井上繁樹の最新通信機器事情

ネットギア「Nighthawk X6 R8000」

~6本アンテナの11ac対応高速無線LANルーター

「Nighthawk X6 R8000」

 ネットギアの「Nighthawk X6 R8000」は6本のアンテナと本体に大きく開いた排気口が印象的な11ac対応の無線LANルーターだ。機能的には5GHz帯については2つの帯域に分け、同時通信数を増やすことで速度低下軽減を狙った仕様がユニークだ。

R8000天面側。アンテナは折りたたまれた状態。三角格子状の大きな排気口から青い基板が透けて見える
真上から。中央上にロゴ。その下にPower、Internet、2.4GHz、5GHz(1)、5GHz(2)、USB 3.0、USB 2.0、LANポート1~4のランプが並ぶ。さらにその下にWi-Fiオン/オフボタンとWPSボタン
正面。スポーツカーのような左右対称の排気口が2つ並ぶ
背面。左からUSB 2.0ポート、LEDオン/オフボタン、LAN1~4ポート、INTERNET(WAN側)ポート、USB 3.0ポート、Resetボタン、DCコネクタ、Powerオン/オフボタン。下側は天面側同様三角格子状の排気口
底面。SSID、暗号化キー、シリアル番号、MACアドレスを印刷したシールと、壁掛け時に使用する穴が2つある。中央の三角格子は排気口ではなく模様
アンテナを立てた状態で斜め上から。天面がほぼ排気口になっていることが分かる
アンテナに前後方向に角度をつけた状態で斜め上から。手前側2本は前側に約45度、奥側2本は後ろ側に約45度曲がる。中央2本は前後方向には角度を変えられない
アンテナを90度以上に左右に開いた状態で斜め上から。アンテナが本体からはみ出る分接地面積が広がる
アンテナを最大限開いた状態で斜め上から。伸びたアンテナの分だけさらに接地面積は広がる
アンテナを立てた状態で正面から。側面を除けばほぼ排気口であることが分かる
アンテナを最大限開いた状態で正面から
同梱物。LANケーブル、ACアダプタ、インストールガイドなど冊子類

 本体デザインで特徴的なのが、6本のアンテナで、水平に収納されている状態から、右もしくは左方向に約135度開くほか、中央の2本を除き、さらに前もしくは後ろに約45度開く。アンテナの角度の自由度が高いため、広い範囲をカバーできる。設置は横置き以外に壁掛けも可能だ。壁掛け時は横置き時に前になる側が上になる。動作LEDは背面側のスイッチでオン/オフ可能だ。LEDは白色中心なので設置場所によっては常夜灯的使い方ができるかもしれない。

 接続端子は、有線LAN部分がWAN×1、LAN×4でいずれも1Gbps対応となっている。さらに、USB 2.0端子とUSB 3.0端子を装備しており、ストレージを接続してNASやオンラインストレージ、バックアップなどに利用できるほか、USB接続のプリンタをLAN内で共用することも可能だ。

 本体は295.5×226.8×54.5mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は1.1kg。アンテナを垂直に立てた状態の高さは約135mm、アンテナを最大限開いた状態の幅は約375mm、奥行きは195mm。本体色は黒で、動作ランプ類がある天面中央のバー部分は光沢、それ以外の部分は細かめのザラザラした表面処理がなされている。

 管理画面はWebブラウザで開けるWeb UIに加え、AndroidやiOSに対応した専用アプリが用意されている。WindowsやMacなどがなくても、スマートフォンやタブレットがあれば接続設定から普段の利用まで不便なくできる。

機能の詳細

 ブラウザで開けるWeb UIの管理画面のアドレスは、Windowsであればipconfigなどのコマンドで調べることができる「デフォルトゲートウェイ」のアドレスがそのまま使えるが、わざわざ調べなくてもアドレスとして「www.routerlogin.net」を指定することで開ける(自動的にリダイレクトされる)。

Web UIトップ。メニュー構成も含め以前のモデルから大きな変更は無い
ルーターのステータス画面。SSIDはゲスト用も含めると6個。各周波数帯で使用中のチャンネルも確認できる
ログ画面。必要なものに絞ってログを表示/保存できる。保存したログは定期的にメールで送信できる
アクセス制御。接続中の機器の一覧から、接続可能な機器を指定できる
接続したUSBストレージは共有可能で、ブラウザやFTPでアクセス可能。パスワードはWeb UIにアクセスする際に使用するものと共通
ダイナミックDNSは無料で1つドメインを取得できるNETGEAR DDNSに加え、NoIP、DynDNSに対応
OPEN VPNサーバー搭載。画面付きで手順を解説。ネットワーク接続プロファイル名の変更や、設定ファイル(.opvn)のアドレスの変更など一手間必要
Windows版のOpen VPNクライアントを使ってインターネット経由でLANにアクセスした状態。通知領域のアイコンが、左上のアイコンのように画面が緑になったら接続成功
有線ルーターに接続して、無線LANのアクセスポイントとしても利用可能

 管理画面のパスワードは初期設定は非常に簡単なものなので変更必須だ。このパスワードは管理画面以外にも、LAN内のファイル共有や、ブラウザ経由でのLAN内およびインターネット経由でのアクセス、さらにFTPでのアクセスでも同じもの使う。IDは「admin」のまま変更できないので、パスワードの変更だけは忘れないようにしたい。

 無線LAN機能についてだが、2.4GHz帯では倍速モード(40MHz)で最大接続速度が600Mbpsということだが、まだ対応機種は少ない状態だ。今後の対応機種の登場に期待したい。それから、5GHz帯は帯域別に2つのSSIDに分けられていて、ワイヤレス1は36~64までのチャンネル、ワイヤレス2は100~128までのチャンネルが固定で割り当てられている。これにより同時通信ができる数を増やしているのだが、ワイヤレス2のチャンネルが利用できる無線LAN子機が少ないので、今しばらくは限定的な利用になるものと思われる。

Windows用管理アプリのトップ画面。Wi-Fiを搭載していないPCで起動しているで「有効になっていない」
インターネットのトラフィック表示。速度測定ができる。リンクから「www.speedtest.net」のWebページに直接ジャンプできる(Webブラウザで開く)
SPEEDTESTの速度測定結果。スマホやタブレットでもお馴染みの速度測定サービスだ
トラフィックメーター。ブラウザで利用するWeb UIには無いグラフ表示
ネットワークマップ。こちらもWeb GIには無いグラフィカルな表示。端末をクリックするとIPアドレスや接続速度が確認できる
ペアレンタルコントロールはOpenDNS提供のサービスを使う。OpenDNSのアカウントが必要だが、アプリから出ることなくアカウント取得が可能
製品登録を始めとしたユーザーサポートもアプリからアクセスできる
iOS版管理アプリのトップ画面。表示しきれないメニュー項目は2頁目に表示される
無線LANの接続設定はQRコードが利用可能
ゲストアクセスの接続時間設定。1時間から最長1週間まで
トラフィックメーター。Windows版アプリ同様グラフ表示
ネットワークマップ。表示しきれない端末は2頁目以降に表示。アクセス制御設定を呼び出し可能。Windows版同様、端末アイコンをクリックするとIPアドレスや接続速度を確認できる
LAN内のメディアサーバーを表示する「ソース」画面。ここからLAN内で配信中のファイルにアクセスできる
メディアサービスの再起動やソースフォルダのDBの更新もアプリからできる

 「ペアレンタルコントロール」機能はOpenDNSが提供するサービスを使うもので無料で利用できる。利用する際はOpenDNSのアカウント取得が必要になるが、Windows/Mac/Android/iOSに対応した専用アプリから設定すれば、アカウントの取得も含めて設定できる。英語が得意ではないユーザーは、OpenDNSのサイトの英文との格闘を回避できるメリットもある。ペアレンタルコントロールの強度は3段階から選択できるほかフィルタする内容を細かく指定できる。

 「VPNサービス」はOpen VPN対応のVPNサーバー機能で、インターネット経由でR8000を設置した自宅LAN内にアクセスできるようになる。Windows 8.1 Proで利用してみたところ、インターネット経由で接続していつも通りLAN内のPCをエクスプローラー上に表示させ、共有フォルダにアクセスできた。設定方法は少々複雑だが、管理画面上にスクリーンショット付きで手順が解説されている。ただし、それでもOpen VPNのクライアントに関するある程度の知識は必要だ。例えば解説で扱われている公式のWindows版クライアントなら、解説で紹介されている手順以外に、ダウンロードした設定ファイル内のルーターのアドレスの書き換えが必要だった。

 省電力系の機能としては、動作LEDの点灯オフや、ゲストも含めると6つあるSSIDの個別の週間動作スケジュール設定がある。動作LEDの設定は管理画面や専用アプリに加え、本体背面の切り替えスイッチでも設定できる。

ベンチマーク

 速度の測定にはCrystalDiskMark 4.0.3(以下「CDM」)、iperf(Jperf 2.0.2)、Windows のFTPコマンドを使用した。R8000に、1台のPCを1Gbpsの有線LANで繋いだ状態で(サーバー)、もう1台を1.3Gbpsの11ac、288Mbpsの11n、1Gbpsの有線LANで繋いで(クライアント)、2台のPC間の速度をCDM(RAMDISKを使用)とiperfで測定した。また、R8000にUSB 3.0対応のUSBメモリを接続してCDMとFTPでその速度を測定した。CDMによる測定の際はサーバー側の共有フォルダをネットワークドライブ化して、ローカルストレージとしてマウントして使用している。

【表1】PC間のCDM速度測定結果(Mbps)
読み込み書き込み
11n 2.4GHz-288Mbps189.3100.3
11ac 5GHz-1.3Gbps882.0597.5
1Gbps有線LAN987.0940.5
11ac 5GHz-1.3Gbps接続時のCDM測定結果。読み込み速度については1Gbps有線LANに肉薄
【表2】PC間のiperf速度測定結果(Mbps)
Test1Test2Test3Test4Test5Test6Test7Test8Test9Test10
11n 2.4GHz-288Mbps165186190185195185206185191197
11ac 5GHz-1.3Gbps619583497580596588538598602580
1Gbps有線LAN832859855844858853843853858854
11ac 5GHz-1.3Gbps接続時のiperf測定結果。5~600Mbpsで、体感上1Gbps有線LANの無い速度だ

 2台のPC間の速度は表1と表2の通りで、CDMの結果を見ると1.3Gbpsの11ac接続時は読み込みが882Mbps、書き込みが約598Mbpsだった。1Gbps有線LAN接続時は読み込み約987Mbps、書き込み約941Mbpsなので、読み込みについては105Mbps差で、その差を感じることはあまり無いと言える。書き込みについては約598Mbpsと有線LANに比べると遅めだが、HDDを含む共有フォルダの実効速度を考えると有線との速度差は感じにくいレベルだ。

【表3】NAS機能のCDM速度測定結果(Mbps)
読み込み書き込み
11ac 5GHz-1.3Gbps605.270.1
1Gbps有線LAN983.572.1
【表4】5GHz-1.3Gbps使用時NAS機能FTP速度測定結果(Mbps)
Test1Test2Test3Test4Test5
GET183.6172.5169.3181.0122.3
PUT65.751.856.065.067.1
【表5】1Gbps有線LAN使用時NAS機能FTP速度測定結果(Mbps)
Test1Test2Test3Test4Test5
GET346.3407.8408.6349.3357.0
PUT62.960.762.762.664.0

 USB 3.0接続のUSBメモリを使った速度測定結果は表3~5の通りで、CDMの速読測定結果は1.3Gbpsの11ac接続時で読み込み約605Mbps、書き込み約70Mbpsだった。PC間の速度と比べると読み込みでも600Mbpsと遅くはなるが、注目したいのは1Gbpsの有線LAN接続時の速度で読み込みが約984MbpsとPC並の速度が出ている。無線LANルーター製品のNAS機能としては非常に高速な部類だ。

 FTPの速度はWindowsのFTPコマンドを使ってR8000のFTPサーバー機能に接続して測定した。結果は1.3Gbpsの11ac接続時でGET約122~184Mbps、1Gbpsの有線LAN接続時で約346~409Mbpsだった。

 ちなみに、速度測定に使用したPCはいずれもOSが64bit版のWindows 8.1 Proでメモリ8GB搭載、サーバー側のCPUがCore i5 3GHz、クライアント側のCPUがCore i3 3.3GHzで無線LANアダプタはASUSの「PCE-AC68」だった。

まとめと感想

 6本ものアンテナを搭載し、拡げるとひっくり返った黒い昆虫の様な、精悍でユニークな本体形状だが、速度は現時点で最速クラスであり、機能もフラグシップモデルと呼ぶにふさわしい充実ぶりで、実力派と言って良いだろう。残念なのは現状子機側が追いついていないことくらいだろうか。

 以前のモデルと比較すると印象的なのがVPNサーバーを搭載したことだ。それもWindowsでお馴染みのPPTPでは無く、Open VPNのみ対応というところに意思を感じる。セットアップ手順は少々複雑だが、管理画面で詳細に画像付きで手順を解説するなどフォローもされている。手にしたなら一度は試してみることをお勧めする。

(井上 繁樹)