西川和久の不定期コラム

日本HP「ENVY 14 Beats Edition」
~音楽とハイパフォーマンスを楽しむ高品質ノート



 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の2010年冬モデルとして新ブランド「HP ENVY」が登場した。“ENVY”には最上級のノートPC、何も妥協しない、人々が羨望すると言う意味が込められているという。今回はヒップホップミュージシャンDr.Dre(ドクター・ドレー)がプロデュースするBeats Audioシグネチャーモデルが届いたので、早速使用レポートをお届けしたい。


●こだわりのBeats Audioモデル

 この「ENVY 14 Beats Edition」のコンセプトは、「クールでオリジナリティあふれるデザイン」、「快適なPC環境を実現するパフォーマンス」、そして「音楽を聴くために作られたノートPC」と、同社の従来のノートPCとは異なる。ハイパフォーマンスだけであれば他社でもあるが、加えてデザインと音まで追求しているのはレアケースだ。主な仕様は以下の通り。

【表】「ENVY 14 Beats Edition」仕様
CPUIntel Core i5-460Mプロセッサ
(2コア/4スレッド、2.53GHz/TB 2.8GHz、キャッシュ3MB)
チップセットIntel HM55 Express
メモリ4GB/DDR3 SDRAM×1
HDD640GB(5,400rpm)
光学ドライブDVDスーパーマルチドライブ(スロットイン式)
OSWindows 7 Home Premium(64bit)
ディスプレイ14.5型光沢液晶ディスプレイ、1,366×768ドット
GPUMobility Radeon HD 5650(1GB)、HDMI、mini DisplayPort
ネットワークGigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth
その他 USB 2.0×3(1つはeSATAと併用)、カードリーダ、Webカメラ、
マイク入力/ヘッドフォン出力×1、ヘッドフォン出力×1
サイズ/重量355×236×29mm(幅×奥行き×高さ)/約2.5kg

 今回届いたのは「ENVY 14 Beats Edition」の量販店モデル。店頭では13万円前後の価格と予想される。CPUはIntel Core i5-460Mプロセッサ。2コア/4スレッド、クロック数は2.53GHz、TurboBoost時2.8GHzになる。L3キャッシュは3MB。チップセットはIntel HM55 Express。メモリは4GB実装済みだ。

 グラフィックスは、内蔵のIntel HD Graphicsに加え、Mobility Radeon HD 5650(1GB)を搭載している。DirectX 11に対応したGPUだ。バッテリ駆動時には省電力にするためCPU内蔵へ切り替えることも可能。出力はmini DisplayPortとHDMIで、アナログ出力は無い。液晶パネルは14.5型の1,366×768ドットとなる。

 HDDは5,400rpmの640GB、光学ドライブはスロットイン式のDVDスーパーマルチドライブで左側に付いている。多くのノートPCは、右側に付いているのでこの配置は珍しい。イジェクトキーは[delete]キーの左側に割り当てられている。

 ネットワークは、Gigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n無線LAN、Bluetoothを搭載。その他のインターフェイスは、USB 2.0×3(1つはeSATAと併用)、カードリーダ、Webカメラ、ヘッドフォン/マイク入力×1、ヘッドフォン出力×1。ヘッドフォンが2つ同時に使えるところが面白い。

 なお、直販のHP Directplusモデルは、CPUにIntel Core i7-720QMプロセッサ(4コア/8スレッド、1.6GHz/TB2.8GHz、キャッシュ6MB)、HDDは同じ640GBの容量であるが、7,200rpmの高速型と、よりパワーアップした仕様になっている。

天板はマットブラック、中央に「Beats Audio」のロゴ正面。左右にスピーカー、右側にカードリーダ。スピーカーにもロゴが見える底面。通常バッテリが見える部分にパネルがあり、全体的にフラットになっている
パネルを外すと、HDDとバッテリが見える。メモリの場所は軽く探した範囲ではわからなかった左側面。スロットイン式の光学式ドライブ、USB 2.0×2、マイク入力/ヘッドフォン出力×1、ヘッドフォン出力×1アイソレーションタイプのキーボード。バックライト付きだ。タッチパッドの左上のドットをダブルタップするとタッチパッドがOFFになる(LED点灯)
右側面。電源入力、Gigabit Ethernet、ロックポート、mini DisplayPort、HDMI、USB 2.0(eSATA併用)×1、電源/HDD LEDキーピッチは実測で約19mm。キーボードはたわみも無く、キータッチはソフトな感じだACアダプタとバッテリ。ACアダプタのケーブルが脱着式になっている。またACケーブルを使わずダイレクトにコンセントへ接続できるアダプタも付属
ACアダプタのケーブルを挿し込み回す事によってロックされる。またUSBポートも付いている。iPhoneなど、USBポート経由の充電用だと思われる内箱。梱包を開けるとご覧のようにとてもPC製品とは思えない内箱が現れる内箱の更にその中も同じ質感でまとめられている。ケース付き。小さく見える2GのSDカード

 梱包から取り出した時、更に黒い化粧箱が出てきたのには驚いた。このパッケージはどう見てもPC系のものではなく高級感がある。そして箱の中も同じ質感のブラック。本体もケースに入っている。そして次にSDカードがあるので何かと思ったところ「HP ENVYガイド」が入っていた。容量的にHDDにインストールしておけば十分なのだが、ENVYブランドのイメージからこのような仕掛けになっているのだろう。同社のMini 210 Vivienne Tam Editionを男性向けにしたような趣向だ。

 14.5型の液晶パネル搭載機なので、本体のサイズは355×236×29mm(幅×奥行き×高さ)、重量約2.5kgと、それなりに大きく重量もある。カバンに入れて持ち運べない範囲では無いものの、どちらかと言えば屋内の移動が主となるだろう。

 ボディは前後左右のフチの部分のみシルバー、他はブラック。ただ同じ黒でも天板、液晶パネルの枠、パームレスト、キーボードとそれぞれ少しずつ質感が違う。特にパームレストの部分は、文字で表現し難いのだが、非常に細かいザラザラ感がありマットっぽく、滑らず感触も暖かく、とても気持ちいい。他の部分も丁寧に仕上げられており好印象だ。店頭モデルということもあり、細かい部分は量販店で実機を見て確認して欲しい。

 キーボードは、アイソレーションタイプでバックライト付き。今回掲載している写真は全てONにしているが、あまりギラギラ輝く感じではなく控え気味だ。ただそのさじ加減が絶妙でオペレーションに邪魔にならない範囲となっている。キーボード自体の質感も良く、たわみも無い。キータッチはソフト。なかなか品がある。

キーボードバックライト付属の2GB SDカードHP ENVYガイド

 液晶パネルは光沢タイプだ。デフォルトの壁紙が暗いので、ちょっと映り込みが目立つものの、色や明るさ自体は十分。バックライトOFFでもそれなりに見える。ただ視野角はあまり広い方ではない。

 ノイズ、振動、発熱、全て良好。ボディサイズに余裕があり、うまく処理できているのだろう。

 さて肝心の「Beats Audio」であるが、[Fn]+[b]キーでON/OFFできるので、その効果は簡単に確認できる。OFFだといわゆる普通のノートPCの音。ただ鳴っているだけの味も素っ気も無い音質だ。ONにすると上下左右に音場が広がり、低域から高域まで音に厚みが増す。特に中域は太くなりブラスやボーカルなどは抜群、アコースティックギター独特のツヤやピアノのタッチ感も出る。これだけ差があるとOFFにして使う理由が見つからない。更に最大音量はかなりパワーがあり、これまで触ったノートPCの中では一番。ただ、AV機器では無いので、あくまでもノートPCとしては良好な部類であり、過度の期待は禁物だ。

●独特なカスタマイズ

 OSは64bit版のWindows 7 Home Premiumnなので、4GBのメモリ空間も有効に使え、特にもたつく感じもなくサクサク動く。更に「Beats Audio」仕様とも言えるデスクトップのカスタマイズはご覧のようになかなか渋い。普通のノートPCとは一味も二味も違う雰囲気だ。壁紙だけでなく、スタートメニュー、フォルダアイコンなど、かなり細部まで手が加えられ、同社のこだわりを感じる。

 HDDはSamsungの「HM641JI」で640GBの5,400rpmモデル。パーティションはOS及びユーザーが使えるのはC:ドライブ・ワンパーティション。約573GBが割当てられている。光学ドライブはスロットイン式の松下製DVDスーパーマルチドライブ「UJ897」だ。

起動時のデスクトップ。中央にbeats audioのロゴがあり、スタートメニューなどもカスタマイズされたデスクトップデバイスドライバ/主要なデバイス。HDDはSamsungのHM641JI(640GB/5,400rpm/キャッシュ8MB)、光学ドライブは松下のUJ897、GPUはMobility Radeon HD 5650とIntel HD Graphicsが共存HDDのパーティションが4つあるものの、OSとユーザーが使えるのはC:ドライブのみで約573GB

 本機で特徴的なプリインストールアプリケーションは、「Microsoft Security Essentials」、「Adobe Premiere Elements 8/Photoshop Elements 8」、「Beats Audio」となるだろうか。

 これまでレビュー用にいろいろなノートPCを触っているが、セキュリティソフトに「Microsoft Security Essentials」が標準で入っているのは初めて見た。無料で動作も軽いため筆者も愛用している。「Adobe Premiere Elements 8/Photoshop Elements 8」は動画/写真編集の個人向けバージョン。個人用途はもちろん軽めの業務にも十分使える。

 そして「Beats Audio」は、同社のエンジニアがDr. Dreの製作スタッフとのコラボレーションで開発したオーディオソリューションだ。[Fn]+[b]キーで、その効果のON/OFFもできる。具体的にはDSPを内蔵し、そのチューニングをDr. Dreが行なっており、ミュージシャンがクリエイトした音により近いサウンドを再現できるという。更にデスクトップテーマも先に書いたように、黒を基調にしたなかなか渋い雰囲気。全体的にクリエーター用にチューンナップされた感じとなっている。

Beats AudioカスタマイズされたテーマAdobe Premiere Elements 8/Photoshop Elements 8

 ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、BBenchの結果を見たい。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 5.9。プロセッサ 6.9、メモリ 5.9、グラフィックス 6.7、ゲーム用グラフィックス 6.7、プライマリハードディスク 5.9。ハードディスクの値が5.9は5,400rpmなので一般的だ。メモリが少し遅いのは気になるが、資料によると4GB×1でシングルチャンネルアクセスになっているためだろう。

 CrystalMarkは、ALU 34,453、FPU 34,755、MEM 19,955、HDD 10,046、GDI 10,655、D2D 2,196、OGL 17,649。スペックから考えると妥当な線だ。Windows エクスペリエンス インデックスからも分かるように、バランス的には7,200rpmのHDDかSSDが欲しいところだ。

 BBenchは、内蔵グラフィックス、バックライトOFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/OFFでの結果だ。バッテリの残5%で12,879秒(3.5時間)。画面キャプチャにあるように「切り替え可能なグラフィック」で、ハイパフォーマンス時にMobility Radeon HD 5650、バッテリ駆動時にIntel HD Graphicsへ自動的に切り替えることができ、今回は後者での測定結果となる。なおオプションのスリムバッテリーを使えば、最大13時間の駆動が可能だ。

Windows エクスペリエンス インデックスは総合 5.9。プロセッサ 6.9、メモリ 5.9、グラフィックス 6.7、ゲーム用グラフィックス 6.7、プライマリハードディスク 5.9CrystalMark。OGLはかなりハイスコアだ。バランス的にはHDDは7,200rpmかSSDが欲しいところBBench。内蔵グラフィックス、バックライトOFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/OFFでのBBenchの結果。バッテリの残5%で12,879秒(3.5時間)

 


 以上のように「ENVY 14 Beats Edition」は、ゴージャスな派手さは無いものの、非常に質感の良い落ち着いたボディ、そして「Beats Audio」が奏でるサウンド、Mobility Radeon HD 5650のハイパフォーマンスグラフィック、「Adobe Premiere Elements 8/Photoshop Elements 8」など、クリエーターご用達のスペックにまとめられ、他ではあまり見られない独特な雰囲気を持っている。このレビューでグッと来た人にお勧めの1台だ。