パナソニック「Let'snote S10 15周年記念モデル CF-S10EYTDR」
~128GB SSDを標準搭載した18時間駆動モバイルノート



パナソニック「Let'snote S10 15周年記念モデル CF-S10EYTDR」

10月14日 発売

価格:オープンプライス(229,800円前後)



 2011年はパナソニック「Let'snote」シリーズが発売されてちょうど15周年となる。それを記念し、Let'snoteシリーズの2011年秋冬モデルでは、一部モデルにLet'snote 15周年記念モデルが用意されている。今回は、Let'snote S10シリーズの15周年記念モデルとなる、「Let'snote S10 CF-S10EYTDR」を取り上げる。今回試用したのは試作機のため、製品版と異なる可能性がある点はご了承願いたい。

●S10店頭モデルとして初となるSSD採用

 Let'snote S10シリーズの2011年秋冬モデルは、ボディ形状は従来モデルから変更はなく、基本的にはCPUを強化したマイナーチェンジモデルとなっている。ただ、今回取り上げるLet'snote S10 15周年記念モデルとなる「CF-S10EYTDR」は、1点大きな特徴がある。それは、搭載するストレージデバイスとしてHDDではなくSSDを採用しているという点だ

 これまでLet'snote S10では、直販サイトである「マイレッツ倶楽部」での直販専用モデルにのみ、HDDではないSSDを搭載するモデルが用意されていた。それも、CPUを含めたスペック面を高めたプレミアムモデルでの採用が基本となっていた。それに対しCF-S10EYTDRは、マイレッツ倶楽部での直販専用モデルではなく、一般の量販店で販売される市販モデルだ。つまり、Let'snote S10店頭モデルとして初となるSSD搭載モデルというわけだ。ちなみにシリーズ全体では、10.1型のJシリーズハイパフォーマンスモデルが登場時からSSDを採用している。

 搭載されているSSDは、容量が128GB。試用機では、東芝製SSD「THNSNC128GBSJ」が採用されていた。容量的にはHDDに比べてかなり少なくなっているが、SSDを採用したことによるメリットがいくつかある。

 まず最大のメリットとなるのが、アクセス速度が高速になることによる快適性の向上だ。CrystalDiskMark 3.0.1bを利用したベンチマークテストの結果を見ると、500MB/secを超えるアクセス速度を実現する最新SSDとの比較では、本機のSSDは特に高速というわけではない。しかし、2.5インチHDDに比べるとシーケンシャルアクセス速度だけでなくランダムアクセス速度も圧倒的に高速で、全く異なる快適性が実現されていると考えていい。

 またCF-S10EYTDRでは、独自ツール「クイックブートマネージャー」によって電源投入時の初期化を高速化したり、OS起動時に一部のデバイスやサービスの開始を遅延させることなどにより、電源オフから約12秒での起動を実現。実際に動画を見てもらうとわかるように、電源ボタンをスライドして電源を投入してから12秒後にはWindows 7のデスクトップが表示されていることがわかる。

 HDDよりも軽量なSSDを採用していることで、本体の軽量化も実現されており、HDD搭載モデルに比べて約40g軽い約1.3kgとなっている。ちなみに試用機の実測の重量は1,287gと1.3kgをわずかに下回っていた。

 さらに、堅牢性も高まることになる。もともとLet'snoteシリーズは高い堅牢性が大きな特徴となっているが、SSDはHDDに比べて圧倒的に衝撃に強い。つまり、万が一本体を落下させてしまった場合でも、HDDモデルよりも保存データが失われる確率が低くなる。常に持ち歩いて利用することを前提としたLet'snoteシリーズだからこそ、SSD搭載による堅牢性の強化は大きな意味があると言っていいだろう。消費電力もHDDより低く、バッテリ駆動時間も約18時間となっている。

Let'snoteシリーズ店頭モデルとして初めてSSDを採用。容量は128GBだが、HDDモデルに比べ快適度が大幅に向上しているSSDのアクセス速度を計測してみると、シーケンシャルリードが約206MB/sec、シーケンシャルライト約169MB/secだった。SATA 6Gbps対応の最新SSDには見劣りするが、2.5インチHDDに比べると圧倒的に高速だ
独自ツール「クイックブートマネージャー」により、電源オフから約12秒と高速で起動する起動時の初期化や遅延させるサービスなども細かく設定可能だ本体重量は、実測で1,287gと1.3kgを下回っている

【動画】電源オフから起動している様子

●基本仕様は従来モデルとほぼ同じでCPUを強化

 冒頭でも紹介したように、CF-S10EYTDRのボディ形状は従来モデルと同じだ。本体サイズは282.8×209.6×23.4~38.7mm(幅×奥行き×高さ)。 天板部分のボンネット構造をはじめ、堅牢性を高める仕様は全てそのまま受け継がれている。重量も上で紹介したように、公称約1.3kg、実測1,287g。本体の厚さがあるため、実際に手に持つと数字以上に軽く感じる。

 基本スペックは、ストレージデバイスにSSDが採用されていることに加えて、CPUがCore i5-2540M vPro(2.40GHz、ターボブースト時3.30GHz)に強化されているが、それ以外は従来モデル同様だ。チップセットはIntel QM67 Expressで、メインメモリは標準で4GB(PC3-8500 DDR3 SDRAM)搭載。本体底面のフタを開けるとメモリスロットにアクセスでき、最大8GBまで増設可能だ。

 ストレージデバイスは上で紹介した128GBのSSDに加え、パームレスト右側にシェルドライブ構造のDVDスーパーマルチドライブを搭載する。

 無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n対応の無線LANとWiMAXを標準搭載し、Bluetoothは搭載しない。ちなみに、マイレッツ倶楽部の直販専用モデルではBluetoothやワイヤレスWANを搭載するモデルが用意されている。

 側面のポートは、左側面にGigabit Ethernetポートと電源コネクタ、HDMI出力、USB 2.0×2ポートが、右側面にSDカードスロットとPCカードスロット(Type2×1)、USB 3.0×1ポート、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)をそれぞれ用意。前面には、電源ボタンと内蔵無線機能のON/OFFスイッチ、ヘッドフォン・マイク端子、内蔵光学式ドライブの電源・イジェクトスイッチが用意されている。

天板部分、従来モデル同様、おなじみのボンネット構造を採用。フットプリントは282.8×209.6mm(幅×奥行き)だ本体前面。ボディ形状や優れた堅牢性を実現している点など、従来モデルと全く同じだ左側面。高さは23.4~38.7mmと、手前から奥に向かって厚くなっている
背面。右側に見えるのはバッテリだ右側面。薄型のモバイルノートが増えている中では、さすがにかなり厚く感じる底面のフタを開けると、メインメモリ増設用のSO-DIMMスロットにアクセスできる
右パームレスト部分には、シェルドライブ構造のDVDスーパーマルチドライブを搭載左側面には、Gigabit Ethernet、電源コネクタ、HDMI出力、USB 2.0×2ポートを配置右側面には、SDカードスロット、PCカードスロット、USB 3.0ポート、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)を配置
前面左側には、電源スイッチ、無線機能のON/OFFスイッチ、ヘッドフォン・マイク端子を配置前面右側には、DVDスーパーマルチドライブの電源・イジェクトスイッチがある

●液晶パネルやキーボードも従来モデルと同じ

 液晶パネルは、従来モデルと同じ、1,280×800ドット(WXGA)表示対応の12.1型ワイド液晶を採用。もちろん、パネル表面は非光沢処理が施されており、外光の映り込みは全く気にならない。表示品質は、上下の視野角が狭く、発色もやや青の発色が強いという印象で、このあたりも従来モデルと同様だ。Let'snoteシリーズがメインターゲットとしている、文字入力などを中心としたビジネス用途であれば、この表示品質でも大きな不満は感じないが、グラフィックス用途での利用はやや厳しいかもしれない。

 キーボードも、従来モデルと同様。キーピッチは横は約19mmとフルサイズを確保しているが、縦が約16mmとやや狭くなっており、デスクトップ用キーボードに慣れている場合にはやや違和感を感じるかもしれない。キー配列は、半角/全角キーがEscキーの右に配置されているものの、それ以外は変則的な部分はない。タッチはやや軽めだが、クリック感はしっかりしている。

 タッチパッドは、Let'snoteシリーズでおなじみの、円形のホイールパッドを採用。ジョグダイヤルのようにスクロール操作ができ、扱いやすさは抜群だ。

1,280×800ドット表示対応の12.1型ワイド液晶を搭載。非光沢パネルで外光の映り込みは気にならない。視野角がやや狭く、発色はやや青が強く、鮮やかさも弱いキーボードも従来モデルと同じ、半角/全角キーがEscキーの右に配置されている以外は、特殊な配列は見られない
キーピッチは横が約19mm、縦が約16mmと長方形。タッチは軽めだがクリック感はしっかりしているポインティングデバイスは、おなじみの円形のホイールパッドを採用。スクロール操作など非常に扱いやすい

●快適性や堅牢性を重視した本格モバイルノートを探している人にオススメ

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」と「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Vantage Bulld 1.0.1 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」に加え、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】」の5種類。比較用として、富士通のLIFEBOOK SH76/DNとLIFEBOOK PH75/DN、レノボのThinkPad X1の結果も加えてある。ちなみに、試用機のOSはWindows 7 Professional SP1の32bit版であった。製品版は64bit版がプリインストールされている。

 結果を見ると、動作クロックの低いCore i5-2520Mを搭載するThinkPad X1やLIFEBOOK PH75/DNと比べて、ほとんどの項目で劣っていることがわかる。OSが32bit版と64bit版の違いがあるため、直接的な比較は難しいが、CF-S10EYTDRではメインメモリにPC3-8500 DDR3 SDRAMを採用していることもあって、やや結果が伸びていないものと思われる。とはいえ、実際にこれら機種を横に並べて利用したとしても、パフォーマンス差はほとんど感じられないだろう。特にLet'snoteシリーズはビジネス用途をメインターゲットとしているので、極端に処理の重い作業を行なうシーンは少なく、若干パフォーマンスが劣るとしても、それが大きな問題とはならないはずだ。

 Let'snote S10LIFEBOOK SH76/DNThinkPad X1LIFEBOOK PH75/DN
CPUCore i5-2540M vPro (2.60/3.30GHz)Core i7-2620M (2.70/3.40GHz)Core i5-2520M (2.50/3.20GHz)Core i5-2520M (2.50/3.20GHz)
チップセットIntel QM67 ExpressIntel HM65 ExpressIntel QM67 ExpressIntel HM65 Express
ビデオチップIntel HD Graphics 3000Intel HD Graphics 3000Intel HD Graphics 3000Intel HD Graphics 3000
メモリPC3-8500 DDR3 SDRAM 4GBPC3-10600 DDR3 SDRAM 4GB×2PC3-10600 DDR3 SDRAM 4GB×1PC3-10600 DDR3 SDRAM 4GB×2
ストレージ128GB SSD (THNSNC128GBSJ)256GB SSD (THNSFC256GBSJ)128GB SSD (THNSNC128GCSJ)256GB SSD (THNSNC256GG8BBAA)
OSWindows 7 Professional SP1Windows 7 Professional SP1 64bitWindows 7 Professional SP1 64bitWindows 7 Home Premium SP1 64bit
PCMark Vantage x64 Build 1.0.1 0906a
PCMark Suite10469113261150812207
Memories Suite5916683164166624
TV and Movies Suite4579495345764834
Gaming Suite6437974778549374
Music Suite14160137921346815079
Communications Suite11273128591296113143
Productivity Suite12861131541332615262
HDD Test Suite26487241882413825488
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark Score10740N/AN/AN/A
CPU Score9283953192558753
Memory Score79031037985419884
Graphics Score4144648845265448
HDD Score32479318603343632509
3DMark Vantage Bulld 1.0.1 0906a 1,280×1,024ドット
3DMark Score1564197616951896
GPU Score1229156013321519
CPU Score8530990091887439
3DMark06 Build 1.1.0 0906a
3DMark Score3277472937794568
SM2.0 Score1044160512351554
HDR/SM3.0 Score1320187915091861
CPU Score3438368935673036
Windows エクスペリエンスインデックス
プロセッサ7.17.17.17.1
メモリ7.27.55,97.5
グラフィックス4.45.94,76.2
ゲーム用グラフィックス6.16.36,26.2
プライマリハードディスク6.96.76,77.0
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】
1,280×720ドット1331217016342120
1,920×1,080ドット73710738411119

 次にバッテリ駆動時間だ。HDD搭載モデルでは、標準バッテリパック使用時の駆動時間が約16.5時間とされているのに対し、CF-S10EYTDRでは公称で約18時間と、1.5時間長くなっている。そして、Windows 7の省電力設定を「省電力」に設定し、液晶バックライト輝度を40%に設定、無線LANをオンにした状態で、BBenchを利用してキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約15時間03分と、非常に長い駆動時間が計測された。これだけ長時間の駆動が可能なら、1日外出する場合でもACアダプタを一緒に持ち歩く必要は全くないと言って良さそうだ。ちなみに、付属のACアダプタは非常に小型で、重量も電源ケーブル込みで247.5gと軽量。本体と同時に持ち歩くとしても苦にならないはずだ。

容量13.6Ahと大容量の標準バッテリパックが付属。公称で約18時間と長時間の駆動が可能小型のACアダプタが付属。本体と同時に持ち歩く場合でも苦にならないが、バッテリ駆動時間が長いため、1日の外出ならACアダプタは不要だACアダプタの重量は電源ケーブル込みで247.5gだった

バッテリ駆動時間
省電力設定「省電力」、BBench約15時間03分

 Let'snote S10シリーズは、光学ドライブ搭載のオールインワンモバイルノートの定番としてすっかり定着していることもあり、2011年秋冬モデルでも大きな仕様変更は行なわれていない。そういった意味ではあまり新鮮味が感じられないのも事実だが、CPUの強化による着実な進化は実現されている。また、今回取り上げた15周年モデルのCF-S10EYTDRでSSDが採用されたことで、市販モデルでもマイレッツ倶楽部の直販専用モデルで販売されているプレミアムモデルに匹敵する快適性が実現されたことは、かなり大きな魅力となるだろう。HDDと比べると容量は128GBとかなり少ないが、現在ではビジネス用途のモバイルノートに大量のデータを保存して持ち歩くことが少なくなっており、この容量でも十分活用できるはず。また、快適性の向上だけでなく堅牢性もHDDモデルより高まっている。そのため、快適性や堅牢性を重視した、ビジネスシーンで利用するモバイルノートを探している人にオススメしたい製品だ。

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(2011年 10月 12日)

[Text by 平澤 寿康]