井上繁樹の最新通信機器事情

プリンストン「Toaster Pro PTW-TSTP」

〜SDカード2枚とUSBストレージが同時に使えて無線LANルーターにもなる

Toaster Pro
発売中

価格:7,980円

 2012年後半あたりからバッテリを内蔵した無線LANで繋いで使える「モバイルストレージ」製品が増えている。「Toaster Pro」はSDカードスロットを2つ搭載するなどほかにないユニークな仕様の製品ということで、どんなものなのか製品を入手して確かめてみた。

概要

 「Toaster Pro PTW-TSTP」は「モバイルストレージ」と呼ばれるジャンルの製品だ。持ち歩き用途を想定した外付けのHDDもこのジャンルに含まれるが、昨年後半ぐらいから「モバイル無線LAN NAS」とも呼べそうな、無線LAN経由でアクセスできる電源内蔵のコンパクトな製品が増えている。調べてみると現行製品の数は2桁を超えていた。

 これら無線LAN対応のモバイルストレージは、内蔵ストレージに大容量のHDDを使うもの、SSDを使うことで小型軽量にしたもの、SDカードやUSBメモリが利用できるもの、大容量のバッテリを活かしてモバイルバッテリとしても使えるものなど、さまざまな方向性を持った製品がある。

 Toaster ProはSDカードスロット2つとUSBメモリやUSB HDDを接続できるUSB 2.0ポートを1つ搭載している。内蔵ストレージは一切持たない。充電池を内蔵しているがモバイルバッテリとしては使えない。その代わりと言ってはなんだが有線LANポートを搭載しており、有線LAN機能のないスマートフォンやタブレット端末などをインターネットにつなぐための無線LANルーターとして使える。だからモバイルストレージと言うより、SDカードやUSBストレージの読み書きができる無線LANルーターと呼ぶべきなのかもしれない。

 ファイルサーバーとしてsambaを搭載しているので、PCであればストレージへのアクセスにはエクスプローラーなどOSに標準搭載されているものが使える。iOSやAndroid対応機器の場合は「Fun Toaster」と呼ばれる無料の専用アプリを使うことになる。また、それ以外にもWebブラウザでアクセスできるWeb UIがある。

 充電は給電に対応しているMicro USBポートを使う。電源をオフにしてMicro USBポート経由でPCに接続すると、充電しつつSDカードスロット兼USB2.0ポートとして使える。

接続したストレージへのアクセス

 Toaster ProはSDカードとUSBストレージが使える。対応しているフォーマットは、SDカードとUSBメモリの場合はFAT32かexFAT形式で、USB HDDは読み込みのみNTFS形式にも対応する。NTFS形式については対応していない機器も多いので、互換性を考えるとあまり使わない方がいいのかもしれない。

エクスプローラー画面。アドレスバーに「\\10.10.1.1」か「SMBSERVER」と入力すると開ける
Fun Toasterのトップ画面。接続したストレージがフォルダとして見えている。名称は本体にプリントされているものと共通
ファイルは種類別に色付きのアイコンで表示される
画像アイコンをタップすると画像が表示される。同時に、同じフォルダ内の画像をまとめてみれるビューワモードにもなっている
ビューワモードの状態で、画面右上の四角が4つ並んだアイコンをタップすると、同じフォルダ内の画像をアイコン表示する
表示中の画像は右下の「☆」マークをタップするとFun Toasterをインストールした端末側にファイルをコピーできる
PDFのアイコンをタップすると、PDFのプレビュー表示もできる。「Download」をタップすると、画像表示の「☆」マーク同様Fun Toasterをインストールした端末側にファイルをコピーできる
右下のネジ状アイコンをタップすると開く設定画面。バッファサイズの変更や、リピーターモード時に親となる無線LANルーター(アクセスポイント)を設定できる
リピーターモードの「親」の登録はWeb UIではできないので、必ずアプリを使う必要がある

 Toaster Proに接続したストレージはPCであればエクスプローラーのアドレスバーに「\\10.10.1.1」か「\\SMBSERVER」と入力すれば開ける。「10.10.1.1」はToster Proに設定されている固定のIPアドレスで変更はできない。Toaster Proに接続した各ストレージは「mnt」フォルダの中に作成されるフォルダとして見える。フォルダ名はストレージの名称が連想できるような名前ではないので、その点は少々不便かもしれない。

Web UIトップ。ファイラーにもなっている。フォルダは自動で解析され、種類別に分類して画面下にリストアップされる
Photosアイコンをクリックすると画像をアイコンでプレビュー表示する。アイコン表示には数秒かかる
アイコン表示された画像をクリックするとビューワ表示になる。時間がかかるので分かりにくいが、スライドショーになっていて一定時間経つと表示する画像を切り替える
Web UIのトップ画面で右上のネジ状のアイコンをクリックすると開く設定画面。「OP Mode」「Security」「WLAN Setting」の3つの項目がある
OP Modeでは、有線LANでインターネットへと接続する「Access Point Mode」と、無線LANでインターネットへつなぐ「Repeater Mode」を切り替えることができる
Security。暗号化キーの変更ができる
WLAN Setting。チャンネル番号の変更ができる。デフォルトでは自動で設定する「Auto」

 スマートフォンやタブレット端末用のアプリ「Fun Toaster」を使う場合は、PCでエクスプローラーを使うのに近い感覚でToaster Proのストレージにアクセスできる。ただし、ファイルの読み書きはエクスプローラーを使う場合と比べると制限されていて、対応しているとされる形式ファイル以外はアイコンでの表示とクライアント側へのダウンロードには対応しない(ダウンロード自体はできるがFun Toaster上で表示されないので取り出せない)。

 Fun Toasterは「バッファ」と呼ばれる専用の領域にToaster Proからダウンロードしたファイルを保存する。バッファはほかのアプリからはアクセスできず、文字通り一時的な保存領域としての利用を想定したもののようだ。バッファのサイズは初期設定では4GB。0.5GB単位でサイズを変更可能で最小は2GB。バッファのクリアは設定画面でできる。

 Web UIはsambaやスマートフォン、タブレット端末用アプリとは違って、ファイルの書き込みはできない。出先で知り合いに写真や書類を配るのに適した仕様になっている。ストレージの種類がアイコンや色で判別できるようになっているほか、画像や動画、PDFなどよく使われる種類のファイルは、階層化されたフォルダを辿っていかなくても各ストレージのトップから種類別に探せるなど、使い勝手も工夫されている。画像や動画のプレビュー機能もあるがアプリのFun Toasterと比べると表示や再生が始まるまで時間がかかる(2MBのJPGファイルで十数秒かかった)。こちらはおまけの機能だと思った方がいいだろう。

モバイルストレージとしての使い勝手

 Toaster Proの大きさは89×58×21mm(幅×奥行き×高さ)で、タバコの箱を半分にして厚みをいくらか増やしたくらいの大きさだ。ポケットに入れて使う場合でも不便に感じることのない大きさだ。重さは88gで、手にとった感じだと見た目よりも重く感じるかもしれない。

 内蔵しているバッテリはリチウムポリマーで容量は1,250mAh。消費電力は5Wで、動画再生時で約3時間稼働する。動画再生のように長時間連続して負荷をかけるケースはあまりないので、余裕を持って3時間使えると考えていいだろう。

 本体色は黒のみで、ルーター製品では定番の鏡面仕上げだ。本体表面に傷がつかないようにフィルムを貼った状態で箱に入っていると言えば分かりやすい人もいるかもしれない。色はともかく、プラスチックの鏡面仕上げは傷が付きやすく目立つので、持ち出して使う機会の多い本機のような製品では避けて欲しかったように思うが、壊さないためにもケースに入れて持ち運ぶようにしておけば気になることもないだろう。

 本機の最大の特徴はSDカードスロットを2つ搭載していることだ。モバイルストレージは先に述べた通り現行のもので2桁以上の数の製品があるが、SDカードスロットを2つ搭載したものはほかにない。SDカードスロットが2つあるメリットは、例えばデジカメとスマートフォンなどSDカードを搭載した機器の間で空き容量を融通できることと、以前使っていた機種用に購入して現在は余らせているSDカードを再利用できることだろうか。同容量以上のSDカードを用意しておけばまるごとバックアップが手軽にできる点も見逃せない。ただし、ハードによってはあまり大容量のSDカードに対応していないことがあるので、購入する際は事前の確認を忘れないようにしたい。本機は64GBまでのSDカードに対応しているが、32GBまでしか対応していないような製品もまだある。

ベンチマーク

 PCで使う場合の速度の測定は、Windows Power Shell上のMeasure-CommandとCopy-Itemを組み合わせて行なった。コピーするのに使用したファイルは25MBのバイナリファイルで、速度の算出の際はビット単位の正確な値を使用した。参考データのUSB接続時の速度についてはCrystalDiskMark3.0.2eを使って測定した。測定に使用したPCはLenovo E430(Windows8 Pro 64bit、Core i5、Intel 335シリーズSSD)。

【表1】PCで使った場合の速度測定結果
test1 test2 test3 test4 test5
リード ライト リード ライト リード ライト リード ライト リード ライト
SDカード1 2.1 15.1 6.3 7.2 2.8 15.5 2.7 16.2 2.7 11.0
SDカード2 2.7 6.6 2.5 7.2 2.4 12.2 2.4 8.2 2.9 10.1
USBメモリ 2.5 14.7 2.0 15.1 2.7 7.9 2.9 10.6 2.5 10.5
【表2】PCにUSB接続した場合の速度測定結果(参考)
リード ライト
SDカード1 88.0 77.3
SDカード2 156.6 38.8
USBメモリ 165.0 13.1
参考:SDカード間のファイルコピーの速度(Windows 8のダイアログ表示)

 測定結果を見ると、読み込みは2〜3Mbps、書き込みは6〜10Mbpsもしくは6〜15Mbpsだった。使用するストレージの性能の影響もあるが、読み込みは2Mbps、書き込みは6Mbps出ると考えていいようだ。1MBのファイルの読み込みに約4秒、書き込みに約1秒かかる計算になる。実際にはもっと速度が出る場面が多いはずだが、扱うファイルが多くなる場合は、PC本体のSDカードスロットなりUSBポートを使った方がいいかもしれない。

 インターネットの接続速度についてだが、BNRスピードテストで試したところ、有線で接続した場合(Access Point Mode)はダウンロード2.8Mbps、無線LANで接続した場合(Repeater Mode)はダウンロード約0.8Mbpsだった(回線はBフレッツマンションタイプ)。

 ちなみに、電源投入してからSSIDが表示されるまで約30秒だった。電源オフはスイッチを押すと同時に行なわれる。

まとめと感想

 本機のモバイルストレージ機能はPCで使うには遅く感じるもので、スマートフォンやタブレットなど、SDカードスロットやUSBポートを持っていない機器に向いている。iOSアプリに関してはシンプルで使いやすく、速度の遅さを感じる場面もなく、使い勝手も悪くなかった。

 無線LANルーター機能については、この手の製品として決して速くはないが、遅くて困るというほどでもなく、実用的に使える範囲の性能だ。設定項目が少なく、IPアドレスなど固定になっているものもあるが、実際使うにあたって困ることはないだろう。ただ1点、無線LANリピーターの機能を使う際、親となる無線LANアクセスポイントの設定が、PCではできない点が気になった。もっとも本機を使う際、iOSやAndroid対応機器と併せて使わないという人はいないと思われるので、実際には問題にならないはずだ。

 Wi-Fiで使えるモバイルストレージとして、有線LANしかない環境を無線LAN化するポータブル無線LANルーターとして、無線LANの電波の中継器として、あるいは増設SDカードスロットとして、そのほか余っているSDカードやmicroSDカードの活用先として、などさまざまな場面で活躍してくれて、カバンに詰めるべき小物の数をついでに減らしてくれるなかなかの優れものだと言えるのではないだろうか。

(井上 繁樹)