ASUSTeK Computer「Eee Pad Slider SL101」
~スライド型キーボード搭載のAndroidタブレット



ASUSTeK Computer「Eee Pad Slider SL101」

発売中
価格:49,800円



 ASUSTeK Computerは、スライド型のキーボードを搭載するAndroidタブレット新モデル「Eee Pad Slider SL101」を発売した。ピュアタブレットスタイルだけでなく、キーボードを引き出しノートPCのようにも利用可能で、より幅広い用途に対応できる。

●スライド型のキーボードを搭載

 「Eee Pad Slider SL101」(以下、SL101)の特徴は、スライド型のキーボードを搭載している点だ。本体は、液晶部とキーボード部が重なった状態となっており、液晶部を後方に引きあげることでキーボードが現れる。液晶部とキーボード部は板状のヒンジで接続されており、その部分を支点として液晶部が後方斜め上方に引きあげられるようになっている。キーボード部後方には、液晶部を固定するツメが左右2カ所に用意され、液晶部を引きあげた時にツメでしっかり固定されるようになっているので、キーボードを引き出した状態でも液晶部がぐらつくことはなく、しっかりと固定される。ヒンジ部は前後にスライドする機構がないため、液晶部の角度調節はできないが、おおむね使いやすい角度になっている。

 キーボードは、ストロークが短く、タッチも柔らかく、ノートPCのキーボードと比べると、やや感触が異なっている。また、キーピッチは、横が約17mmだが、縦がやや短くなっており、こちらもやや違和感を感じる。それでもスクリーンキーボードよりははるかに軽快な入力が可能だ。

 この構造を採用する最大の利点は、本体を薄くできるという点にある。SL101の本体サイズは、273×180.3×18.3mm(幅×奥行き×高さ)と、キーボードを搭載しながら、20mmを切る薄さを実現している。同じくASUSが発売している、キーボードドックを付属し、一般的なノートPC同等のクラムシェルスタイルで利用できる「Eee Pad Trasnformer TF101」は高さが28mmある。もちろん、キーボードを搭載しないAndroidタブレットとの比較では、かなり厚いのは事実だが、キーボードを搭載していることを考えると、薄型と言える。

 重量は、公称で約960g、実測で965gと、ギリギリ1kgを切るレベル。キーボード非搭載のAndroidタブレットとの比較ではかなり重く、実際に手に持って比較しても、SL101はずっしりと重く感じる。SL101を通常のAndroidタブレットと同列で比較した場合には、この重量はかなり気になると言わざるを得ない。しかし、Androidタブレットと外付けキーボードを同時に持ち歩くことを考えると、この重量でも大きな不満は感じなくなる。なにより、タブレットとキーボードを別々に持ち歩く場合のようにかさばることがないため、携帯性は十分に優れると考えていい。

SL101のキーボードを引き出した状態。キーボードにより、ノートPC同等の軽快な文字入力が可能だキーボードを引きだして横から見た状態。液晶部の角度はこの状態で固定され、角度の調節は行なえない背面から見た様子。シルバーの板状のヒンジで接続されていることがわかる
2枚の板状ヒンジでしっかり接続されており、ぐらつきは一切感じない液晶部を開くと、キーボード奥左右のツメでしっかり固定されるフットプリントは、273×180.3mm(幅×奥行き)。同じ10.1型液晶を搭載するXOOMよりひとまわり大きい
キーボードは、キーの間が開いたアイソレーションタイプのものを採用。ストロークはかなり短く、タッチも柔らかめだキーピッチは実測で約17mm。ただ、縦が短くなっており、利用時には少々違和感を感じることもある。それでもスクリーンキーボードよりはるかに軽快な入力が可能。高さはキーボードを収納した状態で18.3mm。XOOMと比較するとかなり厚いが、キーボードを搭載していることを考えると十分に薄いと言える
重量は、実測で965gだった。こちらも、Androidタブレットとして考えると重いが、キーボードを搭載していることを考えると満足できる

【動画】キーボードを開いている様子

●スペック面は、Android 3.1タブレットとして標準的

 SL101のハードウェアスペックは、Android 3.1タブレットとして標準的なものとなっている。プロセッサは、NVIDIAのデュアルコアプロセッサTegra 2 1GHzを採用。メモリは1GB、ストレージ容量は32GB搭載しており、大容量データの保存も安心だ。外部メモリスロットとしてmicroSDHCカードスロットが用意されており、ストレージ容量の追加も簡単に行なえる。液晶パネルは10.1型ワイド液晶で、表示解像度は1,280×800ドット。液晶パネルにはもちろんIPSパネルが採用されており、どの角度から見ても色合いの変化が非常に少なく、映像や文字もくっきり視認できる。タッチパネルは静電容量方式で、10点マルチタッチに対応する。

 無線機能は、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LANとBluetooth 2.1+EDRを標準搭載し、3Gは非搭載。センサー類は、GPS、加速度センサー、ジャイロセンサー、電子コンパス、照度センサーを搭載。カメラは、裏面に約500万画素のメインカメラと、液晶面上部中央に約120万画素のサブカメラを搭載。このあたりの仕様は、Eee Pad Trasnformerとほぼ同等だ。

 本体側面に用意されているポートやボタン類は、左側面にmicroSDカードスロットとリセットボタン、音量ボタン、電源ボタンが、後部背面にmini HDMI出力と、USB/バッテリ充電などに利用する拡張ポートが、右側面にUSB 2.0ポートとヘッドフォン出力をそれぞれ備えている。右側面のUSB 2.0ポートはフルサイズのポートで、USBメモリやUSH HDD、マウス、ゲームコントローラなどのUSB機器を接続して利用できる。変換ケーブルなどを用意せずともUSB機器が利用できる点は非常に便利だ。

 アプリケーション類も豊富で、Office互換アプリの「Polaris Office」や、リジナルネットワークアプリ「MyCloud」、DLNA対応のネットワークメディアアプリ「MyNet」などを標準で搭載。これらは、Eee Pad Trasnformerに搭載されているものと同等だ。

液晶は、1,280×800ドット表示対応の10.1型ワイド液晶を搭載。IPSパネルを採用しており、視野角は十分に広い本体正面。側面が斜めに切り取られたデザインで、シャープなイメージだ左側面。高さは前方から後方までほぼ均一だ
背面。こちらの中央部分に手をかけて引きあげつつ後方に引くことで液晶面が開く右側面。液晶部はゴールド系の光沢のある塗装で、キーボード部はホワイト塗装となっている底面。メインカメラが見えるが、シンプルなデザインとなっている
底面には、約500万画素のメインカメラを配置。LEDフラッシュは搭載されない液晶面上部中央には、約120万画素のサブカメラを搭載する左側面には、microSDHCカードスロット、リセットボタン、音量ボタン、電源ボタンを配置。リセットボタンがあるのは珍しい
背面には、mini HDMI出力と拡張端子を用意。拡張端子は、付属のUSBケーブルを接続してPCに接続したり、ACアダプタを接続して充電が可能右側面には、USB 2.0ポートとヘッドフォン出力を用意。標準のUSBコネクタのため、USB機器をそのまま接続して利用できるOffice互換アプリの「Polaris Office」を標準搭載。文書やスプレッドシートの作成などが行なえる
DLNA対応のネットワークメディアアプリ「MyNet」も用意。DLNA対応機器などとメディアファイルの共有が可能だファイル操作アプリも標準搭載。USBメモリなどを接続した場合などに便利に利用できる

●バッテリ駆動時間は十分長い

 SL101にはリチウムポリマーバッテリが内蔵されており、公称で約8時間の駆動が可能とされている。実際にバッテリ駆動時間を検証してみた。

 まず、バックライト輝度を最低に設定し、無線LANをオン、GPSやBluetoothはオフにした状態で、フルHD解像度のH.264動画(映像ビットレート3Mbps、Baseline Profile)を連続再生させて検証してみたところ、約9時間15分でシャットダウンした。なんと、公称の駆動時間を1時間以上も上回る長さが確認された。ただ、これはEee Pad Trasnformerの、タブレット部のみでの駆動時間とほぼ同等で、取り立てて長いというわけではない。バックライト輝度を最大に設定して同様のテストを行なったところでは、約5時間30分とかなり短くなったが、それでも十分に長い。これだけの駆動時間が確保されていれば、不満を感じることはほぼないと言っていいだろう。

 ところで、バッテリ充電には、付属のACアダプタを利用する。このACアダプタは、Eee Pad Trasnformerに付属しているものと同じで、見た目はUSB充電アダプタのようだ。ただ、SL101を充電するには、付属の専用ケーブルを利用する必要があり、さらにその場合には15V/1.2Aの電力が出力されることになる。つまり、通常のUSB充電アダプタや、PCのUSBコネクタに接続したとしても充電は不可能。このあたりも、Eee Pad Trasnformerと同じだ。ちなみに、付属のACアダプタは、5V/2A出力も可能となっているので、USB充電に対応する各種機器の充電も可能だ。

付属のACアダプタ。非常に小型のものとなっているACアダプタにはUSBコネクタが用意されており、USB充電アダプタに似た仕様となっており、SL101の充電だけでなくUSB充電対応機器の充電にも利用できる
ACアダプタの接続には、付属の専用USBケーブルを利用するSL101充電時には、ACアダプタから15V/1.2Aの電力が供給される。つまり、PCなどのUSB端子や、一般的なUSB充電アダプタなどを利用しての充電は不可能

●パフォーマンスは、他のTegra 2搭載タブレットと同等

 では、パフォーマンスを検証していこう。今回は、「Quadrant Professional Edition」と「AnTuTu Benchmark」の2種類を利用した。また、比較用として、Motorola XOOM Wi-Fi TBi11M、レノボのIdeaPad Tablet K1、ソニーのSony Tablet Sの結果も加えてある。ただし、AnTuTu Benchmarkは、他の製品で利用したものとバージョンが異なっている(SL101ではバージョン2.3.1、その他はバージョン2.1)ため、参考値として見てもらいたい。

 結果を見ると、他のタブレットとスペックがほぼ横並びということもあり、若干優劣が見える部分もあるが、、ほぼ同等の結果になっている。実際にこれらを並べて同時に利用したとしても、パフォーマンス差はほとんど感じられないと考えていい。

 ちなみに、プロセッサにTegra 2を採用していることから、Baseline ProfileのH.264 フルHD動画はスムーズに再生可能だったが、Main ProfileやHigh ProfileのH.264動画は、コマ落ちが激しく視聴に耐えなかった。プロセッサの制限ということもあるが、やはりこの点は少々残念だ。

Quadrant Professional Edition総合
Quadrant Professional Edition詳細

【AnTuTu Benchmarkの結果】
 EeePad SliderXOOM Wi-Fi TBi11M
Android 3.1
IdeaPad Tablet K1
Android 3.1
Sony Tablet S
RAM787828818819
CPU integer1161118311691170
CPU float-point1028103510161018
2D graphics346246292293
3D graphics823759802811
Database IO295370175325
SD card write14110513195
SD card read189159131192
Total score4770468545344723

●キーボードによる軽快な文字入力に魅力を感じる人にオススメ

 SL101は、通常のAndroid 3.xタブレットとしてみると、本体が厚く重量も重いと感じるかもしれないが、スライド式のキーボードを搭載し、軽快な文字入力が可能という点は、他のAndroidタブレットにはない大きな魅力となる。Office互換アプリを利用した文書作成やスプレッドシートの入力なども軽快に行なえ、ノートPC代わりとしても活用できる。

 標準のUSBコネクタが用意され、USB周辺機器を手軽に利用できる点も嬉しい。Web通販ショップでは45,000円前後で販売されているところもあり、価格的にも十分に満足できるはず。キーボードによる軽快な文字入力や、USB周辺機器を利用した拡張性の高さなどに魅力を感じる人にオススメしたい製品だ。

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(2011年 10月 21日)

[Text by 平澤 寿康]