ソニー「VAIO Y(YB) VPCYB19KJ/G」
~AMD最新プラットフォーム採用のシンプルモバイル



ソニー「VAIO Y(YB)」

1月29日 発売

価格:オープンプライス



 ソニーの春モデル第1弾として発表された製品の中で、特に注目したいのが、AMDの最新プラットフォーム「Brazos」(コードネーム)を採用した「VAIO Yシリーズ(YBシリーズ)」だ。Brazosは、GPUとCPUを同じダイに統合したFusion APUの第1弾である「Zacate」(コードネーム)こと「AMD Eシリーズ」または「Ontario」(コードネーム)こと「AMD Cシリーズ」と、サウスブリッジの役割を果たすFCHから構成されるプラットフォームであり、エントリークラスのモバイルや一体型PCをターゲットとする。IntelのAtomやCULV CPUの対抗となる製品だ。

 今回は、VAIOシリーズで初めてBrazosを採用したVAIO Y(YB) VPCYB19KJ/G(以下VAIO Y(YB))を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、今回試用したのは試作機であり、細部やパフォーマンスなどが製品版とは異なる可能性がある。

●筐体は超低電圧版Core i3搭載のVAIO Y(YA)と同じ

 VAIO Y(YB)は、2010年11月に登場した11.6型ワイド液晶のVAIO Y(YA)と同じ筐体を採用している。もともとVAIO Yシリーズは13.3型ワイド液晶を搭載していたのだが、11.6型ワイド液晶を搭載し、より携帯性を増したVAIO Y(YA)が登場した。VAIO Y(YA)は、CPUとして超低電圧版Core i3を搭載したシンプルな構成のモバイルノートであり、天板のカラーもブラック1色しか用意されていなかった。今回追加されたVAIO Y(YB)は、VAIO Y(YA)と筐体は同じだが、天板のカラーが今回試用したグリーン以外に、シルバーとピンクも用意されており、3色から選べるようになっている。女性などがよりカジュアルに使うことを意識したカラー変更であろう。

 本体のサイズは、290×202.8×25~31.5mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1.46kgである。サイズはもちろん、重量もVAIO Y(YA)と全く同じだ。もっと軽いマシンもあるが、気軽に持ち歩ける重さであり、携帯性は優秀だ。

 CPUとしては、AMD E-350(1.6GHz)を搭載する。AMD E-350は、現在発表されているBrazosプラットフォーム用CPUとしては、最も上位に位置する製品で、Bobcatと呼ばれるコアを2つ内蔵したデュアルコアCPUである。また、Radeon HD 6310 Graphicsと呼ばれるGPUを同じダイに集積していることがウリだ。Radeon HD 6310は、DirectX 11に対応しており、H.264/VC-1/DivX/Xvidのハードウェアデコードに対応した動画再生支援機能「UVD3」を搭載する。TDPは18Wで、VAIO Y(YA)に搭載されているCore i3-380UM(1.33GHz)と同じだ。GPUのコアクロックは未公開だが、Catalyst Control Centerを開いてハードウェアを確認したところ、コアクロック492MHz、メモリクロック533MHzと表示された。Core iシリーズと同様に、メインメモリの一部をビデオメモリとして利用する仕組みになっており、メモリサイズは384MBと表示された。

 メモリは、標準で2GB実装しているが、SO-DIMMスロットが1基空いており、最大4GBまで増設が可能だ。HDDは2.5インチ320GBで、こちらもVAIO Y(YA)と同じである。ネットブックからのステップアップを狙うには、十分なスペックといえるだろう。なお、VAIO Y(YA)では、OSとしてWindows 7 Home Premium 64bit版がプリインストールされていたが、VAIO Y(YB)では、Windows 7 Home Premium 32bit版がプリインストールされている。

VAIO Y(YB)の上面。試用機の天板のカラーはグリーンだが、他にピンクとシルバーが用意されている「DOS/V POWER REPORT」誌とVAIO Y(YB)のサイズ比較。奥行きはVAIO Y(YB)の方がやや短いが、横幅はVAIO Y(YB)のほうが13mm大きい
VAIO Y(YB)の底面。ネジを3本外すことで、メモリスロットなどにアクセスできる底面のカバーを外すと、メモリスロットやHDDにアクセスできる。メモリスロットとしてSO-DIMMスロットが2基用意されており、標準で2GB SO-DIMMが1枚装着されている右側のヒンジの中にLEDが内蔵されており、電源を入れると緑色に美しく点灯する
VAIO Y(YB)のデバイスマネージャを開いたところ。ディスプレイアダプターとプロセッサに注目GPUのコアクロックは492MHz、メモリクロックは533MHzと表示されている

●初心者にも優しいASSISTボタンを搭載

 液晶として、11.6型ワイド液晶を採用。解像度は1,366×768ドットと、標準的だ。光沢タイプの液晶なので、発色やコントラストは優秀だが、周囲の外光はやや映り込みやすい。バックライトはLEDで、消費電力の低減に貢献している。液晶上部には、有効画素数約31万画素のWebカメラ「MOTION EYE」を搭載。ビデオチャットなどに利用できる。

 キーボードは、VAIO Zシリーズなどでもお馴染みのアイソレーションタイプで、キーピッチは約18.43mm、キーストロークは約1.6mmである。キーピッチやキーストロークは十分で、キー配列も標準的なので、快適に入力が可能だ。ただし、右側の「ろ」キーや「¥」キーなどの一部のキーのピッチはやや狭くなっている。ポインティングデバイスとして、タッチパッドを採用。パームレスト部分とパッド部分に、ドット状の細かなテクスチャがあるので、指との摩擦が適切で、操作性も良好だ。

 キーボード右上には、ASSISTボタンが用意されており、Windows起動中にASSISTボタンを押すと、ソニーオリジナルアプリの「VAIO Care」が起動する。VAIO Careは、システムの診断やトラブルの解決を行なってくれるソフトだ。また、電源OFFの状態でASSISTボタンを押すと、システムのリカバリやメンテナンスが可能な「VAIO Care レスキュー」が起動するので、Windowsのシステムに不具合が生じ、正常に起動しなくなっても、簡単に出荷時の状態などに戻せる。特に初心者には心強い機能だ。

光沢タイプの11.6型ワイド液晶を搭載。解像度は1,366×768ドットと標準的だ液晶上部に有効画素数約31万画素のWebカメラ「MOTION EYE」を搭載。ビデオチャットなどに利用できるキーボードは、VAIO Zなどでもお馴染みのアイソレーションタイプで、キーピッチは約18.43mm、キーストロークは約1.6mmだ。配列は標準的だが、右側の「ろ」キーや「¥」キーのキーピッチがやや狭くなっている
ポインティングデバイスとしては、タッチパッドを採用。パッドとパームレストにドット状のテクスチャが設けられており、操作性も良好だキーボード右上に、ASSISTボタンが用意されており、ワンタッチで独自の診断アプリ「VAIO Care」を起動できるトラブルの予防と解決をサポートするオリジナルアプリの「VAIO Care」

●HDMI出力など十分なインターフェイスを搭載

 インターフェイスもVAIO Y(YA)と同じで、必要にして十分なものを搭載している。USB 2.0×3、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、HDMI出力端子、有線LAN(Gigabit Ethernet)などを備えているほか、メモリーカードスロットとして、SDメモリーカードスロットとメモリースティックデュオスロットを搭載する。ワイヤレス機能は、IEEE 802.11b/g/n対応無線LANとBluetooth 2.1+EDRをサポートするが、WiMAXは非対応だ。正面右側にワイヤレススイッチが用意されており、素早く確実にワイヤレス機能のON/OFFを行なえるのは便利だ。

左側面には、アナログRGB出力、HDMI出力、USB 2.0が用意されている右側面には、ヘッドフォン出力、マイク入力、USB 2.0×2、有線LANが用意されている
正面左側には、SDメモリーカードスロットとメモリースティックデュオスロットが用意されているSDメモリーカードスロットとメモリースティックデュオスロットのアップ正面右側には、ワイヤレススイッチが用意されており、ワイヤレス機能のON/OFFを行なえるので便利だ

●標準バッテリで約6時間、大容量バッテリでは約11時間の長時間駆動を実現

 Brazosプラットフォームは、消費電力が低いことも魅力の1つだ。AMD E-350のTDPは18Wで、Core i3-380UMと同じであり、平均消費電力も超低電圧版Core i3などとあまり変わらないことが期待される。VAIO Y(YB)は、付属の標準バッテリで公称約6時間、オプションのバッテリーパック(L)を装着すれば、最大約11時間の長時間駆動が可能になる。Core i3-380UMを搭載したVAIO Y(YA)の公称駆動時間は、標準バッテリで約6時間、バッテリーパック(L)で約11.5時間であり、バッテリーパック(L)装着時は30分短くなってるものの、ほぼ同じ駆動時間を実現しているといってよいだろう。

 実際に、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとにWebサイトへのアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、5時間28分の駆動が可能であった(電源プランは「バランス」に設定、バックライト輝度は中)。無線LANをONにした状態で、これだけ持てば十分合格だ。なお、VAIO Y(YA)で、同じ条件でバッテリベンチマークを行なったところ、駆動時間は5時間14分となった。今回のテストでは、VAIO Y(YB)のほうが14分長いという結果になったが、前述の通り、カタログスペックでは、両者はほぼ同じか、VAIO Y(YA)のほうが駆動時間がやや長い。テスト結果は逆になったが、テストに使ったのは共に試作機であり、バッテリのコンディションも異なるため、あくまで参考にしてほしい。バッテリ駆動時間については、Core i3-380UM搭載機とほぼ互角と考えてよさそうだ。

 なお、VAIO Y(YB)に標準で付属するバッテリは、13.3型ワイド液晶搭載のVAIO Yのバッテリーパック(S)(VGP-BPS21A)と形状は同じだが、容量が少なくなっている。そのため、別売りのVGP-VPS21Aを購入すれば、本体の外形を変えずにバッテリ駆動時間を延ばせる(重量はやや増える。VGP-VPS21A装着時の公称バッテリ駆動時間は約7.5時間)。ACアダプタが小型で軽く、持ち運びしやすいことも評価できる。

VAIO Y(YB)に標準で付属するバッテリ標準バッテリは、10.8V/3,500mAhの6セル仕様だCDケース(左)とバッテリのサイズ比較
ACアダプタはコンパクトで軽く、携帯性は優れているCDケース(左)とACアダプタのサイズ比較

●Core i3-380UMに比べてCPU性能はやや劣るがGPU性能は大きく上回る

 Brazosプラットフォームで気になるのは、やはり性能であろう。そこで、参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較用にソニー「VAIO Y(YA)」、パナソニック「Let'snote J9ハイパフォーマンスモデル」、NEC「VersaPro UltraLite タイプVC」、NEC「LaVie M」の値も掲載した。

 PCMark05のCPU Scoreの値は、Core i3-380UMを搭載したVAIO Y(YA)の8割弱であり、Celeron SU2300に近い値だ。また、Memory Scoreも、Core iシリーズやCeleron SU搭載機に比べると低いが、Graphics Scoreは、5機種の中で最も高く、VAIO Y(YA)の1.5倍強になっている。3DMark03では、さらにその差は大きくなっており、VAIO Y(YA)の2倍を超えている。AMD E-350は、Core i3-380UMに比べて、CPU性能はやや劣るが、GPU性能は大きく上回っているといえる。そこで、VAIO Y(YB)についてのみ、実際のゲームソフトでのベンチマークを行なってみた。ストリートファイターIVベンチマークの結果は、1,280×720ドットモードで29.28fps、バイオハザード5ベンチマーク(テストB)の結果は、1,280×720ドットモードで11.1fpsであり、Core iシリーズの内蔵GPUに比べて性能が高いとはいえ、やはり最近のゲームソフトを快適に遊ぶには力不足なようだ。

 ベンチマークテストでは、VAIO Y(YA)よりも、VAIO Y(YB)のほうがCPU性能は低いという結果が出ているが、Windowsやアプリケーションの操作感はほとんど変わらなかった。標準ではメモリが2GBしか実装されていないので、Windowsやアプリケーションの起動などは多少重く感じることもあるが、いったん起動してしまえば、快適に動作する。このクラスのモバイル機としては十分な性能であり、メモリを4GBに増設すればより快適になるだろう。

 VAIO Y(YB)VAIO Y(YA)Let'snote J9ハイパフォーマンスモデルVersaPro UltraLite タイプVCLaVie M
CPUAMD E-350 (1.60GHz)Core i3-380UM (1.33GHz)Core i5-460M (2.53GHz)Core i7-620UM (1.06GHz)Celeron SU2300 (1.20GHz)
ビデオチップCPU内蔵コアCPU内蔵コアCPU内蔵コアCPU内蔵コアIntel GS45内蔵コア
PCMark05
PCMarks2860N/A774650922826
CPU Score27583586714935962966
Memory Score20343465562939653066
Graphics Score24441572223916841397
HDD Score5097525128319162654948
PCMark Vantage 64bit
PCMark ScoreN/A3219未計測未計測未計測
Memories ScoreN/A2045未計測未計測未計測
TV and Movie ScoreN/A2331未計測未計測未計測
Gaming ScoreN/A2093未計測未計測未計測
Music ScoreN/A3529未計測未計測未計測
Communications ScoreN/A2829未計測未計測未計測
Productivity ScoreN/A2907未計測未計測未計測
HDD ScoreN/A3063未計測未計測未計測
PCMark Vantage 32bit
PCMark Score2041未計測未計測未計測未計測
Memories Score1553未計測未計測未計測未計測
TV and Movie Score1560未計測未計測未計測未計測
Gaming Score1789未計測未計測未計測未計測
Music Score2510未計測未計測未計測未計測
Communications Score2083未計測未計測未計測未計測
Productivity Score1473未計測未計測未計測未計測
HDD Score2676未計測未計測未計測未計測
3DMark03
1,024×768ドット32bitカラー(3Dmarks)56332802334527142048
CPU Score4266131144771495
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH21241317244516311367
LOW32861910389324101995
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP56.677.798.2710076.43
HP99.9799.9799.9710099.97
SP/LP99.9710099.9710099.97
LLP99.9710099.9710099.97
DP(CPU負荷)7237292768
HP(CPU負荷)6121131342
SP/LP(CPU負荷)41208828
LLP(CPU負荷)44146822
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード70.34MB/s88.75MB/s189.4MB/s164.2MB/s60.31MB/s
シーケンシャルライト75.5MB/s87.92MB/s154.6MB/s39.58MB/s66.25MB/s
512Kランダムリード30.76MB/s35.09MB/s172.5MB/s142.6MB/s27.50MB/s
512Kランダムライト39.55MB/s43.82MB/s106.2MB/s34.53MB/s31.19MB/s
4Kランダムリード0.422MB/s0.443MB/s12.8MB/s7.629MB/s0.369MB/s
4Kランダムライト1.395MB/s1.500MB/s20.91MB/s13.66MB/s0.984MB/s
BBench
Sバッテリ(標準バッテリ)5時間28分5時間14分未計測4時間23分3時間39分
Lバッテリ未計測未計測10時間15分未計測7時間26分
Xバッテリなしなしなしなしなし

●Officeもプリインストール、ネットブックからのステップアップにも最適

 VAIO Y(YB)はVAIO Y(YA)と同じく、シンプルな構成のマシンだが、携帯性と性能、バッテリ駆動時間のバランスがとれており、モバイルノートとしての完成度は高い。予想実売価格は10万円前後とされており、VAIO Y(YA)よりも安くなりそうだ。WordやExcelだけでなく、PowerPointとOneNoteも含むOffice Home and Business 2010がプリインストールされているほか、写真・動画管理ソフト「PMB VAIO Edition」やAVコンテンツを楽しむための「Media Gallery」「VAIO Media plus」といったVAIOオリジナルアプリもプリインストールされているので、仕事にもプライベートにも活躍できるだろう。初めてPCを購入するという初心者の人はもちろん、ネットブックの性能に不満があり、買い替えたいと思っている人にもお勧めしたい。

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(2011年 1月 13日)

[Text by 石井 英男]