西川和久の不定期コラム

2010年版ThinkPad X! レノボ「ThinkPad X201 Tablet」



ThinkPad X201 Tablet

 2010年版ThinkPad Xとも言える新型が2月23日発表、3月1日から出荷開始となった。今回はその中から、Core i7-640LM搭載、そしてコンバーチブルタイプの「ThinkPad X201 Tablet 2985-CFJ」が編集部から届いた。個人的にコンバーチブルタイプは必要ないものの、ここのところ筆者の興味の対象になっているThinkPad X31の後釜になりえるX201シリーズの1つなだけに、その出来栄えは非常に気になるところ。早速レポートをお届けする。


●2010年度版ThinkPadの特徴

 2月23日に発表のあったモデルは、12.1型ワイド液晶パネル搭載モデル「ThinkPad X」シリーズだ。それぞれ「ThinkPad X201」、「ThinkPad X201s」、「ThinkPad X201 Tablet」。このXシリーズはもともと筆者の好きなノートPCで、IBM時代の~X41、レノボになってからX60~X200s、最近X100eが追加……と、この内どれかを使った事のあるユーザーも多いのではないだろうか。

 新型はいずれもプラットフォームをCalpellaベースに刷新。CPUはモデルやBTOで異なるものの、GPUを内蔵した新型のCore i3/i5/i7、チップセットはIntel QM57 Expressとなり基本性能が向上している。

 今回届いたのは、ThinkPad X201 Tablet。マルチタッチ対応LEDバックライト液晶ディスプレイのコンバーチブルタイプだ。主な仕様は以下の通り。

□ThinkPad X201 Tablet 2985-CFJ
・CPU:Core i7-640LM(2.13GHz/L3 キャッシュ4MB/Turbo Boost時 2.93GHz)
・チップセット:Intel QM57 Express
・メモリ:2GB/PC3-8500 DDR3×1(2スロット/空き1、最大8GB)
・HDD:320GB(5,400rpm)
・OS:Windows 7 Professional(32bit)
・ディスプレイ:LEDバックライト付 12.1型マルチ・タッチWXGA TFT液晶、1,280×800ドット、CPU内蔵 Intel HD Graphics、アナログRGB出力
・ネットワーク Gigabit Ethernet、IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth(V2.1+EDR)、WiMAX、モデム
・その他:USB 2.0×3(内1つはPowered)、5in1メディア・カードリーダ、音声入出力、マイクロフォン、ステレオスピーカー、ExpressCard/54×1、ドッキングコネクタ、指紋センサー
・デジタイザーペン:電磁誘導式デジタイザー、1ボタン・タブレット・ペン(消しゴム機能付き・電池不要)
・サイズ/重量:295×228×26.5~33.3mm(幅×奥行き×高さ)/約1.67kg
・バッテリ/駆動時間:4セルバッテリ/約3.8時間
・価格:270,900円(税込)

 CPUは、Intel Core i7-640LMプロセッサ。2コア4スレッドで、Intel HD Graphicsを内蔵。クロックは通常で2.13GHz、Turbo Boost時で2.93GHz、L3キャッシュは4MBのハイパフォーマンスタイプだ。チップセットはIntel QM57 Expressが使われている。

 メモリは、2GBのPC3-8500 DDR3が1枚。スロットの空きが1つあるので、アクセス効率を考えると2GB×2で4GBとしたいところであるが、OSは32bit版のWindows 7 Professionalが使われているため、1GBが使えないエリアとして余ってしまうのが残念なところ。ただダイレクトショップではBTOで64bitも価格差無しで選べるので、購入時に用途やコンフィグレーションによってどちらかを選べば問題無い。

 ネットワーク関連は豊富だ。有線LANがGigabit Ethernetなのはもちろん、無線LANは11n対応。Bluetooth(V2.1+EDR)、さらにWiMAX、モデムまでも内蔵し、ある意味最強の構成になっている。最新のWiMAXと古のモデムが同居しているのはなかなか興味深いものがあるものの、完全に全部入りのネットワーク機能と言えよう。

 液晶パネルは非光沢の12.1型、1,280×800ドット(WXGA)だ。最近多くのノートPCに使われている、1,366×768ドットではなく、横方向は若干少なく、縦方向は若干多くなっている。ビジネス用として考えた場合、横が少なくても、縦が多い方が表などの見通しが良く便利かも知れない。外部ディスプレイに関してはアナログRGB出力のみの対応だ。2010年度ノートPC仕様としては、HDMIなりDisplayPortなりデジタル出力が欲しいものの、これについては、ウルトラベース(ドッキングステーション)を使うことになる。ただし、DisplayPortのみの対応で、DVIやHDMI出力は無い。

 そして最大の特徴はその液晶パネルが、マルチ・タッチ対応のコンバーチブルタイプになっていることだ。Windows 7になって「Windowsタッチ」を標準搭載したことにより、以前のWindowsより大幅に機能向上し、使い易くなっている。

 価格は270,900円と、かなり高価であるが、同社のダイレクトショップでは、多少主要コンポーネントの構成が違うものの、キャンペーン価格で179,970円からとなっている。またちょうど、この原稿を書いている4月1日までは「ウルトラベース」が無料キャンペーン中など、それなりにお買い得になっていた。今回は仕様が固定されている「2985-CFJ」だが、BTOでは、Core i7-620LM/Core i7-640LM、Windows 7 Home Premium/Windows 7 Professionalの32bitまたは64bit/Windows XP Tablet PC Edition、メモリ容量、HDD、キーボード英語/日本語、Bluetooth、無線LAN、バッテリなどの選択ができる。

天板。マットブラックがいかにもThinkPad正面。パネルのラッチ、5in1メディア・カードリーダ。インジケータ系はパネルの左下だ底面。メモリ、HDDには簡単にアクセスできる
左側面。ロックポート、電源入力、アナログRGB出力、有線LAN、USB 2.0×1(Powered)、ExpressCard/54、無線LAN ON/OFFスイッチThinkPad独特の7段キーボード。指紋センサーはパネル右下にある右側面。USB 2.0×1、タデジタイザーペン収納、HDDベイ、モデム、音声入出力、USB 2.0×1
キーピッチは約19mmバッテリ、ACアダプタ、デジタイザーペン。バッテリは4セル。ACアダプタのコネクタはメガネタイプと従来通り重量は実測1,703g
上/タブレット。画面回転ボタンなどが右側に並んでいる。ThinkPad X31との比較。幅が若干X31より少し広いものの、十分コンパクトだ
パネルの動き
Lenovo SimpleTap

 ここ最近、ThinkPadの冠が付いたモデルで実際に触ったのは、X100eとEdge 13"のみ。久々に主力のThinkPadを目の前にすると、やはり先の2機種とはかなり次元の異なる完成度だ。本物の匂いがする。「やっぱりいい!」と思った次第。コンバーチブルタイプなので、液晶パネルの部分は普通のXシリーズより厚みがあるが、キーボードやボディ全般、どれをとってもThinkPad。まるで昔から使っているノートPCの様に手に馴染む。

 サイズは295×228×26.5~33.3mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.67kgと、X31と比較して幅が数cm広いもののよく似ている。重さもほぼ同じはずだが、持った感じはX201の方が軽く感じるのはバランスが良いのだろうか。

 液晶パネルはビジネスモデルの割には色温度が低めに設定されており、青っぽく無く、写真などは自然な感じだ。ただ、非光沢の関係もあるだろうか、X100eの時に思ったのと同じく、赤など原色系の色にパンチが無い。この点についてはEdge 13"が圧倒的に良かった。視野角に関しては、上下は割りと広め、左右は狭めだ。上下に関しては本人の視線の位置を考慮し余裕を持ち、左右に関しては、他人から見え難いと言う意図があるかも知れない。

 液晶パネルは中央一点で支えられ、タブレット仕様にする時は反時計方向のみに回転する。構造上、多少ぐらつくものの許容範囲で、どの角度でもカッチリ止まり、不安定感は皆無だ。本体と固定するロックは、通常時とコンバーチブル時で、ロック自体の位置を上下に動かすことにより、固定位置を変更する仕掛けとなっている(動画参照)。

 キーボードは、もちろんThinkPadそのものだが、筆者が所有する、X31、T43とはちょっとキートップの質感が異なり、少しマットでザラザラ感もある。この点については、手持ちのマシンが単に使い過ぎで、キートップがテカってるだけの可能性もある(笑)。また、本家(?)のキーボードを触って思ったのはX100eのキーボードもなかなか良かったということだ。個人的にどちらが好みかと聞かれると甲乙つけ難い。

 ThinkPad独特のTrackPointは昔から何も変わらず、筆者にとっては非常に使いやすいが、タッチパッドに関しては、液晶パネルのサイズが12.1型として考えると、TrackPointのボタンが上にある分、面積が少し小さめだ。タッチパッドをメインで使いたいユーザーにとっては不満点になる場合もあるだろう。ただし、センサーの感度自体は非常に良く、思った通りマウスポインタを動かすことができる。

 ノイズや振動に関してはパームレストに置いた手にはほとんど感じられないレベルとなっている。この辺りの処理に付いてはさすがと言ったところだろう。

 ボディの底に設置しているステレオスピーカーに関しては、音質自体は少し荒くそれなりだが、音量は十分大きく、最大にすると煩いほどのボリューム感となる。コンテンツプレイヤーとしては問題無いレベルだ。

●Lenovo EEで更に快適な環境

 このThinkPad X201 TabletもLenovo EE(Lenovo Enhanced Experience)に対応している。この機能は、同社とMicrosoftが共同で開発したもので、起動やシャットダウンなどの時間を大幅に縮小するなど、Windows 7に最適化した技術の総称だ。実際、起動、スタンバイ、休止状態など、明らかに作動が速く、あまり待ち時間が無い。ただ以前X100eの時に指摘した、復帰後のログインパネルでマウスポインタが反応するまで一呼吸かかる件は、まだ直っておらず、ログインパネルの表示までが爆速なだけに、ちょっともどかしい感じだ。

 HDDはHTS545032B9A300(320GB、5,400rpm、キャッシュ8MB)が使われていた。リカバリエリアなど3パーティション構成になっているが、OSとしてはCドライブのみ約287GBが割当てられている。内蔵しているWiMAXアダプタはIntel Centrino WiMAX 6250。いずれにしてもチップセットにIntel QM57 Expressを使ったベーシックな構成なので、特殊なデバイスは無い。

起動時のデスクトップ。OSは32bit版Windows 7 Professonal。X100eの時に指摘した、タスクバー右側にある無線LAN/バッテリ表示などが、小さいアイコンに対応していないため、高さが変わらない件は直っていないデバイスドライバ/主要なデバイス。HDDはHTS545032B9A300(320GB、5,400rpm、キャッシュ8MB)。WiMAXはIntel Centrino WiMAX 6250HDDは3パーテーションになっているが、Windows本体が使うのは1パーテーション約287GB

 プリインストールされているアプリケーションは、特に大物などはなく、ThinkPadでお馴染みの、Lenovo ThinkVantage Tools、Lenovo ThinkVantage Toolbox、Access Connections、省電力マネージャーなど、同社のツール郡となっている。Access ConnectionsはWi-Fi以外にWiMAXなどにも対応し切り替えることができる(画面キャプチャ参照)。

 Windowsタッチ機能を使った「Microsoft Touch Pack for Windows 7」もプリインストール済みだ。内容は「Microsoft Surface Lagoon」(スクリーンセーバー)、「Microsoft Surface Collage」(画像編集ソフト)、「Microsoft Blackboard、Microsoft Rebound、Microsoft Garden Pond」(ゲーム)などが含まれる。ただどちらかと言えば、コンシューマ向けのお遊び的要素が強いため、ThinkPadには合わない雰囲気だ。また、Internet Explorer 8はスクロールやピンチ/ズームに対応しているので、試しに少し操作して見たが、iPhoneユーザーとしては、もっとスムーズさが欲しいところか。

 ThinkPad X201 Tablet固有の機能として、デスクトップ画面の中央上に赤い「SimpleTap」というボタンがある。ここをタップすると、画面上にミュート、音量調整、画面の明るさなど、通常[Fn]キーで行なう作業をタップだけで行なうことができる。タブレットにして使う時は、キーボードそのものが裏に隠れてしまうため、なくてはならない機能と言えよう。

UltraNavLenovo ThinkVantage ToolsLenovo ThinkVantage Toolbox
Lenovo SimpleTapAccess ConnectionsMicrosoft Surface Collage

 Windows エクスペリエンス インデックスは総合で3.3。内訳はCPU 6.2、メモリ 5.5、グラフィックス 3.3、ゲーム用グラフィックス 4.7、プライマリハードディスク 5.7。バランス的にIntel HDグラフィックスが足を引っ張っているものの、他のスコアはなかなかだ。グラフィックスに関しては、このクラスのノートPCで3Dゲームなどをすることはあまり考えられないので、実用上は問題無い。

 CrystalMarkは、同じアーキテクチャで4GBのメモリを搭載したノートPCと比較すると、メモリ、そして本体メモリと共有するグラフィック関連が少し落ち込んでいる。32bit版のWindowsなので、2GB×2の4GBにすると1GB無駄にはなるが、速度向上が期待できるので、何かのタイミングで追加したいところだ。

 YouTubeのHD動画は、標準の状態だと720pはOK、1080pはかなりコマ落ちとなる。GPUの機能を使うFlash Player 10.1β3でも状況は変わらない。10.1β3のリリースノートでは「Intel HD Graphics starting with the graphics driver version 15.16.5.2021(8.15.10.2021) for 32/64-bit Windows Vista and Windows 7.」とあるので、Lenovo ThinkVantage System Updateを使い調べたところ、最新版のドライバがあり、アップデートして1080pもコマ落ちしないようになった。パネルの解像度が1,280×800ドットなので、720p動画(1,280×720ドット)がちょうどいい。

 バッテリに関しては、省電力マネージャーで「マックス・バッテリ・ライフ」を選択、バックライトOFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、WiFi/ON(Bluetooth/WiMAX OFF)での結果だ。バッテリの残5%で8,775秒(約2.4時間)だった。カタログスペックが4セルで約3.8時間なので、まずまずの値だ。ただしバックライトをOFFにすると、かなり画面が見辛いため、実質はもう少し短くなりそうだ。オプションで6セルバッテリなどもあるので、用途に応じて準備したい。

Windows エクスペリエンス インデックス。総合3.3。CPU 6.2、メモリ 5.5、グラフィックス 3.3、ゲーム用グラフィックス 4.7、プライマリハードディスク 5.7CrystalMark。メモリが2GB×1の構成なので、メモリそしてグラフィックス関連のスコアが少し落ち込んでいるBBench。省電力マネージャーで「マックス・バッテリ・ライフ」を選択、バックライトOFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON(Bluetooth/WiMAX OFF)での結果。バッテリの残5%で8,775秒(約2.4時間)

 以上のように、プラットフォームをCalpellaベースに刷新した新型ThinkPadは、旧プラットフォームからうまく移行している上に、EE対応やパフォーマンスの向上など非常に魅力的に仕上がっている。さらにタブレットとWindowsタッチの相性も良く、コンバーチブルタイプが欲しいユーザーにとっては文句無しの一台だ。ただ本体価格が結構高価なので、個人用途の場合は、ダイレクトショップのキャンペーンなど合わせて購入したい。