KDDI「MOTOROLA PHOTON ISW11M」
~WiMAX対応のスマートフォン



KDDI MOTOROLA PHOTON ISW11M

発売中



 KDDIは、WiMAXに対応するスマートフォンの新モデル「MOTOROLA PHOTON ISW11M」を発売した。WiMAXに対応していることからテザリング機能も有効とされており、WiMAXルーターとしても活用できる点が大きな魅力。また、HDMI出力を利用して大画面TVなどでWebアクセスなどさまざまな機能を利用できる「Webtop」機能など、他のスマートフォンにはない特徴を備えている。今回、試用機をお借りできたので、これら機能を中心にチェックしていこう。

●WiMAX対応スマートフォン

 ではまず、簡単に「MOTOROLA PHOTON ISW11M」(以下、ISW11M)の特徴を紹介しておこう。

 ISW11Mは、auの2011年秋冬モデルとして発売されたAndroidスマートフォンだ。本体サイズは、67×12.2~13.0×127mm(幅×奥行き×高さ)。540×960ドット表示対応の4.3型液晶を搭載していることもあって、本体はやや大型だ。筆者は比較的手が大きいので、持て余すことはなかったものの、手の小さな人なら、かなり大きいと思うはずだ。同じくauのAndroidスマートフォンである「IS03」を横に並べて比較すると、それほど大きいとは感じないが、最近ではコンパクトなスマートフォンも多数登場しており、やはり大柄であることは間違いない。

 重量は仕様上で約158g、実測で156gであった。これは、手に持っただけでかなりずっしりと感じられるほどで、かなり重い。できれば、もう少し軽ければ良かったように思う。

 ISW11Mの特徴は、やはり標準でWiMAXに対応しているという点だろう。ISW11Mが対応する3G通信方式はCDMA 1X WIN(CDMA2000 1xEV-DO Rev.A)で、データ通信速度は下り最大3.1Mbps、上り最大1.8Mbpsであるのに対し、WiMAXは下り最大40Mbps、上り最大10Mbpsと圧倒的に高速だ。これにより、快適なデータ通信が可能となっている。

 プロセッサは、NVIDIA Tegra 2 1GHzを採用。無線機能は、3G通信とWiMAXに加え、IEEE 802.11b/g/n対応無線LANとBluetooth 2.1+EDRを搭載。カメラ機能は、背面に約800万画素のメインカメラと、液晶面に約30万画素のサブカメラを搭載。OSはAndroid 2.3.4を採用。おサイフケータイやワンセグ、赤外線通信といった、日本独自仕様には対応していない。その他の詳しい仕様に関しては、僚誌ケータイWatchの記事を参照してもらいたい。

本体正面。540×960ドット表示対応の4.3型液晶を搭載し、本体は比較的大きいフットプリントは67×127mm(幅×高さ)。auのIS03よりやや大きい厚さは12.2~13mm。最近は10mmを切る薄いスマートフォンも多く登場しているが、ISW11Mはやや厚く、IS03よりも厚い
重量は公称で約158g、実測で156gだった。手に持つとかなりずっしりと重く感じる下部側面。こちらには端子類はない左側面。microUSB端子とmicroHDMI端子が用意されている
上部側面。電源ボタンとヘッドフォン出力を配置右側面。内蔵カメラのシャッターボタンとボリュームボタンがある底面。800万画素のメインカメラとLEDフラッシュがある
背面にはスタンドが用意されており、横向きに立てて置ける。スタンドを開くと、画面は自動的に横向きに切り替わる。ムービーを再生する場合などに便利背面のフタを開けると、バッテリやmicroSDカードスロットにアクセスできるバッテリ横にmicroSDカードスロットがある
SIMカードスロットも用意されているが、au版はSIMなしで動作し、SIMは利用できないバッテリ容量は1,650mAhだ付属のACアダプタ。USB電源形式となっており、付属のUSBケーブルを利用して充電する

●最大8台までのWi-Fiテザリングをサポート

 ISW11MはWiMAX搭載機種ということもあり、テザリング機能が有効となっている。Wi-Fiを利用したテザリングとUSB接続によるテザリングに対応しており、Wi-Fiテザリング時には最大8台のWi-Fi対応機器を同時に接続し利用できる。この点が、ISW11Mの最大の特徴と言える。

 テザリング機能を利用する場合には、ホーム画面に標準で配置されている「Wi-Fiテザリング」ショートカットをタップして表示されるWi-Fiテザリング設定メニューから、「Wi-Fiテザリング」をタップすればいい。これで、Wi-Fiテザリングが有効となり、PCや携帯ゲーム機などのWi-Fi対応機器を接続してネットワークアクセスが可能となる。Wi-Fiテザリング時に接続できる機器の数は最大で8台だが、標準では2台に設定されている。

 ISW11MをUSBケーブルでPCと接続している場合には、USBテザリングが可能となる。こちらは、設定メニューの「無線とネットワークの設定」にある「テザリング」から「USBテザリング」を有効にすればよい。また、USBテザリングを利用する場合には、あらかじめPCに「USBドライバ」を導入しておく必要がある。こちらはMotorolaのホームページで配布されている。

 テザリングは、WiMAX接続時だけでなく3G回線接続時でも可能となっている。WiMAXのサービスエリア内ではWiMAXを利用した高速なテザリングが、WiMAXエリア外でも3G回線を利用したテザリングが可能というわけだ。実際に、WiMAX接続時と3G回線接続時の双方でテザリングを試してみたが、どちらも問題なく接続機器からインターネットアクセスが可能だった。ただ、やはり速度はWiMAX接続時のほうが圧倒的に高速で快適だ。筆者宅で試した限りでは、3G回線でも下り2Mbps程度と十分に高速だったが、WiMAXでは下り5~8Mbpsと圧倒的に速かった。筆者宅ではWiMAXの電波があまり良好ではなく、あまり速度が発揮されていないが、都内でWiMAXの電波が良好な場所で試したところ、下りで15Mbpsを超える速度を確認した。これでも理論値の40Mbpsの半分以下の速度ではあるが、これだけの速度が発揮されていれば全く不満を感じることはない。また、Wi-FiテザリングとUSBテザリングでの速度の違いもチェックしてみたが、どちらでもほとんど差は見られなかった。

 auは10月1日よりスマートフォンでも3G回線のデータ通信速度制御を実施している(直近3日間の利用パケット数が300万パケット(約336MB)以上になると通信速度が制御される)。そのため、3G回線を利用したテザリングが可能とはいえ、動画のストリーミング視聴を行なうなど、データ通信量が多くなるような使い方はなるべく避けるべきだろう。

Wi-Fiテザリング機能を利用するには、ホーム画面に用意されている「Wi-Fiテザリング」ショートカットをタップするWi-Fiテザリングの設定メニューでWi-Fiテザリングにチェックを入れれば、Wi-Fiテザリングが有効となるSSIDやパスワードは標準で設定されているが、もちろん自由に変更可能
接続可能なデバイス数は最大8個。標準では2個に設定されているMACアドレスを登録しておくことで、接続できるデバイスを制限することも可能USB経由でのテザリングも、もちろん利用可能。ただし、PC側にあらかじめUSBドライバを導入しておく必要がある

●Wi-Fiテザリングは6時間以上利用可能

 ISW11Mには、標準で1,650mAhのバッテリが搭載され、公称で連続通話時間 (音声通話時) 約530分、連続待受時間約138時間のバッテリ駆動が可能とされている。ただ、スマートフォンではデータ通信利用時のバッテリ駆動時間のほうが重要。特にISW11Mでは、Wi-Fiテザリングを利用した時のバッテリ駆動がどの程度可能なのかという点も非常に気になる。そこで、Wi-Fiテザリング時のバッテリ駆動時間をチェックしてみた。

 まずはじめに、WiMAXに接続した状態でWi-Fiテザリングを有効にし、ノートPCを接続して、ノートPCで連続してデータ通信を行なわせてチェックしてみた。ISW11M側は、WiMAXおよびWi-Fiテザリングのみオンにし、GPSとBluetoothはオフにし、画面も常にオフにした状態で検証した。また、PC側では、筆者宅に設置しているVULKANO FLOWを利用し、TVのストリーミング視聴を行った(映像ビットレートは最大600kbpsを上限に設定)。この状態で、約6時間23分と、かなり長いバッテリ駆動を確認した。

 次に、同じ方法で、WiMAXではなく3G通信を利用したテザリング時のバッテリ駆動時間を検証したところ、こちらも約6時間8分と、6時間を超える駆動時間を確認。今回のチェックでは、WiMAX接続のほうがわずかに駆動時間が長かったが、これは誤差と言える範囲内であり、どちらもほぼ同等の駆動時間と考えていいだろう。

 今回のチェックでは、ISW11Mの液晶画面をオフにするとともに、GPSやBluetoothもオフにしていたため、通常利用時には今回よりも駆動時間は短くなるものと思われる。とはいえ、これだけの駆動時間があれば、WiMAX対応のモバイルルーターとほぼ同じ感覚でテザリングが利用できそうだ。この点はかなり大きな魅力だ。

●大画面TVでWebアクセスなどが行なえる「Webtop」機能を用意

 ISW11Mには、テザリングが利用できるという点に加えて、もう1つ他のスマートフォンにはない特徴がある。それは、「Webtop」という機能だ。

 ISW11Mには、開発元であるMOTOROLAが発売する「MOTOROLA PHOTON HDステーション」(以下、HDステーション)と呼ばれるアクセサリーが用意されている。HDステーションは、いわゆるクレードルだが、単に充電ができるだけでなく、USBポートが3ポートと、HDMI出力端子(microHDMI)が用意されている。ISW11Mには本体にもmicro HDMI出力が用意されており、液晶テレビなどに接続してISW11Mに保存している動画や写真などを大画面で楽しむことができる。しかし、HDステーションにISW11Mを取り付け、HDMI出力を利用して液晶TVなどに接続すると、Webtop機能が利用可能となる。

 Webtopは、接続した液晶TVやディスプレイなどを利用して、大画面でさまざまな機能が利用できるというものだ。接続したディスプレイには、独自UIのデスクトップ画面が表示される。そして、ISW11Mの画面表示を再現したウィンドウや、WebブラウザのFirefoxなどが表示され、大画面でISW11Mの機能を利用したり、Webアクセスなどが行なえる。

 画面下部には、ファイル操作用のアプリやメーラー、Facebookにアクセスできるショートカットなどが用意されている。また、MOTOROLAロゴのアイコンを開くと、Webtop用のアプリを配布するサイトに接続され、機能強化も可能だ。

 Webtop利用時には、ISW11Mの画面にノートPCに搭載されているタッチパッドのような画面が表示される。画面下部にL、Rと書かれた領域が表示され、その部分をタップすることでマウスの左クリックや右クリックに相当する操作が可能。上部の何も表示されていない部分は、タッチパッドとして動作する。さらに、指2本で操作することでスクロール操作が行なえる。右下にはキーボードのアイコンが表示されており、そこをタップすればキーボードが表示され、文字入力が行なえる。また、HDステーションに用意されているUSBポートにキーボードやマウスを接続して利用することも可能だ。

 実際にWebtopを利用してみたが、ISW11M単体よりも非常に画面が見やすくなるのはもちろん、複数人で同時にWebアクセスを楽しみたい場合などに非常に重宝する。Webtop利用時の表示解像度は1,280×720ドットが上限となるため、ISW11Mの液晶画面よりも表示領域が広くなる点も嬉しい。また、WebアクセスだけならISW11Mを利用したタッチパッド機能のみでも大きな問題はないが、やはりUSBマウスとUSBキーボードを利用した方が圧倒的に快適に操作できた。Webtopを利用する場合には、USBマウスとUSBキーボードは必須と考えたい。Webtopの動作は、ISW11M本体側の動作に比べ若干重く感じるが、ひどく遅いということはない。ちなみに、ディスプレイ側にWebtopではなくISW11Mの液晶画面をそのまま表示させることも可能だ。

 ところで、海外では「Lapdock」と呼ばれるノートPCスタイルのクレードルも用意されている。Lapdockには、キーボードとタッチパッド、表示解像度が1,366×768ドットの11.6型液晶が搭載されており、HDステーションを利用するよりも高解像度表示が可能となる。また、ノートPCのように好きな場所で利用できるという点も魅力。ただし、Lapdockは日本での発売は未定。できれば、こちらも日本でも発売してもらいたいと思う。

MOTOROLAが発売する、ISW11M用のクレードル「MOTOROLA PHOTON HDステーション」背面には、micro HDMI端子とUSB 2.0ポートが3ポート、電源コネクタ、音声出力端子が用意されているHDステーションには専用のACアダプタが付属している
HDステーションがディスプレイに接続されていない状態でISW11Mを取り付けると、このようなメニューが表示され、特定のアプリケーションを起動できるこのような時計機能を自動的に起動させることも可能だHDステーションがディスプレイに接続されている状態でISW11Mを取り付けると、このようなメニューが表示され、Webtop機能が利用可能となる
Webtop機能を利用している様子。このように、大画面TVやディスプレイに独自UIの画面を表示させ、ISW11Mの機能を利用したり、専用アプリでWebアクセスなどが行なえるWebtopの画面。左はISW11Mの画面をそのまま再現するウィンドウ「モバイルビュー」。右にはWebブラウザのFirefoxが開かれる下部のモトローラアイコンを開くと、Webtop用のアプリ配布サイトが開き、各種アプリがダウンロードできる
ISW11M内部のファイルを操作するアプリも標準で用意されているモバイルビューでは、ISW11Mの機能を直接操作できる。メッセージを作成して送信したり、電話をかけることも可能だISW11Mの液晶はこのような表示となり、タッチパッドとして動作するようになる
スクリーンキーボードを表示させ、文字の入力も可能HDステーション背面のUSB端子にキーボードやマウスを接続して利用することも可能。もちろんBluetoothのキーボードやマウスも利用できるキーボードやマウスを接続すると、ISW11Mの画面には時刻が表示されるようになる
HDステーションにはリモコンが付属しており、メディアファイルの再生コントロールやボリューム調節など簡単な操作が行なえる北米で販売されている、ノートPCスタイルのクレードル「Lapdock」。Webtopよりも高解像度表示が可能で、利用できる場所の制約もなくなるため、日本での発売を期待したい

【動画】ISW11MをHDステーションに取り付けWebtopを起動している様子
【動画】Wentopを利用している様子
【動画】WebtopからISW11Mの画面表示に切り替えている様子

●パフォーマンスは軽快

 では、パフォーマンスを検証しよう。今回は、「Quadrant Professional Edition」と「AnTuTu Benchmark」を利用した。比較用のスマートフォンはなかったが、ISW11Mと同じプロセッサであるNVIDIA Tegra 2を搭載するAndroidタブレット(Optimus Pad L-06C、XOOM Wi-Fi TBi11M、IdeaPad Tablet K1、Sony Tablet S)の結果を参考値として掲載した。ちなみに、AnTuTu Benchmarkは、バージョンアップが短期間で繰り返されており、Androidタブレットで利用したものとISW11Mで利用したものとではバージョンが異なっている(タブレットはバージョン2.1、ISW11Mはバージョン2.3.1)ので、こちらも参考値として見てもらいたい。

 まず、Quadrant Professional Editionの結果を見ると、タブレットの結果よりもかなり数値が良くなっている。これは、Quadrant Professional EditionではAndroid 2.x系よりもAndroid 3.x系でかなり結果が低下するという傾向がそのまま現れているだけと考えていい。そういった意味では、この結果通りのパフォーマンス差があるとは考えない方がいい。

Quadrant Professional Edition 総合
Quadrant Professional Edition 詳細

 次に、AnTuTu Benchmarkの結果だ。こちらは、一部の結果でISW11Mと他のタブレットとの間に差が見られる部分もあるが、トータルではほぼ互角の結果となっている。特にプロセッサのパフォーマンスに関してはほぼ横並びとなっているが、これは全て同じプロセッサを搭載していることからも当然の結果と言える。3D描画能力はISW11Mが最も優れているが、これは表示解像度が最も低いことによるものと考えられる。

AnTuTu Benchmark 2.1
 Optimus Pad(L-06C) Android 3.1XOOM Wi-Fi TBi11M Android 3.1IdeaPad Tablet K1 Android 3.1Sony Tablet SMotorola Photon
RAM819828818819581
CPU integer11701183116911701115
CPU float-point10181035101610181015
2D graphics265246292293292
3D graphics8227598028111119
Database IO282370175325350
SD card write15010513195134
SD card read172159131192152
Total score46984685453447234758

 実際に操作してみた感触も、Tegra 2搭載タブレット同様、非常に軽快だった。さまざまな操作やアプリを利用している時に、引っかかりや動作の重さを感じる場面はほとんどない。こういった部分は、やはり高性能なデュアルコアプロセッサを採用している大きな利点といえる。

●テザリング機能に魅力を感じるなら手に入れる価値あり

 今回、ISW11Mを利用してテザリング機能やWebtop機能などを試してみたが、やはりテザリング機能は非常に重宝する。外出先でノートPCを利用する機会の多い人は、外出先でのネット接続確保のために、携帯電話やスマートフォン以外にWiMAXルーターや3Gルーターを利用しているという人が多いはず。また、ノートPCに搭載されているWiMAX機能やワイヤレスWAN機能を利用しているという人もいるだろう。ただ、その場合には1人でいくつものネットワーク回線を契約しなければならず、かなりコストがかかってしまう。しかし、ISW11Mを利用すれば、PCや携帯ゲーム機などを利用し、外出先でネットワーク接続する場合でも、回線を一本化でき、コストを大幅に削減できることになる。この点は非常に大きな利点となるはずだ。

 Webtop機能については、積極的に利用するかどうかは、利用スタイルによって大きく変わってくるだろう。確かに、大画面でWebアクセスがやりやすくなる点や、複数人で楽しめるという点は魅力だ。しかし、ノートPCなどを持っている人は、ノートPCを直接TVなどに接続すればよく、あまりメリットが感じられないかもしれない。そういった意味で、Webtopは、PCを持っていない人にとって魅力のある機能と言える。それでも、大画面TVやディスプレイを利用したWebアクセスなどの活用方法が用意されているという点は、他のスマートフォンにはない特徴であるということは間違いなく、非常に面白い機能と言っていいだろう。

 しかし、ISW11Mをスマートフォンとして見た場合には、いくつか気になる点があった。特に気になったのが液晶画面だ。発色自体は鮮やかで、視野角も広いのだが、かなりぎらつきを感じる表示となっている。特にWebブラウザでWebサイトにアクセスしている場合やスクロール操作時など、文字などがぎらついてかなりの違和感を感じる。また、単色で塗りつぶされている部分でも、よく見ると他の色が混ざっているように見える。例えば、バッテリアイコンは緑で塗りつぶされているのだが、よく見ると緑と黒の市松模様に見えるのだ。これは、液晶パネルの仕様(画素の配列など)が影響しているものと思われるが、かなり気になった。

 また、動作がかなり不安定だったという点も気になった。例えば、WiMAX接続が短時間で切れてしまったり、自動的に画面表示が消えた状態で放置しておくとハングアップし、バッテリを抜かない限り復帰できないといったことが何度も発生したのだ。今回は、出荷モデルと同じファームを採用する試用機を2個と、最終版の1つ前のバージョンのファームを採用する試用機1個の計3個を試用したが、この症状が見られたのは出荷モデルと同じファームを採用する試用機のみであった。試用機をお借りしたのは、ISW11Mの発売前だったため、実際に発売されているものではすでに改善されている可能性も十分考えられる。また、最終版の1つ前のバージョンのファームを採用する固体では、そういった不安定さは全くなかったため、もし発売されている製品でも同様の症状が出るとしても、すぐに改善されるはずだ。

 このように、いくつか気になる点は見られたものの、デュアルコアプロセッサのNVIDIA Tegra 2 1GHzを搭載していることで、利用時に動作が重くストレスを感じるといった場面は全くと言っていいほどなく、軽快に利用できる点はスマートフォンとしてみても大きな魅力。シングルコアプロセッサ搭載のAndroidスマートフォンに比べると、別次元の快適さが実現されていると言っていいだろう。もちろん、WiMAXによる高速なデータ通信が可能で、Webアクセスもサクサク行なえるという点も、優れた快適さを実現している要因となっていることは間違いない。そしてなにより、テザリングが有効となっており、WiMAXの高速なデータ通信をノートPCなど無線LAN対応機器でシェアし利用できる点は大きな魅力。ボディが大きく重いという点も、これまで携帯電話やスマートフォンに加えてモバイルルーターも同時に持ち歩いていたという人にとっては、それほど苦にならないはずだ。Wi-Fiテザリング時のバッテリ駆動時間も十分に長く、スマートフォンとしてだけでなく、テザリング機能も重視するなら、十分に購入する価値のある製品だ。

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(2011年 10月 13日)

[Text by 平澤 寿康]