武蔵野電波のプロトタイパーズ
世界の電子工作スターターキット・イタリア編
(2013/3/5 00:00)
電子工作を始めたい。そう思った人がまず躊躇するのが部品集めじゃないでしょうか。通販を利用するにしても、膨大なカタログから1個1個正しい部品を選ぶのは結構大変。ある程度慣れた人でも、部品を揃える手間を省いて、すぐに工作を始めたい時があるはず。
そんなニーズに応えてくれる電子工作スターターキットが増えています。ここで言うスターターキットとは、ある作例を実現するのに必要な部品と説明書があらかじめ1つのパッケージにまとめられている詰め合わせ商品のこと。説明書は紙の代わりにWebを参照する形になっていることもありますが、たいていはキットのどこかに記載されているURLを入れるだけですぐにスタートできるようになっています。
我々は面白そうなスターターキットをイタリア、アメリカ、中国、そして日本から集めました。実際に作りながら紹介しましょう。今回はイタリア編。次回はアメリカ、中国、日本のキットを取り上げる予定です。
電子工作初心者の視点を確保するために、今回はゲストをお招きしました。飯沢未央さんはアーティストとして「歩く心臓」や「脈動するiPhone充電ケーブル」といった度肝を抜く作品を作っている人です。造形はすべて飯沢さん本人によるもので、樹脂加工の達人といえるでしょう。内部では電子回路も使われているので、電子工作も全くの初心者というわけではないのですが、バラバラの電子部品から自分で回路を組み立てる機会はあまりなかったとのことで、今回紹介するようなキットについては初心者目線で触れていただくことができました。
それでは、イタリア代表“The Arduino Starter Kit”の箱を開けてみましょう。
2012年秋に発売されたこのキットはArduinoの開発チームによるもので、我々は本家キットと呼んでいます。Arduino用のスターターキットはSparkfunをはじめ数社から提供されていますが、本家ならではのこだわりと優位性を持ったキットと言えるでしょう。
国内ではRSオンライン、スイッチサイエンスなどで取り扱いがあるようです。我々は調達時に在庫があったRSより7,839円で購入しました。この価格は年度末セールのものなので、変更されるかもしれません。
キットの内容物は次のとおり。
- Arduino UNOボード(rev.3)
- USBケーブル
- ブレッドボード
- ジャンプワイヤ(各種70本)
- 縒り線タイプジャンプワイヤ(2本)
- 9v電池用スナップ
- フォトレジスタ(CdS×6個)
- 半固定抵抗器(10KΩツマミ付き×3)
- タクトスイッチ(10個)
- 温度センサ(TMP36)
- 傾きセンサー
- キャラクターLCD(16×2文字)
- LED(6種類29本)
- 小型DCモーター(6~9V)
- 小型サーボモーター
- 圧電素子(PKM17EPP-4001-B0)
- モータードライバ(L293D)
- フォトカプラ(4N35×2)
- トランジスタ(BC547×5)
- MOSFET(IRF520×2)
- コンデンサ(3種類13本)
- 抵抗器(7種類55本)
- ダイオード(1N4007×5)
- 半透明フィルム(3色)
- ピンヘッダ
LCDやモーターの端子は処理済みで、ハンダづけは不要です。LEDやコンデンサといった細かい部品はお店で売られているときと同じ状態で、ザラッと袋に詰められています。これらの部品をガイドブックを見ながらArduinoボードに接続して組み立てます。
ガイドブックには15のプロジェクトが載っていて、最初はLED 1個とタクトスイッチ2個からなるLEDチカチカで基本の確認。章が進むにつれ、だんだん高度になっていって、後半ではPCとの通信やモータードライバが登場します。プロジェクトごとの所要時間は30分から1時間。全く初めてという人は、第1章からスタートしたほうが良さそうですけれど、その後は、作りたいプロジェクトに飛んでしまってもたぶん大丈夫。
飯沢さんはガイドブックにザッと目を通した上で、9章と10章のゾートロープ(回転のぞき絵)を作ることにしたようです。
The Arduino Starter Kitは、その名の通りArduinoが主役。ということは、工作の過程で必ずArduinoボードにソフトウェアを書き込みます。このソフトウェアの扱いに難しさを感じる初心者は多いようで、飯沢さんも警戒してました。
実は、現在配布されているArduino IDE(Arduinoをプログラミングする際にダウンロードして使うフリーのツール)には、The Arduino Starter Kitのサンプルプログラムがすべて収録されていて、メニューからプロジェクトを選んでアップロードボタンを押すだけで、実行可能になっています。自分でソースを探して編集し、書き込める状態にする必要はありません。本家キットならではのメリットと言えますね。
The Arduino Starter Kitを体験した感想を飯沢さんに聞いてみました。
「デザインが素敵ですね。見た目の良さはやっぱり大事。ゾートロープが入ってるところがヨーロッパぽい。細かいパーツが1つの袋に全部入っていてカオスなのを見たときには、気持ちが躓きました。電線や抵抗の色が説明書と違うのは、初心者の人は困るかも。文字量が多いのも難しく見えます。でも、作り終わったら感動がありました」。
作例はまだたくさん残っていて、しばらく楽しめそうです。入っている部品の価格だけを考えると割安なキットとは言えないのですが、ガイドブック、レーザーカットされた部品、ソフトウェアといった要素の価値も考慮すると、かなりお得なキットに思えます。
世界の電子工作スターターキット・イタリア編は以上です。次回は次の4キットを紹介します。
- LittleBit Teaser Kit(アメリカ)
- SeeedStudio Glove Starter Bundle(中国)
- サンハヤト タイマーIC555を使った電子工作セット(日本)
- テクノ手芸部 羊毛フェルトでふわピカ動物をつくろう(日本)