~Tシリーズで最薄を実現したスリムノートPC |
レノボ・ジャパンから登場した「ThinkPad T400s」(以下T400s)は、パフォーマンス・モバイルノートPC「ThinkPad T」シリーズの最新モデルであり、従来のT400に比べて、厚さ25%、重さ20%減を達成し、携帯性がさらに向上したことがウリだ。また、天板にCFRPやGFRPを採用することで、高い強度を実現、キーボードなども改良されており、ユーザビリティも向上するなど、ThinkPadシリーズの中でも屈指の完成度を誇る。
ThinkPad T400sは、6月24日に2モデルが発表された後、7月22日にWiMAX内蔵モデルが追加され、現在ではSSDモデルも選べるようになっている。ここでは、最初に発表されたSSDモデル向けモデル「ThinkPad T400s 2801A7J」を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。
●Tシリーズ最薄となる最薄部21.1mmを実現ThinkPadシリーズといえば、直線を基調としたシンプルなブラックボディを思い浮かべる人が多いだろうが、T400sも、基本的なデザインは従来のThinkPadシリーズを踏襲したものとなっている。
T400sは、日本ユーザーの声に応えるべく開発された製品だが、薄型軽量化に対する日本ユーザーのニーズは高く、Tシリーズの中で最薄、最軽量を実現することにこだわったという。T400sのサイズは、337×241×21.1~25.9mm(幅×奥行き×高さ)であり、T400の335.5×263×27.6~31.9mm(同)に比べて、最薄部で6.5mm、最厚部で6mmスリムになっている。これまでのThinkPadは、ボディの強度を重視していたため、他社に比べて分厚い製品が多かったが、T400sでは、他機種と比べても遜色のないスリムさを実現している。
もちろん、ボディが薄くなったからといって、強度が落ちてしまったのでは、モバイルノートPCとして本末転倒だが、T400sは、天板にハイブリッドCFRP(CFRPとGFRPのハイブリッド)を採用し、薄くなっても従来のLCD Roll Cage以上の耐衝撃性能を実現している。重量は約1.79kgで、こちらもT400の約2.4kgに比べて、大幅に軽量化された。14.1型ワイド液晶搭載ノートPCとしては軽量であり、12.1型前後のモバイルノートPCに比べれば重いが、携帯可能な範囲に収まっている。ボディの質感や作りについても、伝統のThinkPadの名に恥じない仕上がりだ。天板の塗装は、ゴムのような感触のつや消しになっており、指紋などが目立ちにくく、手触りもよい。
T400sは、PCとしての基本性能も高い。CPUにCore 2 Duo SP9400(2.4GHz)を、チップセットにIntel GS45 Expressを搭載し、2GBのメモリを装備。HDD容量は250GBだ。また、光学ドライブとしてDVDスーパーマルチドライブを搭載しているが、光学ドライブは固定式ではなく、脱着式になっている。そのため、DVDスーパーマルチドライブを取り外してウェイトセーバーを装着したり、代わりにBDドライブを内蔵することが可能だ。
OSは、Windows Vista Businessのダウングレード権を利用して、Windows XP Professional SP3がプリインストールされている。Windows Vista Businessのリカバリーメディアも付属しているので、Vista Businessを利用することも可能だ。企業ユーザーなど、Windows XP環境が必要な人もまだいるだろうが、Windows XPとVistaのどちらも利用できることは評価できる。
光学ドライブとして右側面にDVDスーパーマルチドライブを搭載する | DVDスーパーマルチドライブは着脱可能 | 光学ドライブの代わりにウルトラベイ・スリムに装着して、重量を減らすためのウェイトセーバー |
●1,440×900ドット表示の14.1型ワイド液晶を搭載
液晶のサイズは14.1型ワイドで、解像度は1,440×900ドットである。光沢タイプではなく、アンチグレアタイプなので、外光の映り込みが少なく、長時間使っていても目への負担が少ない。LEDバックライトを採用しており、輝度も十分だ。
ThinkPadシリーズは、キーボードの使い勝手がよいことで定評がある。T400sのキーボードは、伝統の7列フルサイズキーボードをベースに、使用頻度の高いEscキーやDeleteキーを大型化、クリック感の改善、ガタの低減による静音化、キーの隙間を狭くすることで異物の落下を防ぐといった改良が施されており、非常に使いやすいキーボードとなっている。
キーボード左上には、ミュートボタンや電源調整ボタン、マイクオフボタン、ThinkVantageボタンが用意されている。ミュートボタンとマイクオフボタンは、インジケータも兼ねているのでわかりやすい。
ポインティングデバイスとしては、タッチパッドとスティック型デバイス「TrackPoint」の両方から構成される「ウルトラナビ」を採用。タッチパッドとTrackPointを好みに応じて使い分けが可能で、それぞれでのカーソル移動速度を別々に設定することもできる。タッチパッドは、2本指でのマルチタッチ操作に対応したほか、パッドの面積も27%増加しており、さらに使いやすくなった。
また、薄型化を実現するために、タッチパッド部分とパームレスト部分の段差をなくしているが、パッドの位置を認識しやすいように、パッド表面にUVドット印刷による細かな突起が設けられた。この突起によって、操作感もより向上している。液晶の上部中央には、白色LEDを利用したキーボードライトが搭載されており、暗いところでのキー入力を助けてくれる。このようにユーザビリティについては、ノートPCの中で間違いなくトップクラスといえるだろう。
液晶は14.1型ワイドで、解像度は1,440×900ドットである。アンチグレアタイプなので、外光の映り込みが少ない | ThinkPad伝統の7列フルサイズキーボードをベースにさらに改良が施されており、EscキーやDeleteキーが大きくなった。キーピッチは19mmである | キーボード左上にミュートボタンや電源調整ボタン、マイクオフボタン、ThinkVantageボタンが用意されている |
ポインティングデバイスとしてスティック型の「TrackPoint」とタッチパッドを搭載。タッチパッドの表面には細かな突起が設けられている | 液晶の上部中央にキーボードライトを搭載する |
●DisplayPortやeSATA端子も搭載
T400sは、インターフェイスも充実している。USB 2.0×3(うち1つはパワードUSB 2.0仕様)とeSATA(USB 2.0と兼用)、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)を備えるほか、最近対応ディスプレイが増えつつある次世代ディスプレイインターフェイスのDisplayPortも搭載する。さらに、ExpressCard/34スロットも備えている。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11a/b/g/n対応無線LANおよびBluetooth Ver.2.1+EDRをサポート。本体右側面には、ワイヤレススイッチが用意されており、素早くワイヤレス機能の有効/無効の切替が可能だ。
また、パームレスト右側には指紋センサーを搭載。指紋センサーの左右両側にはLEDが搭載されており、サスペンド時でもセンサーの状態を知ることが可能で、サスペンドやハイバネーションから、指紋センサーの上で指を滑らせるだけで、復帰とログインを行なえるようになった。
左側面には、USB 2.0と音声入出力、ExpressCard/34スロットが用意されている | 右側面には、ワイヤレススイッチと光学ドライブが用意されている | 背面には、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)とLAN、パワードUSB 2.0、eSATA/USB 2.0、DisplayPortが用意されている |
背面の端子部分のアップ。左から2つめのUSB 2.0ポートは、電源供給能力を強化したパワードUSB 2.0になっている。その右側は、eSATAとUSB 2.0の兼用端子で、その右側がDisplayPortだ | パームレスト右側に指紋センサーを搭載。センサーの左右にLEDが搭載されており、状態を認識できる |
●標準バッテリで公称6.3時間の駆動時間を実現
バッテリは、11.1V/3.9Ahの6セル仕様で、公称約6.3時間の駆動が可能だ。また、光学ドライブを外して、代わりにオプションのベイバッテリーを装着することで、最大約11時間もの長時間駆動が可能になる。バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとにWebサイトへの無線LAN経由でのアクセス、10秒ごとにキー入力をおこなう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、4時間2分の駆動が可能であった(電源設定は「ポータブル/ラップトップ」に設定し、バックライト輝度は中)。重さ2kgを切る14.1型ワイド液晶搭載ノートPCとしては、バッテリ駆動時間も優秀といえるだろう。ACアダプタも比較的小型軽量であり、携帯性は優れている。
バッテリもかなりスリムだが、最大6.3時間の駆動が可能 | バッテリは11.1V/3.9Ahの6セル仕様だ | CDケース(左)とバッテリのサイズ比較 |
付属のACアダプタ。このクラスとしては小型軽量で、携帯性も優秀だ | CDケース(左)とACアダプタのサイズ比較 |
●高クロックのCore 2 Duo搭載で高いパフォーマンスを実現
参考のためにベンチマークを計測してみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較対照用に日本エイサー「Aspire Timeline AS3810T」、日本HP「HP Pavilion Notebook dv2店頭モデル」、日本HP「HP Pavilion Notebook dv2直販モデル」、MSI「X-Slim X340 Super」の値も掲載した。
T400sのPCMark05の総合スコアは4454で、シングルコアのCore 2 Solo SU3500を搭載したX-Slim X340 Superや、Athlon Neo MV-40を搭載したHP Pavilion Notebook dv2に比べて、2倍以上となっている。CPU Scoreは、さらに大きな差が付いており、T400sのパフォーマンスが高いことがよくわかる。
□ThinkPad T400sのベンチマーク結果ThinkPad T400s | Aspire Timeline AS3810T | HP Pavilion Notebook dv2店頭モデル | HP Pavilion Notebook dv2直販モデル | X-Slim X340 Super | |
CPU | Core 2 Duo SP9400(2.4GHz) | Core 2 Duo SU9400(1.4GHz) | Athlon Neo MV-40(1.6GHz) | Athlon Neo MV-40(1.6GHz) | Core 2 Solo SU3500(1.4GHz) |
ビデオチップ | Intel GS45内蔵コア | Intel GS45内蔵コア | AMD M690G内蔵コア | Mobility Radeon HD 3410 | Intel GS45内蔵コア |
PCMark05 | |||||
PCMarks | 4454 | 計測不可(エラーが出る) | 1678 | 2175 | 2101 |
CPU Score | 6204 | 3629 | 1845 | 2129 | 2435 |
Memory Score | 5323 | 3576 | 2578 | 2713 | 3338 |
Graphics Score | 1802 | 1495 | 820 | 2018 | 1108 |
HDD Score | 4471 | 5200 | 3642 | 3926 | 5086 |
3DMark03 | |||||
1024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks) | 2186 | 1615 | 1508 | 3453 | 1552 |
CPU Score | 計測不可(エラーが出る) | 561 | 564 | 714 | 492 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | |||||
HIGH | 2945 | 1476 | 1504 | 2914 | 1427 |
LOW | 計測不可(エラーが出る) | 2172 | 2174 | 4474 | 2094 |
ストリーム出力テスト for 地デジ | |||||
DP | 99.97 | 79.33 | 48.57 | 61.33 | 68.1 |
HP | 99.97 | 99.93 | 99.67 | 99.83 | 99.97 |
SP/LP | 100 | 100 | 99.83 | 99.87 | 100 |
LLP | 100 | 99.97 | 100 | 99.9 | 100 |
DP(CPU負荷) | 49 | 65 | 100 | 100 | 100 |
HP(CPU負荷) | 22 | 36 | 87 | 77 | 61 |
SP/LP(CPU負荷) | 14 | 24 | 53 | 43 | 35 |
LLP(CPU負荷) | 11 | 18 | 36 | 35 | 28 |
CrystalDiskMark 2.2 | |||||
シーケンシャルリード | 43.89MB/s | 66.58MB/s | 48.22MB/s | 53.35MB/s | 未計測 |
シーケンシャルライト | 41.44MB/s | 57.82MB/s | 50.64MB/s | 41.73MB.s | 未計測 |
512Kランダムリード | 22.17MB/s | 30.32MB/s | 27.59MB/s | 24.97MB/s | 未計測 |
512Kランダムライト | 24.77MB/s | 32.58MB/s | 37.19MB/s | 32.76MB/s | 未計測 |
4Kランダムリード | 0.329MB/s | 0.452MB/s | 0.499MB/s | 0.323MB/s | 未計測 |
4Kランダムライト | 0.811MB/s | 1.147MB/s | 1.220MB/s | 1.058MB/s | 未計測 |
BBench | |||||
4時間2分 | 6時間17分 | 3時間15分 | 2時間24分 | 未計測 |
●メインマシンとして使えるパフォーマンスと携帯性を両立
T400sは、これまでThinkPadシリーズで培ってきた技術をつぎこんだ、ThinkPadの集大成ともいえるマシンだ。2.4GHz動作のCore 2 Duoの搭載により、メインマシンとしても十分快適に使えるパフォーマンスと最薄部21.1mm、重さ約1.79kgのスリムで軽いボディを両立させていることが魅力だ。ボディの剛性感は高く、安心して持ち歩ける。今回試用した2801A7Jのダイレクト価格は199,500円であり、CULVノートPCなどに比べると高いが、それだけの価値はある製品だ。
(2009年 9月 15日)
[Text by 石井 英男]