~折りたたみボディと2画面液晶を採用したAndroidタブレット |
ソニーは、9月1日、Androidタブレット「Sony Tablet」シリーズを発表した。Sony Tabletは、9.4型液晶を搭載したスレート型の「Sony Tablet S」と5.5型液晶を2枚搭載した折りたたみ型の「Sony Tablet P」の2製品に大別できる。どちらも、ソニー独自の技術がふんだんに盛り込まれた魅力的な製品だ。ここでは、折りたたみ型のSony Tablet Pを試用する機会を得たので、早速紹介しよう。Sony Tablet Sについては、すでに平澤氏がレビューしているので、そちらをご覧いただきたい。
ただし、今回試用したのは試作機なので、製品版とは細部が異なる可能性がある。また、発売前ということもあり、専用コンテンツサービスのほとんどがまだ利用できないので、ハードウェアとプリインストールアプリを中心にレビューしたい。なお、Sony Tablet Sは、3Gの有無やストレージ容量の違いによっていくつかのモデルがあるが、Sony Tablet Pは、3G搭載の1モデルのみとなる。
●折りたたみ式タブレットというユニークなデザインSony Tablet Pの最大の特徴は、折りたたみ式のボディと2画面液晶を採用したことだ。似たデザインの製品としては、東芝のモバイルノートPC「libretto W100」やエイサーのノートPC「ICONIA」などが登場しているが、これらはWindows 7を搭載したPCであり、Andoridタブレットとしては非常にユニークなデザインだ。Sony Tablet Pは、折りたたみ式ボディを採用したことで、持ち運びやすさと画面の広さ、使いやすさを両立させている。閉じた時のサイズは180×79×26mm(幅×奥行き×高さ)で、4型前後の液晶を搭載したスマートフォンよりは大きいが、大人の男性なら片手で十分につかめるサイズだ。また、こうした折りたたみ式の端末は、折りたたんだときに直方体に近いデザインになるものが多いが(ニンテンドーDSなども同じ)、Sony Tablet Pは、側面から見ると細長い楕円形で、、エッジが立っていないため、持ったときにも手になじみやすい。なかなか優れたデザインである。重量は約372gで、片手でも楽に持てる。
次に、ハードウェア仕様を紹介する。CPUとして1GHz動作のTegra2を採用、メモリは1GB、ストレージは4GBである。OSは、最新のAndroid 3.2を採用する。センサー類も充実しており、3軸加速度センサーやジャイロセンサーのほか、デジタルコンパスや照度センサーを搭載する。なお、スレート型のSoyn Tablet Sでは、赤外線通信機能を備えており、付属アプリで家電の赤外線リモコンとして使うことが可能だが、Sony Tablet Pでは、赤外線通信機能は省かれている。ハードウェアスペックは、Android 3.x世代の端末としては標準的だが、操作感は非常に快適だ。
●カバーの着せ替えやバッテリ交換が可能
Sony Tablet Pでは、5.5型液晶を2枚搭載している。1枚の解像度は1,024×480ドットで、2枚合わせると1,024×960ドットとなる。液晶は2つに分かれているものの、OS側からは、1,024×960ドットの1画面として認識されている。Androidタブレットの場合、1,280×800ドット程度の液晶を搭載していることが多く、アスペクト比は多少異なるものの、一度に表示できる情報量はほぼ同じか、やや広めだ。液晶のヒンジは、最大180度まで開いてフルフラットにできるほか、自由な角度で固定できる。液晶は明るくてコントラストも高く、視認性は良好だ。
横置きにした状態での上の液晶の右側には、前面カメラとして30万画素カメラが、上面(開いて持った状態では背面)には、背面カメラとして511万画素の「Exmor for mobile」が搭載されている。
上面と底面のカバーは、工具などを使わずに簡単に着脱できる構造になっている。ボディカラーはシルバーのみだが、オプションとしてブラックとホワイトの着せ替えパネルが用意されている。なお、この着せ替えパネルには、擦り傷が付きにくい表面処理が施されている。
また、NTTドコモの3G通信に対応しているが、3G通信を行なうにはSIMカードを挿入する必要がある。上面のカバーを外すことで、SIMカードスロットにアクセスできる。
スレート型タブレットは、バッテリの交換ができない製品が多いが(Sony Tablet Sもバッテリ交換はできない)、Sony Tablet Pでは底面のカバーを外すことで、バッテリ交換が可能だ。また、バッテリを外すとmicroSDカードスロットにアクセスでき、microSDカードの差し替えが行なえる。2GBのmicroSDカードが付属しているが、より大容量のmicroSDカードを利用することも可能だ。
バッテリ駆動時間は利用状況によっても変わるが、音楽再生時で約16.8時間、ビデオ再生時で約6.5時間、無線LANでのWeb閲覧時で約6.1時間、3G通信でのWeb閲覧時で約4.6時間とされている。重量を考えると、駆動時間も合格といえるだろう。バッテリ駆動時間が足りなければ、予備バッテリに交換することもできるからだ。
●インターフェイスはMicro USBと音声入出力のみ
インターフェイスは必要最小限で、MicroUSB(Micro-B)とヘッドフォン出力(マイク入力兼用)程度で、搭載スピーカーもモノラルとなっている。なお、MicroUSBは、ホスト機能をサポートしておらず、キーボードやUSBメモリなどのUSBデバイスを利用することはできない。また、USBからの充電や給電にも非対応である。ACアダプタは比較的小型で軽く、携帯性は優秀だ。ACアダプタの出力は5V/2,000mAであり、PSP-1000のACアダプタと同じ仕様だ。
右側面には、電源ボタンとDCジャック、Micro USB、マイク、音量ボタンが用意されている | Micro USBコネクタのカバーを外したところ |
左側面には、モノラルスピーカーが用意されている | 前面の右側には、ヘッドフォン出力が用意されている |
付属のACアダプタ。比較的小型である | ACアダプタの出力は5V/2,000mAで、PSP-1000に付属するACアダプタと同じだ | CDケース(左)とACアダプタのサイズ比較 |
ACアダプタ(ACケーブル込み)の重量は実測で133gであった | ACアダプタを接続して充電を行なうと、オレンジのLEDが点灯する |
●独自のサクサク・エクスペリエンスで快適な操作を実現
Sony Tabletシリーズは、ソニー独自の「サクサク・エクスペリエンス」と呼ばれる技術によって、すべての操作においてサクサクかつ直感的なユーザー体験を実現していることがウリだ。CPUなどのハードウェアスペックは、一般的なAndroidタブレットと同じだが、実際に操作してみると、タッチパネルの反応がよく非常に快適だ。特にSony Tablet Pは、液晶が2つに分割されているため、上下スクロール操作などが気になるところだが、どちらの液晶をフリックしても滑らかにスクロールし、2枚の液晶をまたがるようにフリックしても同じように動くのでとても気持ちがよい。この感覚は、文字ではなかなか伝えにくいが、店頭などで実機を触っていただければすぐ理解できると思う。
以下に画面キャプチャや動画を載せるので、動作の様子を見ていただきたい。なお、画面キャプチャは上下が繋がった1枚の画面になっているが、実際は中央から半分に上下(縦画面で使うときは左右)の液晶に分かれていることに注意してほしい。
Webブラウザにも、JavaScriptの処理を後に回すことで、画面が表示されるまでの待ち時間を減らす独自の「クイック・ビュー」技術が搭載されている。最終的にすべてのコンテンツが表示されるまでの時間は変わらないのだが、体感的な速度は大きく向上したように感じる。
文字入力についても独自のソフトウェアキーボードが搭載されており、快適にタイピングが可能だ。
Sony Tablet Pのホーム画面。右上の「Favorites」をタップすると、独自のコンテンツランチャー「Favorites」が起動する | Favoritesでは、お気に入りのコンテンツに直接アクセスできる |
【動画】ホーム画面の左右への移動も高速だ |
【動画】画面のスクロールも滑らかで速く、非常に快適だ。上画面をフリックしても、下画面をフリックしても、または両方の画面にまたがるようにフリックしても、スクロールが可能 |
【動画】Webブラウザには、「クイック・ビュー」技術が搭載されており、テキストなどを先に表示し、後からJavaScriptの処理を行なうことで、サイトを素早く見ることができる |
独自開発のソフトウェアキーボードを採用。キートップが大きく、快適にタイピングできる。予測入力をオフにすることも可能だ | 日本語モードで、Altキーの上の切り替えキーを押すと、数字/記号モードになる | 英語モードに切り替えたところ |
英語モードで切り替えキーを押して、数字/記号モードにしたところ | 英語モードの数字/記号モードで、さらにAltキーを押すと、欧文の特殊文字などを入力できる |
●2画面に最適化されたアプリが多数搭載
Sony Tablet Pは、2画面液晶を搭載していることが特徴であり、2画面に最適化された独自アプリが多数プリインストールされている。例えば、カメラアプリでは、上画面に以前撮った写真のサムネイルが表示され、下画面がファインダーとなる。また、メールアプリやカレンダーアプリは、2画面の縦画面表示にも最適化されており、右側に表示されたメールの本文だけをスクロールさせることができるなど、非常に便利だ。なお、縦画面表示の方向は決まっており、前面カメラを下にしたときのみ画面が回転し、縦画面表示となる(アプリによっては回転しない)。
Androidマーケットなどからダウンロードした一般のAndroidアプリは、1画面表示のシングルスクリーンモードと全画面表示モードの切り替えが可能だ。シングルスクリーンモードでは854×480ドット相当の表示となる。
ソニー独自アプリの中でも、UIにこだわっているのが、ミュージックプレイヤーだ。ミュージックプレイヤーには、「ライブラリ一覧」、「SensMe channels」、「カバーアートビュー」の3種類のブラウズモードが用意されている。特にカバーアートビューは、ジャケット映像を指でフリックしたり、回転させたりして、曲を選べるのが面白い。
Sony Tablet Pは、PlayStation Certified端末であり、初代PlayStationのゲームをプレイすることが可能だ。ただし、PlayStationゲームのダウンロード販売を行なうPlayStation Storeのサービス開始は2011年内とされており、執筆時点では利用できなかった。その代わり、「みんなのGOLF2」と「Pinball Heroes」がプリインストールされており、遊ぶことができる。手の大きさや持ち方に応じて、コントローラーのボタン配置やサイズを自由に変更できるのはありがたい。
カメラアプリも2画面表示に最適化されており、上画面に以前撮った写真のサムネイルが表示され、下画面がファインダーとなる | カメラアプリでは、文書や風景、ポートレートなどのシーンモードも用意されている |
【動画】ソニーオリジナルのメールアプリを搭載。2画面表示に最適化されており、非常に便利だ |
【動画】ソニーオリジナルの音楽プレーヤー「ミュージックプレイヤー」を搭載。ジャケット画像を指先で自由に動かしながら、曲を探せる「カバーアートビュー」が面白い |
●現状のAndroidタブレットやスマートフォンに不満がある人にお勧め
参考のために、ベンチマークソフトの「AnTuTu Benchmark 2.1」を利用して、ベンチマークテストを行なってみた。結果は下の表に示した通りで、SD Cardのスコアがやや低いことを除けば(本製品のみmicroSDカードにアクセスして計測しているためだと思われる)、Android 3.x端末として標準的なパフォーマンスを持っているといえるだろう。
AnTuTu Benchmark 2.1 | Sony Tablet P Android 3.2 | Sony Tablet S Android 3.1 | Optimus Pad(L-06C) Android 3.1 | XOOM Wi-Fi TBi11M Android 3.1 | IdeaPad Tablet K1 Android 3.1 |
RAM | 821 | 819 | 818.8 | 828 | 818 |
CPU integer | 1173 | 1170 | 1170.2 | 1183 | 1169.4 |
CPU float-point | 1015 | 1018 | 1017.8 | 1035 | 1016 |
2D Graphics | 223 | 293 | 265.2 | 246 | 291.8 |
3D Graphics | 946 | 811 | 821.8 | 759 | 802.2 |
Database IO | 340 | 325 | 282 | 370 | 175 |
SD Card write | 65 | 95 | 149.8 | 105 | 130.6 |
SD Card read | 97 | 192 | 172.4 | 159 | 130.6 |
Total Score | 4680 | 4723 | 4698 | 4685 | 4533.6 |
Sony Tablet Pは、折りたたみボディと2画面液晶の採用によって、携帯性と使い勝手を両立させた魅力的なAndroidタブレットである。Sony Tablet Sと同じく、動画配信などのソニー独自のコンテンツサービスの利用が可能なことも魅力だ。初心者にはオーソドックスな形状のSony Tablet Sのほうが向いているだろうが、すでに10型前後のタブレットを使っているがより気軽に持ち運べる端末が欲しいという人や、Androidスマートフォンを使っていてより画面の大きな端末が欲しいという人には最適な製品であろう。
(2011年 9月 9日)
[Text by 石井 英男]