井上繁樹の最新通信機器事情
NECプラットフォームズ「Aterm WF1200HP2」
~「こども安心ネットタイマー」でインターネット利用を安全に
(2016/3/1 06:00)
概要
「Aterm WF1200HP2」はIEEE 802.11acに対応した無線LANルーターだ。無線LAN部分の最大接続速度は5GHz帯が11ac使用時867Mbps、2.4GHz帯が11n使用時300Mbpsで、有線LAN部分の最大接続速度は100Mbpsだ。製品名末尾に「2」とあることから想像がついたと思うが、以前紹介した「Aterm WF1200HP」の後継モデルに当たり、セキュリティ系機能として「こども安心ネットタイマー」を搭載したことが大きな変更点となる。
送信用と受信用の内部アンテナを2つずつ搭載しており、2x2 MIMOに対応する。内部アンテナは人工衛星用のGPS受信器にも使われている電磁ノイズ遮断技術「μEBG」を採用し、アンテナ感度を高めている。また、Wi-Fiの通信をストリーミング再生に最適化する「TVモード」機能を搭載している。
SSIDは5GHz帯がゲスト用のものも含めて2つ、2.4GHz帯がゲスト用とWEP専用のものも含めて3つで、計5つだ。有線LANポートはWAN×1、LAN×3の計4ポートだ。
モードスイッチを切り替えることで、無線LANルーターやブリッジとしてだけなく、無線LANコンバータとして使える。無線LANコンバータ時は有線LAN専用機器の無線LAN化ができるほか、無線LAN中継機としても使える。無線LAN中継機能使用時の最大接続速度は、5GHz帯を使う場合11ac使用時で433Mbps、2.4GHz帯を使う場合11n使用時で300Mbpsとなっている。
本体の大きさは33×97×146(幅×奥行き×高さ)mm、重量は200g。本体色はつや消しの黒で表面は指紋等の付きにくい加工。同梱しているスタンドを装着する穴が2カ所あり、縦置き、横置き、壁掛けの3種の設置方法に対応する。いずれの設置方法の場合も壁や床など平面に密着することはない。消費電力は最大8W。
主な機能
管理画面はNEC製ルーターではお馴染みの左サイドバーにツリーメニューが並ぶシンプルなテキスト主体のUIだ。ただし、搭載している機能のうち、「こども安心ネットタイマー」については、利用者層を想定してか、スマートフォンやタブレットでのタップ操作もしやすいボタンが大きくグラフィカルなものになっている。
セキュリティ系の機能はパケットフィルタ、無線LAN用のMACアドレスフィルタ、ジャンル指定で設定できる悪質サイトブロック「ファミリースマイル」(有料)、MACアドレスを指定して端末単位で利用時間の制限ができる「こども安心ネットタイマー」、ファームウェアの自動更新(出荷時から有効)など。そのほか、接続している無線LAN機器のLAN内へのアクセスを遮断し、インターネットへの接続のみ許可する「SSID内分離(セパレータ)」機能を搭載している。
リモートアクセス系の機能はダイナミックDNS、ホームIPロケーション機能、PCリモート起動(WoL)、ポートマッピング、VPNパススルー、DMZホスト設定、UPnPなど。ダイナミックDNSで利用できるサービスは「お名前.com」と「BIGLOBE」の2つ。ホームIPロケーション機能はリモートアクセスのためのドメインを自動的に割り当てる機能で、ドメイン指定ができない無料のダイナミックDNSと言えば分かりやすいかもしれない。PCリモート起動は、あらかじめMACアドレスを登録したLAN内の機器が対象だ。
AndroidおよびiOS搭載のスマートフォン、タブレット向け専用アプリは4つあり、うち3つは無線LAN接続設定用で、残り1つは管理画面や「こども安心ネットタイマー」を開くためのものだ。無線LAN接続設定用のアプリは、1つが本体のボタン操作で接続設定を行なう「らくらくスタート」、もう1つがQRコードから接続設定を読み込む「らくらくQRスタート2」、そして最後の1つが同梱のNFCシールから接続設定を読み込む「らくらく「かざして」スタート」だ。QRコードはSSIDや暗号化キーを変更した場合は、「設定用QRコードを表示」する専用サイトで再生成できる。
新たに搭載された「こども安心ネットタイマー」は、端末単位でインターネットに接続できる時間を制限できる機能だ。接続できる時間は基本的には週単位で設定するのだが、一時的な設定変更も可能で、祝休日を始めイレギュラーな状況にも対応できる。制限する端末と制限しない端末をグルーピングできるので、複数台の端末の設定変更も簡単だ。最大の特徴がスマートフォンを強く意識した(マニュアルの解説で使われているスクリーンショットもスマートフォンのものだ)、平易なメニューのUIなので、普段からスマートフォンを使っている人であればマニュアルなしですぐに設定できそうだ。
ベンチマーク
速度の測定には2台のPCを使った。1台目(サーバー)は主に100Mbps有線LANを、2台目(クライアント)は主に無線LANを使用し、参考として両方とも無線LANを使うケースも測定した。両方無線LANの場合11acと11nの組み合わせで計4パターンあるが、そのうちもっとも優れた結果のものを採用した。使用したソフトはiperf 3.0.11(以降「iperf」)とCrystalDiskMark5.1.2(以降「CDM」)の2種類。
iperfによる速度の測定は、1台目ではサーバーモードにて、2台目ではクライアントモードにて動作させて行なった。CDMによる速度の測定は、1台目に作成したRAMDISKの共有ドライブを、2台目にネットワークドライブとしてマウントしたものを使った。
2台のPCについてだが、OSはサーバーがUbuntu 14.04.4LTS(以下「Ubuntu」)、クライアントがWindows 10。どちらもCPUはCore i5、メモリは8GB、ストレージはSSDである点は共通で、無線LAN子機としてUbuntu側に「Intel Dual Band Wireless-AC 7260」、Windows 10に「ASUS PCE-AC68」を搭載している。
11ac-866Mbps接続時のiperf3ログ(送信)
$ iperf3 -c 192.168.10.10Connecting to host 192.168.10.10, port 5201
[ 4] local 192.168.10.11 port 64616 connected to 192.168.10.10 port 5201
[ ID] Interval Transfer Bandwidth
[ 4] 0.00-1.00 sec 11.4 MBytes 95.4 Mbits/sec
[ 4] 1.00-2.00 sec 11.4 MBytes 95.4 Mbits/sec
[ 4] 2.00-3.00 sec 11.4 MBytes 95.5 Mbits/sec
[ 4] 3.00-4.00 sec 11.2 MBytes 94.4 Mbits/sec
[ 4] 4.00-5.00 sec 11.4 MBytes 95.4 Mbits/sec
[ 4] 5.00-6.00 sec 11.2 MBytes 94.3 Mbits/sec
[ 4] 6.00-7.00 sec 11.4 MBytes 95.4 Mbits/sec
[ 4] 7.00-8.00 sec 11.2 MBytes 94.3 Mbits/sec
[ 4] 8.00-9.00 sec 11.4 MBytes 95.5 Mbits/sec
[ 4] 9.00-10.00 sec 11.2 MBytes 94.4 Mbits/sec
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
[ ID] Interval Transfer Bandwidth
[ 4] 0.00-10.00 sec 113 MBytes 95.0 Mbits/sec sender
[ 4] 0.00-10.00 sec 113 MBytes 95.0 Mbits/sec receiver
iperf Done.
iperfによる測定結果は表1の通りで、100Mbps有線LAN時は受信で約95Mbps、11ac-866Mbps時は送受信とも約95Mbps、11n-300Mbps時は受信で約95Mbpsだった。また、サーバー側11n、クライアント側11ac時は受信で143Mbpsをマークした。
【表1】iperf3による速度測定結果(Mbps) | ||||
---|---|---|---|---|
100Base-TX | 11ac-866Mbps | 11n-300Mbps | 11n-11ac | |
送信 | 94.9 | 95.0 | 93.5 | 135 |
受信 | 95.3 | 94.9 | 94.8 | 143 |
参考までにスマートフォン(ASUS Zenfone2「ZE551ML」)を使ってiperfで測定した結果が表2で、11ac時は送信で約95Mbps、11n時は送信で約54Mbpsをマークした。また、スマートフォン側11ac、サーバー側11n時は送信で約85Mbpsをマークした。
【表2】スマホ使用時iperf3による速度測定結果(Mbps) | |||
---|---|---|---|
11ac | 11n | 11ac-11g | |
送信 | 94.5 | 54.3 | 84.6 |
受信 | 82.7 | 44.3 | 55.5 |
RAMDISKを使ったCDMによる測定結果は表3の通りで、100Mbps有線LAN使用時はWRITEで約99Mbps、11ac-866Mbps時はWRITEで約99Mbps、11n-300Mbps時はWRITEで約98Mbpsをマークした。また、サーバー側11n、クライアント側11ac時は受信で約197Mbpsをマークした。
【表3】RAMDISKを使ったCDM結果(Mbps) | ||||
---|---|---|---|---|
100Base-TX | 11ac-866Mbps | 11n-300Mbps | 11n-11ac | |
リード | 99.2 | 99.2 | 98.3 | 142.5 |
ライト | 99.0 | 99.2 | 99.2 | 196.6 |
まとめと感想
WF1200HP2は速度については速いと言えないが、主な用途がインターネットの利用で、混雑している2.4GHz帯から5GHz帯への脱出を考えているのなら良い選択肢だ。無線LAN親機側の最大接続速度は子機側と比べるといつも大きく先行気味だが、本製品が対応する867Mbpsの11acなら対応製品も増えている。ノートPCやはもちろん、スマートフォンやタブレットでも当たり前の様に「11ac」の文字がスペック表に並ぶようになった。今が買い時と言ってもいいかもしれない。
それから無線LANコンバーターとして使える点もポイントかもしれない。USB接続の11ac子機は867Mbps対応となると3000円台なので、3台の有線LAN機器を追加コスト無しで11ac対応にできること考えるとコスト面でも有利だ。
参考として無線ー無線接続時のLAN内PCベンチマークを結果を入れたが、入れなかった結果について述べておくと、iperf3の結果ではいずれも100Mbpsを越えることはなく、CDMの結果については双方11acの場合のみ100Mbpsを越えた(READ137Mbps、WRITE167Mbps)。LAN内でのファイルをやり取りも無線ー無線接続が当たり前になっていることを考えると有線を使わなくても速いことは見逃せないポイントかも知れない。
新たに搭載された「こども安心ネットタイマー」は上位機種を始め最近のモデルには搭載されてきた機能で、スマートフォンに慣れていれば、機械類が苦手なお母さん達でも無理なく使えるだろう。ただ、ほかの機能とのデザイン面での隔たりが大きいのが気になる。もちろんメーカーは何がしか考えていると思うのだが。次の一手に期待したい。