■井上繁樹の最新通信機器事情■
先日、PC版のGmailに緑の受話器のアイコンが追加され、Gmail上から電話がかけられるようになった。本記事ではGoogleの電話サービス「Googleボイス」と、以前から無料で提供されてきた「Googleボイス&ビデオチャット」を紹介する。
●PCが電話になるGoogleボイスはスマートフォンやタブレット用のアプリもあるが日本ではまだ利用できない。アプリはインストールできても肝心の端末情報が入力できず、セットアップの途中で止まってしまう |
「Googleボイス」は先日国内でも利用できるようになったGoogleの電話サービスで、PCのブラウザで開いたGmailやGoogle+、iGoogle、orkutから発信できる。着信はできない、110番や119番など緊急電話が使えない、など制約はあるが通話料は他のサービスと比べても安めだ。着信できないことから想像がつく人も居ると思うが、発信は番号非通知で行なわれる。
ただ、先行してサービスが始まった米国では固有の番号(Google Voice Number)を取得して着信できるようになっているので、残る制約は緊急電話ができないくらいだ。スマートフォンやタブレット端末のアプリも提供されていて、複数の端末で同じ番号を使って音声通話ができるユビキタス環境を実現している。
また、GoogleはGoogleボイスとは別にGoogleユーザー間でテキストチャットや音声通話、映像通話ができる無料のサービスを以前から日本でも提供している。スマートフォン、タブレット端末向けのアプリは「Googleトーク」の名前で公開されていて、テキストチャットのみ可能だ。Googleトークは米国ではAndroid端末限定だが、音声通話や映像通話も可能だ。
Googleボイスについては先にも述べた通り日本国内では今のところ番号非通知の発信のみなのでメインの電話として使うのは難しい。だが、Googleボイス&ビデオチャットは今でも十分実用的で便利なサービスだ。あらかじめ確認を取り合った相手以外とは交信できない仕組みになっているので迷惑電話を自然と排除できるのもポイントだ。
●必要なものとセットアップGoogleボイス及びボイス&ビデオチャットを使うのに必要なのはWebブラウザと専用のプラグイン、そしてマイクと音声出力だ。映像通話を使いたいときは別途カメラも必要になる。対応OSはWindows XP/Vista/7、Mac OS X(Intelベース)、UbuntuなどDebianベースのLinux。対応ブラウザはGoogle Chrome 12以降、Firefox 3.5以降、Internet Explorer 7.0以降、Safari 3.0以降。2世代以前のWebブラウザはサポートされないので、遅れずバージョンアップする必要がある。Google Chrome以外ではAdobe Flash Playerも必要だ。
マイクや音声出力についてだが、ディスプレイ一体型PCやノートPCであれば本体と一体化している場合もあるので購入前に確認した方がいいだろう。また、付属品だからと侮らず一度は試してみることをオススメする。私が今回使った2台のメーカー製PCはマイクとスピーカーが本体組み込みだったが、大きなノイズも無く音量も十分にあり快適に使えた。ちなみに、DTM用のマイクとヘッドフォンも試してみたが、コストに見合うだけの音質の差は感じなかった。
インターネット接続回線についてだが、FTTHでは問題は出ないが、ADSLなど帯域が1Mbps以下になってしまう環境では音声が途切れるなど支障が出る場合があるようだ。使用するポートはTCP及びUDPの80番と443番。さらに、音質と画質の向上のため、すべてのUDPポートの開放が推奨されている。
●Googleボイス&ビデオチャットの実際さて、セットアップの解説も終わったので、GoogleボイスとGoogleボイス&ビデオチャットが実際どんなものなのかGmail上からの使用例で見ていこう。Googleボイスは支払い方法について触れる必要があり、その分長くなるため、まずGoogleボイス&ビデオの方から紹介する。
Gmail上から「Googleボイス&ビデオチャット」を使って音声通話するには、まず最初に通話したい相手の名前の上にカーソルを置いて、ポップアップしたウィンドウの「チャット」ボタンをクリックする。以降呼び出し音を鳴らすまでに4ステップ(クリックは3回)必要なので慣れないうちは面倒だが手間が多い分うっかりミスで呼び出し音を鳴らしてしまうこともない。
通話品質は実際に使ってみた感じでは携帯電話と同等かそれより少し上くらいに感じた。固定電話やISPが提供するIP電話レベルまではいかないが快適に使えるレベルだ。競合サービスのSkypeと比べるとやや劣る様に感じるが大差は無くどちらも「通話品質」であることに変わりは無い。
余談だが、Skypeではつまづいてしまった70歳過ぎの父でも、Googleボイス&ビデオチャットは難なく使えてしまった。常用しているGmailからウィンドウを切り替えることなく使えたこと、ポップアップウィンドウやテキストチャットがインジケータとして機能して、どこの何を押せばいいのかわかりやすかったことがよかったらしい。
●Googleボイスの実際Googleボイスはプリペイド方式で入金には決済代行サービス「Google checkout」を使う。追加額は10/25/50ドルの3種類から選択する。通話料は国内では固定電話にかけた場合1分あたり0.02ドル、携帯電話にかけた場合は1分あたり0.11ドル。現在のレートでそれぞれ約1.5円、約8円となっている。
「購入を完了する」ボタンをクリックすると手続きは完了だ | 手続き完了後確認のメールが届く |
Googleボイスを使った固定電話や携帯電話への発信は「電話をかける」ボタンのクリックから始まる。発信までにかかる手順は3ステップ(3クリック)なのでGoogleボイス&ビデオチャットと比べると一手間少ない。こちらはUIが既存の電話と似ているのでその分馴染みやすいかもしれない。通話品質はGoogleボイス&ビデオチャットの場合と同じく携帯電話以上固定電話以下という印象だ。
クレジットの追加が終われば、あとは番号を入力して「発信」をクリックすれば電話がかけられる。Gmailのアドレス入力同様入力補完機能があるので番号や名前の一部を入力すると候補を表示する | 通話中の画面。通話時間や料金はリアルタイムに表示される。電話を切りたいときは「終了」をクリック |
●まとめと感想
GoogleボイスについてはPCから電話できると言っても以前から同様のサービスがあったわけでピンとこない人も多いかもしれない。けれど、Gmail上から電話がかけられてしかも割安となると気になる人は多いのではないだろうか。今はまだ発信のみで番号非通知なこともあって不便だが、米国ではすでに固有番号からの発信も着信も実現している。将来性に期待してひと通り触ってセットアップを済ませておくのも悪くないと思うのがどうだろうか。
Googleボイス&ビデオチャットは歴史のあるサービスで機能的には完成している。Googleのサービスをよく使う人やGoogleのサービスを使う知り合いが多い人にはオススメだ。震災の時のように、固定電話や携帯電話が止まってしまうトラブルが起きた時の保険の1つとして、今から環境を整えておくのも悪くないだろう。
(2011年 8月 24日)