■井上繁樹の最新通信機器事情■
前回バックアップ機能を搭載した外付けHDDを紹介した関係からか、ちょっと面白いバックアップ製品を編集部経由で借りることができた。無線LAN対応でセットアップがとても簡単なバックアップ製品だ。どれくらい簡単かと言うと、USBケーブルでPCに繋いで外してACアダプタでコンセントに繋げば完了だ。少し説明不足のようだが、本当に書いた通りにやればインストールできてしまうのだ。
●無線LAN対応のバックアップドライブClickfreeワイヤレスポータブル(以下Clickfreeワイヤレス)はカナダのリッチモンドヒルに拠点を置くストレージ・アプライアンスの最新のバックアップ製品だ。ストレージ・アプライアンスは多くのバックアップ製品を手掛けているメーカーで、Clickfreeワイヤレスを含む5製品を2010年12月上旬に日本市場に投入する予定だ。
Clickfreeワイヤレスは名前の通り、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LAN機能を搭載しており、無線LANルーターやアクセスポイントを通じて同じLAN内のPCのファイルをバックアップする(最大20台まで)。対応OSはWindows 7/Vista/XP及びMac OS X 10.5以降。内蔵HDDの容量は500GB。大きさは121×121×18mm(幅×奥行き×高さ)、重量は254g。消費電力はアイドル時4W(ワットチェッカーPLUSによる実測)だ。
本体に直付けのUSBケーブル(USB 2.0対応)を収納していて、セットアップ時やCD/DVDへバックアップ内容を書き出す際に使用する。USB経由でのバックアップも可能だ。インターフェイスは無線LANとUSB 2.0のみで、有線LANポートは無い。
同梱物はClickfreeワイヤレス本体、ACアダプタ、クイックスタートガイド、保証条件及び注意書き、クリーニングクロス | 天面。クリアパーツの上にロゴがプリントされている | 前面。下側のクリアパーツの下にLEDがある。LEDの表示は無線LAN接続作業中は黄色、接続完了後は青 |
横面。 | 背面。USBケーブルが収納されているほか、ACコネクタがある |
収納されているUSBケーブルを取り出したところ。USBケーブルは本体直付けでケーブルは約3cm | 底面。リセットボタンと排気口がある |
●インストールの種明かしとバックアップ機能について
さて、ちょっと引っ張ってしまったが、ここで冒頭の説明不足気味なインストール手順の種明かしをしよう。実際にはケーブルを抜き差ししてる間に次のようなことが起きている。
(1)USBケーブルをPCにつなぐとインストーラが自動起動、専用アプリをインストールして初回バックアップ
(2)作業が終ってUSBケーブルを外した後はPCから取得した情報を使って無線でLANに自動接続し、専用アプリを通じてPCからバックアップ内容を受け取る
PCの無線LAN設定を自動取得する仕組みはあまり無いものだと思うが、それ以外は特別なことが行なわれているわけではない。けれど、そう頭で理屈が分かっても、違和感が残るくらい簡単なインストール手順だ。
複数台のPCのバックアップをする場合でも、同じようにUSBケーブルを抜き差ししてインストール及び初回バックアップを行なえばよい。Clickfreeワイヤレスは個々のPCを識別して個別のフォルダにバックアップを行なうのでバックアップ内容が混じってしまうことはない。
USBケーブルでWindows PCに接続すると自動再生のダイアログが開く。「インストール/実行」をクリックするとインストールが開始する | ローディング画面の後エンドユーザーライセンス確認画面。「同意します」をクリックしてインストール作業を続行 | ここから初回のバックアップ作業 |
バックアップ対象となるフォルダを走査中 | ファイルのバックアップ中 |
バックアップ完了。同時に無線LANの設定も完了となる。インストール作業の最初から終わりまででマウス操作はクリック4回だった | アプリを起動するにはデスクトップのショートカットか、タスクトレイのアイコンの右クリックメニューから。スタートメニューには登録されない点に注意 |
バックアップ間隔は1時間~2週間の間で設定。バックアップをオフにすることもできる |
バックアップするタイミングはタイマー方式で、バックアップ間隔は1時間~2週間の間で設定できる。初期設定は1日1回に設定されている。バックアップ方式は単純コピー。Windows 7等に搭載されているWindowsバックアップのように履歴をとれるわけではない点に注意したい。バックアップ対象はユーザーフォルダのファイルと、ユーザーが作成したフォルダのファイルだ。もちろんCドライブ以外のファイルもバックアップしてくれる。
ただし、実行ファイルはバックアップしない。実行ファイルをバックアップしたい場合は圧縮ファイルとして保存し直す等の工夫が必要だ。実行ファイルをバックアップしないのはコンピューターウイルスなど問題を起こすファイルの多くが実行ファイルであることが関係しているようだ。
●リストア(復元)と不要なバックアップの消去について
ファイルのリストアは個別にできるのはもちろん、画像や音声などの大まかな種類別でも可能だ。リストアするPCを別のPCにすればPC間の引越しも可能だ。ただし、プログラムファイルはバックアップされないので、引越後アプリをインストールし直す必要がある。
バックアップしたファイルは専用のアプリから確認できる | インストール後Clickfreeワイヤレスはローカルのドライブとして登録される。バックアップ内容はSフォルダ下に保存されている |
なお、専用ソフトをインストールするとClickfreeワイヤレスのドライブはローカルドライブとしてマウントされるので、リストアの際は専用ソフトを使わずエクスプローラーで済ませることも可能だ。
CD/DVDにバックアップした場合のリストアについてだが、バックアップディスク作成時にリストアに必要なプログラムも一緒に書き込まれるので、リストア先のPCにあらかじめアプリをインストールしておく必要はない。
バックアップ内容はCDやDVDに書き出すこともできる。書き出し内容はファイルの種類別に指定できる | 書き出しが完了すると日付がベースの名前をつけるようにメッセージが出る。後々管理がしやすいようにディスクに書き込んでおくとよいだろう |
不要になったバックアップの消去はオプション画面で行なう。Clickfreeワイヤレスはバックアップに加えて、バックアップするPCの無線LAN情報も保存しているが、こちらを消去する際は「工場出荷時の設定に戻す」必要がある。
専用ソフトの起動画面。バックアップ以外の機能はオプションも含め別画面にまとめられている | 起動画面で「その他の操作」をクリックすると開く画面。バックアップの確認とリストア、CD/DVDへの書き出し、iPod/iPhone/iPadからのインポートができる | オプション画面 |
●まとめと感想
バックアップは意外に面倒なものだ。要は別の場所にコピー保存してファイルを失うリスクを回避するものなので難しいことではない。タスクスケジューラやWindowsバックアップのように、バックアップのために必要なツールはOS同梱だったりする。明日からと言わず、今からでも始められるよう準備は整っている。
ところが、いざバックアップを始めようとすると、いろいろとややこしい。一番簡単なようでいて一番面倒なのが、バックアップするファイルの選定と、バックアップ先の確保だ。その点Clickfreeワイヤレスは、そんな面倒さを感じさせないよううまくできている。セットアップも簡単ですぐに使い始められる点も良い。
Clickfreeワイヤレスの弱点は、無線LAN接続が基本で、容量が500GBなので大容量ファイルをたくさん扱う人には向かないこと。特に動画を含むTV録画用のPCで使うのは難しいだろう。
無線接続時のベンチマーク結果 | USB接続時のベンチマーク結果 |
向かない用途はあるものの、悩まず使えるし、LANポートを消費せず、コンパクトで邪魔にならない。消費電力もこの種の製品としては低く抑えられている。「バックアップしなきゃ」と言いつつもなかなか手が付けられない面倒くさがり屋の無線派諸氏にとってClickfreeワイヤレスは良い選択肢の1つだと言えるのではないだろうか。
(2010年 12月 6日)