~液晶が360度回転し、4つのスタイルで利用できるUltrabook |
レノボ・ジャパンの「IdeaPad Yoga 13」は、液晶が360度回転する、コンバーチブルタイプのUltrabookである。Windows 8は、タッチ操作に適したUIが搭載されているため、タブレットとの親和性が高い。そのため、Windows 8搭載ノートPCでは、ノートPCとしてもタブレットしても使えるコンバーチブルタイプの製品が各社から登場しており、注目が集まっている。今回取り上げるIdeaPad Yoga 13もそうした製品の1つであり、使い勝手のよさとコストパフォーマンスの高さが魅力だ。
本製品はもともと11月中旬の発売が予定されていたが、日本を含む全世界で予想を上回る受注による生産調整のため発売が延期された。このことからも本製品の人気の高さが伺える。価格はオープンプライスだが、店頭予想価格は13万円前後の見込みだ。
●ラップトップ、スタンド、テント、タブレットの4モードで使えるIdeaPad Yoga 13の店頭モデルは、CPUやメモリ容量が異なる2製品があり、それぞれボディカラーとしてシルバーグレーとクレメンタインオレンジの2色が用意されているので、モデルとしては全部で4モデルとなる。今回は、Core i7を搭載した上位モデル(シルバーグレー)を試用した。
IdeaPad Yoga 13は、2011年に登場したIdeaPad U300sと似たフラットなボディデザインを採用している。天板と底面にはマグネシウム合金が使われており、質感も高い。本体のサイズは、333.4×224.8×16.9mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1.5kgである。サイズは、13.3型液晶搭載Ultrabookとして標準的だが、重量はやや重い。同じ13.3型液晶を搭載したIdeaPad U300sの重量は、約1.32kgであり、液晶360度回転機構とタッチパネルを搭載している分、IdeaPad Yoga 13のほうが重くなっているのであろう。
IdeaPad Yoga 13は、液晶のヒンジが2軸になっており、1つのヒンジが180度ずつ回転することで、合計360度回転するようになっている。ソニーの「VAIO Duo 11」のようなスライドタイプでは、ノートPCスタイルとタブレットスタイルの2つのスタイルで利用できるが、IdeaPad Yoga 13では、液晶の角度を自由に変更できるため、全部で4種類のモードで利用できることが特徴だ。レノボは、それぞれのモードをラップトップモード、スタンドモード、テントモード、タブレットモードと呼んでいる。
ラップトップモードは、通常のノートPCとして使うモードで、液晶を閉じた状態から180度以上開き、キーボードを下にして置いた状態がスタンドモード、さらに液晶を開いて、卓上カレンダーのようにヒンジ部分を上にして置いた状態がテントモード、液晶を360度回転させて、裏側に折り返した状態がタブレットモードである。キーボードを使って文書を作成する場合はラップトップモード、タッチ操作で写真や動画などの閲覧に使うのなら、スタンドモードやテントモードが適している。用途に応じて、いろいろなモードで利用できることがメリットだ。
ただし、タブレットモードで片手で持って操作するには重量が重くて厳しく、また裏側にキーボードがむき出しになっているのもやや違和感がある(もちろん、タブレットモードではキーボードは無効になるので、押しても問題はない)。なお、タブレットモードなどでは、縦画面で使うことも可能だ。
液晶を360度回転させて、裏側におりかえすと、タブレットモードになる。キーボードは無効になるが、裏側にキーボードがむき出しになるので持ったときにやや違和感がある | タブレットモードでは、本体を縦にして縦表示で使うことも可能だ |
ラップトップモードからタブレットモードへの変形の様子 |
●Core i7と8GBメモリを搭載するなど基本性能は充実
次に、PCとしての基本性能を見ていこう。今回試用した上位モデルは、CPUとしてCore i7-3517U(1.9GHz)を搭載し、メモリは8GB実装されている。Ultrabookでは、Core i5と4GBメモリを搭載する製品が多いので、そうしたモデルに比べると1ランク上のスペックだ。また、IdeaPad Yoga 13はほかのUltrabookと同様、ユーザーによるメモリ増設はできない仕様になっているため、最初から8GBのメモリが実装されていることは嬉しい(下位モデルでは、Core i5-3317Uと4GBメモリを実装)。ストレージとしては128GBのSSDが搭載されている。
液晶は13.3型で、解像度が1,600×900ドットと高いことも嬉しい。また、視野角の広いIPS液晶を採用しているため、斜めから見ても色の変化が少ない。ただし、光沢タイプなので、コントラストは高いが、外光の映り込みがやや気になることがある。液晶には10点同時検出対応タッチパネルが装備されており、表面がフルフラットになっているので、エッジからのスワイプ操作なども快適だ。
液晶の上部には720p対応Webカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。また、液晶の下部にはWindowsボタンがあり、スタート画面をいつでも呼び出すことができる。
上位モデルということもあり、ストレージ容量はもう一声欲しかったところだが、それ以外の基本スペックについては、Ultrabookの中でもトップクラスであり満足できる。
液晶は13.3型で、解像度は1,600×900ドットである。光沢タイプなので、発色は鮮やかでコントラストも高いが、外光の映り込みが気になることがある | IPS液晶を採用しており、視野角が広い |
液晶上部に720p対応Webカメラを搭載。ビデオチャットなどに利用できる | 液晶下部には、Windowsボタンが用意されている |
●インターフェイスは必要最小限
インターフェイスを見ていこう。USBポートはUSB 2.0とUSB 3.0が1つずつ、映像出力はHDMI出力のみという、割り切った仕様になっている。コンシューマ向けとしてなら、必要最小限といえるが、ビジネス用途で使うのなら、有線LANやミニD-Sub15ピンがあると便利だ。また、メモリカードスロットとしてSDカードスロットを搭載しているが、SDカードのフタがダミーカード方式なので、紛失する恐れがある。
キーボードは、アイソレーションタイプの全88キーで、キーピッチは約18.5mmである。キーを強く押してもぐらつくようなことはなく、キータッチも良好だが、右側の「ね」や「る」などのキーのピッチがやや狭くなっているほか、Enterキーが右端ではなく、Enterキーの右側にも、「End」や「PgUp」などのキーが配置されているので、気になる人もいそうだ。ポインティングデバイスとしては、タッチパッドが搭載されている。タッチパッドはクリックボタンと一体化したタイプで、パッドのサイズが大きく、操作感は良好だ。
左側面には、HDMI出力やUSB 3.0、ボリュームボタンが用意されている | 左側面の端子部分のアップ |
右側面には、USB 2.0とSDカードスロット、ローテーションスイッチが用意されている | 右側面の端子部分のアップ |
SDカードスロットのフタはダミーカード方式なので、紛失するおそれがある | キーボードは全88キーで、キーピッチは約18.5mm。ただし、右側の「ね」や「る」などのキーのピッチは狭くなっている。Enterキーの右側にも、「End」や「PgUp」などのキーが配置されていることが気になる人もいるだろう | ポインティングデバイスとして、タッチパッドを搭載。クリックボタンとパッドが一体化したタイプだ |
●無線LANオンで6時間を超える駆動時間を実現
バッテリは4セルのリチウムポリマー電池で、交換はできないが、公称約7.4時間の駆動が可能とされている。実際に、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、6時間12分の駆動が可能であった(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)。バッテリ駆動時間もUltrabookとしては優秀な部類だ。また、ACアダプタも薄型で携帯しやすい。DCプラグは長方形で、NECパーソナルコンピュータの「LaVie Z」に使われているものと同じだ。また、充電時間が短く、2時間でフル充電が可能なことも評価できる。
付属のACアダプタは、薄型のタイプだ | DCプラグは長方形で、NECのLaVie Zで使われているものと同じ形状だ |
CDケース(左)とACアダプタのサイズ比較 | ACアダプタの重量は、実測で306gであった |
●Ultrabookとしては高い性能を実現
参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」だ。
比較用として、ソニー「VAIO Duo 11」、東芝「dynabook R542」、ソニー「VAIO T SVT13119FJS」、富士通「LIFEBOOK UH75/H」の値も掲載したが、VAIO Duo 11以外の3機種のOSはWindows 7なので、あくまで参考程度にしてほしい。
PCMark05のCPU Scoreの値は、Core i5を搭載した他のUltrabookよりも1割以上高い。また、HDD Scoreの値は、高速SSDを搭載するVAIO Duo 11には及ばないが、HDD+キャッシュ用SSDという構成になっている他の3機種よりも高い。総合的に見て、Ultrabookとしては高い性能を実現しているといえるだろう。
【表】ベンチマーク結果 | |||||
ノートPC | IdeaPad Yoga 13 | VAIO Duo 11 | dynabook R542 | VAIO T SVT13119FJS | LIFEBOOK UH75/H |
CPU | Core i7-3517U (1.9GHz) | Core i5-3317U (1.70GHz) | Core i5-3317U (1.70GHz) | Core i5-3317U (1.70GHz) | Core i5-3317U (1.70GHz) |
ビデオチップ | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 4000 |
PCMark05 | |||||
PCMarks | N/A | N/A | N/A | N/A | 6993 |
CPU Score | 8823 | 7885 | 7228 | 7937 | 7658 |
Memory Score | 7159 | 7825 | 8528 | 5940 | 6463 |
Graphics Score | 2464 | 2527 | 5779 | 4007 | 4807 |
HDD Score | 38063 | 48050 | 20204 | 12710 | 12899 |
PCMark Vantage 64bit | |||||
PCMark Score | N/A | N/A | 8577 | 8270 | 9300 |
Memories Score | 6642 | 7951 | 5591 | 5156 | 6776 |
TV and Movie Score | Failed | Failed | 3814 | 3844 | 4300 |
Gaming Score | 8237 | 10248 | 7599 | 6975 | 7224 |
Music Score | 14338 | 14890 | 9837 | 10643 | 10739 |
Communications Score | N/A | N/A | 9475 | 9643 | 9438 |
Productivity Score | N/A | N/A | 9393 | 10298 | 9147 |
HDD Score | 28358 | 45577 | 16308 | 18159 | 21564 |
PCMark Vantage 32bit | |||||
PCMark Score | N/A | N/A | 8130 | 7961 | 8811 |
Memories Score | 6423 | 7609 | 5428 | 4954 | 6773 |
TV and Movie Score | Failed | Failed | 4142 | 3776 | 4328 |
Gaming Score | 7207 | 9199 | 6754 | 6341 | 6041 |
Music Score | 13721 | 14047 | 9528 | 9305 | 9775 |
Communications Score | N/A | N/A | 9390 | 9173 | 9452 |
Productivity Score | N/A | N/A | 8576 | 9887 | 8295 |
HDD Score | 28508 | 45380 | 15478 | 18091 | 22010 |
PCMark 7 | |||||
PCMark score | 4644 | 4648 | 4298 | 3294 | 3119 |
Lightweight score | 3143 | 2818 | 3242 | 3193 | 2061 |
Productivity score | 2299 | 1977 | 2972 | 2963 | 1672 |
Creativity score | 8598 | 9178 | 6605 | 5095 | 5912 |
Entertainment score | 3264 | 3232 | 3658 | 2698 | 3020 |
Computation score | 14847 | 16495 | 14449 | 8866 | 15749 |
System storage score | 4877 | 5171 | 4051 | 3944 | 2018 |
3DMark03 | |||||
1,024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks) | 9153 | 12635 | 12607 | 7929 | 9565 |
CPU Score | 1553 | 1658 | 1615 | 1468 | 1544 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | |||||
HIGH | 4224 | 4206 | 3786 | 3699 | 3685 |
LOW | 6372 | 6190 | 5736 | 5685 | 5688 |
●Windows 8を快適に利用できるUltrabookとしてお勧めの製品
IdeaPad Yoga 13は、タッチパネル搭載のコンバーチブルUltrabookであり、Windows 8のウリであるタッチ操作を存分に楽しめる製品だ。重量はやや重めだが、ノートPCとしてもタブレットとしても、さらにその中間の形態でも使える、汎用性の高さが魅力である。製品としての作りもしっかりしており、使い勝手も優れている。
今回試用した上位モデルの想定実売価格は13万円前後、下位モデルは12万円前後とされており、1,600×900ドット液晶を搭載していることを考えると、コストパフォーマンスも高い。特に、CPUがCore i7で、メモリを8GB実装している上位モデルの買い得感は高い。後からメモリを増設することはできないので、メモリが4GBでは心許ないという人は、上位モデルを買うことをお勧めしたい。
(2012年 11月 20日)
[Text by 石井 英男]