富士通「LIFEBOOK PH50/C」
~AMD E-350を搭載したモバイルノート



LIFEBOOK PH50/C

2月3日 発売
価格:オープンプライス



 富士通から登場した「LIFEBOOK PH50/C」は、AMDの最新モバイル向けプラットフォーム「Brazos」(コードネーム)を採用したモバイルノートだ。

 Brazosは、AMDがFusion APUと呼ぶ、CPUとGPUを同じダイに統合した製品の第1弾である「AMD E」シリーズまたは「AMD C」シリーズと、サウスブリッジの役割を果たすFCHから構成されている。前者のTDPは18W、後者のTDPは9Wであり、消費電力が低いことが特徴だ。AMD Eシリーズは、IntelのCULV CPU対抗であり、AMD CシリーズはAtom対抗として位置づけられる。

 LIFEBOOK PH50/Cは、富士通のノートPCで初めてBrazosを採用した製品である。今回、そのLIFEBOOK PH50/C(以下、PH50/C)を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。

●最厚部27.5mmのスリムなボディを実現

 PH50/Cは、LIFEBOOKシリーズの新ラインナップとして登場した製品であり、筐体も新たに設計されている。角がやや丸みをおびており、柔らかい印象を受けるデザインだ。カラーバリエーションは、シャイニーブラック、ナイトブルー、ルビーレッドの3色が用意されており、好みに応じて選べるのも嬉しい。本体のサイズは、285×209×27.5mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1.5kgである。本体はスリムで、天板がフラットなので、カバンなどへの収まりもよい。11.6型ワイド液晶搭載モバイルノートとしては、標準的な重量だが、気軽に持ち歩ける範囲だ。

 CPUとしては、AMD E-350(1.6GHz)を搭載する。AMD E-350は、現在発表されているAMD Eシリーズの中で最上位に位置する製品であり、デュアルコアCPUである。また、DirectX 11に対応したRadeon HD 6310 Graphicsと呼ばれるGPUを同じダイに集積していることが特徴だ。Radeon HD 6310 Graphicsは、CPUに統合されているGPUとしては高性能であり、H.264/VC-1/DivX/Xvidのハードウェアデコードに対応した動画再生支援機能「UVD3」を搭載する。なお、ソニーのBrazosプラットフォーム採用機であるVAIO Y(YB)も、同じAMD E-350を搭載しており、製品コンセプトも似通っている。

 標準搭載メモリは2GBだが、SO-DIMMスロットを2基備えており、最大4GBまで増設が可能だ。HDD容量は500GBと、このクラスの製品としては余裕がある。ちなみに、同じくAMD E-350を搭載したVAIO Y(YB)のHDD容量は320GBであり、HDD容量はPH50/Cのほうが大きい。プリインストールOSは、Windows 7 Home Premium 64bit版である。

PH50/Cの上面。試用機のボディカラーはナイトブルーだったが、他にシャイニーブラックとルビーレッドも用意されている「DOS/V POWER REPORT」誌とPH50/Cのサイズ比較。フットプリントはほぼ同じだ底面のカバーを外すと、メモリスロットやHDDにアクセスできる。メモリスロットとしてSO-DIMMスロットが2基用意されており、標準で2GB SO-DIMMが1枚装着されている

●11.6型ワイド液晶を搭載

 液晶として、11.6型ワイド液晶を搭載。解像度は1,366×768ドットで、このクラスのノートとしては標準的だ。光沢タイプなので、発色は鮮やかだが、周囲の外光の映り込みが気になることがある。液晶上部には、有効画素数約130万画素のWebカメラが搭載されており、モノラルマイクも装備しているので、ビデオチャットやUstream配信などに利用できる。

 キーボードは全88キーで、キーピッチは約19mm、キーストロークは約1.8mmだ。キー配列は標準的で、キーピッチも十分広いため、快適にタイピングが可能だ。ただし、「\」キーや「[」キーなどの一部のキーのピッチは約12mmと狭くなっている。

 ポインティングデバイスとして、フラットポイントと呼ばれるパッドタイプのデバイスを搭載する。フラットポイントは、ジェスチャー操作にも対応しており、操作性も良好だ。

光沢タイプの11.6型ワイド液晶を搭載。発色は鮮やかだが、外光の映り込みがやや気になる液晶上部に約130万画素のWebカメラを搭載。ビデオチャットなどに利用できる
キーボードは全88キーで、キーピッチは約19mm、キーストロークは約1.8mm。配列は標準的だが、右側の「\」キーや「[」キーなどのキーピッチが狭くなっているポインティングデバイスとして、フラットポイントと呼ばれるパッドタイプのデバイスを採用する

●必要にして十分なインターフェイスを搭載

 インターフェイスも、このクラスの製品としては十分なものを搭載している。USB 2.0×3、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、HDMI出力、Gigabit Ethernetなどを備えているほか、メモリーカードスロットとして、SDメモリーカードとメモリースティックに対応したダイレクト・メモリースロットを搭載する。ワイヤレス機能は、IEEE 802.11b/g/n対応無線LANとBluetooth 3.0+HSをサポートするが、WiMAXには非対応だ。底面の手前左側には、ワイヤレススイッチが用意されており、確実にワイヤレス機能のON/OFFを行なえるので便利だ。

左側面には、ミニD-Sub15ピン、HDMI出力、USB 2.0が用意されている右側面には、ヘッドフォン出力、マイク入力、USB 2.0×2、Gigabit Ethernetが用意されている
正面には、SDメモリーカードとメモリースティックに対応したダイレクト・メモリースロットが用意されているダイレクト・メモリースロットのアップ

●公称約7.3時間の長時間駆動を実現

 従来のAMDのモバイルプラットフォームは、Intelに比べて消費電力が大きく、バッテリ駆動時間があまり長くないという印象があったが、Brazosプラットフォームは、消費電力についても大きく改良されており、Intelのモバイルプラットフォームと比べても、遜色のない低消費電力を実現している。PH50/Cの公称バッテリ駆動時間は約7.3時間であり、モバイルノートとして十分合格点を付けられる。

 実際に、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でWebサイトへのアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、5時間49分の駆動が可能であった(電源プランは「バランス」に設定、バックライト輝度は中)。無線LANを有効にした状態で、これだけ持てば優秀といえる。

 ちなみに、似た構成のVAIO Y(YB)のバッテリ駆動時間の実測値は5時間28分で、公称バッテリ駆動時間も約6時間と、PH50/Cよりもやや短い。ただし、VAIO Y(YB)には、オプションとして大容量バッテリパックが用意されているが、PH50/Cは標準バッテリ以外のバッテリパックは用意されていない。

 なお、ACアダプタもコンパクトで軽く、本体と一緒に気軽に持ち運べる。

PH50/Cのバッテリ。10.8V/5,800mAhの6セル仕様であるCDケース(左)とバッテリのサイズ比較
ACアダプタもコンパクトで軽いCDケース(左)とACアダプタのサイズ比較

●AMD E-350搭載機としては標準的な性能

 参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」「PCMark Vantage」「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較用にソニー「VAIO Y(YB)」、ソニー「VAIO Y(YA)」、パナソニック「Let'snote J9ハイパフォーマンスモデル」、NEC「VersaPro UltraLite タイプVC」、NEC「LaVie M」の値も掲載した。

 PCMark05のCPU Scoreは2830で、同じAMD E-350を搭載したVAIO Y(YB)とほぼ同じスコアとなっている。Intelプラットフォームとの比較では、CULV CPUであるCeleron SU2300とほぼ同程度のスコアで、Core i3-380UMよりは低い。AMD E-350は、統合GPUの描画性能が比較的高いことが特徴であり、Graphics Scoreは2555と、Core i3-380UMやCeleron SU2300などに比べて高い。総合的にみて、CPU性能はCore i3-380UMの8割程度だが、グラフィックス性能は2倍程度と考えればよいだろう。動画再生については、YouTubeの1080p動画は多少コマ落ちしてしまうが、720pなら問題なく再生が可能であった。

 Windowsエクスペリエンスインデックスの結果は、プロセッサが「3.8」、メモリが「5.5」、グラフィックスが「4.1」、ゲーム用グラフィックスが「5.6」、プライマリハードディスクが「7.0」であり、プロセッサがやや低いが、それ以外はなかなか優秀だ。

 なお、富士通ではPH/50Cの特徴の1つとして、解像度の低いネット動画を高画質で綺麗に再生できる「くっきり機能」の搭載を挙げているが、これは富士通の独自機能というわけではなく、AMD E-350に搭載されている動画高画質化機能である。くっきり機能に関する設定は、Catalyst Contol Centerから行なう。

【表】ベンチマーク結果

LIFEBOOK PH50/CVAIO Y(YB)VAIO Y(YA)Let'snote J9ハイパフォーマンスモデルVersaPro UltraLite タイプVCLaVie M
CPUAMD E-350(1.6GHz)AMD E-350(1.6GHz)Core i3-380UM(1.33GHz)Core i5-460M(2.53GHz)Core i7-620UM(1.06GHz)Celeron SU2300(1.2GHz)
ビデオチップCPU内蔵コアCPU内蔵コアCPU内蔵コアCPU内蔵コアCPU内蔵コアIntel GS45内蔵コア
PCMark05
PCMarksN/A2860N/A774650922826
CPU Score283027583586714935962966
Memory Score205620343465562939653066
Graphics Score255524441572223916841397
HDD Score48035097525128319162654948
PCMark Vantage 64bit
PCMark Score2271N/A3219未計測未計測未計測
Memories Score1634N/A2045未計測未計測未計測
TV and Movie Score1496N/A2331未計測未計測未計測
Gaming Score2042N/A2093未計測未計測未計測
Music Score2607N/A3529未計測未計測未計測
Communications Score2363N/A2829未計測未計測未計測
Productivity Score1568N/A2907未計測未計測未計測
HDD Score2617N/A3063未計測未計測未計測
PCMark Vantage 32bit
PCMark Score21912041未計測未計測未計測未計測
Memories Score15271553未計測未計測未計測未計測
TV and Movie Score15761560未計測未計測未計測未計測
Gaming Score17771789未計測未計測未計測未計測
Music Score25262510未計測未計測未計測未計測
Communications Score21532083未計測未計測未計測未計測
Productivity Score15201473未計測未計測未計測未計測
HDD Score26552676未計測未計測未計測未計測
3DMark03
1024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks)584556332802334527142048
CPU Score5474266131144771495
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH223821241317244516311367
LOW348732861910389324101995
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP59.6756.677.798.2710076.43
HP99.9799.9799.9799.9710099.97
SP/LP99.9799.9710099.9710099.97
LLP99.9799.9710099.9710099.97
DP(CPU負荷)627237292768
HP(CPU負荷)486121131342
SP/LP(CPU負荷)2941208828
LLP(CPU負荷)2244146822
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード78.38MB/sec70.34MB/sec88.75MB/sec189.4MB/sec164.2MB/sec60.31MB/sec
シーケンシャルライト77.35MB/sec75.5MB/sec87.92MB/sec154.6MB/sec39.58MB/sec66.25MB/sec
512Kランダムリード32.48MB/sec30.76MB/sec35.09MB/sec172.5MB/sec142.6MB/sec27.50MB/sec
512Kランダムライト33.71MB/sec39.55MB/sec43.82MB/sec106.2MB/sec34.53MB/sec31.19MB/sec
4Kランダムリード0.448MB/sec0.422MB/sec0.443MB/sec12.8MB/sec7.629MB/sec0.369MB/sec
4Kランダムライト1.081MB/sec1.395MB/sec1.500MB/sec20.91MB/sec13.66MB/sec0.984MB/sec
BBench
Sバッテリ(標準バッテリ)5時間49分5時間28分5時間14分未計測4時間23分3時間39分
Lバッテリなし未計測未計測10時間15分未計測7時間26分
Xバッテリなしなしなしなしなしなし

PH50/CのWindowsエクスペリエンスインデックスの結果。プロセッサのスコアが3.8とやや低いが、それ以外は4を超えており、なかなか優秀だCatalyst Control Centerのその他のビデオ設定で、動画の高画質化機能の設定が可能だ。富士通のサイトには推奨設定が記載されている

●モバイルノートとしての完成度は高く、コストパフォーマンスも魅力

 PH50/Cは、AMD E-350を搭載したことで、モバイルノートとして十分なパフォーマンスとバッテリ駆動時間を実現しており、製品としての完成度は高い。

 ライバル機のVAIO Y(YB)と比べた場合、HDD容量はPH50/Cが500GB、VAIO Y(YB)が320GBなので、PH50/Cのほうが多い。バッテリ駆動時間についても、PH50/Cのほうが優秀であり、実売価格もPH50/Cは8万円前後で、VAIO Y(YB)の10万円前後に比べて安い。

 一方、バンドルアプリケーションに関しては、VAIO Y(YB)が「Office Home and Business 2010」がプリインストールされているのに対し、PH50/Cは「Office Personal 2010」なので、PowerPointやOneNoteが必要ならVAIO Y(YB)をお勧めするが、WordとExcel、Outlookだけでいいのなら、コストパフォーマンスの高いPH50/Cをお勧めする。動画エンコードなどの重い作業をしないのなら、十分メインマシンとして利用できるマシンであり、ネットブックからのステップアップにもぴったりだ。

バックナンバー

(2011年 2月 17日)

[Text by 石井 英男]