Hothotレビュー

日本マイクロソフト「Surface 3」

~メインPCに足る性能を備えたWindows 2-in-1のリファレンス機

日本マイクロソフト「Surface 3」

 日本マイクロソフトは、シリーズ最薄/最軽量となる10.8型液晶搭載Windows 2-in-1「Surface 3」を5月19日に発表した。翌20日からすでに予約は開始されており、6月19日に発売される。

 本製品はコードネーム「Cherry Trail」(チェリートレイル)で呼ばれるIntelの最新モバイルPC向けCPU「Atom x7-Z8700」が採用された最初のPCであり、AndroidにとってのGoogle Nexusシリーズのように、ある意味ではWindows PCのリファレンスモデルとしての役割も担っている。よって今後各PCメーカーから同じくAtom x7-Z8700を搭載したPCが多数出ることは確定的なため、注目している読者も多いことだろう。

 今回、Surface 3の国内版実機を数日ではあるが試用する機会を得たので、できるだけ多くの写真、ベンチマーク、使用感などを通じて、購入検討の参考になる情報をお届けしたい。

個人向けはLTEモデルのみ、Type CoverとSurfaceペンは別売

 Surface 3本体の同梱品は、13W電源アダプタ、クイックスタートガイド、Office Home & Business Premiumプロダクトキー、安全性および保証に関するドキュメントのみ。キーボード兼カバーであるSurface 3 Type Cover(以下Type Cover)が付属しないのは従来通りだが、Surfaceペンも今回から別売となった。レッド、シアン、ブラック、ブライトレッド、ブルーの5色のType Coverに合わせて、シルバー、ブラック、ブルー、レッドのSurfaceペンを選べるようになったことは、カラーコーディネートを重視する方には歓迎できることかもしれない。

 しかし、いずれにしてもSurface 3を2-in-1として使うためにはType Coverは必須で、Surfaceペンも必要とするユーザーが多いことだろう。よって、Type Coverの16,934円、Surfaceペンの6,458円も織り込んで、Surface 3の購入を検討した方がいい。日本国内では個人向けにはLTEモデルのみが提供され、メモリ2GB/ストレージ64GBモデルが88,344円、メモリ4GB/ストレージ128GBモデルが99,144円という価格設定になっている。つまりType CoverとSurfaceペンを一緒に購入するのであれば、下位モデルは111,736円、上位モデルは122,536円が総支払い額となるわけだ。

パッケージは従来通り横から引き出す構造
本体、13W電源アダプタ、クイックスタートガイド、Office Home & Business Premium プロダクトキー、安全性および保証に関するドキュメントに加え、Nano SIMカードトレイを引き出すためのSIM取り出しツールが付属する
13W電源アダプタ。ケーブルは着脱式で、アダプタ側がUSB Aオス端子、PC側がUSB Micro Bオス端子。メーカー保証外だが、当然、他社製のMicro USBケーブルで代用することも可能だ
13W電源アダプタはUSBケーブルを含めて実測112.5g
PC側のUSB Micro BオスはL字型。横幅が大きく抜き差ししやすい形状だ
ケーブルを挿して通電すると白くLEDが光る。充電状況に合わせて色が変わることはない
Surfaceペン。このシルバー以外に、ブラック、ブルー、レッドが用意されている。機能的にはSurface Pro 3に同梱されているデジタルスタイラスと同じものだ
サイズは直径9.5×長さ135mm、公称重量18g。実測重量もピッタリ18gだった
Type Coverのパッケージ
Type Coverはレッド、シアン、ブラック、ブライトレッド、ブルーの5色を用意。日本マイクロソフトの公式ストアで入手可能なのは日本語キーボードのみ
LTEモデルで公式サポートされるのはY!mobileの回線(Nano SIMカード)。Surface 3のNano SIMカードトレイを引き出すための穴は細めなので、電気街で売っている汎用SIMピンではなく、同梱のSIM取り出しツールを使用する

常時携帯が苦にならないサイズ&重量

 Surface 3のサイズは約267×187×8.7mm(幅×奥行き×高さ)、公称重量は約641g。約265gのType Coverと合わせても約906gとなり、2-in-1としては軽量級に属する。タブレット単体としては437gのiPad Air 2(Wi-Fiモデル)より204gほど重いが、PCとしては920gの12インチMacBookよりわずかに軽いので、どちらの用途もこなせる2-in-1としては絶妙なサイズ&重量だと言えよう。

 インターフェイスは充実しており、USB 3.0、Micro USB充電端子、Mini DisplayPort、microSDカードスロット、ヘッドセット端子、Nano SIMカードトレイ、カバー用端子を備えている。スペックシートには“Micro USB充電端子”と記載されているが、バッファロー製microSDカードリーダ/ライタを挿したら、ストレージとして認識した。実用的かどうかは別にして、USB Hubを使用しなくてもストレージを3つ増設できることになる。

本体正面。向かって右にはWindowsボタン、画面中央上部には350万画素の前面カメラ、前面カメラランプ、マイクが配置
目立たないが本体正面の左右上部にはステレオスピーカーが設けられている
本体背面。中央上部には800万画素の背面カメラ(オートフォーカス対応)、背面カメラランプが配置。Surface Pro 3はキックスタンドに“Surface”のロゴがあったが、Surface 3ではWindowsロゴに変更されている
本体上面。左からボリュームボタン、電源ボタンが配置
本体底面。左からNano SIMカードトレイ、カバー用端子が配置
本体右側面。左からヘッドセット端子、Micro USB充電端子、USB 3.0、Mini DisplayPortが配置。キックスタンドを開けやすいように左右側面にはスリットが入っている
本体左側面
キックスタンドを引き出すと、本体背面左下部にmicroSDカードスロットが現われる。プッシュロック・プッシュイジェクト機構を備えているので、メモリカードを確実に着脱可能だ。
同時利用する機会は少ないだろうが、USB 3.0、Micro USB充電端子、microSDカードスロットにそれぞれストレージを装着できる
13W電源アダプタは5.2V/2.5A仕様
スペック値で重量約641gのところ実測641.5g
本体とType Coverを合わせた総重量は実測905g。気軽に毎日バッグに入れて持ち出せる重量だ

キックスタンドは3段階調節

 「Surface Pro 2」では2段階調節式、「Surface Pro 3」では無段階調節式のキックスタンドが採用されていたが、Surface 3では3段階調節式のキックスタンドに変更された。設置できる角度は、実測で31度、48.6度、67.6度。自由に角度調節できないのは、クラムシェル型のノートPCをメインで使っている筆者としては少々不満。照明が多く設置されたオフィスや喫茶店などで使用する際には、細かく角度を変更することで映り込みを避けられるので、次期モデルではぜひ無段階調節式のキックスタンドを採用して欲しいところだ。

3段階調節式のキックスタンドを採用。設定角度は実測で、31度、48.6度、67.6度
キックスタンドのヒンジ部。角度調節時のトルクは一定で、節度ある好ましい感触だ
電車車内や、電車待ちをしているホームで膝上利用してみたが、Type Coverが磁力で強力に固定されているため、落下に対しての不安感はなかった

生産性を重視した3:2比率のフルHD+ディスプレイ

 Surface 3が搭載しているディスプレイは、10.8型1,920×1,280ドット。縦書きでのペン入力の際の使い勝手を考慮して、フルHDより縦の解像度を200ドット増やし、紙のノートなどと同じ3:2の画面比率となっている。画素密度は214dpiとなり、12型で2,160×1,440ドットの液晶を採用しているSurface Pro 3の216dpiとほぼ揃えてきた。いわゆるRetinaディスプレイとほぼ同等だ。フォントのレンダリングエンジンが改善されるWindows 10にアップグレードした暁には、Mac OS Xと肩を並べる文字品質を得られることだろう。

 色域などについて詳細なデータは公表されていないが、筆者が撮影した写真などで確認したところでは、基本的には素直な発色だと感じられた。特筆しておきたいのは赤系の発色のよさ。手持ちの2-in-1「TransBook T90 Chi」と比較すると、赤味がより強く出た記憶色に近い色合いが再現されていた。プロカメラマンのフィニッシュ作業に応えるかどうかは微妙だが、少なくとも筆者を含めたアマチュアレベルのカメラファンが過去の写真を見返す時には、鮮やかで好ましい発色を楽しめるディスプレイだと素直に感じた。

10.8型1,920×1,280ドット液晶の画素密度は214dpi。スペック的には十分な解像度だ
横に並べて赤味を比較してみると、Surface 3の方がTransBook T90 Chiよりも艶かしい赤色が表現できているのが分かる
赤味を強く発色できる一方で、葉脈が判別できるほど微妙な色合いの濃紺も確認できる

オプションのスタイラスは筆圧レベル250段階超

 今回オプションとなったSurfaceペンは、Surface Pro 3に同梱されているものと同等品。筆圧レベルが250段階を超えること以外、細かな仕様は公開されていない。筆圧レベルが2,048段階のプロ仕様デジタルスタイラスを日常使いしている方には、描線の強弱などに不満を感じる可能性は高いだろう。しかし日常的にタブレットPCでイラストを描くことはなく、メモ書きにしか利用しない筆者には、正直違いが分からないレベルであった。

 筆者は筆圧がかなり高めなのだが、ペン先の沈み込みの強さが合っているのか、長時間の筆記テストを快適にこなすことができた。ただ少々滑りが強く感じたので、個人的に使用するのであればアンチグレアフィルムなどを貼って、少し引っかかりを感じる方向に表面のテクスチャを調節してみたい。

オプションのデジタルスタイラス「Surfaceペン」。左が消しゴムボタン、右が右クリックボタンとして機能する
標準でインストールされている「Surface」アプリで、Surfaceペンの筆圧を調整できる
標準設定の筆圧で早書きしてみた。筆者の筆圧では特にペンの感度を調整する必要はなさそうだ
プリインストールされている「MetaMoji Note for Surface」で円を連続して素早く描いてみた。特殊なペン先を選択していると遅延が発生したが、通常のペン先では最後まで描線が追従している

Surface 3のキーボードはType Coverで決定

 オプションのType CoverはSurface Pro 3と同様にマグネットで角度をつけることが可能。筆者にはこの傾斜した状態でのキー入力が非常に快適だった。まず実測6.1度の角度がついていることで、キーボード左右両端のキーにも自然に指を伸ばせる。また、意図した結果ではないだろうが、キーボードがわずかにたわむことで底打ちによる指先の疲労が軽減された。16,934円と決して安くはないオプション品だが、Surface 3を購入するならほかのキーボードを選択することは考えられないほどの出来栄えだ。

Surface 3用のType Cover。268×188×5mm(同)で、キーピッチは実測約18mm
Type Cover側に仕込まれている磁石によって、実測6.1度の角度をつけられる
キートップはバックライト仕様。暗い環境でもタイピングが容易だ
重量は実測263.5g。磁石が内蔵されているためか、端子側に重さが集中している

ノートPCとして活用するなら迷わず上位モデル

 前述の通り、Surface 3にはIntelの最新モバイルPC向けCPU「Atom x7-Z8700」が採用されており、日本国内の個人向けモデルとしては、メモリにLPDDR3-1600 2GB、ストレージに64GB eMMCを搭載した下位モデルと、メモリにLPDDR3-1600 4GB、ストレージに128GB eMMCを搭載した上位モデルの2機種のみが存在する。下位モデルと上位モデルに10,000円の価格差があるが、筆者としては上位モデルを強く推しておきたい。PC Watchの読者の皆様には言わずもがなだが、タブレットPCとしてのみ使うならともかく、ノートPCとして複数アプリを切り替えて活用する機会が多いのであれば、メモリ4GBの上位モデルの方が圧倒的に快適だからだ。

GPUの性能向上が目立つAtom x7-Z8700

 今回ベンチマークの比較対象機種としては、筆者の手持ちのPCの中から、ASUSの「TransBook T90 Chi」と、Appleの「MacBook」を選んだ。TransBook T90 ChiにはコードネームBay Trail-Tで知られるCPU「Atom Z3775」(1.46GHz)が搭載されているため、Cherry Trail世代のAtom x7-Z8700(1.60GHz)との性能差を測ることを目的とした。下位モデルで160,704円を超えるMacBookはSurface 3と大きな価格差があるが、MicrosoftとAppleそれぞれの薄型ノートPCという位置付けでは競合製品と見なせることから選出した。

 ベンチマークプログラムには、「PCMark 8 v2.4.304」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark v1.5.893」、「CINEBENCH R15」、「Geekbench 3.3.2」、「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」、「CrystalDiskMark 4.0.3」を使用した。合わせて、実アプリのパフォーマンスを計測するために「Adobe Photoshop Lightroom」、「Adobe Premiere Pro CC」、連続動作時間を計測するために「BBench」を使用している。TransBook T90 ChiのOSは「Windows 8.1 with Bing 32bit」、MacBookのOSは「OS X Yosemite」であるため、実施できないベンチマークが多々あるが、全体を俯瞰してみれば傾向は見て取れるはずだ。

【ベンチマーク結果】

Surface 3ASUS TransBook T90 ChiMacBook
CPUAtom x7-Z8700(1.60/2.4GHz)Atom Z3775(1.46/2.39GHz)Core M(1.1/2.4GHz)
GPUIntel HD GraphicsIntel HD GraphicsIntel HD Graphics 5300
メモリLPDDR3-1600 4GBLPDDR3-1066 2GBDDR3L-1600 8GB
ストレージ128GB eMMC64GB eMMC512GB SSD
OSWindows 8.1 Update 64bitWindows 8.1 with Bing 32bitOS X Yosemite
PCMark 8 v2.4.304
Home Accelarated 3.016851644-
Creative Accelarated 3.019131402-
Work 2.012691715-
PCMark 7 v1.4.0
PCMark score28483135-
3DMark v1.5.915
Ice Storm2510722319-
Graphics Score2793421957-
Physics Score1854023686-
Cloud Gate24591781-
Graphics Score28611719-
Physics Score16502042-
Sky Diver1198667-
Graphics Score1111586-
Physics Score22202148-
Combined score1093675-
Fire Strkle288152-
Graphics Score310201-
Physics Score23592945-
Combined score10236-
CINEBENCH R15
OpenGL15.07 fps-19.40 fps
CPU142 cb-204 cb
Geekbench 3.3.2
Single-Core Score 32bit93612722168
Multi-Core Score 32bit320240224256
Single-Core Score 64bit1027-2190
Multi-Core Score 64bit3471-4528
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】
1,280×720ドット17531083-
SSDをCrystalDiskMark 4.0.3で計測
Q32T1 シーケンシャルリード140.946MB/sec185.067MB/sec-
Q32T1 シーケンシャルライト47.003MB/sec71.082MB/sec-
4K Q32TI ランダムリード35.379MB/sec50.735MB/sec-
4K Q32TI ランダムライト15.204MB/sec19.090MB/sec-
シーケンシャルリード114.709MB/sec112.632MB/sec-
シーケンシャルライト43.411MB/sec53.058MB/sec-
4K ランダムリード16.035MB/sec22.132MB/sec-
4K ランダムライト10.025MB/sec14.500MB/sec-
SDカードをCrystalDiskMark 4.0.3で計測(Transcend microSDXC/SDHC Class 10 UHS-I 300x (Premium))
Q32T1 シーケンシャルリード34.185MB/sec28.571MB/sec-
Q32T1 シーケンシャルライト18.798MB/sec21.337MB/sec-
4K Q32TI ランダムリード5.717MB/sec5.516MB/sec-
4K Q32TI ランダムライト0.897MB/sec1.350MB/sec-
シーケンシャルリード41.942MB/sec31.670MB/sec-
シーケンシャルライト4.403MB/sec6.081MB/sec-
4K ランダムリード4.617MB/sec4.688MB/sec-
4K ランダムライト0.732MB/sec1.206MB/sec-
100枚(907MB)の画像をファイルコピー(Transcend microSDXC/SDHC Class 10 UHS-I 300x (Premium))
SSD→SSD19秒5922秒354秒30
SSD→SDカード1分15秒221分17秒95-
SDカード→SSD27秒9246秒74-
Adobe Photoshop Lightroomで50枚のRAW画像を現像
4,912×3,264ドット、自動階調6分52秒2010分33秒473分45秒32
Adobe Premiere Pro CCで実時間4分53秒の動画を書き出し
1,280×720ドット39分53秒32-43分26秒39
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分の動画を書き出し
1,920×1,080ドット18分12秒36-23分28秒68
BBenchにより連続動作時間を計測(ディスプレイの明るさ40%)
バッテリー残量5%まで7時間54分9時間20分-

 Surface 3とTransBook T90 Chiのベンチマークスコアを細かく見ていくと、不思議な結果が出ていることに気付くだろう。Atom x7-Z8700を搭載するSurface 3よりも、Atom Z3775を搭載するASUS TransBook T90 Chiの方が上回っているスコアがいくつかあるのだ。傾向としては、PCMark 8のWork 2.0や、3DMarkのPhysics Score、Geekbench 3.3.2など、主にCPU性能に関わる項目で逆転現象が起きている。

 Atom Z3775のSilvermontコア(22nm)と、その微細化版にあたるAtom x7-Z8700のAirmontコア(14nm)はCPUアーキテクチャに大きな変化はないため、同等のスコアならまだ合点がいくのだが、逆転しているのが不思議だ。サーマルスロットリングが最も疑わしかったが、3DMarkのRun Detailsを確認してもCPU温度の上昇に伴いクロック周波数が低下している現象は見受けられなかった。というわけで原因は不明だが、ベンチマークプログラムの一部項目のスコアについては、体感できるレベルではないがBay Trail-TよりもCherry Trailが下回っているようだ。

 その一方で、RAW画像を現像するような実際のアプリケーションの計測では、Surface 3が6分52秒20、ASUS TransBook T90 Chiが10分33秒47と、体感できるレベルでの差が付いている。

 ストレージについてもTransBook T90 Chiが速い結果が出ている。これはSurface 3がeMMC 4.5(200MB/sec)対応のSamsung MDGAGC、TransBook T90 ChiがeMMC 5.0(400MB/sec)対応のSamsung MCG8GCをストレージに採用しているので順当な結果だ。

 なおMacBookとの比較では、CINEBENCH R15、Geekbench 3.3.2などベンチマークプログラムではMacBookがすべて上回ったものの、Adobe Premiere Pro CCの動画書き出しではSurface 3が一矢を報いた。ストレージにSSDより低速なeMMCを採用しているハンデを背負っているわりには健闘と言えるのではないだろうか。

3DMarkのRun Details。CPUが関わるPhysicsの部分で、CPU温度の上昇に伴いクロック周波数が低下している現象は見受けられない

手に持つ場所は低い温度に抑えられた排熱設計

 タブレットPCとして使用する際に筐体の表面温度は快適に使えるか否かの重要なポイント。そこで今回表面と裏面を4×4の区画に分割して、それぞれ放射温度計で計測してみた。負荷をかけるのに使用したソフトは「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」。気温24度の室内で、モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】を10周させたのち、温度計測を実施している。

 結果はご覧の通り、横持ちの際に手を添えることになる左右側面と底面側は30~36度と比較的低い温度に抑えられていた。また最も高い温度になったのは背面上部の39.3度だが、ファンレス仕様のタブレットで40度を超えなかったことは注目に値する。比較対象機種のTransBook T90 Chiが本体正面左側面が42度に達したことを考えると、Surface 3はタブレットスタイルで利用するとき不快に感じないように、発熱量の高いチップを本体中央上部に配置している可能性が高い。

Surface 3の本体正面
Surface 3の本体背面。最も高い温度を示したのは本体上部で39.3度
TransBook T90 Chiの本体正面
TransBook T90 Chiの本体背面。最も高い温度を示したのは本体左側面で42度。薄型軽量筐体を実現したぶん排熱が難しい構造なのだろう

記念写真にも使えるレベルのカメラ画質

 一昔前のタブレットPCに搭載されていたカメラは、正直おまけレベルの画質で、メモ代わり程度にしか利用できなかった。しかし、Surface 3の背面カメラは800万画素と十分な解像度を備え、また素直な色味も好印象。曇天の日に撮影したため下記の3枚目、4枚目は少々暗いが、色転びはしていないので少し露出を上げれば十分鑑賞に耐える画質になる。LTE対応のSurface 3だからこそ、撮影してからソーシャルにすぐ投稿するという一連の作業をスムーズにこなせそうだ。

Surface 3背面カメラでの作例※画像をクリックすると3,264×2,176ドットの画像を表示します

人の往来の多い秋葉原では下り1.516Mbps止まり

 国内個人向けはLTE搭載モデルのみということで、肝心の通信速度を筆者の生活圏3カ所で計測してみた。計測に使用したサイトは「NURO オリジナル通信速度測定システム」だ。今回最も速い通信速度を記録したのは埼玉県さいたま市にある筆者の自宅で下り30.24Mbps、上り16.85Mbps。逆に最も遅い通信速度にとどまったのは秋葉原駅前で下り1.516Mbps、上り432.0kbps。通信速度は計測場所、時間によって大きく左右されるが、秋葉原駅前での通信速度はWebブラウジングにも少々厳しいと言わざるを得ない。Surface 3にSIMロックがかかっていないとはいえ、個人向けにはLTEモデルしかなく、また選べる通信事業者はY!mobileのみ。LTE唯一の選択肢に対しては、人の往来の多い秋葉原とはいえコンスタントに10Mbpsを超える通信速度を出せるように設備を増強して欲しいところだ。

埼玉県さいたま市にある筆者の自宅で計測。下り30.24Mbps、上り16.85Mbps
上野駅ホームで計測。下り13.47Mbps、上り12.64Mbps
秋葉原駅前で計測。下り1.516Mbps、上り432.0kbps

Surface 3が2-in-1の本領を発揮するのはWindows 10から

 冒頭でSurface 3はWindows PCのリファレンスモデルとしての役割を担っているとお伝えした。2012年6月18日に発表されたSurfaceから数えて6製品目となるSurface 3は、サイズ、性能バランス、ギミックすべてにおいて、ある意味現時点での2-in-1の完成形に達していると言える。Atom x7-Z8700は動画のエンコードを高速にこなせるCPUではないが、LightroomでのRAW画像現像であれば、多少待つものの実用的な速度で処理することが可能だ。ストレージ容量の心もとなさは、外付けHDDを利用するか、もしくはオンラインストレージのOneDriveに任せてしまえばよい。

 現時点でSurface 3が、iPad Air 2とMacBookのどちらにも勝っているかと言えば答えはノーだろう。Surface 3が両者の役割を1台でこなせるとは言っても、Appleの人気製品とどちらを選ぶかは悩ましいところだ。

 しかし7月29日にWindows 10が正式にリリースされると、さまざまな新機能とともに、ユーザーはデスクトップモードとタブレットモードをよりシームレスに行き来可能となる。つまり、Windows 10がリリースされたとき、Surface 3はWindows 2-in-1の本領を発揮できるようになるわけだ。Surface 3と、iPad Air 2/MacBookで迷っている人がいたら、この大きな変革が控えていることを考慮に入れたいところだ。

(ジャイアン鈴木)