井上繁樹の最新通信機器事情
ファーウェイ「honor cube」
~HDD内蔵でNAS機能とHDMI出力搭載の11ac対応無線LANルーター
(2015/6/16 06:00)
ファーウェイの「honor cube」は2.5インチHDDを内蔵できるNAS機能搭載の11ac対応無線LANルーターだ。対応無線LAN規格はIEEE 802.11a/b/g/n/ac。OSはAndroid 4.2でHDMI出力を搭載しており、同梱のリモコンで操作して、保存したファイルをディプレイやTVで再生するメディアプレーヤーとしても使える。HDDを搭載していないモデルと、1TBのHDDを搭載した2つのモデルがラインナップされている。公式オンラインストア「Vモール楽天市場店」での価格は前者が13,824円、後者は21,384円。HDDは最大4TBまで対応する。
無線LAN部分は、11acの最大接続速度867Mbps(帯域幅80MHz)で、11nの最大接続速度が300Mbps(帯域幅40MHZ)、有線LAN部分は100Mbpsだ。接続端子は、EthernetがWAN×1、LAN×2で、さらに、USB 2.0、HDMI出力、ステレオミニ端子、SDHCカードスロットを1つずつ搭載している。また、天面をクリックすると開くフタの下に、2.5インチHDD(9.5mm厚)を内蔵するスロットがある。HDDの内蔵には専用のマウンタを使う。
本体の大きさは約123×123×263mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1,138gだ。リモコンの大きさは約37×150×21mm(同)で、重量は約36g、リモコン用の電源は単4電池2本だ。本体用のACアダプタ以外で同梱するケーブル類はLANケーブルとHDMIケーブルが1本ずつ。本体色白で光沢処理されている。
管理画面はブラウザUI、Android & iOS用のアプリ、そしてHDMI出力の3種類。PCやMacなどが手元にない状態でも、接続設定から普段使いまで不便なくできる。
管理画面と機能
管理画面はWeb UIも含め、省入力なものになっている。例えば、2.4GHz帯と5GHz帯の暗号化キーは共通のものを使うのが前提で、5GHz帯のSSIDは固定、無線LAN機能のオン/オフができるのは2.4GHz帯のみ、セキュリティ設定やペアレンタルコントロールでフィルタする端末を指定する際は接続機器一覧から選ぶなどだ。
それから、接続している機器がどんなものなのか、アイコン表示になっているため分かりやすい。機器の種類を高い精度で判別してそれに相応しいアイコンを自動で割り当ててくれるので初心者向きと言えるかもしれない。アイコンはユーザーが個別に変更可能で「ノートPC」、「デスクトップPC」、「スマートフォン」、「タブレット」、「ゲーム機」など9種類から選択できる。また、無線で繋がっている機器名末尾には「-Wireless」、有線で繋がっている機器は「-Ethernet」を付けて表示する。この点も分かりやすくていいかもしれない。
AndroidやiOSに対応した専用アプリ「HiLink」についてだが、シンプルながらWeb UI同様接続中の機器が確認しやすく、ゲストネットワーク設定や省電力設定など、よく使われそうな機能に絞った、操作がしやすいUIのアプリだ。同じLAN内のHiLinkインストール済み機器に画像や動画などのファイルを送信する機能も搭載している。また、honor cubeに保存したファイルにリモートアクセスできる「MyTime」と呼ばれるアプリも別途用意されている。アプリについてだが、Windows用のものとして「cubeハードドライブツール」と呼ばれるものも提供されているが、こちらはローカルドライブとしてhonor cubeのストレージをマウントするだけのシンプルなものだ。
HDMI出力からアクセスできるUIはAndroid搭載ということもあってか洗練された印象を受ける。画像や動画を表示する機能ではWindows 8のModern UIのようなタイル表示が使われるなど、少し戸惑うところもあるが、分かりにくいということはない。動作については少々もたつくところはあるが許容範囲と言っていいだろう。
搭載している機能についてだが、主なものとしては、LAN内でのファイル共有とメディアサーバー、アクセスできる時間とURLを端末単位で指定できる「ペアレンタルコントロール」、3段階切り替えで設定できる「ファイアウォール」、SYNフラッドなどの攻撃からの保護、FTPやHTTPなどアプリケーション名で設定できるパケットフィルタ、「DynDNS」、「TZO」といったサービスに対応したダイナミックDNSなどがある。
そのほか、L2TP、IPSec、PPTPに対応したVPNクライアント機能、種類別にフィルタできるログ機能、使用するアプリケーションと端末名を選択するだけで設定できる「転送」機能がある。
ベンチマーク
速度の測定にはCrystalDiskMark 4.0.3(以下「CDM」)、iperf(Jperf 2.0.2)、Python 3.4.1を使用した。honor cubeに、1台のPCを100Mbpsの有線LANで繋いだ状態(サーバー)にして、もう1台のPCを11ac(接続速度866Mbps)、11n(接続速度300Mbps)、100Mbps有線LANで繋いで(クライアント)、2台のPC間をCDMとiperfで測定した。また、honor cube本体に内蔵するHDDの速度をPythonの「shutil.copy()」を使って測定した。使用したPCはOSがWindows 8.1 Pro 64bit版、メモリ8GBで共通、サーバー側のCPUがCore i5 3GHzでクライアント側のCPUがCore i3 3.3GHz、無線LANアダプタはASUS「PCE-AC68」だ。
11ac-866Mbps | 11n-300Mbps | 100Mbps有線 | |
---|---|---|---|
リード | 99.2 | 99.2 | 99.2 |
ライト | 74.5 | 71.7 | 86.2 |
CDMを使った2台のPC間の速度測定では、ネットワークドライブとしてマウントしたサーバー側のRAMDISKを使用している。結果は、リードについては11ac、11n、100Mbps有線LAN全て同じ約99Mbpsだった。小数点2桁以下については値が異なるが誤差の範囲だろう。ライトについては100Mbps有線LANが約86Mbps、11acがそれより10Mbps程度下がって約74Mbps、11nが11acより3Mbps下がって約71Mbpsだった。
11ac-866Mbps | 11n-300Mbps | 100Mbps有線 | |
---|---|---|---|
test1 | 95.2 | 86.4 | 95.9 |
test2 | 94.9 | 85.3 | 94.8 |
test3 | 94.7 | 86.7 | 94.9 |
test4 | 94.2 | 87.4 | 95.0 |
test5 | 94.4 | 87.0 | 94.8 |
test6 | 94.7 | 87.6 | 95.0 |
test7 | 94.8 | 87.4 | 94.9 |
test8 | 94.4 | 77.8 | 94.9 |
test9 | 94.4 | 88.9 | 94.8 |
test10 | 94.6 | 88.3 | 94.9 |
平均 | 94.5 | 86.2 | 94.9 |
iperfを使った2台のPC間の速度測定結果は、11acと100Mbps有線LANの平均が約95Mbpsでほぼ同じ(小数点以下1桁以降の差)で、11nはそれより約9Mbps下がって約86Mbpsだった。
11ac-866Mbps | 11n-300Mbps | 100Mbps有線 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
リード | ライト | リード | ライト | リード | ライト | |
test1 | 37.7 | 31.1 | 32.4 | 26.6 | 47.7 | 37.5 |
test2 | 37.6 | 33.3 | 33.3 | 31.3 | 47.5 | 42.3 |
test3 | 38.0 | 33.7 | 33.2 | 30.5 | 47.8 | 42.5 |
test4 | 37.9 | 33.2 | 33.0 | 31.6 | 47.4 | 42.2 |
test5 | 37.2 | 32.9 | 33.4 | 31.0 | 47.7 | 41.7 |
honor cube内蔵HDDの速度測定は、クライアントのRAMDISKに置いた約100MBのファイルを、Pythonを使って5回読み書きして行なった。結果は、リードが100Mbps有線LANが47~48Mbps、11acが約37~38Mbps、11nが32~33Mbpsだった。ライトは100Mbps有線LANが37~43Mbps、11acが31~34Mbps、11nが26~32Mbpsだった。
初心者でも取っ付きやすいUIが魅力
honor cubeは11acが上限867Mbps、有線LANが上限100Mbpsということで、速いというわけではないが、子機の対応状況やインターネットの接続速度を考えると、現実的で十分に実用的な速度の製品だ。また、あまりコンピュータ類に詳しくない人達の頭を悩ますスマートフォンやタブレットの画像や動画のバックアップが簡単にできるようになっているなど、ポイントを押さえた仕様になっている点は好感が持てる。
管理画面のUIについてだが、特にWeb UIについてはAndroidやiOSの影響が見られる、より洗練されたデザインになっているのが印象的だ。今やテキストベースの古式ゆかしいデザインは違和感すら感じることもある時代である。もちろん、管理画面にアクセスするユーザーは「分かっている」少数派なので、気にしない人も多いと思うのだが。