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AMDがARMベースの「Hierofalcon」と新APU「Bald Eagle」など組み込みロードマップ発表

AMDがサンフランシスコでエンベデッドロードマップを発表

Arun Iyengar氏(Corporate VP & GM, Embedded, AMD)

 AMDは米サンフランシスコで開催したイベント「AMD Accelerate 2013」でエンベデッド(組み込み)向けの製品ロードマップを発表した。x86コアベースのAPU(Accelerated Processing Unit)とARMコアベースのCPU、ディスクリートGPUのラインナップとなる。AMDは、急速にPC依存のビジネスから、非PCの市場へと軸足を移そうとしており、最終的にはビジネスの半分を非PCにしようとしている。

 その中で、エンベデッドはAMDの重要な柱となっている。それは、従来型の組み込みの枠に入らない、インテリジェントなシステムが急速に伸びているからだ。下のチャートのグリーンがそれで、PCより伸びるインテリジェントデバイスを抑えればAMDの将来が開けるという戦略だ。

AMDの組み込みソリューションロードマップ
各組み込み分野の予測。インテリジェントシステムが伸びる
組み込みマーケットの分野とその割合

 そして、AMDはエンベデッドはARMとx86が中心であり、その両方を抑えれば、ビジネスチャンスが広がると見ている。そのために、x86とARMの両輪で製品を出して行く。

組み込み市場の8割をx86、ARMが占める

 AMDの新エンベデッドソリューションでの製品構成は4系列。ハイパフォーマンスでは、x86ベースのAPUと、ARMベースのマルチコアCPU、ローパワーではx86ベースのAPUそして、ディスクリートの組み込み向けGPUだ。現在はx86とディスクリートGPUだが、来年(2014年)にはそこにARMベースの「Hierofalcon(ヒエロファルコン:白いハヤブサの意味)」が加わる。

AMDの組み込みプロセッサロードマップ

Cortex-A57コアのオクタコアCPU Hierofalcon

 Hierofalconは、ARMの64-bitアーキテクチャのハイパフォーマンスCPUコアマクロである「Cortex-A57」ベース。Cortex-A57コアを8コア載せ、10Gbit Ethernet、PCI Express Gen3、ARMのセキュリティソリューションTrustZoneを載せる。AMDのエンベデッドでは初めてのハイパフォーマンスARMだ。

ARM Cortex-A57ブロックダイヤグラム(PDF版はこちら)
Hierofalconの概要

 実際には、AMDはサーバー向けにCortex-A57を8または16コア搭載した「Seattle(シアトル)」を2014年に投入する。Hierofalconは、Seattleの8コア版をエンベデッド向けにした製品だと思われる。入出力系はサーバー向けと基本的には同じ。そのため、Seattleに搭載されると見られる、SeaMicro(AMDが買収したMicroServerスタートアップ)の開発したインターコネクト「Freedom Fabric」も搭載すると見られるが、今回は明らかにされなかった。下はAMDのサーバーロードマップとFreedom Fabricだ。

AMDのサーバー向けロードマップ
ARM Cortex-A57ベースの「Seattle」
SeaMicroの開発したスーパーコンピュータ的なインターコネクトであるFreedom Fabric

 Cortex-A57を8個積むHierofalconのTDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)は15〜30W。GPUコアを搭載せず、I/O回りを強化したサーバー向けの製品からの転用であるため、用途はコミュニケーション系などCPUとI/Oの性能が必要な分野になるだろう。Cortex-A57は、Cortex-A15をベースにARMv8 64-bit命令に対応したコアで、3命令デコード8イシューのアウトオブオーダー実行パイプラインだ。ARMのIPでは最高パフォーマンスのCPUコアとなる。

Steamrollerコアがエンベデッドにも登場

 ハイパフォーマンスのエンベデッドx86 APUとして来年(2014年)前半に加わるのは「Bald Eagle(バルドイーグル:ハクトウワシ)。デスクトップAPUの「Kaveri(キャヴェリ)」をベースとする28nmプロセスのチップで、CPUコアは現在の32nmの「Piledriver(パイルドライバ)」コアを拡張した「Steamroller(スチームローラ)」コア。

Bold Eagleの概要

 Piledriverは初代のBulldozer(ブルドーザ)コアの物理的な実装を大きく改良し、特にクロックディストリビューションを革新した。それに対して、Steamrollerは命令デコードを現在の1系統4命令同時デコードから、4命令デコードの2系統へと拡張した。スレッド当たりの性能を拡張したアーキテクチャの大幅拡張版だ。

AMDのSeamroller

 GPUコアもGCN(Graphics Core Next)となり、HSA(Heterogeneous System Architecture)の多くの機能をサポートする。Kaveriのカギである、CPUコアとGPUコアの間での、バーチャルメモリアドレス空間の共有と、ハードウェアコヒーレンシは当然、Bald Eagleでも有効にされると見られる。HSAのプログラミングモデルを適用できるエンベデッドソリューションとなる。

Jaguarコアを拡張したSteppe Eagleを投入

 ローパワーAPUでは、Jaguar(ジャギュア)ベースの「Steppe Eagle(ステップイーグル:ソウゲンワシ)」を投入する。AMDは、すでに28nmの「Kabini(カビーニ)」をベースにした組み込み向け「GシリーズAPU」を投入しているが、同じ28nmでSteppe Eagleを投入する。現在のGシリーズAPUとSteppe Eagleの違いは、Jaguar CPUコアを拡張してパフォーマンスをアップさせたほか、より低電力で動作できるようにしたことだという。5Wからの製品ラインナップとなる。

Steppe Eagleの概要
Jaguarアーキテクチャ(PDF版はこちら)

 Jaguarコアベースでは、MicrosoftのXbox One向けのカスタムAPUが、内部インターコネクトとメモリマネージメントユニットなどを大幅に拡張。CPUコアとGPUコア、I/Oの間で、ページテーブルの共有を可能にしている。つまり、Xbox Oneは、HSAの先取りを行なっている。しかし、Steppe Eagleでは、Kaveri系のメモリマネージメントの拡張は行なわれない。そのあたりの部分の実装は、Kabini世代と同じだという。また、エンベデッドソリューションの2014年の製品が28nmであることは、AMDが20nmプロセスを先延ばしにしていることも示している。

Jaguarコアベースでページテーブルの共有を可能にしたXbox One

 このほか、エンベデッドで28nm世代のGCN(Graphics Core Next)アーキテクチャのディスクリートGPU「Adelaar(アデラー:鷲)」も登場する。「MCM(Multi-Chip Module)」、「MXM(Mobile pci-eXpress Module)」、「PCI Express」カードの3形態で投入される。いずれも2GBのGDDR5を載せる。コア自体は「Venus(ヴィーナス)」なので、GPUコアの演算ユニットの構成は最大で14 CU(Compute Unit)、896 MAD(Multiply-Add)と見られる。メモリ帯域は72GB/secとなっているので、128-bitメモリインターフェイスでGDDR5の転送レートは4.5Gbpsとなる。

Adelaarの概要

(後藤 弘茂 (Hiroshige Goto) E-mail