井上繁樹の最新通信機器事情

アイ・オー・データ機器「ETG2-R」
~WAN側も1Gbpsに対応した有線LANルーター



ETG2-R

発売中
価格:8,295円



 インターネットの速度というと、100Mbpsが上限のような印象があるが、100Mbps以上のサービスやルーター製品も増えてきた。そこで今回はインターネット側も1Gbpsに対応した有線LANルーター「ETG2-R」を紹介したい。

●速度も管理画面も高速高レスポンス

 アイ・オー・データ機器「ETG2-R」は、インターネット側、LAN側共に1Gbpsに対応した有線LANルーターだ。LAN側は4ポート搭載している。工場出荷時のデフォルトのIPアドレスは「192.168.0.1」。大きさは194×114×35mm(幅×奥行き×高さ、横置き時)、重量290g。横置き、縦置き共に可能で、縦置き時は専用のスタンドを使う。

同梱物一覧。ETG2-R本体、縦置きスタンド、ACアダプタ、LANケーブル、セットアップガイド、ファミリースマイル設定ガイド本体正面。上からリセットスイッチ、以降左側に電源ランプ、ステータスランプ、お知らせランプ、右側にLAN(ポート)1~4ランプ(右)、インターネットランプ背面。上からLANポート×4、インターネット(WAN)ポート、DCコネクタ
(正面から見て)左側面。後部に排気口がある(正面から見て)右側面。工場出荷時IPアドレスやライセンスキー(「ファミリースマイル」用)、MACアドレスがプリントされたシールが貼られている。後部に左側面同様排気口がある天面。階段状になったキャノピーのような独特な形状をしている。底面と同じ形状で、縦置きスタンドを装着可能
底面。天面と同じく階段状キャノピー。縦置きスタンドを装着できる縦置きスタンドを装着した状態の底面

 無料で利用できるダイナミックDNSサービス「iobb.net」に対応しており、「ポート開放」(ポートフォワーディング)機能と組み合わせることでサーバーの公開やリモートデスクトップ環境の構築が手軽にできる。「PPTPパススルー」及び「IPSecパススルー」に対応しておりVPNサーバーを別途用意できればVPN環境の構築も可能だ。

管理画面「ステータス」ページ。初期設定でパスワードは設定されておらず、IDやパスワードを入力しなくても、自動的にログインしてこのページが開く管理画面「DHCPクライアントリスト」ページ。Windowsのエクスプローラー(「ネットワーク」フォルダ)で表示されないLAN内の機器も一目瞭然

 搭載されているセキュリティ機能は、インターネットからのPing拒否、SPI(stateful Packet Inspection)、DOS攻撃防御、DMZ(DeMilitarized Zone)、URLフィルター「ファミリースマイル」の5種類。ポート単位で設定するパケットフィルタは搭載されていない。ルーターの全設定はバックアップと復元が可能。バックアップ内容は「config.bin」という名前でPC側にダウンロードされる。

 節電機能として「使用していないポートの電源を切る」「ケーブル長に合わせて使用する電力を調節する」の2種類を自動で行なう。オフにする機能は無い。スケジュール設定するタイプの節電機能は無い。

 マニュアルについてだが、同梱されているのは一枚紙のシンプルなものだが(「ファミリースマイル」のものを含めると計2枚)、HTML版の詳細なものがアイ・オー・データ機器の公式サイトで公開されている。

●ベンチマーク

 ETG2-Rはまだ数少ないインターネット側1Gbps対応製品ということで、これまでやってきたLAN側のベンチマーク測定に加え、インターネット側のベンチマーク測定も行なった。

 LAN側のベンチマーク測定には「CrystalDiskMark3.0.1」を使用した。参考データの測定には「vsFTPd」「iperf」を使用した。測定元のPCはWindows 7 SP1(32bit版)、測定先のPCはWindows Vista SP2(64bit版)。どちらもETG2-Rにつないだ1Gbps対応の有線LANハブに接続して使用した。加えて、参考データの測定用にUbuntu 11.04(Ext4形式でフォーマットしたHDDにインストール)を使用した。

 CrystalDiskMark3.0.1(ディスクベンチマーク)では測定先のPCの共有フォルダをネットワークドライブとして登録してベンチマークをとった。vsFTPd(FTPサーバー)ではGET及びPUTコマンドを使って1GBファイルの転送速度を測定した。iperf(ネットワーク速度ベンチマーク)は測定元PCではクライアントモードに、測定先PCはサーバーモードに設定して使用した。なお、iperfはディスクの読み書きはしないので、表中の表記である「読み込み」「書き込み」は「ダウンロード」「アップロード」に読み換えてほしい。

 インターネット側の速度はETG2-Rのインターネット側にvsFTPdが動くUbuntu 11.04マシンを、LAN側に1Gbps対応のハブ経由でWindows 7 SP1マシンをつないでvsFTPdを使って測定した。

【表1】アクセス速度測定結果

ルーター時(非PPPoE接続)


速度(Mbps)
使用ソフトファイルシステム等上限読み込み書き込み
CrystalDiskMark 3.0.1NTFS1,000327.4491.15
CrystalDiskMark 3.0.1Ext4(参考)1,000350.12833.36
vsFTPdExt4(参考)1,000458.29363.66
iperf(TCP)N/A(Vista SP2、参考)1,00036354.5
iperf(TCP)N/A(Ubuntu 11.04、参考)1,000490293
ルーター時(PPPoE接続)


速度(Mbps)
使用ソフトファイルシステム等上限読み込み書き込み
CrystalDiskMark 3.0.1NTFS1,000326.4793.74
CrystalDiskMark 3.0.1Ext4(参考)1,000352.5754.82
vsFTPdExt4(参考)1,000449.84367.86
iperf(TCP)N/A(Vista SP2、参考)1,00036447.2
iperf(TCP)N/A(Ubuntu 11.04、参考)1,000493294
ETG2-Rのインターネット側の速度


速度(Mbps)
使用ソフトファイルシステム等上限読み込み書き込み
vsFTPdExt4(参考)1,000360.45145.57
ルーター時(非PPPoE接続)のWindows共有フォルダのベンチマーク結果ルーター時(PPPoE接続)のWindows共有フォルダのベンチマーク結果

 LAN側のベンチマーク結果は、表及びスクリーンショットにある通り、読み込みは約327Mbps、書き込みは約94Mbpsが最高速度だった。PPPoE接続時と非PPPoE接続時での速度差は誤差の範囲だった。参考データになるが、インターネット側の速度は読み込み約360Mbps、書き込み約146Mbpsだった。こちらはLAN側の参考速度(ベスト)と比べると読み込みは約79%、書き込みは約40%に低下したことになる。

●ダイナミックDNSサービスは便利だがセキュリティ設定には注意

  ETG2-Rはアイ・オー・データ機器が提供するダイナミックDNSサービス「iobb.net」に対応している。iobb.netは対応機器であれば無料で使えるサービスで、ハードウェアにヒモ付けされたサービスだ。登録の際はETG2-R本体のシールにプリントされたシリアル番号を使用する。専用サービスだけあって、登録サイトは当然日本語表記であり、サイトのレスポンスも良い。

「iobb.net」の登録画面。シリアル番号、ホスト名、メールアドレス、「iobb.net」用のパスワードを入力登録が終わったら、管理画面「ダイナミックDNS設定」ページで先に登録した、シリアル番号、パスワード、ホスト名を入力Webサーバー等を外部に公開するときは、管理画面「ポートの開放」ページで、使用するポート番号とサーバーのIPアドレスを登録
「iobb.net」を使って公開したWebサーバーにアクセスしている様子。LAN内からはドメイン名を使ってアクセスできないことに注意(FTPサーバー、リモートデスクトップも同様)同じく「iobb.net」を使って公開したFTPサーバーにエクスプローラーを使ってアクセスしている様子(アドレスバーに「ftp://(ホスト名).iobb.net」を入力)同じく「iobb.net」を使ってインターネット経由でリモートデスクトップ機能を使っている様子

 今回、「ポートの開放」(ポートフォワーディング)機能を使って、WebサーバーとFTPサーバーの公開やリモートデスクトップを試してみたが、5分程度の登録作業と、簡単な設定変更作業だけで使えるようになった。ETG2-RのWebインターフェイスのレスポンスがいいこともありストレスを感じなかった。

 なお、非常に便利で使いやすいiobb.netだが、注意したいのがセキュリティ設定。ほんの数時間公開している間に中国やブラジルからの攻撃でログが埋まっていた。IDとパスワードの管理、サーバーを公開するときはDMZ機能を使ってLAN内に影響を及ぼさないようにする、使用するPCのセキュリティ設定とアップデートを怠らない、重要なデータの分散化、など予防策はしっかりとっておきたい。

●フィルタリング機能「ファミリースマイル」

 ETG2-Rにはネットスターが提供するフィルタリングサービス「ファミリースマイル」を利用する機能が搭載されている。有料のサービスで年額1,980円。ETG2-Rに同梱されているライセンスは1年分なので、支払いが別途必要になるのは2年目以降となる。フィルタリングルールはあらかじめ6種類のプリセットが用意されているほか、ユーザーが作成したプリセットを4つまで登録できる。フィルタリングルールは機器単位で適用可能だ。機器単位での適用はできないがURLフィルタリングもできる。

管理画面の「ファミリースマイル」ページアクセス制限レベルをカスタマイズする機能もある(前の画面で「カスタムレベルの編集」ボタンをクリック)

 フィルタリングルールについてだが、プリセットの一番厳しいルール「小学生(中学年)」を設定しても、検索エンジンの画像検索は通過してしまう。その一方で動画サイトのYouTubeは丸ごとブロックされていたりして、どうにも腑に落ちない。プリセットの名前は直感的で分かりやすいが、内容はわかりづらい。フィルタリングルールは非常によく分類されているものの、項目が多すぎて慣れない人はカスタマイズしづらい。

 と、いろいろ厳しいことを書いてみたが、以上のことはフィルタリング機能の宿命のようなもので、問題を認識した上で使っていくほかない。それから、当然の話だが、家を一歩出てしまうと効果は無い。まさかVPNを使って必ず我が家のネットワークを経由させる、というわけにもいくまい。インターネットにつながらない場所に連れ出す、という最強のオプションも考慮に入れつつ工夫していくほかないだろう。

●まとめと感想

 最近100Mbps以上のインターネット接続サービスや対応機器が増えてきた。200Mbpsは当たり前で、1Gbpsをうたうサービスも少なくない。実効速度を考えるとサーバー側の対応もあり、どれだけ有効なのかはわからないが、今後100Mbps以上のサービスが増えていくことは間違いないようだ。

 ETG2-Rは上限1Gbpsまでのインターネット接続サービスの利用を考えている人にとって貴重な選択肢の1つだ。また、シンプルな有線LANルーターが欲しい人にも向いている。セキュリティのことを考えると誰にでも薦められるわけではないが、サーバー公開を考えている人、リモートデスクトップが使ってみたい人に向いていると言える。iobb.netのダイナミックDNSサービスも使いやすい。

 ちょっと気になったの管理画面のデザイン。シンプルで、レスポンスもよく、無駄が無いのには好感が持てるが、予備知識の無い人には難しいかもしれない。それから、デフォルトのフォントサイズは小さめなので、ノートPC等解像度が高く画面の小さい環境ではみづらいかもしれない。ただし、こちらはWebブラウザの拡大表示機能を使うなどすれば簡単に対処可能だ。

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(2011年 7月 21日)

[Text by 井上 繁樹]