デル「Inspiron M301z」
~AMD Nileプラットフォーム採用の低価格モバイル



デル「Inspiron M301z」

発売中
価格:BTO



 デルから、AMDの薄型モバイルノート向け最新プラットフォーム「Nile」を採用した新モバイルノート「Inspiron M301z」が登場した。DirectX 10.1対応グラフィックス機能を統合する「AMD M880G」と、製造プロセス45nmの省電力デュアルコアCPUを搭載することにより、価格と性能のバランスに優れた製品となっている。

●AMD Nileプラットフォームを採用

 ちょうど1年ほど前から、Intel製の消費者向け超低電圧CPU、いわゆるCULVを搭載する低価格モバイルノートが登場し始めた。それ以前のモバイルノート市場は、Atom搭載で5万円以下で購入できるネットブックと、Core 2系CPU搭載で10万円台後半から20万円台と高価なフルスペックモバイルに二分されていた。つまり、フルスペックモバイルほどの優れた性能や携帯性は不要だが、ネットブックでは非力すぎると考えていたユーザーにとっての魅力的なモバイルノートは、製品がポッカリ抜け落ちていたわけだ。そういった中で、実売7~12万円ほどのCULVノートが登場し、モバイルノート市場の勢力図が大きく塗り替えられた。

 それに対し、今回登場したデルの「Inspiron M301z」は、AMDの「Nile(ナイル)プラットフォーム」を採用する低価格モバイルノートだ。従来までAMDは、IntelのCULV対抗プラットフォームとして「Congo(コンゴ)プラットフォーム」を提供していたが、Nileは、機能面と省電力性を強化したCongoの後継プラットフォームとなる。

 CPUは、Congoで採用されていた、製造プロセス65nmの「Turion Neo」および「Athlon Neo」から、製造プロセス45nmの「Turion II Neo」および「Athlon II Neo」となっており、消費電力および発熱が低減した。また、チップセットは、DirectX 10.1対応のグラフィックス機能「Radeon HD 4225」が統合された「AMD M880G」となり、3D描画能力が向上するとともに、HD動画再生支援機能もUVD2へと進化している。

 つまり、従来のCongoに比べ、パフォーマンスと省電力性の双方が強化され、モバイルノート向けプラットフォームとしての魅力が大きく向上している。ちなみに、Inspiron M301zでは、1.3GHz動作の「Athlon II Neo K325」と、1.5GHz動作の「Turion II Neo K625」の、2種類のデュアルコアCPUがBTOで選択可能となっている。

 対抗となるIntelのCULVとの比較では、チップセットに統合されているグラフィックス機能の3D描画能力に大きな差がある。後ほど紹介するベンチマークテストの結果を見ると一目瞭然だが、Nileであれば、軽めの3Dゲームなら余裕でプレイ可能なレベルの3D描画能力が実現されており、大きなアドバンテージと言っていいだろう。

●高級感のあるボディデザイン

 Inspiron M330zの本体は、シルバーが基調で、液晶面およびキーボードがブラックとなっており、全体的に落ち着いたイメージとなっている。また、天板やパームレスト部はヘアライン加工が施されているとともに、全体的に金属感や光沢感が強く、6万円台から購入できる低価格モバイルノートとは思えないような高級さが感じられる。しかも、光沢感が強いにも関わらず、天板やパームレスト部などは指紋が付きにくい加工が施され、よごれが目立ちにくいように配慮されている点も嬉しい。ちなみに、他のデルのノートPCでおなじみの、さまざまなカラーの天板オプションは用意されていない。

 本体サイズは、328×235.5×24mm(幅×奥行き×高さ)。なかなかの薄さが実現されてはいるものの、フットプリントはかなり大きい。また、重量は実測値で1,793gと、こちらもモバイルノートとしては比較的重い部類に入る。実際に本体を手にしてみると、本体が薄いこともあってか、見た目以上に重く感じる。ただ、このあたりは、対抗となるCULVノートでもほぼ同等であり、低価格モバイルノートとしては、特に大きく重いということはない。

天板部分。ヘアライン処理が施された光沢感の強いシルバーボディは、シンプルながら高級感があるフットプリントは、328×235.5mm(幅×奥行き)と、モバイルノートとしてはやや大きい本体正面。側面が斜めに削り取られていることもあり、シャープなイメージが強い。正面の下部左右にはステレオスピーカが配置されている
左側面。高さは24mmと、このクラスのモバイルノートとしては十分な薄さが実現されている背面。背面に配置されているコネクタは、未使用時に目立たないようフタで隠されている右側面。用意されているコネクタ類が少ないこともあり、全体的にすっきりしている
本体底面。バッテリは底面に埋め込まれるように取り付けられている本体重量は、実測で1,793g。やや重いが、低価格モバイルノートとしては平均的な重量だ

●13.3型ワイド液晶を搭載

 液晶パネルは、1,366×768ドット表示に対応する、13.3型ワイド液晶が搭載されている。パネル表面は光沢処理が施されており、非常に鮮やかな発色が実現されている。また、LEDバックライトが採用されており、輝度もかなり高く、輝度を最高に設定した場合には、ややまぶしいと感じるほどだ。

 ただ、視野角はやや狭いようで、特に上下に視点を移動させると、色合いがかなり変化してしまう。また、外光の映り込みは比較的激しいため、天井の照明などが映り込んで気になる場合もある。とはいえ、このクラスのノートPCに搭載される液晶パネルとしては、十分満足できる表示品質を備えていると考えていい。

 キーボードは、ストロークがやや浅いと感じるものの、キーピッチが約19mmと余裕があるとともに、しっかりとしたクリック感があり、いびつな配列もないため、操作性は申し分ない。Enterキーの右に一部キーが配置されている点が気になる人もいるかもしれないが、Enterキーは幅が広く取られていることもあり、実際に使ってみてもEnter入力時に違うキーを押してしまうといったことはないだろう。ちなみに、最上段の列は、標準で音量や液晶輝度調節、メディアコントロールの操作などが割り当てられており、ファンクションキーの利用時には[Fn]キーとの併用となっている点はかなり気になる。もちろん、BIOSメニューで、標準でファンクションキーを利用するように変更できるようになっているため、大きな問題はないのだが、日本語入力時にはファンクションキーを利用する機会が多いことを考えても、できれば標準設定でファンクションキーを利用する設定にしておいてもらいたかった。

 タッチパッドは、面積が非常に広いとともに、クリックボタンも大きく、キーボード同様非常に扱いやすい。また、2本または3本の指を利用した画像の拡大・縮小・回転やページ送りといったジェスチャー機能もサポートされている。さらに、外付けのマウスを接続して利用する場合を想定し、キーボード最上段の列にタッチパッドの動作を切るための専用ボタンが用意されている点も嬉しい配慮だ。

1,366×768ドット表示対応の13.3型ワイド液晶を搭載。上下の視野角はやや狭いが、発色は鮮やかで、LEDバックライトの輝度も高く、表示品質は申し分ない表面は光沢処理が施されており、外光の映り込みがかなり気になる液晶パネル中央上部には、130万画素のWebカメラが標準搭載されている
液晶パネルを約45度までしか開けない点は少々気になるキーボードは、ややストロークが浅いものの、しっかりとしたクリック感があり、なかなか扱いやすい。Enterキーの右にもキーが配置されているが、操作時に気になることはなかったキーピッチは約19mmと余裕がある。ピッチが狭くなっているキーもほとんどない
ファンクションキーは標準でFnキー併用に設定されているが、BIOS設定で変更可能だタッチパッドは、パッド面の面積が広く、クリックボタンも大きいためかなり扱いやすい。また、複数の指を利用したジェスチャー機能もサポートする外部マウスを接続した場合を想定し、キーボードにはタッチパッドの動作をON/OFFする専用キーが用意されている

●基本スペックは細かくカスタマイズ可能

 基本スペックは、他のデルのノートPC同様、自由にカスタマイズ可能となっている。

 CPUは、冒頭でも紹介したように、Turion II Neo K625またはAthlon II Neo K325の2種類のデュアルコアCPUから選択可能。メインメモリは、スペック的には最大8GBまで搭載可能となっているものの、現時点では2GBまたは4GBのみ選択可能となっており、8GBのオプションは用意されていない。内蔵HDDは、250GB、320GB、500GBの3種類から選択とされているが、実際にBTOメニューを確認すると、250GBドライブは選択肢として用意されておらず、320GBまたは500GB(双方とも7,200rpm)からの選択となるようだ。光学式ドライブは内蔵されないが、外付けのDVDスーパーマルチドライブが選択可能だ。無線機能は、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LANとBluetooth 2.1+EDRが標準搭載となる。

 本体側面のポート類は、左側面にUSB 2.0×2、背面にHDMI出力およびMini DisplayPort、右側面にSDメモリーカードやメモリースティックなど7種類のメディアに対応した7in1カードリーダと、USB 2.0/eSATA共用ポート×1、ヘッドフォン/マイク端子、Ethernetの各ポートが用意されている。PCカードスロットやExpressCardスロットは用意されていないが、低価格モバイルノートとして考えると、拡張性に特に問題は感じない。

左側面には、電源コネクタとUSB 2.0×2を配置。空冷ファンの排気口もあり、ファンの音はフルパワー動作時でもそれほど気にならない背面には、HDMI出力とMini DisplayPortが用意されている。このクラスのモバイルノートで、HDMIとMini DisplayPortの双方が用意されている点は大きな特徴だ
右側面には、7種類のメディアに対応した7-in-1カードリーダー、USB 2.0/eSATA共用ポート×1、ヘッドホン・マイク端子、100BASE-TX対応有線LANの各端子を用意本体底面のフタを開けると、メインメモリ増設用のSO-DIMMスロットが現れる。メインメモリは、最大8GBまで搭載可能だが、現時点でのBTOメニューでは4GBまで選択可能だ

●価格と性能のバランスに優れる低価格モバイルノートとしておすすめ

 では、ベンチマークテストの結果をチェックしていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」と「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の4種類。比較用として、「VAIO Y VPCY119FJ/S」と「ASUS UX30」の結果も加えてある。ちなみに、今回の試用機のスペックは、表にまとめたとおりであった。HDDとして、BTOメニューに用意されていない250GBドライブが搭載されていたという点は、あらかじめ頭に入れておいてもらいたい。

・試用機のスペック
CPU:Turion II Neo K625(1.5GHz)
メインメモリ:PC3-6400 DDR3 SDRAM 2GB
グラフィック機能:チップセット内蔵 Radeon HD4225
HDD:250GB 5,400rpm(WD2500BEVT)
OS:Windows 7 Home Premium 64bit

【表】ベンチマーク結果

Inspiron M301zVAIO Y VPCY119FJ/SASUS UX30
CPUTurion II Neo K625(1.50GHz)Core 2 Duo U9400(1.40GHz)Core 2 Duo U9400(1.40GHz)
チップセットAMD RS880MIntel GS45 ExpressIntel GS45 Express
ビデオチップMobility Radeon HD4225GMA 4500MHDGMA 4500MHD
メモリPC3-6400 DDR3 SDRAM 2GBPC3-6400 DDR2 SDRAM 4GBPC2-6400 DDR2 SDRAM 3GB
OSWindows 7 Home Premium 64bitWindows 7 Home Premium 64bitWindows Vista Home Premium SP2
PCMark Vantage Build 1.0.1 0906a
PCMark Suite260230272373
Memories Suite169219881340
TV and Movies Suite174522012076
Gaming Suite192617801388
Music Suite299035702459
Communications Suite284530962318
Productivity Suite246323162146
HDD Test Suite255835733020
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark ScoreN/AN/A3366
CPU Score353136453475
Memory Score330235903372
Graphics Score175216871454
HDD Score411051574711
3DMark06 Build 1.1.0 0906a
3DMark Score1382910657
SM2.0 Score453289206
HDR/SM3.0 Score557358256
CPU Score119412811213
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
Low504725542179
High296217391492
Windowsエクスペリエンスインデックス
プロセッサ4.34.44.6
メモリ5.54.94.9
グラフィックス3.74.13.2
ゲーム用グラフィックス4.53.53.3
プライマリハードディスク5.75.55.5

 結果を見ると、ベンチマークテストの項目によってややばらつきは見られるものの、パフォーマンスに関しては一般的なIntelのCULVノートとほぼ同等と言える。しかし、3D描画能力に関しては、CULVノートを圧倒している。もちろん、最新3Dゲームを快適にプレイ可能というレベルではないが、FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3の結果を見てもわかるように、比較的軽い3Dゲームなら十分問題なくプレイ可能だ。また、フルHD動画の再生支援機能であるUVD2のサポートもあり、CULVノートに対し、マルチメディア関連の処理能力はかなり優れると考えて良さそうだ。そういった意味では、ホビー用途で活用するなら、CULVノートよりも魅力がある。

 次に、バッテリ駆動時間のチェックだ。まず、Windows 7の省電力設定を「省電力」に、バックライト輝度を40%に設定し、無線機能は無線LANのみを有効にした状態で、BBenchを利用してキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約3時間という結果であった。カタログ値である約5時間22分という数字と比較してかなり短くなっているものの、バックライト輝度や無線LANを利用しているということを考えると、妥当な数字だろう。ただ、モバイルノートとして考えると、やや短く感じる。このバッテリ駆動時間では、ACアダプタの同時携帯も考慮する必要がありそうだが、ACアダプタ自体は比較的コンパクトで、重量も電源ケーブル込みで実測363gとそれほど重くないため、携帯性が大きく損なわれることはないだろう。

 また、Windows 7の省電力設定を「高パフォーマンス」、バックライト輝度を100%に設定し、無線LANとBluetoothをONにした状態で、動画ファイル(WMV9、ビットレート1,156kbps、640×480ドット)を連続再生させた場合には、約2時間10分であった。

・バッテリ駆動時間
省電力設定「省電力」、BBench利用時:約3時間0分
省電力設定「高パフォーマンス」、動画再生時:約2時間10分

付属のACアダプタは、比較的コンパクトなので、本体との同時携帯もそれほど苦にはならないだろうACアダプタの重量は、電源ケーブル込みで363gであった

 Inspiron M301zは、AMDのNileプラットフォームを採用したことで、対抗となるCULVノートよりも優れた3D描画能力や優れたHD動画再生支援機能が盛り込まれていることで、機能的なバランスに優れる低価格モバイルノートに仕上がっている。ややサイズが大きく重量が重かったり、バッテリ駆動時間がやや短いというように、モバイルノートとして少々気になる部分もあるが、69,800円からと7万円を切る価格で販売されていることを考えると、その点も納得できる範囲内だろう。一般的なCULVノートよりもマルチメディア関連の作業を快適にこなせる、コストパフォーマンスに優れる低価格モバイルノートとして広くオススメしたい製品だ。

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(2010年 6月 25日)

[Text by 平澤 寿康]