評価が割れた「dynabook RX3」のコンセプトを東芝に聞く



dynabook RX3

 東芝の「dynabook RX3」が発表されたとき、この製品に注目していた読者は今度の製品は買いだと喜んだ人、なんで以前の製品の正常進化ではないんだ! と嘆いた方、二手に分かれたのではないだろうか。

 dynabook RX3は、全体のデザインやフォルム、仕様面などからdynabook SS RX1/2の後継モデルと言える。しかし、モバイル用途に特化したモデルに与えられる“SS”のモデルが取り払われたように、13.3型の16:9液晶パネル搭載というのは、サイズ的にも重さ的にも、従来とは違うカテゴリなのではないか? というのが、不満を感じている方々の主たる意見ではないだろうか。

 では、東芝はこのコンセプト変更を、どのように考えているのか。あるいはコンセプトの変更だとは考えていないのか。東京・青梅の事業所で本機開発のリーダーを務めた東芝デジタルプロダクツ&ネットワーク社PC開発センターPCシステム設計部の古賀裕一氏に質問をぶつけながら、東芝自身が考えるモバイルPC像に迫ってみることにしたい。

●PC環境のすべてを持ち歩く
インタビューに応じてくださった古賀氏

 まず、国内モデルの名称変更を伴うコンセプトの変化、画面サイズの変化について古賀氏に尋ねようとしたところ「いや、それは少しニュアンスが違います」と話し始めた。

 「開発側が考えていたのは、今の時代に受け入れられるモバイルPCとは何か? ということでした。“SS”という名称を変えて新しい領域にチャレンジするという意図はありません。名称変更はむしろマーケティングサイドの決定だと思います」(古賀)。

 本機のマーケティング担当者によると、モバイル性能や機能を強調し、名称にdynabook SSを使ってしまうと、かなり高い確率でネットブックが混在したモバイルPCの売り場に置かれるのだとか。もちろん、性能や機能は違うが、そうは言っても値段も圧倒的に違う。

 そこで敢えてモバイル色を薄めたネーミングにしようというのが、SSを外した理由なのだと。ただし、開発側としては従来機種と大枠でのコンセプトを変えたわけではないという。ただし時代に合わせて商品の企画は変化した。

 「高解像度のワイド画面が好まれるようになり、実際の使い勝手などを考えると、12インチではなく13インチクラスがちょうどいいという結論になりました。画面サイズが決まれば、自ずと全体のサイズも決まってきますから、モバイルPCにとって画面サイズの選択は重要なポイントです。13.3インチにすることありきではなく、使い方に沿って決めています」。

 東芝がRX1/2で反省したのは、上記のように“モバイルPCのコア層”にしか届かない製品を作るのではなく、より幅広いユーザーにモバイルPCを届けることだったことがわかるが、それはCPUの選択にも現れている。

 古賀氏は「値頃感のある価格を実現しなければならない。値頃感を引き出すには、絶対的な金額を低く抑えるだけでなく、同じコストで高性能にする事も重要」と話す。その結果、1年ほど前から他メーカーでもそうなっているように、通常電圧版プロセッサを用いることにした。

 実はCore i7/i5世代では、低電圧あるいは超低電圧版といったプロセッサを用いても、バッテリ駆動時間が延びなくなってきている。もちろん、熱設計電力は下がるため、小型、薄型のコンピュータは設計しやすいが、それによるトレードオフ(具体的には性能の低下と、それに伴う快適性の喪失、部品調達価格上昇)を考えた時、あまりリーズナブルとは言えなくなってきた。

 このため、特に小型で熱設計的に無理な場合を除けば、製品の企画段階から通常電圧版で商品をまとめようとするメーカーが増えてきている。東芝も同じ判断をしたということか? と尋ねてみると“イエス”の答えが返ってきた。

 「いくらモバイル向きと言っても、性能が落ちてしまうのは辛いという意見が寄せられていました。冷却を頑張って通常電圧版を入れられれば、それがベストなのだと考えました」と古賀氏。また現世代の超低電圧版の消費電力が大きくなり、わざわざ高価かつ低動作周波数のプロセッサを購入する意義も薄れてきたと指摘する。

筆者手持ちのRX1との比較。16:10の12.1型液晶パネルに対し、16:9の13.3型液晶パネルなので、奥行き方向のサイズ増加は僅かで、主に横方向に伸びている
有線LAN、USB、HDMI、アナログRGB、RS232C(シリアルポート)などが用意されたドッキングステーション。脱着は至極簡単PCを多数カードとDVDドライブ周辺の造形。若干、PCカードが出っ張っているが、モッコリと盛り上がっていたRX1/RX2とは異なり、ほとんど目立たない裏面は無理に全体を薄くするので滑らかな曲面で仕上げられており、メモリスロットも2段に重ねて配置する余裕が充分にある
HDDへのアクセスは実に簡単。裏蓋を空けるだけなので、ドライブの交換は自分で簡単に行なえるメモリとHDDのカバーにも、ハニカム形状のリブが配置されていた。蓋も構造物として剛性を出すことに寄与しており、製品全体の固さが従来機よりアップしている右からHDMI、USB 2.0、USB 2.0/eSATA兼用ポート。兼用ポートはサスペンド中の電源供給にも対応しており、設定の変更で指定したバッテリ残量になるまでは電源が供給される

●大型ファンを用いてフレッシュなエアを直接導入

 もっとも、13.3型に拡大されたとはいえ、冷却ファンがブンブン回ったり、手元が熱くなり、夏になると快適に使えなくなってしまうようでは問題だ。そこでRX3ではインテルと共同開発という新しいコンセプトの冷却システムを導入している。

 従来の冷却システムは、本体内に溜まっている温められた空気を外に排出し、その際にヒートパイプなどでCPUやGPUから移動させた熱を冷却フィン経由で冷やしていた。他社も含め、一般的な手法だが、RX3は大開口のエアインレットから、大口径ファンで外の空気を直接吸い込み、フレッシュなエアを冷却フィンに直接当てて冷やしてから、排出口へと空気を導いている。

 これにより冷却効率が高まり、また大口径ファンを用いたことでファン回転数を下げることにも成功。熱や騒音での不快さを感じることなく、高性能な通常電圧版プロセッサを搭載することができた。

新しい冷却システムでは直接底面の空気を吸って冷却フィンに当て、排出する排気口。以前はここに排気ファンがあったが、今は穴が空いているだけ。その奥にはヒートシンクがある

 「13.3インチ液晶採用で底面積は増えましたが、メイン基板はコンパクト化しています。この相乗効果で内部レイアウトが自由になり、この冷却構造を採用できたんです(古賀氏)」。

 もっとも、この設計を見て、何人もの人が“膝の上で使った時に、エアインレットを塞がないのか?”と心配するのではないだろうか。古賀氏は「底面を膝や柔らかい布などでふさいでしまった場合、吸気量が若干減るかもしれません。しかし、この場合は筐体のさまざまな隙間から空気が入り、外に抜けていく空気の流れになり、従来方式の冷却とほとんど同じになります。このため、従来以上に熱がこもるということはなく、動作に支障はありません」と話した。

 「Core i7のターボブーストモードでは、消費電力はほぼ35Wで張り付いて動かなくなります。それに対応しようというのですから、余裕のある熱設計にしています(古賀氏)」。

●企業向けには多様な仕様を用意。ゼロ・スピンドルの軽量モデルも

 本機はPCカードと光学ドライブを採用しているが、実は企業向けには多彩な仕様のモデルが展開されており、たとえばPCカードを省略したものや、光学ドライブを搭載しないモデルが用意されている。

 ユニークなのは、これら機能を削ったバージョンでは、アンダーシャシーの金型をきちんと変更していることだ。RXシリーズは以前から、パームレスト側がメインシャシーとして機能し(こちらに基板も組み付けられる)、アンダーシャシーは単なる蓋という構造になっていた。このためアンダーシャシーだけを入れ替えるのが容易ということはあるものの、「本体底面の形状をキレイにまとめたかった(古賀氏)」という強い意志があったからこそ実現したものだ。

RX3は底面側から部品を組み付ける裏組工程を採用しており、シャシーの上部側が強化されている。キーボード周り、ヒンジ周りに、パームレスト周りに多数のリブが配置され、剛性と強度を出している。パームレスト部のハニカム構造リブは、場所ごとにリブの高さが微妙に変化しているが、これはほんの少しでも軽量化するため、必要強度を計算した上で高さを変えている

 たとえばdynabook RX3 SM240E/3HDは、PCカードと光学ドライブを搭載せず、薄型・軽量液晶パネルとSSDを採用したモデルだ。本体の重さは1.15kgで、縦横比こそ異なるものの対角が同じMacBook AIrと比べても、200g以上軽い。

 日本では企業向けのvPro搭載モデルでのみ、このコンフィギュレーションが提供されているので、コストパフォーマンス重視であれば個人向けの方が良いだろうが、スペックはとても魅力的だ。コンシューマ向けにも、是非ともCTO発注で選べるようにしてほしいものだ。このほか、液晶パネルには通常重量版もある。その重量差はスペックを見比べる限り、100~150gといったところだろう。

 企業向けには他に、低価格な9.5mm厚ドライブを採用できるようにしたアンダーシャシーなど、多様な仕様が用意されている。

企業向けに用意されているPCカードスロット、光学ドライブともに装備していないバージョン。地域ごとに構成が異なり、日本ではこの構成は企業向けvProモデルのみで提供される。光学ドライブなし、PCカードのみ対応というもや、PCカードなしで9.5mm厚ドライブ搭載モデルなどもある。

●技術的な妥協と思われたくなかった

 古賀氏はまた「13.3インチを選んだことを技術的妥協と思われたくなかった」とも振り返っている。13.3型の液晶パネルになり、1.1型対角が増えれば、その分、各種の部品を詰め込む空間は増える。古賀氏としては、12.1型でも同じ性能のPCにできた自信はある。このため、より大きなサイズとすることで楽な道を選んだと思われたくなかったという。

 このため13.3型にすることで生まれたスペースに、ステレオスピーカーを入れ、タッチパッドサイズを可能な限り大きくし、タッチパッドをやや左(キーボードホームポジションが中心に来るよう配置、以前は本体の中央だった)に、またタッチパッドをオフにするボタンを取り付けるなど、12.1型のデザインでは入れたくとも入れられなかった要素を詰め込んだと話す。

 また「(単なる仕様違いではなく)最初から光学ドライブ、PCカードなしという条件で、超薄型・軽量機を本機で作り込んだら、どこまで薄型・軽量になるのか。挑戦してみたい気持ちはありました(古賀氏)」そうだが、コンシューマ市場からのニーズが強く、光学ドライブが搭載できない製品の設計には踏み込めなかった。

 もっとも良くないのは、モバイル機なのか、パフォーマンス重視なのか、どっちつかずになることだ。しかし、本機の場合はパフォーマンスを優先した上で、薄型化をどこまでできるかを追求しているのが製品全体から見えてくる。古賀氏の心配は杞憂だろう。

●意外に長持ちなバッテリ駆動時間

 さて、バッテリ駆動時間については、別途、Hothotレビューにも掲載されているが、もう少しザックリと実利用時の感覚で言うと、無線LANでネットワークに接続した状態でブラウザやメーラー、他、各種原稿執筆用ツールなどを普段の仕事と同じように使ってみたところ、輝度を一番暗いポジションから2段階上(レベル3)に設定している時で、おおよそ6時間ぐらい。輝度をレベル2に落とせば30分伸び、レベル4に上げれば30分短くなる。

 いずれも25%電力が減るまでの時間から逆算した大まかな数値だが、特に電力を大きく消費するような高負荷のアプリケーションを動かさない限り、おおよそ上記のような傾向のバッテリ持続時間になると思う。

 ちなみに輝度レベル3は室内で使うには問題のない明るさで、レベル2に下げるとやや暗め、レベル4だとかなり輝度に余裕が感じられるようになる。RX2に比べても遜色なく、筆者が所有しているRX1が新品だった頃を思い出すと、13.3型かつ通常電圧の高速プロセッサである本機の方が実際に外に持ち出して使った際のバッテリが長持ちする印象だ。

 スペック値も6セル11時間と、RX1の10時間より伸びているので当然ではあるが、そのスペック値よりも良好に感じられるのは、パフォーマンスが向上した分、アイドル時間が長くなっているからかもしれない。

 なお、本機にはEcoモードへの切り替え機能があり、Windowsの電源プロファイルをEcoに切り替えると、東芝製のユーティリティが起動して、ハードウェアの細かな部分まで動作を省電力に切り替えてくれる。

 AC利用時には40ワット近くになることもある本機の消費電力は、バッテリ駆動時にデフォルトの「バランス」電源プロファイル時には8~12ワット程度まで下がり、さらに「Eco」に切り替えると8ワット前後で安定する(輝度レベルが3の場合)。

 13.3型モデルではあるが、12.1型クラスとは、さほど大きな消費電力の差はない程度に抑え込まれているようだ。なお、AC使用時の冷却ファンの音は、RX1/RX2よりも低く抑えられており、新しい冷却システムがうまく機能していることが確認出来た。

 底面積こそ画面サイズに合わせて大きくなっているが、モバイルPCとしての基本的な使い勝手には大きな差はなく、大幅に高速化され、ディスプレイが見やすくなった分だけ商品としての魅力は高まっていると思う。

●パーソナルなビジネスツールとしてはベストの1台

 他社の製品も含めて俯瞰してみると、RX3は意外にユニークな製品だ。12.1型クラスには本機と同じく軽量・長時間バッテリ駆動指向Let'snote Sシリーズ、同画面サイズだとより強力なGPUを搭載しエンターテイメント指向の強いVAIO Zシリーズがある。

 しかし、Let'snote Sシリーズに対しては薄さと画面サイズ、それにeSATA/USB兼用ポートを設けるなど拡張性面での差違があり、VAIO Zシリーズに対してはGPU性能や搭載ドライブなどの面では及ばないものの、約400g軽量という利点もある。実際に比較検討する方は、VAIO Zシリーズではなく、Let'snote Sシリーズと比べる人が多いのではないだろうか。

 筆者自身オーナーであったRX1(あるいはRX2)の頃は途中で改良が入って筐体を強化したようだが、それでも全体に華奢なイメージは拭えなかったが、RX3ではその点が大きく改良され、実際に手にしてみると感覚的にも剛性が上がっているのを感じる事ができるほど“硬く”なっている。

 東芝によると、企業向けにもとても好評で予想以上に出ているとのことだが、パーソナルユーザーでも、仕事に利用する道具としての利用ならば、ベストな製品の1つだと思う。とても細かな話だが、サスペンド時のUSBポートからの電源供給に関して、バッテリ残量で供給の可否を決める機能が入っている。外部機器の充電器代わりにコンピュータを使って、肝心の時にPCが使えなくなることを防ぐための設定だが、こうしたユーティリティがさり気なく入っているのは東芝らしい。

 ただし、完璧とも紹介するつもりもない。上記のようにライバルとの違いは主に性格やコンセプトの違いで、どこかが突き抜けているわけではない。

 最後に個人的な感想として、キーボードに関する意見を付け加えておきたい。あくまでも個人的なものなので、異なる意見もあるかもしれない。

 あらかじめ断っておくが、RX3のキータッチは従前よりかなり良くなっている。各キーがセパレートになったことで隣り合うキーと干渉しにくく、シャシー剛性が向上したことでキータッチのフィーリングも改善している。個人的にも好きなタッチだ。

キーボードの縦ピッチをRX1とRX3で比較。RX3は約1mm程度、縦ピッチが狭くなっていた横方向のサイズは余裕ができたため、変則ピッチはなくなった。余った分、Enterやバックスペースなどのサイズが拡大してある

 しかし本機を試用中、そうしたタッチの良し悪しとは別に、ちょっとした違和感を感じた。サイズアップしてキーレイアウトに余裕があるはずなのに、縦方向に詰まって感じられたからだ。そこで測ってみたところ、RX1/RX2が縦17.6×横19mmのキーピッチなのに対して、RX3は縦16.6×横19mmのキーピッチだった。RX1/RX2は一部キーが縦長の変則ピッチに対してRX3はピッチが均等というプラス面はあるものの、縦ピッチが詰まっているために指を動かす角度が変化し、違和感をもったというわけだ。

 RX3はRX1/RX2よりも奥行きが増えているが、その分はパームレストとタッチパッドの面積を増やすことに使われている。ではキーボードに割り当てられた縦サイズは小さくなったのか? というと、これがどちらも106mmで全く同じ。キー配列も基本は同じなのだが、キーの置き方の細かな部分の差が積み重なって、縦ピッチが小さくなってしまっているようだ。これは残念。

 昨今は縦の詰まった変則ピッチを採用するモデルが多いため、これでも構わないという方も多いと思う。また数十分も使い続けていれば、違和感はかなり減ってくる。とはいえ、店頭などで評価する際には、その点に違和感がないか気をつけてみるといいだろう。

●補足:鋳造と削りだし

 本質的には“RX3の話”というわけではないが、日本のPCメーカーが得意とするマグネシウム合金ダイキャスト(鋳造)と、Appleが全面的に製品で採用しているアルミ押し出し材からの削りだしの違いについて、古賀氏といくつかのやり取りをした。

 質問は、削りだしを行なうマシニングセンターの方が、仕様変更や金型寿命などを考えた時にコスト的に安くなるタイミングに来ているのでは? というものだった。それぞれ全く異なる工法なので単純比較は難しいが、マシニングセンターであれば部品の仕様変更やちょっとしたマイナーチェンジで金型を変える必要もなく、プログラムの入れ替えで対応できるなどの利点もある。

古賀氏が拘ったマグネシウム合金ダイキャストでの質感。ヘアライン処理後に塗装することで高級感を引き出そうとした

 古賀氏は「ほとんど変わらないというレベルには来ています」と話す。別のメーカーのエンジニアからは“まだダイキャストの方が安い”という意見も伺っている。筆者が取材した複数のエンジニアは、ほぼ変わらないか削りだしの方が安いと考えていた。いずれにしろ、条件によって逆転する可能性もあり、コスト面では拮抗しているという言い方が正しいのかもしれない。

 では、なぜマグネシウム合金ダイキャストに拘るのか? と質問してみると「軽量に仕上がるからです。アルミとマグネシウム合金は物性は異なりますが、同じ厚みならば同等の強さと評価できます。しかし、マシニングセンターでは、鋳造と同程度まで薄く仕上げることはできません(古賀氏)」との答えが返ってきた。

 アルミ材料でも板をプレス加工した部品ならば、薄く軽量に仕上げることは可能だ。これまでも、そうした部品を使った製品はあったが、アルミは薄くすると筐体にエクボができやすいなどの問題があった。これはおそらく削り出しでも同じだろう。薄くしすぎると問題が出てくる。その点、マグネシウム合金の方が軽量化する上では使いやすいのだろう。

 いずれにしても、長所、短所ともにあるが、筐体として軽量に仕上げることができるのはマグネシウム合金ダイキャストという点では、東芝だけでなくさまざまな電機企業のエンジニアの一致した意見だった。(最軽量を目指さないのならば、アルミ削り出しの生産体制に切り替えるコスト面での障害はない。製造パートナーとして囲い込む工場を変えれば対応できるため)

 ただしマグネシウム合金ダイキャストは、見た目がチープになりやすい。手で触った触感も、どこか硬質のプラスティックにように感じるところがある。そこは古賀氏も意識しているようで、RX3でマグネシウム合金ダイキャストにヘアライン処理を施し、その上に耐久性の高い硬質のブラック塗装を施したたのは、アルミに近い質感を実現したいためだったようだ。

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(2010年 8月 3日)

[Text by本田 雅一]