~フルHD対応21.5型IPS液晶を搭載した液晶一体型PC |
NECパーソナルコンピュータの秋冬モデルとして登場した「VALUESTAR N」シリーズは、21.5型液晶搭載の液晶一体型PCであり、同社のデスクトップPCの中でも売れ筋No.1だという。VALUESTAR Nシリーズの初代機は2007年4月に登場し、モデルチェンジを繰り返してきており、今回の秋冬モデルは5世代目になる。
新VALUESTAR Nは、従来に比べて液晶が一回り大きくなり、液晶の解像度も向上、さらにクアッドコアCPU搭載モデルが用意されるなど、スペックが大幅に強化されている。新VALUESTAR Nシリーズは、3D立体視対応の有無やCPUなどの違いで4モデルが用意されているが、今回は上位から2番目にあたるVALUESTARA N VN770/FS(以下、VN770/FS)を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、今回試用したのは試作機であり、製品版とは細部やパフォーマンスが異なる可能性がある。
●クアッドコアのCore i7を搭載するなど基本性能も充実新VALUESTAR Nシリーズは、液晶サイズが従来の20型から21.5型へと大型化され、筐体も一新されているが、液晶両側の手前の足と中央のスタンドの3点で筐体を支える構造や、基本的なデザインコンセプトは変わっていない。直線を基調としたシンプルなデザインで、万人受けしそうだ。VN770/FSのボディカラーは、ファインブラック、ファインホワイト、クランベリーレッドの3色が用意されており、好みに応じて選べる。
VN770/FSは、最上位のVN790/FSから3D立体視機能を省いたモデルであり、CPUなどの基本スペックはVN790/FSと同じだ。CPUとしては、Core i7-2670QM(2.20GHz)を搭載する。Core i7-2620QMは、型番がMで終わることからわかるように、ノートPC向けのCPUだが、デスクトップPC向けのCPUに比べてTDPが低く、冷却機構を小型化できるため、液晶一体型PCでは、ノートPC向けCPUを採用するのが一般的だ。
デスクトップPC向けのCore i7は、基本的にクアッドコアだが、ノートPC向けのCore i7は、デュアルコア製品とクアッドコア製品があり、ノートPCや液晶一体型PCでは、Core i7搭載といっても、実はデュアルコアのCore i7を採用した製品が多い。しかし、VN770/FSに搭載されているCore i7-2670QMは、クアッドコアであり(ノートPC向けのCore i7では型番がQMまたはXMになっている製品がクアッドコア)、1コアで2つのスレッドを実行できるHyper-Threadingテクノロジーにより、最大8スレッドの同時実行が可能だ。また、自動オーバークロック機能のTurbo Boost 2.0により、温度や電流に余裕があるときには最大3.10GHzまでクロックが向上するため、高いパフォーマンスを誇る。特に、動画エンコードやRAW現像など、マルチスレッドに最適化された処理に向いている。
ちなみに、夏モデルのVN770/ESでは、デュアルコアのCore i5-2410M(2.30GHz)を搭載していたので、CPU性能は大きく向上している。メモリは4GB SO-DIMMが2枚標準で装着されており、合計8GBとなっている。最大メモリ容量は8GBであり、それ以上の増設はできないが、8GBあれば通常の作業で不足を感じることはまずないだろう。HDDの容量は2TBと大きく、余裕がある。光学ドライブとしては、BDXL対応Blu-ray Discドライブを搭載する。夏モデルも、Blu-ray Discドライブを搭載していたが、BDXL二は非対応であった。
PCとしての基本性能は、一体型PCの中でもかなり高いといえるだろう。単体GPUは搭載していないので、最新ゲームを快適に遊びたいという人には向かないが、それ以外の用途なら十分なパフォーマンスだ。
●視野角の広いIPS液晶を搭載
液晶は21.5型で、解像度は1,920×1,080ドットのフルHD対応だ。視野角の広いIPS液晶を採用。光沢タイプなので、外光はやや映り込みやすいが、発色は鮮やかだ |
VN770/FSの最大の進化点は、液晶が20型から21.5型に大型化されたことである。単にパネルサイズが変わっただけでなく、TN液晶からIPS液晶に変更され、解像度も1,600×900ドットから1,920×1,080ドットへと向上した。IPS液晶は、一般的なTN液晶に比べて視野角が広く、斜めから見ても色の変化が少ないことが利点だ。液晶のスイーベルはできないが、上下のチルト角は上12度~22度の範囲で調整できる。光沢タイプなので、やや映り込みが気になることがあるが、発色は鮮やかで、視野角が広いので多人数で見る場合でも快適だ。
TV機能も充実しており、地上/BS/110度CSデジタル放送対応の3波チューナを2系統搭載し、2番組同時録画や裏番組録画が可能だ。HDD容量も2TBと大きく、ハイビジョン10倍録画に対応しているので、ハイビジョン画質(10倍録画時の解像度は1,280×1,080ドット)で最大約1,791時間の長時間録画が可能である。さらに、NTTフレッツ光回線で番組視聴ができる「ひかりTV」にも対応する。
キーボードとして、アイソレーションタイプのワイヤレスキーボードが付属する。使わないときには、本体の下に収納できるので場所をとらない。マウスは、横スクロール機能付きのワイヤレスレーザーマウスで、使い勝手がよい。また、電波方式のリモコンも付属しており、離れた場所からリモコンの方向を気にせずにAV機能などを操作できるのは便利だ。
サウンドにもこだわっており、独自のバスレフ構造で引き締まった低音を実現するヤマハの「FR-Port」を採用。TVやBlu-rayビデオなどのサウンドも、迫力ある再生が楽しめる。
●HDMI入力も搭載するなどインターフェイスも充実
秋冬モデルのVALUESTAR Nシリーズでは、インターフェイスも夏モデルに比べて強化されている。USB 3.0×2とUSB 2.0×5、有線LANなどを備えているのは、夏モデルと同じだが、秋冬モデルでは新たにHDMI入力が追加されており、HDDレコーダーやPS3などのHDMI対応機器を接続することが可能だ。フルHD対応IPS液晶を採用しているので、外部ディスプレイとしても使えるのは嬉しい。
左側面の2つのUSB 3.0ポートのうち、下側のポートは、電源オフ時でも給電が可能なパワーオフUSB充電機能に対応している。メモリカードスロットとしては、SDメモリーカード/SDHCメモリーカード/SDXCメモリーカード、メモリースティックPROに対応したデュアルメモリースロットを備えている。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11b/g/n対応無線LAN機能を搭載する。
電源は、付属のACアダプタ経由で供給される。ACアダプタは、一般的なノートPCのものよりはかなり大きいが、持ち運んで使うマシンではないので問題はないだろう。
●クアッドコアCore i7と大容量HDDで高いパフォーマンスを実現
参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」だ。
比較用として、ASUSTeK Computer「K53TA」、東芝「dynabook Qosmio T851/D8CR」、レノボ「IdeaPad Y570」、NEC「LaVie S LS550/ES」の値も掲載した。
VALUESTAR N VN770/FS | K53TA | dynabook Qosmio T851/D8CR | IdeaPad Y570 | LaVie S LS550/ES | |
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CPU | Core i7-2670QM (2.20GHz) | AMD A6-3400M (1.40GHz) | Core i5-2410M (2.3GHz) | Core i7-2630QM (2GHz) | Core i5-2410M (2.30GHz) |
ビデオチップ | Intel HD Graphics 3000 | Radeon HD 6720G2 | GeForce GT 540M | GeForce GT 555M | Intel HD Graphics 3000 |
PCMark05 | |||||
PCMarks | N/A | N/A | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 10075 | 4612 | 8087 | 9268 | 7709 |
Memory Score | 7590 | 3394 | 6965 | 8964 | 8588 |
Graphics Score | 4908 | 4142 | 7241 | 8157 | 4580 |
HDD Score | 6624 | 4627 | 4845 | 17644 | 5616 |
PCMark Vantage 64bit | |||||
PCMark Score | 7494 | 3591 | 5157 | 9886 | 5736 |
Memories Score | 4934 | 2789 | 4261 | 5337 | 4088 |
TV and Movie Score | 5493 | 2684 | 4010 | 5495 | 4271 |
Gaming Score | 6353 | 3733 | 5902 | 10114 | 4409 |
Music Score | 7229 | 3585 | 5127 | 10463 | 6394 |
Communications Score | 9961 | 3435 | 5035 | 8129 | 6305 |
Productivity Score | 4463 | 2041 | 3016 | 8125 | 3117 |
HDD Score | 3943 | 2635 | 3077 | 9964 | 3669 |
PCMark Vantage 32bit | |||||
PCMark Score | 7203 | 3226 | 4989 | 9284 | 5317 |
Memories Score | 4734 | 2630 | 4104 | 5186 | 3902 |
TV and Movie Score | 5409 | 2619 | 3945 | 5442 | 4297 |
Gaming Score | 5727 | 3099 | 5023 | 8958 | 4121 |
Music Score | 6762 | 3304 | 5183 | 9545 | 5884 |
Communications Score | 9943 | 3047 | 4992 | 7469 | 6218 |
Productivity Score | 4170 | 1693 | 2732 | 7427 | 2901 |
HDD Score | 4056 | 2627 | 3059 | 9948 | 3662 |
PCMark 7 | |||||
PCMark score | 2619 | 1367 | 1830 | 未計測 | 未計測 |
Lightweight score | 1967 | 1207 | 1625 | 未計測 | 未計測 |
Productivity score | 1556 | 832 | 1110 | 未計測 | 未計測 |
Creativity score | 4942 | 1692 | 2203 | 未計測 | 未計測 |
Entertainment score | 2518 | 1450 | 2120 | 未計測 | 未計測 |
Computation score | 10892 | 1532 | 2703 | 未計測 | 未計測 |
System storage score | 1738 | 1433 | 1338 | 未計測 | 未計測 |
3DMark03 | |||||
1,024×768ドット32bitカラー(3Dmarks) | 10682 | 13839 | 20356 | 23571 | 9325 |
CPU Score | 1828 | 1010 | 2085 | 1988 | 1533 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | |||||
HIGH | 4513 | 3683 | 7915 | 7706 | 3586 |
LOW | 6648 | 5501 | 10464 | 8791 | 5273 |
ストリーム出力テスト for 地デジ | |||||
DP | 99.97 | 80.27 | 100 | 99.97 | 100 |
HP | 99.97 | 100 | 100 | 99.97 | 100 |
SP/LP | 99.97 | 100 | 100 | 100 | 99.97 |
LLP | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 |
DP(CPU負荷) | 6 | 35 | 15 | 8 | 14 |
HP(CPU負荷) | 3 | 22 | 8 | 8 | 8 |
SP/LP(CPU負荷) | 2 | 16 | 6 | 7 | 5 |
LLP(CPU負荷) | 2 | 13 | 5 | 6 | 4 |
CrystalDiskMark 2.2 | |||||
シーケンシャルリード | 111.0MB/s | 72.09MB/s | 87.06MB/s | 90.73MB/s | 88.69MB/s |
シーケンシャルライト | 118.6MB/s | 67.78MB/s | 84.58MB/s | 86.12MB/s | 89.30MB/s |
512Kランダムリード | 44.70MB/s | 27.48MB/s | 34.82MB/s | 36.70MB/s | 35.77MB/s |
512Kランダムライト | 59.40MB/s | 32.52MB/s | 25.79MB/s | 49.21MB/s | 55.99MB/s |
4Kランダムリード | 0.610MB/s | 0.360MB/s | 0.424MB/s | 0.504MB/s | 0.456MB/s |
4Kランダムライト | 1.217MB/s | 1.048MB/s | 0.939MB/s | 1.320MB/s | 0.847MB/s |
BBench | |||||
Sバッテリ(標準バッテリ) | N/A | 5時間11分 | 2時間39分 | 5時間34分 | 2時間10分 |
Lバッテリ | N/A | なし | なし | なし | なし |
PCMark05のCPU Scoreは10075で、上記5機種の中で最も高い。Graphics Scoreは、さすがに単体GPUを搭載したdynabook Qosmio T851/D8CRやIdeaPad Y570には及ばないが、PCMark VantageやPCMark 7の総合スコアは高い。ストレージとして大容量の3.5インチHDDを搭載しているため、2.5インチHDDを搭載したノートPCに比べるとPCMark05のHDD ScoreやCrystalDiskMarkのスコアも高い。メモリも標準で8GB搭載しており、複数のアプリケーションを同時に起動しても快適だ。
●一体型PCとしての完成度がさらに向上VN770/FSは、夏モデルのVN770/ESと比較して、CPUがクアッドコアに強化され、液晶も一回り大きく、解像度が高いIPS液晶になるなど、スペックが大きく向上している。一体型PCとしてはトップクラスの基本性能であり、さまざまな用途に余裕を持って対応できるだろう。また、新たにHDMI入力をサポートし、外部ディスプレイとして使えるようになったことも評価できる。TV機能も充実しており、番組簡易編集や新番組おまかせ録画、シリーズ録画、おまかせ録画、きこえる変速再生など、専用HDDレコーダーに負けない高機能を誇る。一体型PCとしての完成度は高く、特にTV機能を重視する人にお勧めしたい製品だ。
(2011年 9月 22日)
[Text by 石井 英男]