レノボ「ThinkPad X201s」
〜定番ビジネスモバイルが正統進化



レノボ「ThinkPad X201s」

価格:207,900円



 ビジネス向けのモバイルノートとして根強い人気のある、レノボの「ThinkPad X200」シリーズの後継として、「Arrandale」でおなじみのモバイル向けCore iシリーズを搭載する最新モデル「ThinkPad X201」シリーズが登場した。通常電圧版の高性能CPUを搭載する「ThinkPad X201」、省電力CPUを搭載し軽量化実現した「ThinkPad X201s」、コンバーチブル型タッチパネル液晶を搭載する「ThinkPad X201 Tablet」の3モデルがラインナップされているが、その中から今回は、軽量モデルの「ThinkPad X201s」を紹介しよう。

●システムを一新しパフォーマンスが向上

 ThinkPad X201s(以下X201s)の最大の特徴となるのが、CPUとしてCore i7-620LM、チップセットとしてIntel QM57 Expressの、いわゆる「Calpella」プラットフォームを採用している点だ。CPUのCore i7-620Mは、コア数は2コアと、従来モデルに搭載されているCore 2 Duoシリーズと同じ。また、動作クロックも、低電圧版ということもあり2GHzと、従来モデルに搭載されているCore 2 Duo SL9600の2.13GHzよりも低い。しかし、アーキテクチャの変更による処理能力の向上と、Hyper-Threadingテクノロジーのサポート、負荷の高い処理を行なう場合に自動的にCPUコアの動作クロックを高めるTurbo Boostテクノロジーの搭載などにより、実際の処理能力は大幅に向上している。

 また、チップセットであるIntel QM57 Expressは、vProやActive Management Technologyといった、ビジネス向けの保守・管理機能を標準サポート。これら機能は、特に大企業ユーザーにとって欠かせないものであり、従来モデル同様、ビジネスモバイルとして死角のない仕様が実現されていると言っていいだろう。

 もちろん、一般の個人ユーザーにとっても、Calpellaプラットフォームの採用による大幅な処理能力の向上は大きな魅力であり、この正統進化は素直に歓迎できる。

●本体デザインは従来モデルとほぼ同じ

 内部システムが一新されたX201sだが、ボディ形状などの外観は従来モデルからほとんど変わっていない。

 ボディサイズは、295×210×20.7〜35.3mm(幅×奥行き×高さ、4または6セルバッテリ搭載時)と、最大の高さが3mm弱増えているものの、フットプリントは全く同じ大きさだ。

 重量は、搭載するバッテリ容量によって変わるが、約1.1kg〜約1.39kgとされている。今回利用した試用機では、最も軽量な4セルバッテリが搭載されており、重量は実測で1,225gだった。カタログスペックよりもやや重くなっているが、カスタマイズによる内蔵パーツの違いによって重量は変化するため、カタログ値が軽すぎるということではない。

 もちろん、ボディ素材としてマグネシウム合金またはカーボングラスファイバーを採用することによる優れた堅牢性は従来モデル同様であり、内部システムは変わったものの、優れたモバイル性は一切失われていない。

 本体デザインに加え、本体側面に用意されているインターフェイス類の種類や配置も、従来モデルとほぼ同じだ。左側面には、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、USB 2.0×2、Gigabit Ethernet、ExpressCard/54スロット×1、右側面にUSB 2.0×1、ヘッドフォン・マイク端子、モデムポート、全面右にSD/SDHCやメモリースティックなどに対応する「5 in 1メディアカード・リーダー」をそれぞれ備える。このうち、左側面に用意される2つのUSBポートのうち、本体手前側の黄色い1ポートは、本体の電源を落とした状態でも給電が行なえる、電源断給電機能に対応。この部分が、従来モデルからの唯一の変更点だが、USB経由で携帯電話や携帯プレーヤーなどの充電を行なう場合などに便利に活用できるはずだ。

 CPUとチップセット以外の基本スペックは、メインメモリがPC3-8500 DDR3 SRAMを標準で2GB(最大8GB)、HDDは標準320GBで、より大容量のHDDや128GBのSSDも選択可能。無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/nとモバイルWiMAXに対応する、Centrion Advanced-N+WiMAX 6250と、Bluetooth 2.1+EDRを標準搭載。無線LANは、オプションで3×3 MIMO対応のCentrino Ultimate-N 6300なども用意されている。

天板部分。フットプリントは幅295mm×奥行き210mmと、従来モデルと全く同じ。見た目にはほとんど違いが感じられない DOS/V POWER REPORT誌との比較。奥行きはほぼ同じで、幅はX201sのほうが若干大きい 正面。底面付近がやや斜めに切り落とされているが、一目でThinkPadとわかるスクエアなデザインとなっている
左側面。高さは20.7〜35.3mmと、手前が薄く奥が厚くなっている 背面。中央にバッテリが搭載されている。背面にポート類は配置されていない 右側面。側面から見ても、特徴的なスクエアなデザインがよくわかる
重量は、実測で1,225gだった。SSDを搭載すれば、さらなる軽量化が可能だ 左側面には、USB 2.0×2、ミニD-Sub15ピン、Gigabit Ethernetポート、ExpressCard/54スロットを配置。右の黄色いUSBポートは、電源断給電に対応 右側面には、USB 2.0×1、ヘッドフォン・マイク端子、モデム端子を配置。現在でもモデムを標準搭載する点はThinkPadらしい特徴だ
正面右に、5 in 1メディアカード・リーダーが配置されている メインメモリは、標準でPC3-8500 DDR3 SDRAMを2GB搭載、最大8GBまで増設可能 HDDは、標準で320GBの2.5インチドライブを搭載。オプションで128GBのSSDも選択可能。またHDDは簡単に取り出せ、換装も容易だ

●タッチパッド搭載のウルトラナビが選択可能に

 液晶パネルは、1,440×900ドット表示に対応する、12.1型ワイド液晶が標準搭載となる。従来モデルでは、1,280×800ドット表示対応の12.1型ワイド液晶も選択できたが、X201sでは1,440×900ドット表示対応のみとなった。

 パネル表面は、従来モデル同様ノングレア処理となっており、外光の映り込みは全く気にならない。発色は、光沢処理の液晶に比べるとやや鮮やかさに劣るという印象だが、特に悪いということもなく、十分満足できる発色性能が備わっている。少なくとも、X201sの用途を考えると、それも全く気にならないと言っていいはずだ。

 液晶パネル上部中央には、キーボードを照らすLEDライトが埋め込まれている。これも従来モデルからそのまま受け継がれているものだが、暗い場所で作業を行なう場合に大いに重宝する。

 キーボードは、ThinkPadシリーズおなじみの7列キーボードを搭載。変則的なキー配列は当然ながら一切無く、キーピッチは19mmで、適度な堅さとクリック感があり、使い勝手は従来モデル同様非常に優れている。この7列キーボードが搭載されているからThinkPadシリーズを使い続けているというユーザーも少なくないが、実際に使ってみると、デスクトップ用キーボードさながらの軽快なキー入力が行なえ、多くのユーザーの支持を集める理由がすぐに理解できる。

 それに対し、ポインティングデバイスは従来モデルから若干の変更がある。標準搭載となるのは、こちらもThinkPadシリーズでおなじみの、スティックタイプのTrackPointで、キーボード中央の赤いスティック部分と、スペースキー手前のクリックボタンの配置は従来モデルと同じだ。しかしX201sでは、TrackPointに加えてパッド型のタッチパッドも搭載する、ウルトラナビが新たにオプションに追加されている。今回の試用機にはウルトラナビは搭載されていなかったが、選択した場合には、TrackPointのクリックボタンの手前にタッチパッドが搭載されることになる。

 ウルトラナビは、ThinkPad T/Rシリーズなど、大型の製品にはほぼ標準で搭載されているが、モバイル性重視のXシリーズとしては初の搭載となる。スティックタイプのTrackPointは、慣れると軽快な操作が可能だが、パッド型のポインティングデバイスと比較して細かなカーソル操作がしづらいという意見も少なくない。そういった意味で、オプションではあるが、ウルトラナビを選択しタッチパッドを搭載できるようになった点は、より多くのユーザーの支持を集められるという意味で、大いに歓迎できる変更点と言っていいだろう。

1,440×900ドット表示対応の12.1型ワイド液晶を搭載。表面はノングレア処理で、外光の映り込みは気にならないが、発色の鮮やかさはやや劣る 液晶パネル部は、180度以上開くことが可能。ビジネスモバイルとしてはかなり重要なポイントだ 液晶中央上部には、キーボードを照らすLEDライトを搭載。暗い場所での快適な利用が可能だ
キーボードは、従来モデルと同じ、ThinkPadシリーズおなじみの7列キーボードを搭載。変則的な配列は皆無で、デスクトップ用キーボードとほぼ同等の使い勝手を実現 キーピッチは約19mmm。適度な堅さとクリック感があり、扱いやすさはモバイルノートの中でもトップクラスだ ポインティングデバイスはスティック式のTrackPointを標準搭載。オプションで、タッチパッド同時搭載となるウルトラナビが選択できる。指紋認証用センサーも従来同様搭載可能だ

●トータルでの快適性を重視するビジネスモバイルとしておすすめ

 では、ベンチマークテストの結果をチェックしていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」と「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の4種類。比較用として、VAIO Z VPCZ11AとBIBLO MG/G75の結果も加えてある。ちなみに、今回の試用機のスペックは、表にまとめたとおりであった。

試用機の基本スペック
CPU Core i7-620LM
メインメモリ PC3-8500 DDR3 SDRAM 2GB×1
グラフィック機能 CPU内蔵 Intel HD Graphics
HDD 320GB 5,400rpm(HTS545032B9A300)
OS Windows 7 Professional

 結果を見ると、スペック差の大きいVAIO Zとの比較では劣っているように見えるが、標準電圧版Core i5-430M搭載のBIBLO MGとの比較では、その差は小さく、中には大きく上回る結果を記録している部分もある。このあたりは、低電圧版とはいえ、Turbo Boostによるクロック引きあげ幅が大きいCore i7を搭載していることによる優位点と考えていいだろう。

 また、ビジネス用途をメインターゲットとするモバイルノートでは、3D描画能力はそれほど要求されないものの、CPUに内蔵されるIntel HD Graphicsの描画能力は、従来の統合グラフィックス機能よりも優れており、特にWindows 7利用時の快適度が大きく向上する。また、HD動画再生支援機能も盛り込まれており、ホビー用途にも柔軟に対応できる。少なくとも、モバイル性重視のビジネスノートとして、パフォーマンスに不満を感じることはほぼ無いはずだ。


ThinkPad X201s VAIO Z VPCZ11A SPEED VAIO Z VPCZ11A STAMINA BIBLO MG/G75
CPU Core i7-620LM (2.00/2.80GHz) Core i7-620M (2.66/3.33GHz) Core i7-620M (2.66/3.33GHz) Core i5-430M (2.26/2.53GHz)
チップセット Intel QM57 Express Intel HM57 Express Intel HM57 Express Intel HM55 Express
ビデオチップ Intel HD Graphics GeForce GT 330M Intel HD Graphics Intel HD Graphics
メモリ PC3-8500 DDR3 SDRAM 2GB PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2 PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2 PC3-8500 DDR3 SDRAM 4GB
OS Windows 7 Professional Windows 7 Home Premium 64bit Windows 7 Home Premium 64bit Windows 7 Home Premium
PCMark Vantage Build 1.0.1 0906a
PCMark Suite 5191 10759 10280 4801
Memories Suite 2737 5414 4698 3026
TV and Movies Suite 3182 4504 4748 3444
Gaming Suite 2495 7692 5435 3018
Music Suite 5552 11626 11373 5602
Communications Suite 7054 10916 10971 3935
Productivity Suite 3895 12388 12640 3672
HDD Test Suite 3402 15384 16658 3192
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark Score 5614 N/A N/A 5758
CPU Score 6757 8285 8343 6588
Memory Score 5865 6804 6797 5655
Graphics Score 2276 5826 2817 2804
HDD Score 5573 32452 26436 5395
3DMark06 Build 1.1.0 0906a
3DMark Score 1345 5643 1726 1934
SM2.0 Score 402 2231 526 591
HDR/SM3.0 Score 544 2083 688 787
CPU Score 2453 3066 3112 2547
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
Low 3289 10146 4041 3699
High 2091 8142 2625 2395
Windowsエクスペリエンスインデックス
プロセッサ 6.2 6.9 6.9 6.3
メモリ 5.5 5.9 5.9 5.5
グラフィックス 3.4 6.4 4.5 4.6
ゲーム用グラフィックス 4.9 6.4 4.9 5.2
プライマリハードディスク 5.7 7.6 7.6 5.8

 次に、バッテリ駆動時間のチェックだ。まず、Windows 7の省電力設定を「省電力」に、バックライト輝度を40%に設定し、無線機能は無線LANのみを有効にした状態で、BBenchを利用してキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約2時間50分という結果だった。モバイルノートとしてはやや短く感じるかもしれないが、これは最も容量の少ない4セルバッテリを利用した結果であることを考えると、十分満足できるはず。当然、バッテリ駆動時間を延ばしたければ、オプションで用意されている、容量の多い6セルバッテリや9セルバッテリを利用すればいい。9セルバッテリを利用すれば、7時間ほどのバッテリ駆動時間が確保できるはずで、これなら外出先での利用も安心なはずだ。

 ちなみに、Windows 7の省電力設定を「高パフォーマンス」、バックライト輝度を100%に設定し、無線LANとBluetoothをONにした状態で、動画ファイル(WMV9、ビットレート1,156kbps、640×480ドット)を連続再生させた場合には、約1時間31分とかなり短くなった。もちろん、外出先でも常にフルパワーで利用することはまずないため、フルパワー時の結果はそれほど気にしなくてもいいだろう。

バッテリ駆動時間
省電力設定「省電力」、BBench利用時 約2時間50分
省電力設定「高パフォーマンス」、動画再生時 約1時間31分

試用機に付属していた、4セルバッテリパック。容量は2.0Ahと少ないが、オプションで6セル/9セルの大容量バッテリパックも用意されている 付属のACアダプタは非常にコンパクトで、本体との同時携帯も苦にならない ACアダプタの重量は、電源ケーブル込みで実測300gであった

 X201sは、見た目こそ従来モデルと全くといっていいほど変わっていないため、単なるマイナーバージョンアップと思われるかもしれない。しかし、従来モデルの特徴をそのまま受け継ぎつつ、Calpellaプラットフォーム採用によるパフォーマンスの向上や、それほど目立たないものの、ウルトラナビの採用や電源断給電対応USBポートの搭載などもあり、見た目以上に着実な進化が実現されている。しかも、優れた堅牢性や、非常に扱いやすいキーボードなど、ThinkPadシリーズとして欠かせない部分は全く変更されることなく受け継がれており、従来モデルよりも魅力は大きく向上している。

 デジタル系の映像出力がないなど、ホビー用途として活用するには少々厳しいかもしれないが、ビジネス用途で利用するモバイルノートとしては、現時点で非常に有力な選択肢であることは間違いなく、広くおすすめしたい。

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(2010年 4月 8日)

[Text by 平澤 寿康]