東芝「dynabook MX」ファーストインプレッション
~Windows 7/CULV CPU搭載“ネットノート”



dynabook MX

10月22日 発売
価格:オープンプライス



 東芝から発表された「dynabook MX」は、いわゆるCULV CPU採用のモバイルノートPCである。CULVとは、Consumer Ultra Low Voltageの略で、ネットブックと通常のノートPCの間を埋めるモバイルノート向けの製品だ。CULVは、いわばIntelのマーケティング戦略の1つであり、新製品というわけではないが、従来は価格に大きなプレミアがついていた超低電圧版CPUをリーズナブルな価格で提供することで、ネットブック以上、ノートPC未満の新たなカテゴリを生み出そうとしている。

 CULV採用モバイルノートPCは、エイサーやレノボなどからすでに発売されているが、Windows 7の登場に合わせて、東芝やNEC、富士通といった国内大手メーカーからも採用製品が発表された。性能も価格も、ネットブックと一般のノートPCの間になるが、この新カテゴリの製品をどう呼ぶか、各社とも苦慮しているようだ。東芝は、このCULV採用製品をネットブック以上ノートPC未満という意味を込めて、「ネットノート」と呼ぶことを提唱しており、他社もその呼称を使ってほしいという意向を示している。

 「dynabook MX」には、11.6型ワイド液晶搭載の下位モデル「MX/33」と、13.3型ワイド液晶搭載の上位モデル「MX/43」の2モデルがあり、MX/33とMX43では、搭載CPUやチップセットなどが異なる。今回は、MX33とMX43の両モデルを試用する機会を得たので、早速レビューする。なお、今回試用したのは試作機であり、細部の仕上げなどは製品版と異なる可能性がある。

●ボディの仕上げや質感は良好

 11.6型ワイド液晶搭載のMX/33と13.3型ワイド液晶搭載のMX/43では、ボディのサイズは異なるが、基本的なデザインは共通だ。天板の表面には、曲線を活かしたグラデーションテクスチャがプリントされている。このテクスチャは、成型時に金型の中に転写フィルムを挟み込む「成型同時加飾転写工法」を採用したもので、傷に強く美しい。同じテクスチャは、パームレスト部分およびタッチパッド上にも描かれており、デザイン的な統一感が感じられる。

 MX/33のボディカラーは、アイアンレッド、リュクスホワイト、プレシャスブラックの3つが用意されているが、今回はアイアンレッドを試用した。なお、MX/43のボディカラーはリュクスホワイトのみである。ボディの作りや質感は良好であり、dynabookブランドに恥じない仕上がりだ。

 ボディのサイズと重量は、MX/43が323×223×22.2~34.2mm(幅×奥行き×高さ)、約1.76kgで、MX/33が286×211×24.9~34.2mm(同)、約1.58kgである。MX/43はやや重いが、MX/33なら、持ち運びもそれほど苦にはならないだろう。

下位モデルのMX/33の上面。ボディカラーはアイアンレッドである。曲線を活かした細かなテクスチャが描かれているdynabookロゴ周りのアップ。テクスチャがよくわかる上位モデルのMX/43の上面。ボディカラーは、このリュクスホワイトのみ
「DOS/V POWER REPORT」誌とMX/33のサイズ比較。ほぼ同じサイズだ「DOS/V POWER REPORT」誌とMX/43のサイズ比較。奥行きはほぼ同じだが、横幅はMX/43のほうが大きいMX/43(左)とMX/33(右)のサイズ比較

●上位モデルはデュアルコアのCore 2 Duoを搭載

 MX/33とMX/43では、ハードウェアスペックがかなり異なる。MX/33では、CPUとしてシングルコアの超低電圧版Celeron 743(1.30GHz)を、チップセットとしてIntel GS40 Expressを搭載しているのに対し、MX/43ではデュアルコアの超低電圧版Core 2 Duo SU9400(1.40GHz)を、チップセットとしてIntel GS45 Expressを搭載する。CPU、チップセットともに上位のMX/43のほうが高性能である。

 一方、標準実装メモリは、両モデルとも2GBだが、増設可能な最大メモリ容量は、MX/33が4GB、MX/43が8GBとなっている。メモリスロットとして、SO-DIMMスロットを2基搭載している(DDR3対応)。なお、製品版では、2GB SO-DIMMが1枚装着されており、メモリスロットが1基空いているのだが、今回の試用機ではSO-DIMMが2枚装着されており、メモリスロットが空いていなかった。

 HDD容量は両モデル共通で250GBである。いわゆるネットブックの場合、HDD容量は160GBが主流であり、HDD容量もdynabook MXのほうが余裕がある。メモリスロットカバーを外すとHDDにもアクセスできるので、換装も容易だろう(もちろん、HDD換装はメーカーの保証外となる)。また、3D加速度センサーにより衝撃などを検出してヘッドを退避させる「東芝HDDプロテクション」も搭載しており、安心して持ち歩ける。OSは、Windows 7 Home Premium(32bit版)がプリインストールされており、Aeroも利用可能だ。

MX/33のメモリスロットカバーを外したところ。製品版では、2GB SO-DIMMが1枚装着されており、メモリスロットは1基空いているのだが、試用機には1GB SO-DIMMが2枚装着されており、メモリスロットの空きはなかった。メモリスロットの隣にはHDDが装着されているMX/43のメモリスロットカバーを外したところ。製品版では、2GB SO-DIMMが1枚装着されており、メモリスロットは1基空いているのだが、試用機には2GB SO-DIMMが2枚装着されており、メモリスロットの空きはなかった。メモリスロットの隣にはHDDが装着されている

●1,366×768ドット表示のアスペクト比16:9液晶を搭載

 液晶のサイズは、MX/33が11.6型ワイド、MX/43が13.3型ワイドと異なるが、解像度は両モデルとも1,366×768ドットである。ネットブックでは1,024×600ドット液晶が主流であり、画面が狭い(特に縦方向)と感じることがあるが、dynabook MXなら一般的なノートPCと解像度はほぼ同じであり、そうした不満はない。Clear SuperView液晶と名付けられた光沢タイプの液晶パネルを採用しており、発色は鮮やかで、黒が締まっておりコントラストも高い。その反面、外光はやや映り込みやすい。また、LEDバックライトが使われており、消費電力も低い。

 キーボードも、MX/33とMX/43ではデザインが異なり、MX/33は全85キー、MX/43は全87キーとなっている。主要キーのキーピッチは両モデルとも約19mmだが、ボディが小さいMX/33では、「む」や「け」などのキーピッチは狭くなっている。また、MX/33は、「半角/全角」キーやFnキーの配置がやや変則的である。キータッチは両モデルとも良好だが、配列にこだわるのなら、MX/43を選んだ方がいいだろう。また、MX/43のキーボードは、セミグロッシーキーボードと呼ばれるもので、キートップの文字の視認性が高く、指紋が付きにくくなっている。

 ポインティングデバイスとしては、タッチパッドを採用。タッチパッドにも、パームレスト部分と同じテクスチャが施されており、デザイン的にもすっきりしている。

MX/33の液晶は11.6型ワイドで、解像度は1,366×768ドットの16:9仕様だ。LEDバックライト採用で低消費電力を実現。光沢タイプなので、外光の映り込みが気になることがあるMX/43の液晶は13.3型ワイドで、解像度はMX/33と同じく1,366×768ドットの16:9仕様だ。こちらも、光沢タイプだMX/33では液晶の上部に約30万画素Webカメラを搭載しており、ビデオチャットなどに利用できる
MX/43もMX/33と同じく、液晶の上部に約30万画素Webカメラを搭載しているMX/33のキーボードは全85キーで、キーピッチは約19mm、キーストロークは約1.6mmである。ただし、「む」や「け」などの右側の一部のキーピッチは狭くなっている。また、右側のCtrlキーとAltキーは省略されており、「半/全」キーやFnキーの位置もやや変則的だMX/43のキーボードは全87キーで、キーピッチは約19mm、キーストロークは約1.6mmである。こちらはスペースに余裕があるので、右側のCtrlキーやAltキーは省略されておらず、キー配置も自然だ。なお、MX/43のキーボードはセミグロッシーキーボードと呼ばれるもので、キートップの文字の視認性が高く、指紋が付きにくくなっている
MX/33は、ポインティングデバイスとしてタッチパッドを搭載。タッチパッドの表面にも、パームレスト部分と同じテクスチャが施されているMX/43も、MX/33と同様にタッチパッドを搭載する

●HDMI出力を搭載するなどインターフェイスも十分

 dynabook MXは、必要にして十分なインターフェイスを搭載している。搭載インターフェイスは、両モデルで共通であり、USB 2.0×3、ミニD-Sub15ピン、HDMI出力、ヘッドホン出力、マイク入力を搭載する。また、USB 2.0ポートのうち、左側面に用意されているポートは、スタンバイ状態やシャットダウン状態などでも電力が供給される「USBスリープアンドチャージ」に対応しているので、USB給電で充電可能な機器を使う際に便利だ。

 また、メモリカードスロットとして、SDメモリーカード/SDHCメモリーカード/MMC/xD-Picture Card/メモリースティック/メモリースティックPROに対応したブリッジメディアスロットを搭載する。さらに、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LAN機能も搭載している。

MX/33の左側面には、ミニD-Sub15ピン、ブリッジメディアスロット、HDMI出力、USB 2.0が用意されているMX/33の右側面には、ヘッドホン出力、マイク入力、USB 2.0×2、LANが用意されている
MX/43の左側面には、ミニD-Sub15ピン、HDMI出力、USB 2.0が用意されているMX/43の右側面には、ブリッジメディアスロット、ヘッドホン出力、マイク入力、USB 2.0×2、LANが用意されている

●公称約10.5時間の長時間駆動を実現

 バッテリは6セルタイプで、試用機のバッテリはMX/33とMX/43で仕様が微妙に違っていたが、製品版では共通のバッテリが使われる。

 バッテリ駆動時間が長いこともdynabook MXの魅力であり、超低電圧版Core 2 Duo SU9400を搭載する上位のMX/43では公称約10.5時間、超低電圧版Celeron 743を搭載するMX/33では公称約9.5時間の連続駆動が可能だ。ネットブックでは、公称駆動時間が3~5時間程度の製品が主流であり、駆動時間の短さに対して不満を持つ人も多かったが、dynabook MXなら、ACコンセントがない場所でも安心して使うことができる。

MX/33のバッテリCDケース(左)とMX/33のバッテリのサイズ比較
MX/43のバッテリCDケース(左)とMX/43のバッテリのサイズ比較
MX/33のACアダプタCDケース(左)とMX/33のACアダプタのサイズ比較
MX/43のACアダプタCDケース(左)とMX/43のACアダプタのサイズ比較

●ネットノートという新カテゴリの基準となる製品

 今回は、試作機ということもあり、ベンチマークテストは行なっていないが、試用した限りにおいて、Windows 7 Home Premiumは両モデルとも十分快適に動作していた。下位のMX/33でも、Aeroが問題なく動作しており、Atom搭載機と比べて明らかに動作は軽快であった。上位のMX/43なら通常のCore 2 Duo搭載モバイルノートPCと比較してもほぼ遜色はないと感じた。

 CULV採用のネットノートは、一般のモバイルノートPCに比べて価格が安く設定されていることが魅力である。上位のMX/43の予想価格は12万円前後、下位のMX/33の予想価格は9万円前後とされており、性能やバッテリ駆動時間を考えると、コストパフォーマンスは高いといえる。Windows 7の登場に合わせ、他社からもCULV採用機が続々と発表されているが、本製品の完成度は高く、ネットノートの1つの基準となるだろう。

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(2009年 10月 22日)

[Text by 石井 英男]