西川和久の不定期コラム

Windows環境のボトルネックを無料でアドバイスしてくれるPC Matic



 Windowsを長らく使っていると、レジストリにゴミが溜まったり、常駐ソフトがいつの間にか増えたり、スタートアップにいろいろ勝手に入ったり……といった理由から、どんどん作動が重くなってくる。もちろんまめにメンテナンスしたり、OSを新規インストールするか、新しいマシンを購入すれば問題解決となるものの、なかなかそうも行かない。そこで今回はこのボトルネック部分をワンクリックで無料で診断、ライセンス購入で自動的に最適化してくれるソフトウェアのご紹介したい。

●ボトルネック部分を無料で診断

 今回紹介する「PC Matic」は、これまで米国のPC Pitstopが個別に販売していた、「Optimize」、「Disk MD」、「Driver Alert」、「Exterminate」、「OverDriver」を一本化したアプリケーション。各名前からもおおよそ分かるように、レジストリの最適化や不要な常住ソフトウェアを削除、TCP/IP通信の最適化、デフラグ、ドライバの自動更新、ウイルス等のマルウェア検知/駆除などの機能を備えている。一本化したことにより、一回のスキャンでさまざまな問題点を検出、即対応することができ、より便利になった。動作環境はWindows XP/Vista/7。64bit版にも対応している。

 このPC Matic、日本ではまだ知名度は低いが、欧米では昨年度2億件以上の分析、200万ライセンス出荷の実績を持つかなり有名なソフトウェア。仕掛け的に面白いのは、診断までは無料で行なえること。早速試してみることにした。

 ただ筆者が現在使っているマシンは、Core 2 Quadのメインマシンも、先日購入したThinkPad X201iも、OSはWindows 7で、CPUはそれなりに高速、メモリもストレージもそこそこなので、あまり重いと思ったことはない。そこで、今回は引退したばかりのThinkPad X31を引っ張り出した。もうかなり古いマシンなのでこれならチューンした結果が体感的にも分かるだろう。

 セットアップ自体は非常に簡単だ。同社のサイトであるpcmatic.jpへアクセス、[ダウンロード]のボタンがあるのでクリックし、「pcmatic-setup-1300.exe」をダウンロードする。後はこのEXEを実行、ウィザードに従ってインストールを行なうとPC Maticが起動するので画面右下にある「無料スキャン開始」をクリックすれば、PCの状態を調べるスキャンが開始される。

 画面構成はかなりシンプル。問題点などに応じて赤、黄色、緑、青と色分けされており、パッと見て直ぐに状況が把握できる。

pcmatic.jpへアクセスしてダウンロード。本体は非常に小さく約10MBインストール中の画面。基本的にウィザードに従い[次へ]をクリックするだけだPC Maticを起動したところ。診断とアドバイスまでは無料

 診断は、速度、安定性、セキュリティ、パフォーマンスの順で行なわれ、この古いマシンでもかかる時間は数分だ。結果を見ると、パフォーマンスとその他(ドライバテスト)の部分が赤い。さすがに長年使っていたので、レジストリ周りは悪いだろうと思っていたが、他にもいろいろ問題があるようだ。

 なおこのPC Maticは、一見普通のWindowsアプリケーションのように見えるが、IEのレンダリングエンジンを使ったSaaS型アプリケーションなので、ネットに接続できない環境や、過度にセキュリティ設定されている環境などでは動かない。

診断中の画面。パフォーマンスの測定は、昔懐かしいWindows Benchのような画面が表示される診断結果。パフォーマンスとその他(ドライバ)の部分が真っ赤だ修正/アドバイスサマリーに実際の問題部分が表示される
インターネットテスト詳細。HTTP、TCP、DNSなど、基本部分のパラメータやフラグが対象となっているレジストリのテスト詳細。長年使っているだけあって、レジストリの問題箇所はかなり多く手作業での対応は面倒ドライバのテスト詳細。チェックボックスのチェックを外すと更新対象外となる

 ご覧のようにテストの詳細を見れば、各項目の内容が詳しく書かれている。従ってパワーユーザーであれば、ツールを使ってレジストリを修正したり、該当ドライバを手動でインストールすることも可能だ。ただ筆者のケースのように、レジストリ関係の問題がかなりの数になると、パワーユーザーでもちょっと面倒だ。

 もちろんユーザーのレベルとは無関係に、この診断機能で対象となるPCがどのような状態なのか簡単に把握できるので、実行する価値は十分あるだろう。加えてインストール済みソフトウェアレポート、システム仕様レポートなどがかなり詳細にリスティングされ、メーカーサポートやPCに詳しい人とやり取りする時に便利だと思われる。

●ライセンス購入によってチューンナップが可能に

 診断結果が出て、それをベースに自動的にチューンナップするにはライセンスを購入する必要がある。ライセンスはPC 5台で49.99ドル/年(5月一杯はキャンペーン価格で$39.99/年)。現在は、ドル建てのみの対応だが、6月から4,980円/年となる予定だ(クレジットカード、コンビニ払い、Pay-easy[銀行/郵貯ATM]、Paypal)。

 個人的にはワンライセンスPC 5台は多いので、PC 3台にするか、できれば1台単位で購入できるようにしてもう少し安くならないかとは思うが、1カ月で考えると1台当たり約80円。それほど高いわけでもない。

 ライセンスの購入方法は、画面右下の「チューンナップをする」をクリックすると、ウィザードが表示されるので、指示に従い入力するれば完了となる。

ライセンス購入画面。現在ドル建てなのでちょっと違和感があるメールアドレスや住所などを入力。アカウントは、ここで入力するメールアドレスとパスワード作られるクレジットカード情報を入力。国内ではパッケージ販売していなので、オンライン決済のライセンス購入となる

 先に書いたように、PC Maticは、SaaS型アプリケーションなので実体はオンラインアプリケーションだ。従って、起動時は、ライセンス購入時に入力したメールアドレスとパスワードを使いログインする。すると、常にネットから自動更新がかかり、ユーザーは何時でも最新版にアクセスできる。

 ライセンス購入済みで「チューンナップをする」をクリックするとチューンナップ作業が連続して行なわれる。デフラグも含むので、かかる時間はプライマリHDDの容量や状態に大きく依存するが、初回は筆者のThinkPad X31で10分未満だった。2回目以降は既にある程度チューンナップ済みなので時間は短くなる。

 順序は、ジャンクファイルの削除、インターネット設定の最適化、パフォーマンス調整、スタートアッププログラムの除去、レジストリ修正、マイルウェア除去、デフラグ、ドライバ更新と言った感じで、最後の2つ以外はさほど時間はかからない。

ライセンス導入済みでPC Matic起動。右上にユーザー名やキー、期限などの表示が追加される以外は無料版と変わらないチューンナップ中。[チューンナップをする]のボタンをクリックするだけで連続的に作業が行なわれるチューンナップ後の診断結果。チューンナップ後、再スキャンしたところほぼグリーンになった

 今回のケースのように、チューンナップ後も、まだ赤い部分が残っているのが気になるが、同社によると、複合的な要因を含むものは後回しにして、確実に最適化できる部分を優先するロジックになっているからと言うことだ。定期的にチューンナップを行なうことによってさらに改善される。

 さて肝心のチューナップ前と初回のチューンナップ後で速度が変わったか、電源ONからWindowsログイン表示までと、IE8の起動(スタートページは筆者のブログ)速度を計ってみた。それぞれ00:49→ 00:47、00:15→00:12という結果になった。確かに効果がある。特にIE8に関しての3秒の差は結構大きい。チューニング前では、IE8が起動し筆者のブログを完全に表示するまで少し引っかかった感じがあったが、チューニング後では、スッと行なわれた。

 またチューンナップ後、「WORLD RANK」が下21%から下29%に向上した。このWORLD RANKは、PC Maticが動いている全世界のPC中で、自分のPCがどの程度のランクにあるかが分かる面白い機能だ。結果をクリックすると、CPU、メモリ、2Dビデオ、3Dビデオ、ディスクなど、個別のランキングが表示される。かなり古いThinkPad X31でも下29%内にあると言うのは逆に驚きだったりする。

 この結果が1台当たり約80円/月の価値があるかどうかは、個人の価値観にもよると思うが、レジストリがOSインストール直後と同様にクリーンになり、不要なジャンクファイル削除やドライバの自動メンテナンス、デフラグ、マイルウェア除去などが常に一定期間で行なわれ、精神衛生的にもスッキリするのは確かだ。

同じアカウントで管理しているマシン。筆者のメインマシンと、自宅のThinkPad T43がリスト上に表示されているスケジューラ。チューニングするタイミングなどを設定できる。リモートで他のマシンもセット可能現在SSDでもデフラグがかかってしまうので、プライマリドライブがSSDの時にはチェックを外す

 ほかにもPC Maticは、同じアカウントで管理している別のPCをリモートでチューニングするスケジューリングや、その結果履歴などを管理できる機能を持っている。画面キャプチャはThinkPad X31から操作しているものだが、他の登録してあるPCの設定もここから制御可能だ。

 スケジューリングは、例えば毎週月曜12:00AMにセットしても、その時間PCが起動していなければ実行できない。このような場合は次に立ち上げた時、適当なタイミングでバックグラウンドで実行される。従ってユーザーは一旦スケジューリングをセットすると、その実行がいつなのかを気にする必要は無い。

 オプションでは、スキャンオプションやマイルウェア ホワイトリストなどの設定が可能だ。現在デフラグはプライマリドライブがSSDでも行なわれてしまうので、これは外す必要がある。さすがに、この点については近々修正される予定になっているそうだ。

 注意する点としては、既存のセキュリティソフトとの相性と、搭載しているマルウェア検知・駆除機能がリアルタイムでは無いことだ。相性に関しては、同社のFAQのページにリストがあるので事前に確認して欲しい。また「リアルタイム検地機能」を持っていないので同社は相性の良いMicrosoft Security Essentials(無料)と併用することを推奨している。


 以上のように、PC Maticは、スキルの高いユーザーにとっては、無料の診断のみで、問題がある部分を探しだし、後はいろいろなソフトウェアを組み合わせて自分で解決することが可能だが、複雑な手順も無く、ボタン一発で全て自動的に最適化してくれるのは、そういったユーザーにとって便利なツールだ。また筆者のように、やればできるが面倒と言うパワーユーザーにも手頃な手段となる。

 SSDに対してデフラグを実行してしまうなど、若干の不都合もあるものの、「最近Windowsが重くなってきたかも……」と感じる万人にお勧めできるソフトウェアと言えよう。