~簡単にオーバークロックできるCore i3搭載CULVモバイル |
ASUSTeK Computerから、CalpellaプラットフォームのCULVモバイルノート「UL20FT-2X330V」が登場。同社のCULVモバイル「UL20FT」シリーズとしては、Celeron U3400を搭載するモデルが発売済みだが、新モデルでは、CPUがCULV版Core i3-330UMに強化され、パフォーマンスが向上している。
●「Turbo 33テクノロジー」で最大33%パフォーマンスを向上「UL20FT-2X330V」(以下、2X330V)の最大の特徴となるのが、従来のUL20FTシリーズ同様、CPUやメモリの動作クロックを自動的にオーバークロックさせることによって、パフォーマンスを最大33%向上させるという「Turbo 33テクノロジー」を搭載している点だ。
CPUやメモリのオーバークロックといえば、通常はデスクトップPCで行なわれることがほとんどで、ノートPCではBIOSメニューに動作クロックを調節する項目が用意されないことがほとんどだ。もちろんノートPCでも、フリーソフトのオーバークロックツールを利用すれば不可能ではないが、製造メーカーが専用のオーバークロックツールを用意することは少ない。ただASUSは、マザーボードなどでオーバークロックに関するさまざまなノウハウを持っており、以前よりノートPCでも動作クロック制御によってパフォーマンスを向上させる機能を取り込んできた。そして、それを発展させ、より効果を高めたものがTurbo 33テクノロジーである。
Turbo 33テクノロジーは、非常に簡単に利用できる。デスクトップ上にはTurbo 33テクノロジーのガジェットが起動しており、そのスイッチをONにするだけですぐにオーバークロック動作が開始となる。
この、Turbo 33テクノロジーを利用することで、どれだけパフォーマンスが向上するのか、ここでベンチマークテストの結果を紹介しておこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」と「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の5種類だ。
結果を見ると、3DMark 06のCPU ScoreやFF XIベンチの結果(LOW)では、確かに33%ほど結果が向上していることがわかる。それ以外の結果でも、33%には届いていないものの、ほぼ全ての項目でパフォーマンスが向上している。
ただ、オーバークロックしたとはいえ、Core i5搭載ノートに匹敵するパフォーマンスが得られるわけではない。比較として掲載した、dynabook RX3やBIBLO MG/G75の結果にはさすがに届いていない。そのため、過度の期待は禁物だ。
ところで、Turbo 33がONの時とOFFの時との実際の使用感の差は、個人的には劇的に変化したという印象は受けなかった。それでも、確かにソフトの起動が速かったり、やや重めの作業を行なわせた場合に早く作業が終了するといったことは十分に感じられた。また、Turbo 33をONにしている状態で、ベンチマークテストの実行中や、複数のアプリを同時に実行させてみても、動作が不安定になるということは全くなかったので、安心して利用できると考えていいだろう。
UL20FT-2X330V Turbo33 ON | UL20FT-2X330V Turbo 33 OFF | dynabook RX3 | BIBLO MG/G75 | |
CPU | Core i3-330UM(1.59GHz) | Core i3-330UM(1.20GHz) | Core i5 520M(2.40/2.93GHz) | Core i5 430M(2.26/2.53GHz) |
チップセット | Intel HM55 Express | Intel HM55 Express | Intel HM55 Express | Intel HM55 Express |
ビデオチップ | Intel HD Graphics(CPU内蔵) | Intel HD Graphics(CPU内蔵) | Intel HD Graphics(CPU内蔵) | Intel HD Graphics(CPU内蔵) |
メモリ | PC3-8500 DDR3 SDRAM 2GB(531MHz) | PC3-8500 DDR3 SDRAM 2GB | PC3-8500 DDR3 SDRAM 2GB | PC3-8500 DDR3 SDRAM 4GB |
OS | Windows 7 Home Premium 64bit | Windows 7 Home Premium 64bit | Windows 7 Professional | Windows 7 Home Premium |
PCMark Vantage Build 1.0.1 0906a | ||||
PCMark Suite | 3996 | 3556 | 5607 | 4801 |
Memories Suite | 2099 | 2130 | 3036 | 3026 |
TV and Movies Suite | 2824 | 2371 | 3701 | 3444 |
Gaming Suite | 2310 | 2223 | 2937 | 3018 |
Music Suite | 4104 | 3729 | 5258 | 5602 |
Communications Suite | 3398 | 2708 | 6642 | 3935 |
Productivity Suite | 3753 | 3495 | 3994 | 3672 |
HDD Test Suite | 3250 | 4297 | 3244 | 3192 |
PCMark05 Build 1.2.0 | ||||
PCMark Score | N/A | N/A | 5914 | 5758 |
CPU Score | 4306 | 4153 | 7219 | 6588 |
Memory Score | 4346 | 4299 | 6251 | 5655 |
Graphics Score | 1716 | 1741 | 2637 | 2804 |
HDD Score | 5078 | 6659 | 5562 | 5395 |
3DMark06 Build 1.1.0 0906a | ||||
3DMark Score | 1215 | 1083 | 1929 | 1934 |
SM2.0 Score | 351 | 327 | 588 | 591 |
HDR/SM3.0 Score | 511 | 449 | 784 | 787 |
CPU Score | 1739 | 1311 | 2629 | 2547 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | ||||
Low | 2445 | 1811 | 4031 | 3699 |
High | 1636 | 1245 | 2616 | 2395 |
Windowsエクスペリエンスインデックス | ||||
プロセッサ | 5.4 | 5.4 | 6.5 | 6.3 |
メモリ | 5.5 | 5.5 | 5.5 | 5.5 |
グラフィックス | 3.8 | 3.8 | 4.5 | 4.6 |
ゲーム用グラフィックス | 5.0 | 5.0 | 5.0 | 5.2 |
プライマリハードディスク | 5.9 | 5.9 | 5.9 | 5.8 |
●CPU以外の基本スペックは、Celeron U3400搭載モデルとほぼ同等
2X330Vの基本スペックは、CPUに超低電圧版Core i3-330UM(1.20GHz)を搭載している以外は、Celeron U3400搭載モデルとほぼ同等となっている。
メインメモリは、PC3-6400 DDR3 SDRAMを標準で2GB搭載(最大8GB)。チップセットは、Intel HM55 Express。HDD容量は320GBで、OSにはWindows 7 Home Premium 64bitが採用されている。
液晶パネルは、1,366×768ドット表示対応の12.1型ワイド液晶。バックライトにはLEDを採用しており、輝度が高く、表面が光沢処理となっているため発色も鮮やかだ。ただ、外光の映り込みはやや激しい。グラフィック機能は、CPU内蔵のIntel HD Graphics。液晶パネル上部には、30万画素のWebカメラを搭載している。
無線機能は、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LANとBluetooth 2.1+EDRを標準搭載。有線LANは、100BASE-TX対応で、Gigabit Ethernetに対応しない点は少々残念だ。
1,366×768ドット表示対応の、12.1型ワイド液晶を搭載。LEDバックライト採用で輝度は高く、発色も鮮やかだ | 液晶表面は光沢処理が強く、外光の映り込みはやや激しい | 液晶中央上部には、30万画素Webカメラが搭載されている |
●CULVノートとしてほぼ標準的なモバイル性を実現
本体サイズは、296×210×25.1~30.9mm(幅×奥行き×高さ)。特にコンパクトというわけではないものの、12.1型ワイド液晶を搭載するモバイルノートとしてほぼ標準的なサイズだ。重量は実測で1,529g。フルスペックモバイルPCとの比較ではやや重いが、1.5kg台の重量なら、毎日持ち歩くとしても我慢できる範囲内だろう。
筐体デザインも、Celeron U3400搭載モデルと同じだ。今回試用した個体はシルバーボディのもので、天板部分はヘアライン処理が施され、ASUSロゴ以外に特に目立つ装飾もなく、シンプルながら高級感も感じられる。ただ、キーボード面や底面はプラスチック感が強く感じられ、天板ほどの高級感はない。
本体側面のポート類は、左側面にHDMI出力、USB 2.0×1、ヘッドフォン/マイク端子が、右側面にメモリカードリーダ、USB 2.0×2、ミニD-Sub15ピン、Ethernet、電源コネクタの各端子が用意されている。CULVノートとしてほぼ標準的な拡張性だが、HDMI出力が標準で用意されている点は嬉しい。
本体底面のフタを開けると、メインメモリ用のSO-DIMMスロットと内蔵HDDにアクセスできる。SO-DIMMスロットは2個用意され、標準で1つが空きとなっている。また、HDDもネジを外すだけで簡単に取り出せるため、保証外とはなるが、大容量HDDやSSDへの換装も簡単に行なえる。
キーボードは、アイソレーションタイプのキーボードを採用。キーピッチは約18mmで、無理な配列もほとんどなく、使い勝手は十分。ただ、個人的には、キーボードが全体的にたわみが大きい点と、右ShiftキーがEnterキーの真下にない点が気になった。
ポインティングデバイスは、パッド式のタッチパッドを採用。パームレストと一体型となっているが、パッド面のみディンプル加工が施されているため、場所を見失うことはない。ただ、左右のクリックボタンがつながっている点は気になる。
●コストパフォーマンスに優れるCULVノートとしておすすめ
最後に、バッテリ駆動時間をチェックしよう。まず、ASUS独自の省電力機能「Power4Gear」を「Battery Saving」に設定した状態で、無線LANのみを有効にし、BBenchを利用してキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約6時間51分であった。Power4GearをBattery Savingに設定すると、Turbo 33は自動的にOFFとなるため、パフォーマンスは低下するが、7時間近くと、モバイルPCとして十分満足できる駆動時間が実現されている点は嬉しい。
Power4Gearを「High Performance」に設定するとともに、Turbo 33をON、バックライト輝度を100%、無線機能を全て有効にした状態で、動画ファイル(WMV9、ビットレート1,156kbps、640×480ドット)を連続再生させた場合には、約2時間55分であった。さすがに、かなり駆動時間が短くなってしまう。とはいえ、Turbo 33は使い方に応じて切り替えればいいので、モバイルPCとしての魅力が大きく失われるわけではない。
容量4,400mAhの6セルバッテリが標準添付となる | 付属のACアダプタは、同社のネットブック付属のものほどではないが十分にコンパクトだ | ACアダプタは、電源ケーブル付属で実測275gだ |
本製品は、CPUがCore i3-330UMになったことで、Celeron U3400搭載モデルよりもパフォーマンスが向上し、Turbo 33テクノロジーによって、より高いパフォーマンスも発揮できる。さらに、比較的長時間のバッテリ駆動時間を実現しており、パフォーマンスとモバイル性を両立するCULVノートとして、かなり魅力ある。
実売価格は75,000円前後と、Celeron U3400搭載モデルよりもやや高価だが、その価格差に見合うパフォーマンス差は十分にある。CULVモバイルながら、価格だけでなく、パフォーマンスにもこだわりたいという人におすすめしたい製品だ。
(2010年 10月 7日)
[Text by 平澤 寿康]