ソニー「VAIO S(SE) VPCSE19FJ/B」
~15.5型フルHD液晶搭載で2kgを切る薄型ノートPC



ソニー「VAIO S(SE)」

発売中

価格:オープンプライス



 ソニーの秋冬モデルとして登場したVAIO S(SE)は、15.5型フルHD液晶を搭載した薄型ノートPCである。VAIO S(SE)は、VAIO Sシリーズのバリエーションモデルの1つだが、これまでのVAIO S(SB)シリーズやVAIO S(SA)シリーズがともに13.3型液晶を搭載していたのに対し、VAIO S(SE)は、フラットで薄いというデザインコンセプトは同じだが、液晶パネルが15.5型に大型化されたことが特徴だ。VAIO S(SE)は、店頭モデルとカスタマイズが可能なVAIOオーナーメードモデルに大別され、店頭モデルは「VPCSE19FJ/B」の1モデルのみが用意されている。今回は、店頭モデルを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。ただし、今回試用したのは試作機であり、製品版とは細部やパフォーマンスなどが異なる可能性がある。

●厚さ約24.5mmのフルフラットボディを実現

 VAIO S(SE)は、13.3型液晶搭載のVAIO S(SA)やVAIO S(SB)と同じく、断面が六角形状のヘキサシェルデザインを採用。軽くて丈夫なマグネシウム合金を採用することで、15.5型液晶搭載ノートPCながら、約1.99kg(店頭モデル)と、一般的なA4ノートPCよりも500g~1kg程度軽い重量を実現。厚さも約24.5mmと薄く、ボディがフルフラットなので、カバンなどへの収まりも良い。常に持ち歩くにはやや重いものの、このサイズのノートPCとしてはトップクラスの軽さであり、部屋から部屋への移動も楽だ。店頭モデルのボディカラーは、ブラックのみだが、VAIOオーナーメードモデルではブラックに加えて、シルバーも選択可能だ。

VAIO S(SE) の上面。店頭モデルのボディカラーは、ブラックである「DOS/V POWER REPORT」誌とVAIO S(SE)とのサイズ比較。VAIO S(SE)のほうが奥行きで46.9mm、横幅で103mmほど大きい

●単体GPUを搭載し、グラフィックス機能の切り替えが可能

 VAIO S(SE)は、ノートPCとしての基本性能も高い。店頭モデルでは、CPUとしてCore i5-2430M(2.40GHz)を搭載。VAIOオーナーメードモデルなら、Core i3やCore i7の選択も可能だ。メモリは標準で4GB実装されているが、SO-DIMMスロットが1基空いているので、標準実装メモリを無駄にせずに最大8GBまで増設が可能だ。HDD容量も750GBと大きい。こちらもVAIOオーナーメードモデルでは、128GBから1TBまでのSSDや、より容量の小さいHDDを選択できる。

 単体GPUを搭載していることも、VAIO S(SE)のウリの1つだ。店頭モデルでは、AMD Radeon HD 6470M(ビデオメモリ512MB)を搭載しており、キーボード左上のパフォーマンス・スイッチによって、CPU内蔵グラフィックスと単体GPUの切り替えが可能だ。グラフィックス性能を重視か、バッテリ駆動時間重視かを明示的に選べるので便利だ。なお、VAIOオーナーメードモデルでは、単体GPUとして店頭モデルよりも高性能なAMD Radeon HD 6630M(ビデオメモリ1GB)も選択できる。

 背面には、拡張バッテリ接続用コネクタとポートリプリケータ接続用コネクタが用意されているが、それぞれのコネクタカバーがゴム製で、取り外したカバーを収納できる場所が用意されていないので、カバーをなくしてしまう恐れがある。

VAIO S(SE)の背面。メモリスロットやバッテリなどのカバーは一体化されている背面中央には、拡張バッテリ接続用コネクタとポートリプリケータ接続用コネクタが用意されている。それぞれのコネクタカバーはゴム製で、取り外したカバーを収納できる場所がないので、カバーをなくしてしまう恐れがある
メモリスロットやバッテリなどのカバーを外したところ。店頭モデルでは、標準で4GBのメモリが実装されているが、SO-DIMMスロットは2基用意されており、最大8GBまで増設が可能。HDD換装も容易だ店頭モデルでは光学ドライブとしてDVDスーパーマルチドライブが左側面に用意されているキーボード左上に、グラフィックス機能を切り替える「パフォーマンス・スイッチ」が用意されている

●低反射コートが施されたフルHD液晶を搭載

 VAIO S(SE)の最大の魅力が、フルHD表示に対応した15.5型液晶を搭載していることだ。解像度が1,920×1,080ドットと高いので、一度に複数のウィンドウを開いても快適に作業が行なえる。光沢タイプの液晶だが、低反射コートが施されており、外光の映り込みもかなり抑えられている。

 キーボードは全108キーで、テンキーも搭載しているため、表計算ソフトなどで数値を入力する際に便利だ。VAIOの他機種でもお馴染みのアイソレーションタイプのキーボードを採用しており、キーピッチは約19mm、キーストロークは約1.7mmと、十分なサイズを確保。配列も標準的なので、快適にタイピングが可能だ。また、キーボードにはバックライトが搭載されており、タイピング時に点灯するようになっているので(バックライトを消すことも可能)、暗いところでも打ち間違いを防げる。ポインティングデバイスとしては、タッチパッドを搭載。パッドのサイズは比較的大きく、操作性は良好だ。マルチタッチ対応でジェスチャー操作も可能である。また、左右クリックボタンの中央には指紋センサーが用意されている。

液晶は15.5型ワイドで、解像度は1,920×1,080ドットのフルHD対応だ。低反射コートが施されており、外光の映り込みが抑えられているキーボードはテンキーを含む全108キーで、キーピッチは約19mm、キーストロークは約1.7mm。配列も標準的で快適にタイピングが可能キーボードにはバックライトが搭載されているので、暗いところでも打ち間違いを防げる
ポインティングデバイスとして、タッチパッドを搭載。サイズも比較的大きく、操作性は良好だ。ジェスチャー操作にも対応する。左右クリックボタンの中央には指紋センサーが用意されているキーボード右上には、ASSISTボタンやWEBボタン、VAIOボタン、パワーボタンが用意されている液晶上部には、31万画素のWebカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる

●USB 3.0やHDMI出力を備えるなどインターフェイスも充実

 インターフェイスとして、USB 3.0やUSB 2.0×2、HDMI出力、ミニD-Sub15ピン、有線LANなどを備えており、不満はない。メモリカードスロットとしては、メモリースティックデュオスロットとSDメモリーカードスロットを搭載する。ワイヤレス機能も充実しており、IEEE 802.11b/g/n準拠の無線LANとWiMAX、Bluetooth 2.1+EDRをサポートする。本体前面にはワイヤレススイッチが用意されており、ワイヤレス機能の有効/無効を素早く切り替えられるので便利だ。

左側面には、DVDスーパーマルチドライブが用意されている右側面には、メモリースティックデュオスロット、SDメモリーカードスロット、有線LAN、ミニD-Sub15ピン、HDMI出力、USB 3.0、USB 2.0×2が用意されている右側面のコネクタ部分のアップ
前面には、ワイヤレススイッチが用意されている前面のワイヤレススイッチのアップ。ワイヤレスインジケーターも用意されている

●底面に拡張用バッテリを装着可能

 バッテリには薄型のリチウムポリマー電池を採用している。バッテリは、VAIO S(SA)やVAIO S(SB)で使われているものと同じで、11.1V/4,400mAhという仕様だ。公称駆動時間は約6.5時間だ。実際に、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、単体GPUを利用するSPEEDモードでは4時間15分、CPU内蔵グラフィックスを利用するSTAMINAモードでは5時間33分の駆動が可能であった。このサイズのノートPCとしては駆動時間も長い部類だ。また、オプションの拡張用バッテリを底面に装着することで、公称駆動時間は2倍の約13時間に延びる。さらに、急速充電に対応しており、1.5時間で約80%の充電が可能なことも評価できる。ACアダプタは、このクラスとしては標準的なサイズだ。

バッテリには、薄型のリチウムポリマー電池を採用。標準バッテリの仕様は11.1V/4,400mAhで、13.3型液晶搭載のVAIO S(SB)やVAIO S(SA)と同じバッテリであるCDケース(左)とバッテリのサイズ比較
付属のACアダプタ。このクラスとしては標準的なサイズだACアダプタの出力は19.5V/4.7Aで、90WクラスだCDケース(左)とACアダプタのサイズ比較

●オプションの3Dパネルを装着することで裸眼立体視に対応

 オプションの3Dパネルを装着することで、裸眼立体視に対応することも面白い。3Dパネルは、秋冬モデルのVAIOシリーズと同時に発表された新オプションで、立体視非対応のVAIOに装着することで、手軽に裸眼立体視を実現するという製品だ。3Dパネルは現在、13.3型液晶のVAIO S(SA)とVAIO S(SB)に対応した「VGP-FL3D13A」、今回レビューしている15.5型液晶のVAIO S(SE)に対応した「VGP-FL3D15A」、15.5型液晶のVAIO C(CB)に対応した「CGP-FL3D15B」の3製品がある。

 今回は、VAIO S(SE)用の3DパネルであるVGP-FL3D15Aも一緒に試用できたので、こちらも紹介する。本来、3Dパネルには、収納ケースと専用ソフトが収録されたCD-ROMが付属するのだが、今回試用したパネルは試作品のため、収納ケースが付属していなかった。

 3Dパネルの装着は非常に簡単だ。パネルを液晶の上にはめ込んで位置をあわせたら、左右のゴムパーツで液晶ベゼルを挟み込むように固定すれば完了だ。この3Dパネルによる裸眼立体視は、VAIO内蔵のWebカメラを利用して顔認識を行ない、視聴者の顔の位置に合わせて最適な3D画像を作成することが特徴だ。3Dパネルを最初に利用する際には、付属CD-ROMからインストールしたパネル調整ユーティリティを使って、パネルの調整を行なう必要がある。パネルの調整は、片目で行なうことが推奨されているが、画面の指示に従い、視差を調整すればOKだ。調整が完了したら、風船の3D画像が表示されるので、立体に見えているか確認する。前述したように、リアルタイムで顔認識を行ない、最適な3D画像を作成しているため、顔を左右に動かすと、一瞬遅れて映像がわずかに動き、再び立体に見えるようになる。

 この3Dパネルで楽しめる3Dコンテンツは、Blu-ray 3DとMPO形式の3D静止画、ゲームソフトの3種類だ。Blu-ray 3Dは、CyberLink PowerDVD BDを利用して再生を行なう。ただし、2DのDVDビデオや動画を3D変換することや、ハンディカムなどで撮影した3D動画の再生はできない。3D静止画は、Tridef 3D photo Viewerによって再生できる。また、TriDef 3Dによって、DirectXを利用して描画を行なっているゲームソフトの多くを立体視で楽しめるようになる。

 ただし、3DパネルはBlu-rayドライブ搭載モデル用として販売されているが、今回はDVDスーパーマルチドライブを搭載した店頭モデルで試したため、Blu-ray 3Dの再生は行なっていない。そこで、サンプルの3D静止画を表示してみたが、アクティブシャッター方式に比べるとやや飛び出し感は少ないが、自然な立体感が得られた。顔を左右に動かしても、最適な視差に自動調整してくれるため、気軽に見ることができ、疲れも少ない。また、Tridef 3Dでゲームソフトを立体視表示させてみたが、こちらもタイトルによって効果の度合いは異なるが、効果の大きいタイトルではかなり良好な結果が得られた。なお、顔認識で視差を調整しているため、顔を背けるなどして視線が認識されなくなると、立体視効果がなくなり、画像が白黒表示になる。

 3Dパネルによる立体視は、その仕組み上、複数での視聴には向いていないが、メガネが不要なので、1人で気軽に立体視を楽しむのに便利だ。

オプションの3Dパネル「VGP-FL3D15A」。直販価格は12,800円3Dパネルはかなり厚みがあり、たわむようなことはない。重量は約220g3Dパネルを液晶表面にはめ込み、左右のゴムパーツで固定する
3Dパネルの左右にあるゴムパーツのアップ最初に、付属CD-ROMに入っているパネル調整ユーティリティで、パネルをユーザーにあわせて調整する必要があるパネルの調整は片目で行なうほうが望ましいが、顔認識を行なっているため、手や指で目をふさいではならない
調整はいくつかのステップで行なうが、画面の指示に従って、カーソルキーで視差を調整すればOKだ調整が正しく完了すれば、この風船が3Dで表示される
TriDef 3D photo Viewerで、MPO形式の3D静止画を表示できる3Dパネルを装着すると、通常の2D表示は当然ながら斜めにジャギーがかかる

●単体GPU搭載で、軽めのゲームなら快適に遊べる

 参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark7」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」だ。VAIO S(SE)は、単体GPUを利用するSPEEDモードとCPU内蔵グラフィックスを利用するSTAMINAモードをスイッチで切り替えられるので、それぞれのモードでベンチマークを計測した。

 比較用として、ASUSTeK Computer「K53TA」、東芝「dynabook Qosmio T851/D8CR」、レノボ「IdeaPad Y570」、NEC「LaVie S LS550/ES」の値も掲載した。

 VAIO S(SE) (SPEEDモード)VAIO S(SE) (STAMINAモード)K53TAdynabook Qosmio T851/D8CRIdeaPad Y570LaVie S LS550/ES
CPUCore i5-2430M (2.40GHz)Core i5-2430M (2.40GHz)AMD A6-3400M (1.4GHz)Core i5-2410M (2.30GHz)Core i7-2630QM (2.0GHz)Core i5-2410M (2.30GHz)
ビデオチップRadeon HD 6470MIntel HD Graphics 3000Radeon HD 6720G2GeForce GT 540MGeForce GT 555MIntel HD Graphics 3000
PCMark05
PCMarksN/AN/AN/AN/AN/AN/A
CPU Score865987134612808792687709
Memory Score804381673394696589648588
Graphics Score591440204142724181574580
HDD Score5831585746274845176445616
PCMark Vantage 64bit





PCMark Score562855193591515798865736
Memories Score419138202789426153374088
TV and Movie Score425541372684401054954271
Gaming Score4920420037335902101144409
Music Score6466644235855127104636394
Communications Score532154633435503581296305
Productivity Score352335802041301681253117
HDD Score368237442635307799643669
PCMark Vantage 32bit
PCMark Score548550403226498992845317
Memories Score392838012630410451863902
TV and Movie Score424440962619394554424297
Gaming Score425136903099502389584121
Music Score629362053304518395455884
Communications Score549755163047499274696218
Productivity Score341432071693273274272901
HDD Score370636992627305999483662
PCMark 7
PCMark score1809206913671830未計測未計測
Lightweight score1836178512071625未計測未計測
Productivity score122611978321110未計測未計測
Creativity score2416407416922203未計測未計測
Entertainment score1896206714502120未計測未計測
Computation score2626867615322703未計測未計測
System storage score1542153214331338未計測未計測
3DMark03
1,024×768ドット32bitカラー(3Dmarks)1237476921383920356235719325
CPU Score228915951010208519881533
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH713043113683791577063586
LOW9941664055011046487915273
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP10010080.2710099.97100
HP10010010010099.97100
SP/LP10010010010010099.97
LLP100100100100100100
DP(CPU負荷)16203515814
HP(CPU負荷)6922888
SP/LP(CPU負荷)4616675
LLP(CPU負荷)3513564
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード94.06MB/s93.15MB/s72.09MB/s87.06MB/s90.73MB/s88.69MB/s
シーケンシャルライト92.97MB/s95.46MB/s67.78MB/s84.58MB/s86.12MB/s89.30MB/s
512Kランダムリード33.51MB/s33.48MB/s27.48MB/s34.82MB/s36.70MB/s35.77MB/s
512Kランダムライト35.73MB/s36.23MB/s32.52MB/s25.79MB/s49.21MB/s55.99MB/s
4Kランダムリード0.411MB/s0.415MB/s0.360MB/s0.424MB/s0.504MB/s0.456MB/s
4Kランダムライト1.356MB/s1.494MB/s1.048MB/s0.939MB/s1.320MB/s0.847MB/s
BBench
標準バッテリ4時間15分5時間33分5時間11分2時間39分5時間34分2時間10分

 VAIO S(SE)のSTAMINAモードでのパフォーマンスは、Core i5-2430MとHDDを搭載したノートPCとしては標準的であり、ほとんどの作業を快適に行なえる。単体GPUを利用するSPEEDモードでは、3D描画性能が向上し、3DMark03やFINAL FANTASY XI Official Benchmarkのスコアが1.5~1.6倍に上がっている。ただし、PCMark7だけは、STAMINAモードよりもSPEEDモードのほうがスコアが下がってしまっている。

 また、SPEEDモードでストリートファイターIVベンチマークとバイオハザード5ベンチマークを実行したところ(解像度は1,280×720ドットモード)、前者が65.44fps、後者が31.8fpsという結果になった。ちなみに、STAMINAモードでのスコアは、前者が32.65fps、後者が21.4fpsである。GPU負荷がそれほど高くない、軽めのゲームなら十分快適に遊べる性能を持っているといえるだろう。

●大画面かつ軽いノートが欲しいという人にお勧め

 VAIO S(SE)は、15.5型フルHD液晶を搭載しながら、厚さ約24.5mm、重さ約1.99kgという薄くて軽いボディを実現していることが魅力だ。また、単体GPUを搭載し、3D描画性能が高いこともウリである。メインマシンとして十分なパフォーマンスを誇るスリムノートPCであり、いざというときには持ち運びもそれほど苦にならない。大画面で軽いという、相反する要素を両立させた完成度の高い製品であり、特に12~13型クラスのモバイルノートPCの画面の狭さが気に入らず、仕方なく15型クラスのノートPCを持ち歩いているという人にお勧めしたい。

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(2011年 10月 18日)

[Text by 石井 英男]