レノボ「ThinkPad X201」
~Core i5搭載の12.1型モバイルノートPC



ThinkPad X201

発売中
価格:BTO



 レノボ・ジャパンの「ThinkPad X201」(以下X201)は、12.1型ワイド液晶搭載のモバイルノートPCである。レノボでは、Xシリーズをウルトラポータブルシリーズと呼んでおり、ThinkPadシリーズの中でも、特に携帯性を重視したラインナップである。X201の姉妹機として、低電圧版CPUを搭載しさらに軽量化を図ったX201sと、マルチタッチ対応液晶を備えたコンバーチブルタイプのタブレットPCであるX201 Tabletが用意されている。X201sやX201 Tabletのレビューは、すでに掲載されているが、今回は、スタンダードモデルともいえるX201を試用する機会を得たので、早速レビューしたい。

●通常電圧版のCore i5を搭載し、高パフォーマンスを実現

 店頭モデルのX201は、プリインストールOSの違いによって、Windows 7 Professional 32bit版搭載モデルと、Windows 7 Professional 32bit版のダウングレードによるWindows XP Professional SP3 32bit版搭載モデルの2モデルがあるが、今回はWindows 7モデルを試用した。

 X201は、CPUとして通常電圧版のCore i5-540Mを搭載し、高パフォーマンスを実現していることが魅力の1つだ。Core i5はデュアルコアCPUだが、1つのコアで同時に2つのスレッドを実行可能なHyper-Threadingテクノロジーを搭載しており、合計4スレッドの同時実行が可能だ。Core i5-540Mの定格クロックは2.53GHzだが、自動オーバークロック機能の「Turbo Boostテクノロジー」によって、最大3.06GHzまでクロックが向上する。Core i5は、グラフィックス機能やメモリコントローラも統合しているので、チップセットが1チップで済み、実装面積の削減にも貢献する。

 標準搭載メモリは2GBだが、メモリスロットは2基用意されており、最大8GBまでメモリの増設が可能だ。HDDは、2.5インチ5,400rpmで、容量は320GBである。

 本体のサイズは295×210×20.7~35.3mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1.41kgである。天板と底面には軽くて丈夫なマグネシウム合金が採用されているほか、ThinkPad RollCageデザインと呼ばれる剛性の高いシャーシ構造を採用しており、高い堅牢性を実現している。

ThinkPad X201の天板。ThinkPad伝統のつや消しのブラックである「DOS/V POWER REPORT」誌とのサイズ比較。奥行きはほぼDOS/V POWER REPORTと同じで、横幅はややThinkPad X201のほうが大きい
ThinkPad X201の底面。中央のカバーを外すと、SO-DIMMスロットが現れる。中央上のコネクタは、Ultrabase用ドッキング・コネクタ標準では2GBのメモリが実装されているが、DDR3 SO-DIMMスロットが2基用意されており、最大8GBまでメモリを増設できる

●ThinkPadの伝統的で使いやすいキーボード

 X201の液晶は12.1型ワイドで、解像度は1,280×800ドットだ。解像度がやや物足りない感もあるが、このサイズとしては標準的である。アンチグレアタイプの液晶を採用しているため、外光の映り込みが少なく、長時間使っていても目への負担が少ない。鮮やかさという点では、光沢タイプのほうが上だが、ビジネス用途に使うのならアンチグレアタイプのほうが適している。

 キーボードは全94キーで、ThinkPad伝統の7列配列だ。不等キーピッチもなく、ストローク感もしっかりしており、快適にタイピングが可能だ。液晶上部には、白色LEDを利用したキーボードライトが搭載されており、暗い場所でのキー入力を助けてくれる。キーボード左上には、ミュートボタンと音量調整ボタン、ThinkVantageボタンが用意されている。

 ポインティングデバイスとしては、ThinkPadシリーズではお馴染みのスティック型デバイス「TrackPoint」を搭載。ホームポジションから指を大きく動かさずに操作でき、操作性も良好だ。BTOオプションでは、タッチパッドである「ウルトラナビ」も追加できる。クリックボタンの右側には、指紋センサーが搭載されており、指紋認証によるログオンなどが利用できる。

 なお、X201は1スピンドルノートであり、光学ドライブは搭載していない。

液晶は12.1型ワイドで、解像度は1,280×800ドットだ。アンチグレアタイプの液晶なので、外光が映り込みにくく、長時間使っていても目が疲れにくいThinkPad X201のキーボードは全94キーで、配列はThinkPad伝統の7列配列だ。ThinkPadシリーズは、キーボードの出来のよさに定評があるが、X201のキーボードの完成度も高い液晶上部には白色LEDを利用したキーボードライトが搭載されている
キーボード左上には、ミュートボタンと音量調整ボタン、ThinkVantageボタンが用意されているポインティングデバイスとして、ThinkPadシリーズではお馴染みの「TrackPoint」を採用。ホームポジションから指を大きく動かさずに操作できることが利点だ。ボタンの右側には指紋センサーが用意されている

●インターフェイスは標準的だが、ワイヤレス機能は充実

 インターフェイスとして、USB 2.0×3(1つはPowered USB)、ミニD-Sub15ピンのアナログRGB出力、Gigabit Ethernetなどを搭載。最低限のインターフェイスは備えているが、デジタル出力のHDMI端子やDisplayPort、eSATAをサポートしていないのがやや残念だ。

 カードスロットとして、ExpressCard/54スロットを備えるほか、SDメモリーカード/SDHCメモリーカード/MMC/メモリースティック/メモリースティックProの5種類のメモリカードに対応した「5in1メディアカード・リーダー」を搭載している。

 ワイヤレス機能は充実しており、IEEE 802.11a/b/g/n対応無線LANとBluetooth Ver 2.1+EDRに対応。さらに、WiMAXも標準搭載している。無線LAN/WiMAXモジュールは最新の「Intel Centrino Advanced-N+WiMAX 6250AGN」であり、WiMAXの理論通信速度は下り最大20Mbps、上り最大6Mbpsを実現。アンテナの配置を最適化し、無線LANやWiMAXなどの感度を高めた「UltraConnect」テクノロジーを搭載しており、安定した通信が可能だ。

 右側面にはワイヤレススイッチが用意されており、ワイヤレス機能の有効/無効をワンタッチで切り替えられるため、電波の送出が禁じられている航空機内などで使う場合にも便利だ。

左側面には、USB 2.0とミニD-Sub15ピン、Gigabit Ethernet、Powered USB、ワイヤレススイッチ、ExpressCard/54スロットが用意されている右側面には、USB 2.0、ヘッドフォン出力、マイク入力、モデムが用意されている前面には、5in1メディアカード・リーダーが用意されている
5in1メディアカード・リーダーは、SDメモリーカード/SDHCメモリーカード/MMC/メモリースティック/メモリースティックProの5種類のメモリカードに対応しているアンテナの配置を最適化し、無線LANやWiMAXなどの感度を高めた「UltraConnect」テクノロジーを搭載左側面にワイヤレススイッチが用意されており、ワイヤレス機能の有効/無効を素早く切り替えられる

●オプションで9セルの大容量バッテリを搭載可能

 標準バッテリは14.4V/2Ahの4セル仕様だが、6セルバッテリや9セルバッテリも用意されている。4セルバッテリでの公称バッテリ駆動時間は約3.8時間(Windows 7モデルの場合)だ。バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとにWebサイトへの無線LAN経由でのアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、3時間30分の駆動が可能であった(電源設定は「バランス」に設定し、バックライト輝度は中)。モバイルノートPCとしては、やや物足りないが、無線LANオンででも公称駆動時間にかなり近い駆動が可能であったことは評価できる。

 公称駆動時間は6セルバッテリでは2倍の約7.6時間、9セルバッテリでは約12.8時間とされているので、9セルバッテリを装着すれば、無線LANを利用しても10時間以上は持ちそうだ。ACアダプタもコンパクトで軽く、携帯性は優れている。

ThinkPad X201のバッテリ。薄型で軽量だバッテリは、14.4V/2Ahの4セル仕様だCDケース(左)とバッテリのサイズ比較
ThinkPad X201のACアダプタ。比較的コンパクトで軽いCDケース(左)とACアダプタのサイズ比較

●クラストップレベルのパフォーマンスを実現

 参考のためにベンチマークを計測してみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較対照用にレノボ「ThinkPad T410s」、デル「Studio 15 OPIデザイン」、日本HP「HP Pavilion Notebook dm3a」、レノボ「ThinkPad T400s Windows 7モデル」、NEC「LaVie M」の値も掲載した。

 X201のPCMark05の総合スコアは6163で、通常電圧版のCore 2 Duo搭載モデルに比べて、1.2~1.4倍程度に向上している。一回り大きく重い、ThinkPad T410sと比べても、CPUがワンランク上で、2.5インチHDDを搭載しているため(ThinkPad T410sは1.8インチHDD採用)、総合スコアは上回っている。このクラスのモバイルノートPCとしては、トップレベルのパフォーマンスを実現しているといえるだろう。実際の使用感も軽快であった。

【表】ベンチマーク結果


ThinkPad X201ThinkPad T410sStudio 15 OPIデザインHP Pavilion Notebook PC dm3 ハイパフォーマンスモデルThinkPad T400s
Windows 7モデル
LaVie M
CPUCore i5-540M(2.53GHz)Core i5-520M(2.4GHz)Core i5-430M(2.26GHz)Core 2 Duo SP9300(2.26GHz)Core 2 Duo SP9400(2.4GHz)Cleron SU2300(1.2GHz)
ビデオチップCPU内蔵コアCPU内蔵コアMobility Radeon HD 4570GeForce G105MIntel GS45内蔵コアIntel GS45内蔵コア
PCMark05
PCMarks61635677N/A512444802826
CPU Score763773756677559360922966
Memory Score628661845738508752763066
Graphics Score267026105234346020571397
HDD Score553442914646536044714948
3DMark03
1024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks)4111410110687844624932048
CPU Score1121106816041544980495
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH251624585991567824871995
LOW388538088933862638681367
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP10096.6310099.9399.9376.43
HP10099.9710099.9399.9399.97
SP/LP99.9710099.9799.9399.9799.97
LLP10099.9710099.9399.9799.97
DP(CPU負荷)192119484868
HP(CPU負荷)101211251942
SP/LP(CPU負荷)778171028
LLP(CPU負荷)66815722

●携帯性と性能を高いレベルで両立

 X201は、通常電圧版Core i5の搭載による高いパフォーマンスと、重さ約1.41kgという携帯性のよさを両立させていることが魅力だ。4セルバッテリではバッテリ駆動時間にやや不満があるが、6セルバッテリや9セルバッテリを装着すれば、駆動時間も大きく延びる。

 ネットブックやCULVノートの登場によって、ダイレクト価格で194,250円という価格はやや高く感じられるが、それだけの価値はある製品だ。一度ThinkPadシリーズの使いやすいキーボードとポインティングデバイスに慣れてしまうと、他のメーカーのノートPCに移行する気になれないという人も多いことだろう。指紋センサーやTPMチップの搭載など、セキュリティ機能も充実しているので、仕事で持ち歩くためのノートPCを探している人にお勧めしたい。

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(2010年 4月 12日)

[Text by 石井 英男]