブラウザの[F11]キーで全画面モードにするなど工夫すれば縦768ドットとあまり差は無い。

 スピーカーは、はじめて音を出した時、液晶パネル自体が鳴っているような感じだった。実はHDDアクセスLEDなどが並んでいる上のメッシュ部分にスピーカーが埋め込まれている。サイズ的に低音は望めないものの、正面斜め下にスピーカーが付いている配置より、音が直接上に出ることもあり、割とクリアな音質だ。最大音量はニアフィールドで聞く限り問題ない。

 ノイズや振動に関しては若干はあるが、気になるレベル以下に抑えられている。そして蓋を閉めて充電するまで気が付かなかった部分として、後ろに充電中のLEDがあること。この位置ならパッと見て直ぐに状態が把握できるため非常に便利だ。

充電中に光る後ろ側のLEDEthernetケーブルはこんな感じで接続

 以上のように、USB 3.0やBluetooth 3.0+HSといった最新デバイスを搭載し、Gigabit Ethernet対応、そしてヘアライン仕上げのクールなスリムボディ、コンパクトながら入力しやすいキーボードなど、これまでのミニノートPCのイメージを覆すなかなか魅力的なノートPCに仕上がっている。筆者としても久々に「これいいかも!」と思ったほどだ。マイナスポイントはタッチパッドのボタンに相当する部分が少し重いことだろうか。

●DDR3で少しパフォーマンスアップ

 Atomプロセッサのメモリタイプの違いによる効果は、以前Intel純正マザーボードD510MOを試した時に感じていた。Atom D510プロセッサ自体はDDR2までなのだが、DDR2-667もしくはDDR2-800の対応。両方でベンチマークテストを行なった結果、明らかにDDR2-800の方が速く動く。グラフィックスもメインメモリと共有なので画面のキレも良くなる。そしてこのAtom N475はDDR3対応だ。更なるパフォーマンスアップが期待できる。

 実際この違いは起動時から「ネットブックってこんなにスムーズにWindows 7動いたっけ!?」と思うほど、ストレスを感じず操作できる。体感的にはCeleron SU2300を搭載したCULVノートPCとほとんど差が無い。もちろん1コアなので重い処理を行なうと差は出るだろうが、Webする程度ならその違いはほとんど感じない。

 起動時のデスクトップは同社固有の「Eee Docking」が画面上中央に表示されるのが特徴的だ。HDDはSeagate「ST9320325AS」、320GBの5,400rpm、キャッシュは8MB。パーティションはC:ドライブがシステム用として100GB、D:ドライブはデータ用として183GB割当てられている。

起動時のデスクトップ。画面中央上に「Eee Docking」が見える。左側にはウィルスバスター2010、Kingsoft Office 2010のショートカットなどがあるHDDはSeagateの「ST9320325AS」(320GB/5,400rpm/キャッシュ8MB)。「Atheros AR8131」のGbEコントローラも見えるHDDのパーテーション。C:ドライブ100GB、D:ドライブ183GBの2パーテーション

 プリインストールアプリケーションは、同社のツール系、ASUS VIBE、ASUS WebStorage、ASUS Update for Eee PC、Eee Docking、Eee Splendidなど。他社製は、CyberLink YouCam、ウィルスバスター2010(期間限定版)、iフィルター5.0、Kingsoft Office 2010 30日お試し版、そして指紋センサー用のTrueSuiteなどが導入済みだ。Web画面を含めID/PWを入力する場面で利用できる。またUSB 3.0のホストコントローラはNEC製が使われていた。

TrueSuite(指紋センサー用)Kingsoft Office 2010 30日お試し版USB 3.0はNECのホストコントローラ

 ベンチマークテストは、Windows エクスペリエンス インデックス、CrystalMark、そしてBBenchの結果を見たい。

 まずWindows エクスペリエンス インデックスの総合は2.5(2.4)。内訳は、プロセッサ2.5(2.4)、メモリ4.8(4.5)、グラフィックス3.0(2.9)、ゲーム用グラフィックス3.0(3.0)、プライマリハードディスク5.6(5.9)。カッコ内は、Atom N450プロセッサ(1Core/1.66GHz/キャッシュ512KB) を搭載したHP「Mini 210」の値を参考までに掲載している。CPU、メモリ、グラフィックスがクロックが上がった分、若干向上しているのが分かる。

 CrystalMarkは、総合 28,674(26,635)、ALU 5,743(4,891)、FPU 4,548(4,133)、MEM 5,640(4,758)、HDD 9,038(9,636)、GDI 2,035(1,888)、D2D 1,176(928)、OGL 494(401)。これもカッコ内は先のネットブックの値だ。Windows エクスペリエンス インデックス同様、見事に少しずつ速くなっている。

 BBenchは、Power Savingモード、バックライト/OFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、WiFi/ON、Bluetooth/OFFでのBBenchの結果だ。バッテリの残6%で20,529秒(5.7時間)だった。最長約6.0時間という仕様の値がほぼそのまま出ている。

Windows エクスペリエンス インデックスの総合は2.5。プロセッサ2.5、メモリ4.8、グラフィックス3.0、ゲーム用グラフィックス3.0、プライマリハードディスク5.6CrystalMarkは総合28,674。ALU 5,743、FPU 4,548、MEM 5,640、HDD 9,038、GDI 2,035、D2D 1,176、OGL 494BBench。Power Savingモード、バックライト/OFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、WiFi/ON、Bluetooth/OFFでのBBenchの結果だ。バッテリの残6%で20,529秒(5.7時間)

 試しにYouTubeへアクセスしたところ、360pならコマ落ち無し、480pならコマ落ちしながらも鑑賞としてはギリギリ、それ以上は紙芝居となってしまった。この辺りはCPUパワーと言うより、動画支援機構のあるIntel HD Graphicsと世代の古いコアのGMA 3150の差が出た感じだ。

 以上のようにEee PC 1018Pは、USB 3.0、Bluetooth 3.0+HSなど、最新デバイスに対応した上で、クールなデザイン、約1kgの薄型軽量、長時間のバッテリ駆動など、Atomプロセッサを搭載しているとは言え、ミニノートPCとして非常に魅力的に仕上がっている。有線LANがGbEなのでNASとの接続を考えると嬉しいポイント。指紋センサーがあるのでビジネス用途でも安心だろう。

 あまりパワーが必要なく、普段気楽に持って歩くモバイルノートPCを探しているユーザーにお勧めの製品だ。