99,800円のゲーミングノート「Alienware M11x」



品名Alienware M11x
購入価格99,800円
購入日2010年4月22日
使用期間約3週間

「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです。

 デルのゲーミングブランド“Alienware”から、2月に発表されたモバイルゲーミングノート「Alienware M11x」を購入した。

●購入に至るまで

 購入のきっかけは実に単純で、「衝動買い」だ。というのも、PC Watch編集部でW氏がVAIO Zを購入し、Y氏がdynabook SS RX2を購入したので、ノートPCをリフレッシュしたくなったからだ。

 両氏がともにそのような選択肢だと、筆者も負けじと「8時間駆動」ができるノートが欲しい。しかし、W氏が購入したVAIO Zは30万円台で、Y氏が購入したdynabook SS RX2も20万円台。貯金はあれど個人的にはやや手が出しづらい価格帯だ。そこで、10万円台のノートを前提に買うことにした。

 GPU搭載を選ばないのであれば、CULV搭載ノートは選択肢が多く、価格帯も59,800円からある。しかしGPUを必要としないビジネスアプリケーションがメインなら、別に今のAtom搭載のVAIO type Pに大容量バッテリを積んで、そのまま使い続けていれば良いという話になってくるので、まずGPU非搭載モデルを選択肢から外した。

Aspire Timeline 4810T

 とすると、10万円台でGPU搭載、8時間駆動を謳うノートとして候補に挙げられるのは、日本エイサーの「Aspire Timeline 4810T AS4810TG-A23」がある。同機は、Core 2 Duo SU9400(1.40GHz)、2GBメモリ、320GB HDD、Mobility Radeon HD 4330、14型ワイド液晶、そして光学ドライブを搭載している。

 一方、もう1つの候補であるM11xは、Core 2 Duo SU7300(1.30GHz)、4GBメモリ、250GB HDD、GeForce GT 335M、11型ワイド液晶、光学ドライブなしという構成だ。

 スペック上での違いとしては一長一短で、4810Tはメモリが2GB少なく、GPUがやや弱い代わりに、光学ドライブ付きで、CPUのクロックが高く、HDD容量と液晶が一回り大きい。一方M11xはHDDこそ少ないものの、高速な7,200rpmタイプ。そしてGeForce GT 335Mを搭載しているほか、メモリ4GBでOSが標準で64bitというアドバンテージを持っている。

 というわけで、4810TとM11xのどちらを買うか迷ってしまったが、後は店頭で見て、感触がよく、欲しいと思った方を買う、ということにした。

 なお、デルは直販がメインなので、実際製品に触れられる機会は少ないと思われるが、リアル・サイトや、一部のビックカメラなどで実際の製品を展示しており、手に取ることができる。最近はAlienwareに本腰を入れ始めたのか、ビックカメラやソフマップ、パソコンショップアークなどでも展示しているため、購入前に一度見ておく価値はあるだろう。今回はビックカメラ有楽町店で見て購入することにした。

 また、購入後の話だが、ASUSから「U30Jc」が同価格帯で登場した。Core i5-430Mという強力なCPUを搭載しているのが特徴だ。もうM11xを買ったのでどうしようもないのだが、GPUではなくCPUを重視するユーザーは、これも選択肢に入れると良いと思う。


●決め手はやはりデザインとGPU
Alienware M11x

 Alienwareのデザインといえば、とにかく派手なフォルムで、あちらこちらにイルミネーションやギミックが散りばめられていることは、本誌の読者ならばすでにご存知だろう。もちろんこのデザインこそが、Alienwareブランドの好みの分岐点ではあるのだが、PCのコモディティ化が進んでいる中で、もっとも有力な差別化方法ではないだろうか。

 M11xのデザイン上の特徴は、宇宙人を彷彿とさせる天板の凹凸やロゴ、色が変わるバックライト付きキーボードやイルミネーションだ。ゲーミングを強く意識したデザインなわけだが、11型サイズでここまでのギミックを詰め込んだのには感心した。デザインについての詳細は後述するが、「どうせGPUを搭載していて、ゲームができるPCなら、傍からみて楽しそうにプレイしているように見えるデザインがいい」と思った。

 さらに、ゲームにおいてGeForce GT 335Mの搭載こそがM11xの大きなアドバンテージだ。近年のゲームはGPU処理に特化しており、CPUが快適動作の要素を占める割合がだんだん減ってきている。より高性能なGPUを搭載してスムーズな描画を行なおうという、「ゲーミング向け」という開発者の意図が、よく製品に反映されていると思う。

 購入意思決定までの前置きが非常に長くなってしまったが、ポイントをまとめると、8時間駆動/GPU付きで10万円以下、どうせGPUがついているならゲームもやりたい、ゲームやるならゲーミングらしいデザインがいい、という流れで、M11xの購入に踏み切った。

●店頭での購入から製品が届くまで

 M11xはリアル・サイトや一部店頭でも実物を見られるわけだが、すぐにその場で持ち帰れるようなパッケージにはなっていない。今回のように店頭で購入する場合は、店員と一緒にスペックや契約内容を確認しながら、その場でWebサイトで発注することになる。普段デルを発注する場合は自分でホームページから注文する人が多いと思うので、今回はあえて店頭で購入してみた。

 今回チョイスしたスペックは標準構成のままのパッケージで価格は99,800円だ。HDDは250GBで十分だし、8GBメモリのオプションはやや割高だ。CPUやGPUは固定仕様で変更できないし、とにかく標準構成のままが一番シンプルで、ゲームをやるのには十分だと判断した。本体色は店頭で見て感じがよかったルナ・シャドウにした。

 店頭での注文は、携帯電話のキャリアと契約する時に似ており、注意点などを店員が丁寧に教えてくれる。例えば、製品到着までにホームページで製品の製造/運輸ステータスを確認する方法や、購入後10日以内に製品に不満があった場合に返品できる「トータルサティスファクションポリシー」などについて、わかりやすく説明してくれる。

 後は、レジで会計を済ませれば完了で、オーダーステータスを見ながら製品の到着まで待つ。なお、店頭で注文した場合、オーダーNo.は発行されないので、紙に書かれた「お客様注文番号」と自分の電話番号を入力する必要がある。この時に注意したいのは、お客様注文番号は「JP」とハイフン(-)を除いた番号であり、これらを入力してしまうとうまく検索できない。

 店頭では、受注後2~3週間で製品が到着するという説明を受けたが、実際のところ4月12日に店頭受注して、4月21日に製品が到着した。オーダーステータスを見ると、製造に6日、運送に4日かかった。デルはフルオーダーメイドのPCなので、予想外に早かった。

 余談だが、オーダーステータスで「出荷日」が確定された翌日から、「出荷日(詳細)」に変わってリンクが貼られ、運送業者の荷物の番号で追跡システムが利用できるようになる。何時に届くか不安な場合は、確認してみると良いだろう。

デルのオーダーステータスは、発送日が決まった翌日に、荷物追跡サービスへのリンクが付く

●光るギミックが全て

 というわけで、早速届いた本体から見ていこう。と言っても、既に本製品の詳しいレビューは別記事で紹介されているので、ここでは個人的に使って思ったことを述べていく。

 まず箱を開けて思ったのは、「付属品が意外と少ない」点だ。こういったゲーミング向け製品の場合、説明書やドライバのみならず、せめてシールの1つや2つ、キャリングケースなどが付属するのだが、本製品はさすがに10万円を切っている廉価製品のためか、特典は一切なかった。それでもマニュアルとCDが入ったパッケージに工夫を凝らしたり、PCを包む薄い包装にAlienwareのエンボス加工が施されるなど、ある程度のプレミア感に対する配慮はみられる。

 本体に目をやると一番かっこいいと思うのは本体左側面。前から後ろにかけてストレートに伸びる筐体は、斜めになっていることが多い近年のノートPCからすると新鮮だ。こと左側面に関しては、ミニD-Sub15ピン、USB 2.0、Ethernet、HDMI、DisplayPort、カードリーダ、IEEE 1394が整然と並んでいて、メカっぽさを感じる。DisplayPortに関しては、このサイズのノートどころか、デスクトップですら装備しているものが少ないので、デルの「3008WFP」を所持している筆者からすれば評価が高いポイントだ。

本体左側面。インターフェイスが豊富でメカっぽさを感じる本体右側面はシンプルだ本体背面にDC入力と排気口がある

 なお、カードリーダのSDカード/MMC/メモリースティックカードリーダの上には、小さなスロットがあるが、これは説明書によればSIMカードスロットのようだ。米国ではオプションとしてWWANモジュールがサービスとともに提供されているので、おそらくそのためのスロットであろう。国内向けのモデルではここにSIMを挿しても何も動作しない。

 インターフェイスが集中する左側面とは対照的に、右側面はヘッドフォン端子×2、マイク入力、USB 2.0×2しか備えていない。ヘッドフォン端子が2基あるのは、友人と共有するためだろうか。

 地味なところで気に入ったのは背面排気という点だ。これにより、左利きでも右利きでも、マウスを持っているときに熱風にさらされることはない。また、寝そべって操作するときに、左を下にしても右を下にしても排気口を塞いでしまうことはない。よく考えられた構造と言えよう。

 なお、ファンはGeForceを利用した状態では、ゲームプレイ中に高速に回転するため、騒音はかなり大きい。筆者が購入したものの個体だけかもしれないが、最高回転に達すると、まれに軸がぶれたような異音がする。昼間ゲームに没頭しているか、ヘッドフォンをしていれば気にならないとは思うのだが、深夜にプレイする場合は周りにも注意したほうがよさそうだ。

 天板はなんとも表現しがたい形だが、「エイリアンっぽい」凹凸がつけられており、中央にエイリアンの頭のロゴがある。このロゴの目も動作中は白に光るようになっている。M15xやM17xではメタル筐体を採用するが、M11xではプラスチックに近い感触だ。筆者が選んだのはルナ・シャドウは、わずかな光沢を残しており、M15xやM17xとは一味違う高級感があるように思う。

天板に凹凸のあるデザインが施されている部屋を暗くすればイルミネーションがより目立つ部屋を暗くした場合のキーボードの視認性はよい

 パームレスト部はかなりザラザラとした梨地仕上げで、これはプレイ中に手に汗をかくことで滑るのを防ぐためだろう。パームレストの温度は、ゲームプレイ中は左手側が少し高めで、右手側はかなり抑えられている。W/A/S/Dキーを多用するアクションなどでは、右手はマウスを操作するので、どうせなら冷却スポットを逆にして欲しかったところだが、このサイズでは致し方ないのかもしれない。と言っても、個人的に気になるほど熱くなるわけでもない。

 キー配列はほぼフルに近く使いやすい。筆者はもともとEnterキーの右に、Home/PageUp/PageDown/Endなどのキーが来るのを嫌って敬遠していたが、本機に限って言えば、十分なキーピッチを確保されているので、気になることはなかった。

 液晶は光沢タイプで映り込みがあるが、筆者は普段、家の直接照明を落として間接照明を使っているので、問題にはならない。液晶上部のWebカメラの窓までハニカム構造にこだわっているのは、面白いポイントだと言えよう。

 次に光るギミックについて。液晶を開けてからも、目に留まる光るポイントが5つある。1つ目は電源ボタンにもなっているエイリアンのロゴ周辺、2つ目はキーボード、3つ目は無線LANなどのインジケータ、4つ目はパームレスト手前の左右2カ所、そして5つ目は液晶下の「ALIENWARE」と書かれたロゴ。これらのイルミネーションは、「AlienFX」ユーティリティで、別々の色をカスタマイズできるようになっている。

 このうち電源ボタンとインジケーターは、消灯を含む20色の中から1色固定でしか設定できないが、残りは異なるカラー間の過度グラデーションやパルス点滅などが可能になっている。なお、AlienFXの簡易設定では、2色のグラデーションを設定できるが、例えば赤から緑へ変化するときは、なめらかに変化するが、緑から赤へ戻る時は一瞬で切り替わってしまうため違和感がある。こういう場合は詳細設定をONにし、緑から赤に戻すアクションを追加すれば、なめらかに戻るようになる。また、アクションは2つに限らずさらに追加可能なので、さまざまな色のグラデーションを楽しむことが可能だ。

 本体底面の大きな吸気口から覗くファンは、動作中キーボードのバックライトともに光り、これまた格好良い。自作のデスクトップPCにおいて、ファンが光るというのは割合と当たり前のようになっているが、ノートPCで光るのは他に例を見ないだろう。本体底面は使用中は拝める機会もなく、無駄といえば無駄だが、「友達に自慢するときは真っ先にファンを見せる」、「見えないところのオシャレ」として、所持する喜びを感じる。

照明を落とせば液晶の映り込みは気にならないパームレストの手前のイルミネーションも良いアクセントになっている
底面のファンもキーボードバックライトと同じく光るAlienFXの設定画面。詳細設定でアクションを追加すればなめらかなグラデーションを楽しめる

 ちなみにデフォルトでは、Intel CPUを搭載したノートらしく、青に設定されているが、筆者は現在すべてピンクと黒(消灯)のループに設定している。夜間使っていて一番「妖しい」色だ。

 なお、電源と無線などのインジケータを除くイルミネーションは、Fn+PrintScreenキーでまとめてOFFにできる。公の場に持っていく場合、さすがに付けっぱなしにするのは恥ずかしいと思う人は、これでイルミネーションをOFFにすれば、(天板側を見ない限り)飾りっけが一切ない普通のノートPCとして見えるので、周りに気づかれることなく使える。もっとも、筆者はゲームが中心なので、常時ONだ。

●揃えておいたほうがいいもの

 M11xを購入して、早速ゲームを外出先で楽しみたいわけだが、その前に快適にプレイできる環境を揃えておきたい。

今回購入した「SE-T084M/RSWD」

 まず1つ目は光学ドライブだ。本機は光学ドライブを装備していないため、インストールをネットワーク経由でやり、HDDのみから起動できるものならいいが、起動時に光学メディアを必要とするタイプのゲームはプレイできない。不幸なことに筆者が所持しているゲームの大半はそれで、Need For SpeedシリーズやAssassin's Creed、ストリートファイターIVなど、いずれも光学メディアを要求する。

 そもそもM11xはMMORPGなど、オンラインタイプのゲームをメインターゲットにして開発されており、このタイプのゲームならほぼ光学メディアを必要としないので、問題なく動くのだが、筆者は最近MMORPGを大してプレイをしていない。なので、USBタイプの光学ドライブを購入することにした。

 購入したのはSamsungの「SE-T084M/RSWD」で、ツクモDOS/Vパソコン館で3,980円だった。安価ながらもLightScribe対応、スロットイン式でありながら8cmメディア対応となかなか特徴のあるドライブで、良い買い物だと思う。本体は420gとやや重く、持ち運びには向かないが、外出先に頻繁に持ち運ぶわけではないので問題ない。


ロジクールの「G9x」はルナ・シャドウによくマッチングする

 ゲームをやるならマウスも必要だ。デスクトップの代わりに使うのなら、ロジクールの「G9x」が最適解だろう。ルナ・シャドウ色と微妙にマッチングするラバーのシルバー色、カスタマイズ可能なLEDなど、まさにM11xにぴったりと言える。というわけで筆者も手持ちのG9xを利用している。


 よく持ち運ぶのなら、ACアダプタからコンセントに直挿しできるプラグも購入することをおすすめする。本製品のACアダプタは、外国ベンダーのPCで多く採用されている3ピン、俗にいう「ミッキータイプ」のもので、信頼性重視のためかコードが太く重く、持ち運びには向かない。20cm程度の短いものか、ACアダプタに直付けできるタイプのものを用意するだけで、ポータビリティが向上する。量販店などで650円程度で入手可能だ。

 当初は、会社と家用にACアダプタをもう1台追加購入しようとしたのだが、デルに問い合わせたところ「M11xは出たばかりの製品なので、ACアダプタはまだ用意していない」という返事だった。ACアダプタには、「PA-12 Family」と書かれていて、社内の別のPCで同じPA-12のアダプタを接続したところまったく問題なく動作したので、バッファローコクヨサプライなどから発売されているACアダプタでも利用できるはずなのだが、対応情報はまだないし、どうせなら純正品が欲しいと思い、諦めて待つことにした。

ACアダプタからコンセントに直挿しできるプラグACアダプタは「PA-12 Family」なので、同等品で利用可能なはずだが、現時点では用意されていないそうだ

●手持ちのゲームを試す

 環境が整ったところで、手持ちのゲームをいくつか試してみた。なお、プレイ前にデルのドライバダウンロードサイトを調べたところ、ベータ版のディスプレイドライバ「197.12」が4月20日付けで登録されていたので、これを適用して試している。これを適用したところ、筆者の環境でサスペンド復帰時に画面が明るくならないなどの問題が解消されたので、同じ問題を抱えているユーザーは試してみるとよいだろう。

 なおいずれのタイトルも特に断りがない限り、1,366×768ドットのネイティブ解像度でプレイしている結果として評価している。

シーンによっては重く感じる「ストリートファイターIV」

 まずは手始めに“軽い”タイトルの「ストリートファイターIV」をプレイしてみた。ディテールは全て最大にした。ところが不思議なことに、最初のプレイは56fps前後のフレームレートで対戦できるが、超必殺でK.O.したりすると40fpsを割るシーンも出てくる。完全に快適にプレイできるとは言い難いだろう。

 また、キーボードの「S」と「X」が同時入力できない問題にも遭遇した。100%入力できないわけではなく、たまに入力できるのだが、セービングアタックが出せないのは結構痛い。もっとも、本来こうした格闘ゲームはコントローラを繋げて遊ぶべきタイトルなのかもしれない。


「Assassin's Creed」は割合と快適

 次に「Assassin's Creed」を試した。こちらはインストール時に、CPUのクロックが不足していると怒られるのだが、試してみたところ最大ディテールでもプレイできるレベルだった。もちろんハイエンド環境に比べると多少カクついたりするが、ゲームに没頭できるぐらいな快適性は保たれている。おかげで2回目のクリアにたどり着いた。


光学ドライブなしでも起動するので、外出先でも気軽に遊べる「UnrealTournamnet 3」のはずだが、快適に動かなかった

 続いて「UnrealTournament 3」を試してみた。こちらは出てからかなり時間が経つタイトルで、ベンチマークの際にも「軽いタイトル」と評価されがちなのだが、M11xでディテールを最小限に抑えても、残念ながら快適にプレイすることはできなかった。

 おそらく、体験版より製品版のほうがよっぽと重いグラフィックス処理が行なわれていて、さらにGPUパワーよりも、CPUパワーのほうが足りていないことが原因だろう。プレイ時に光学メディアが不要なタイトルで、どこでも楽しめると期待していただけに、やや残念な結果となってしまった。

 また、せっかくGeForce GT 335MでPhysXが使えるので、Patch 5とNVIDIAが配布している「PhysX Mod」を入れてみてプレイしてみたが、とてもプレイできるレベルには達せなかった。最新スペックのマシンでUnrealTournament 3は軽いと評されても、M11xにとっては荷が重いタイトルだと言わざる得ない。

 昔よくやっていた「FINAL FANTASY XI」(以下FFXI)を引っぱりだしてインストールし、やってみたが、こちらは影の処理を「リアル」ではなく「簡易」にしている限り、特に問題はない。やはり最新スペックと比較すると完璧にスムーズに動くわけではないが、基本的に刀を抜いたらゆっくりコマンドを選んでいくゲームで、そうタイミングにシビアではないので、プレイには問題ない。

 ただしFFXIをプレイして気づいたのだが、AlienwareにはNumLockがなく、キーボードをテンキーとして扱うことができないため、標準のキー配列では移動すらできない。FFXIには、テンキーなしキーボード用のキー配列がコンフィグで用意されているのだが、このコンフィグを開くには必ずテンキー側の「-」キーを押す必要があり、NumLockができない本機ではそもそもメニューが開けないというワナがある。

 一番手っ取り早いのはコントローラを繋げて操作してしまうことか、テンキーをとりつけてしまうこと。これらを持ちあわせていない時は、ホイール付きマウスをとりつけて、マウスのホイールクリックを利用すればいい。筆者は後者で対処した。いずれにしても、FFXIの初回プレイ時はいずれかを取り付けなければならないのは、やや不便だ。

「FINAL FANTASY XI」。息の長いMMORPGだイー・モバイルで通信環境を整えていれば、カフェなどでもプレイできる

 このほかにも、「Far Cry 2」をインストールして軽く試したのだが、最大ディテールでもほぼ問題ないレベルでプレイが可能だった。そして「DiRT 2」の体験版を入れてみたが、こちらは最高のグラフィックス設定でも27fps前後を維持し、レースをやる分には支障がなかった。

 筆者が好きな「Need For Speed Carbon」は、キー入力時に画面が一時停止するバグに遭遇し、残念ながらプレイできるレベルではなかった。

 一通り手持ちのゲームを試した感想としては、最新のゲームのほうが、GPU処理の分が多いためか、意外にそこそこプレイできる、逆に昔のゲームのほうがCPU処理が多いためか、思ったように快適ではない。また、タイトルによってはプレイできないゲームもある、といったところ。

 いずれにしても、最新の高スペックのデスクトップPCやノートPCと肩を並べるほど、オフラインゲームを快適にプレイできるわけではない。むしろ「2kg以下のノートで、これだけメインストリームのゲームが楽しめる」ということに感謝すべきだろう。

 やはりM11xはオンラインゲームを楽しむものだと捉えるべきかもしれない。実際に、M11xの製品ページには、「GNO3」動作検証済み推奨パッケージが用意されている。このことからも、一線級のハードウェアを前提にして開発されたゲームよりも、こうしたミドルレンジのハードウェアをターゲットにして開発されたオンラインゲームが前提だろう。

 その点を差し引いても、99,800円の構成で、オフラインゲームが動かせるというのは評価できる。実際、GeForce GT 335MをOFFにし、チップセット内蔵のビデオ機能でゲームをやってみたところ、そもそも画面が真っ暗なままだったり、とてもプレイできる速度に達せなかった。

●Tips

 本機を利用する上でいくつかのポイントを記しておこう。まず、NVIDIAやIntelの公式Webサイトから落とせるディスプレイドライバには対応していない点だ。スイッチャブルグラフィックスを採用した機種の制限だが、本機も例外ではなく、デルのサイトから落とす必要がある。ただし、さすがゲーミング向けのAlienwareブランドというべきか、割合とドライバの更新に関しては積極的なようで、先述の197番台のドライバは、4月20日時点でスイッチャブルグラフィックスを搭載している機種の中で提供しているメーカーは少ない。

 なお、提供されているドライバは、NVIDIAとIntelのドライバが1つのパッケージになっており、入れると双方が更新される。このため、「Mobile Intel 4 Series Express Chipset Family」のドライバのプロパティをみるとプロバイダーがNVIDIAになっているが、NVIDIAに聞いてみたところ「パッケージングしたのがNVIDIAなので、そういった表記になっている」そうで、バグというわけではない。

 液晶の発色は、外資系メーカーらしいといえばらしいのだが、どちらかというと青っぽく、コントラストも低めだ。そこで筆者は、チップセット内蔵GPU利用時は、グラフィックスのプロパティの色補正の設定で、青の明るさをやや抑えめにし、赤のガンマ値を上げている対処している。

 一方、GeForce GT 335M利用時は「NVIDIA コントロール パネル」でもう少し柔軟な設定が可能になるので、「ディスプレイ カラー設定の調整」で、青の明るさを抑えつつ、赤/緑/青全てのガンマを上げて、さらに「デジタル バイブランス」を73%に設定して対処した。ことデジタル バイブランスに関しては効果が非常に高く、画像が一気に鮮やかになる。デスクトップPCで使うことの少ない機能だが、ノートにおいてはかなり有効だと感じた。

IntelのディスプレイドライバをNVIDIAがパッケージングしているので、プロバイダーはNVIDIA表記「NVIDIA コントロール パネル」では色調を細かく調節できる

 あと、M11xにしかない非常にユニークな点として、BIOS上にオーバークロック項目が用意されていることだ。そうは言っても実際は簡単でBIOSに入り、「Advanced」タブで「OverClock」をEnableに設定するだけで、ほかに細かい設定があるわけではない。Enableにすると、CPUのクロックが1.60GHzに向上する。もちろん保証外の動作だろうが、Alienwareらしいポイントと言えよう。

●99,800円のゲーミングオールインワン

 というわけで、M11xと約3週間お付き合いしてきた。発表会にも持って行ったりしたが、700gのVAIO type Pに慣れた筆者には1.99kgはやはり重く、メインはゲームということで割り切って使うことにした。ただ、出張などでは持っていくことになるだろう。

 また、さまざまな人に見せたが、反応もさまざま。意外にもウケが良かったのは女性陣で、カバンから出して開いた途端「カッコいい」と口を揃える。それもそのはずで、いきなりあっちこっちが光るノートPCを見てビックリしない人はいないだろう。また、丸みを帯びたフォルムのノートPCが多い中、バリバリに角張ったデザインも、カッコいいと言われる理由の1つだろう。

カフェやファーストフード店、友人の家など、さまざまな場所でゲームをプレイできる

 一方、ゲーミング性能やデザイン性は差し引いて普段使う分にも、他のCULVノートと同等以上の性能を備えている。Alienwareと言うと、どうしても「デザイン」に目が行きがちで、もちろんM11xも例外ではない。しかし、デザインを除いても、M11xは99,800円からという低価格と最長8時間39分のバッテリ駆動といった、他のCULVノートにもあるポイントをきちんと押さえながら、GeForce GT 335Mや7,200rpmのHDD、多彩なイルミネーションといった付加価値がある。

 「99,800円でミドルレンジのゲームが動くPCを自作せよ」という観点からしても、OS代やディスプレイ代から差し引くと、およそ6万円台半ばという価格帯からパーツをチョイスできる。しかし完成したところで「はい、ゲームはそこそこ動きます。でも自慢できるゲーミングらしいパーツは1つもありません」というマシンが完成しかねない。M11xはその点迷うことなくチョイスでき、なおかつ自作のデスクトップPCにはないポータビリティという価値を得ることができる。

 「ちょっとゲーマーを気取りたい、でも安くPCでオンラインゲームを始めたいんだけど、どうすれば良い?」と迷っているユーザーに、胸をはってサクっとおすすめできる。それがM11xだと言えよう。

(2010年 5月 18日)

[Text by 劉 尭]