井上繁樹の最新通信機器事情

ファーウェイ「honor cube」

~HDD内蔵でNAS機能とHDMI出力搭載の11ac対応無線LANルーター

「honor cube」

 ファーウェイの「honor cube」は2.5インチHDDを内蔵できるNAS機能搭載の11ac対応無線LANルーターだ。対応無線LAN規格はIEEE 802.11a/b/g/n/ac。OSはAndroid 4.2でHDMI出力を搭載しており、同梱のリモコンで操作して、保存したファイルをディプレイやTVで再生するメディアプレーヤーとしても使える。HDDを搭載していないモデルと、1TBのHDDを搭載した2つのモデルがラインナップされている。公式オンラインストア「Vモール楽天市場店」での価格は前者が13,824円、後者は21,384円。HDDは最大4TBまで対応する。

honor cube本体。幅と奥行きが同じ角丸の直方体状のデザイン
正面。中央に縦に動作LED、電源ボタン、ロゴが並ぶ。底面側の溝は吸排気口
側面。左も右も底面側に吸排気口がある以外特に何もない
背面。中央にボタンと端子が並ぶ。左上からWPSボタン、クイック転送ボタン、リセットボタン、ステレオミニ端子、USB 2.0、HDMI出力、Ethernet×2、SDHCカードスロット、WAN、DCコネクタ
天面。中央のロゴを軽くクリックすると天板が外れる
天板を外した状態の天面。左側に2.5インチHDDスロット。三角と四角の穴は天板に付いている棒を挿し込むためのもの
マウンタを引き出した状態。手前にあるのが天板で中央の小さな突起で本体と固定される
専用のマウンタに装着した状態の2.5インチHDD。HDD搭載モデルには1TBのHDDが同梱されている
マウンタを裏返した状態。先端(手前側)のツノはスロットに挿し込む時、下側(底面側)になる。バネのような弾力があり、HDDを守る役目があるようだ
底面。SSIDや暗号化キー、MACアドレスなどを印刷したシールが貼られている
底面側にある吸排気口を覗き見た状態
同梱のリモコン。ボタン類は左上側から、電源、ホーム、方向、決定、戻る、メニュー、音量下げ、音量上げ
本体以外の同梱物一覧。ACアダプタ、LANケーブル、HDMIケーブル、リモコン、リモコン用電池(単4×2)、マニュアルや保証書などの冊子類。保証書は本体とリモコンで別になっている
初期状態で開くWeb UI。インターネット接続を始めとしたウィザードの開始画面になっている。HDMI出力も初期状態は接続設定の開始画面

 無線LAN部分は、11acの最大接続速度867Mbps(帯域幅80MHz)で、11nの最大接続速度が300Mbps(帯域幅40MHZ)、有線LAN部分は100Mbpsだ。接続端子は、EthernetがWAN×1、LAN×2で、さらに、USB 2.0、HDMI出力、ステレオミニ端子、SDHCカードスロットを1つずつ搭載している。また、天面をクリックすると開くフタの下に、2.5インチHDD(9.5mm厚)を内蔵するスロットがある。HDDの内蔵には専用のマウンタを使う。

 本体の大きさは約123×123×263mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1,138gだ。リモコンの大きさは約37×150×21mm(同)で、重量は約36g、リモコン用の電源は単4電池2本だ。本体用のACアダプタ以外で同梱するケーブル類はLANケーブルとHDMIケーブルが1本ずつ。本体色白で光沢処理されている。

 管理画面はブラウザUI、Android & iOS用のアプリ、そしてHDMI出力の3種類。PCやMacなどが手元にない状態でも、接続設定から普段使いまで不便なくできる。

管理画面と機能

 管理画面はWeb UIも含め、省入力なものになっている。例えば、2.4GHz帯と5GHz帯の暗号化キーは共通のものを使うのが前提で、5GHz帯のSSIDは固定、無線LAN機能のオン/オフができるのは2.4GHz帯のみ、セキュリティ設定やペアレンタルコントロールでフィルタする端末を指定する際は接続機器一覧から選ぶなどだ。

Web UIのトップ画面(ログイン直後)。無線および有線で繋がっている機器の台数が確認できる
トップ画面から無線LAN設定を開いたところ。2.4GHz帯の無線LANをこの画面のスイッチでオフにできる
トップ画面で「ネットワーク状態を確認」をクリックすると開く接続機器一覧。アイコンをクリックすると、各機器のIPアドレスやMACアドレスを確認できる
[その他]をクリックで一覧に表示されていない機器を表示。無線で繋がっている機器には名前の末尾に「-Wireless」が、有線は「-Ethernet」が付く
表示されるアイコンは自動で割り当てられるが、ユーザーによる変更も可能
無線LANのアクセスルールは、ホワイトリスト形式、ブラックリスト形式のどちらでも設定可能
ゲストネットワーク設定。接続した機器はインターネット接続のみ利用できる
デバイス管理。再起動、初期化、アップデート、設定のバックアップと復元がボタンクリックでできる
ワンタッチ診断。ボタン1つクリックで自己診断する機能
Web UIの統計表示は数値表示によるシンプルなもの

 それから、接続している機器がどんなものなのか、アイコン表示になっているため分かりやすい。機器の種類を高い精度で判別してそれに相応しいアイコンを自動で割り当ててくれるので初心者向きと言えるかもしれない。アイコンはユーザーが個別に変更可能で「ノートPC」、「デスクトップPC」、「スマートフォン」、「タブレット」、「ゲーム機」など9種類から選択できる。また、無線で繋がっている機器名末尾には「-Wireless」、有線で繋がっている機器は「-Ethernet」を付けて表示する。この点も分かりやすくていいかもしれない。

Android/iOS対応専用アプリ「HiLink」はhonor cubeのような宅内ルーターだけでなく、携帯用の3G/4G無線ルーターとも共通で使える
HiLinkのトップ画面。統計を数字とグラフで表示
ユーザー管理。接続機器が一覧できる。各機器のIPアドレスやMACアドレスの確認ができるほか、ペレンタルコントロールの設定ができる
Android/iOSアプリでもゲストネットワーク設定は可能。接続時間の制限は4時間、1日、上限なしの3種類から選択
診断。インターネットの状態やファームウェアの更新状況、ファイアウォールの設定助教、パスワード強度、内蔵HDDの空き容量を表示
共有機能。端末内の画像や動画を、同じくHiLinkをインストール済みのLAN内の端末に送信できる

 AndroidやiOSに対応した専用アプリ「HiLink」についてだが、シンプルながらWeb UI同様接続中の機器が確認しやすく、ゲストネットワーク設定や省電力設定など、よく使われそうな機能に絞った、操作がしやすいUIのアプリだ。同じLAN内のHiLinkインストール済み機器に画像や動画などのファイルを送信する機能も搭載している。また、honor cubeに保存したファイルにリモートアクセスできる「MyTime」と呼ばれるアプリも別途用意されている。アプリについてだが、Windows用のものとして「cubeハードドライブツール」と呼ばれるものも提供されているが、こちらはローカルドライブとしてhonor cubeのストレージをマウントするだけのシンプルなものだ。

初期設定完了後のHDMI出力トップ画面。Windows 8のModern UIのような画像ファイルのタイル表示だ
画像ビューワで画像の閲覧中。スライドショー機能搭載
設定画面のトップ。ルーターのWeb UIではあまり見かけないアイコン主体のデザイン
ストレージ設定。空き容量やHDDの状態が確認できる。フォーマットも可能
ネットワーク設定。ファイル共有や、DLNAの設定が可能
製品情報。OSがAndroidであることが分かる
アプリ。Youtube再生アプリやファイル管理アプリ以外に、メモリ整理アプリがインストールされていた
ファイル管理アプリ。エクスプローラーのようなフォルダアイコンが使われているファイル管理アプリ

 HDMI出力からアクセスできるUIはAndroid搭載ということもあってか洗練された印象を受ける。画像や動画を表示する機能ではWindows 8のModern UIのようなタイル表示が使われるなど、少し戸惑うところもあるが、分かりにくいということはない。動作については少々もたつくところはあるが許容範囲と言っていいだろう。

 搭載している機能についてだが、主なものとしては、LAN内でのファイル共有とメディアサーバー、アクセスできる時間とURLを端末単位で指定できる「ペアレンタルコントロール」、3段階切り替えで設定できる「ファイアウォール」、SYNフラッドなどの攻撃からの保護、FTPやHTTPなどアプリケーション名で設定できるパケットフィルタ、「DynDNS」、「TZO」といったサービスに対応したダイナミックDNSなどがある。

 そのほか、L2TP、IPSec、PPTPに対応したVPNクライアント機能、種類別にフィルタできるログ機能、使用するアプリケーションと端末名を選択するだけで設定できる「転送」機能がある。

ベンチマーク

 速度の測定にはCrystalDiskMark 4.0.3(以下「CDM」)、iperf(Jperf 2.0.2)、Python 3.4.1を使用した。honor cubeに、1台のPCを100Mbpsの有線LANで繋いだ状態(サーバー)にして、もう1台のPCを11ac(接続速度866Mbps)、11n(接続速度300Mbps)、100Mbps有線LANで繋いで(クライアント)、2台のPC間をCDMとiperfで測定した。また、honor cube本体に内蔵するHDDの速度をPythonの「shutil.copy()」を使って測定した。使用したPCはOSがWindows 8.1 Pro 64bit版、メモリ8GBで共通、サーバー側のCPUがCore i5 3GHzでクライアント側のCPUがCore i3 3.3GHz、無線LANアダプタはASUS「PCE-AC68」だ。

【表1】CDM速度測定結果(Mbps)
11ac-866Mbps11n-300Mbps100Mbps有線
リード99.299.299.2
ライト74.571.786.2
リードについては100Mbps有線LANとほぼ同じ速度が出ていた

 CDMを使った2台のPC間の速度測定では、ネットワークドライブとしてマウントしたサーバー側のRAMDISKを使用している。結果は、リードについては11ac、11n、100Mbps有線LAN全て同じ約99Mbpsだった。小数点2桁以下については値が異なるが誤差の範囲だろう。ライトについては100Mbps有線LANが約86Mbps、11acがそれより10Mbps程度下がって約74Mbps、11nが11acより3Mbps下がって約71Mbpsだった。

【表2】iperf速度測定結果(Mbps)
11ac-866Mbps11n-300Mbps100Mbps有線
test195.286.495.9
test294.985.394.8
test394.786.794.9
test494.287.495.0
test594.487.094.8
test694.787.695.0
test794.887.494.9
test894.477.894.9
test994.488.994.8
test1094.688.394.9
平均94.586.294.9
速度上限が100Mbpsということで余裕があるせいか、11acながら有線LAN並の安定度

 iperfを使った2台のPC間の速度測定結果は、11acと100Mbps有線LANの平均が約95Mbpsでほぼ同じ(小数点以下1桁以降の差)で、11nはそれより約9Mbps下がって約86Mbpsだった。

【表3】honor cube内蔵HDDのコピー速度測定結果(Mbps)
11ac-866Mbps11n-300Mbps100Mbps有線
リードライトリードライトリードライト
test137.731.132.426.647.737.5
test237.633.333.331.347.542.3
test338.033.733.230.547.842.5
test437.933.233.031.647.442.2
test537.232.933.431.047.741.7

 honor cube内蔵HDDの速度測定は、クライアントのRAMDISKに置いた約100MBのファイルを、Pythonを使って5回読み書きして行なった。結果は、リードが100Mbps有線LANが47~48Mbps、11acが約37~38Mbps、11nが32~33Mbpsだった。ライトは100Mbps有線LANが37~43Mbps、11acが31~34Mbps、11nが26~32Mbpsだった。

初心者でも取っ付きやすいUIが魅力

 honor cubeは11acが上限867Mbps、有線LANが上限100Mbpsということで、速いというわけではないが、子機の対応状況やインターネットの接続速度を考えると、現実的で十分に実用的な速度の製品だ。また、あまりコンピュータ類に詳しくない人達の頭を悩ますスマートフォンやタブレットの画像や動画のバックアップが簡単にできるようになっているなど、ポイントを押さえた仕様になっている点は好感が持てる。

 管理画面のUIについてだが、特にWeb UIについてはAndroidやiOSの影響が見られる、より洗練されたデザインになっているのが印象的だ。今やテキストベースの古式ゆかしいデザインは違和感すら感じることもある時代である。もちろん、管理画面にアクセスするユーザーは「分かっている」少数派なので、気にしない人も多いと思うのだが。

(井上 繁樹)