~プラス1万円で大幅に速いSSDモデル |
日本HP 「HP Mini 5101」 SSD搭載モデル |
日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の最新ネットブック「HP Mini 5101」は、先日速報版で紹介したように、高解像度液晶を標準搭載するとともに、本体デザインも一新され、大きな変貌を遂げている。今回は、SSD搭載モデルも入手できたので、HDDモデルとの違いを中心に見ていく。
搭載SSDは、Samsung製の128GB SSD「MMCRE28G5MXP-0VB」。公称リード最大220MB/sec、ライト最大200MB/secと、非常に高速なアクセス速度が特徴のSSDだ |
HP Mini 5101には、容量160GBのHDDを搭載するモデルと、容量128GBのSSDを搭載するモデルの2つが用意されている。従来モデルのHP Mini 2140にもSSD搭載モデルが用意されているが、そちらの容量は80GB。HP Mini 5101のSSDモデルは容量が約1.5倍に増量されている。
HP Mini 2140のSSDモデルは、高速なアクセス速度で定評のあるIntel製のSSD(X25-M Mainstream SATA SSD)を搭載していたが、HP Mini 5101のSSD搭載モデルでは、Samsung製の「MMCRE28G5MXP-0VB」を搭載する。このSSDは、公称でリード最大220MB/sec、ライト最大200MB/secと、Intel製SSD同様、非常に高速なアクセス速度を特徴としている。Crystal Disk Mark 2.2.0を利用して測定したアクセス速度は、公称値よりもかなり低くなってはいるものの、それでもHDDに対して大きな差をつけている。
実際にHDDモデルと比較してみると、OSの起動時間が大幅に短縮されているとともに、アプリケーションの起動も高速になっており、体感での快適さが大きく向上している。ネットブックでは、CPUの処理能力が低いこともあって、アプリケーション起動時にやや待たされると感じることも少なくないが、SSD搭載モデルではそういった印象もかなり少なくなり、パフォーマンスが1段向上したかのように、非常にきびきびとした操作が行なえる。実際にこの差を体感すると、ネットブックでの高速SSDの搭載は、一般のノートPC以上に大きな意味があると改めて認識させられた。
ちなみに、従来モデルのHP Mini 2140では、160GB HDD搭載モデルとの価格差が1万円弱しかなかったこともあり、HDD搭載モデルよりもSSD搭載モデルの方がよく売れたそうだが、実はHP Mini 5101も全く同じで、HDD搭載モデルとSSD搭載モデルの価格差は1万円弱となっている。SSD容量が増えたことも含め、HP Mini 5101のSSD搭載モデルはかなりお買い得と言っていいだろう。
SSDモデルのCrystal Disk Mark 2.2.0の結果。公称のアクセス速度よりはかなり遅いものの、これでもHDDモデルに対して圧倒的な速度差が実現されている | |
こちらは、HDD搭載モデルの結果。こちらもそれほど悪い数値ではないものの、ランダムライト速度は大きく劣っている |
OS起動時間の差。HDD搭載モデル(左)とSSD搭載モデル(右) |
●HDDモデルでは3D加速度センサを利用したHDD保護機構を標準搭載
SSD搭載による魅力は、先ほど紹介したように、高速なアクセス速度による快適度の向上はもちろん、外部からの衝撃に対する耐性が大幅に向上するため、データの保護性能にも優れることにある。SSDには稼働部が一切無いため、データアクセス中に外部から衝撃が加わったとしても、HDDのようにヘッドやディスクが物理的に損傷することがなく、保存されているデータが失われる危険が非常に少なくなる。
とはいえ、HDDモデルに問題があるというわけではない。HDDモデルでは、HDD自体を超衝撃素材で包み込んで内蔵するとともに、本体に標準搭載されている3D加速度センサーを利用したHDDプロテクション機構「HP 3Dドライブガード」によって、振動や衝撃が加わった場合でも、瞬時にヘッドを待避させてクラッシュの危険性を低減する機能を備える。これにより、HDDに保存されているデータが失われる危険性は、一般的なネットブックよりも圧倒的に少ないだろう。
また、新デザインのボディは、素材としてマグネシウム合金が採用されており、従来モデルから約5mmの薄型化を実現していながら、天面の耐加重が500kgfという非常に優れた堅牢性を実現。SSDモデル、HDDモデルともに優れたデータの保護性能に加え、本体の優れた堅牢性によって、ビジネス用途で常に持ち歩いて利用するマシンとして安心感がある。
HDD搭載モデルに用意されている、HDDプロテクション機構「HP 3Dドライブガード」。外部からの衝撃が加わる寸前にHDDのヘッドを待避させ、クラッシュの危険性を低減する | ボディ素材にはマグネシウム合金を採用するとともに、天面は耐加圧500kgfという優れた堅牢性を実現している |
●ストレージ以外の基本スペックは同等
速報版でも紹介しているように、HP Mini 5101には、本体デザインの変更や、1,366×768ドット表示対応の高解像度液晶の標準搭載、新形状のキーボード/マウスパッドの搭載など、さまざまな特徴がある。これは、SSD搭載モデルでももちろん同じだ。
HDD搭載モデルとSSD搭載モデルの違いは、ストレージデバイスの違いのみで、その他の仕様は全く同じだ。ちなみに、実測値での本体重量は、HDD搭載モデルの1,153gに対し、SSD搭載モデルでは1,133gと、20g軽量であった。とはいえその差は非常に小さい。
左がHDD搭載モデル、右がSSD搭載モデル。内蔵ストレージの種類以外の仕様は全く同じで、外観からも違いはわからない | SSD搭載モデルの重量は、実測値で1,133gと、HDD搭載モデルよりも20g軽量だった |
仕様面をあらためると、OSにWindows XP Professional SP3を採用したり、2GBのメインメモリや128GBの大容量SSD、Gigabit Ethernetを搭載するなど、いわゆるULCPCライセンス準拠のネットブックとは大きく異なる仕様が実現されている。このような仕様が実現されている理由は、Windows Vista Businessのダウングレード扱いでWindows XP Professional SP3を搭載しているからだ。これは、CPUにVIA C7-M ULVを採用し、1,280×720ドット表示対応の8.9型液晶を搭載していたHP 2133 Mini-Note PCに近い位置付けと考えていいだろう。そういった意味では、いわゆるネットブックとは異なるカテゴリの製品と言えるかもしれない。
ただし、OSのライセンスはWindows Vista Business相当ではあるが、残念ながらWindows 7へのアップグレード権は付与されていない。これは、HP Mini 5101がビジネス向けとして位置付けられていることと、ネットブックではWindows XPでの利用が大多数を占めていることを考慮しての措置のようだ。とはいえ、Windows 7はネットブックでもかなり快適に利用できると言われており、どうせなら試してみたいと思う人も少なくないはずで、有償でもいいので、Windows 7へのアップグレードの道を用意してもらいたかったところだ。
【表1】HP Mini 5101基本スペックCPU | Atom N280 |
チップセット | Intel 945GSE Express |
メインメモリ | PC2-4200 DDR2 SDRAM 2GB |
ストレージ | 160GB HDDまたは128GB SSD |
液晶 | 10.1型ワイド 1,366×768ドット |
無線LAN | IEEE 802.11a/b/g/n |
有線LAN | 1000BASE-T |
Bluetooth | 搭載 |
OS | Windows XP Professional SP3(Windows Vista Businessダウングレード) |
●ベンチマークテストの結果以上にSSDモデルは快適
では、ベンチマークテストをチェックしよう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark05 (Build 1.2.0)」と、HDBENCH.NETの「HDBENCH Ver3.40beta6」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の3種類。速報版ではHDD搭載モデルの結果のみを紹介していたが、今回はSSD搭載モデルもあわせて掲載する。
【表2】ベンチマーク結果
HP Mini 5101 | HP Mini 5101 SSDモデル | HP Mini 2140 Notebook PC | HP 2133 Mini-Note PC ハイパフォーマンスモデル | |
CPU | Atom N280(1.66GHz動作) | Atom N280(1.66GHz動作) | Atom N270(1.6GHz動作) | VIA C7-M ULV 1.6GHz |
ビデオチップ | Intel 945 GSE Express | Intel 945 GSE Express | Intel 945 GSE Express | VIA CN896内蔵 |
メモリ | 2GB | 2GB | 1GB | 2GB |
OS | Windows XP Home Edition SP3 | Windows XP Home Edition SP3 | Windows XP Home Edition SP3 | Windows Vista Business |
PCMark05 Build 1.2.0 | ||||
PCMark Score | 1619 | 2117 | 1561 | 815 |
CPU Score | 1536 | 1549 | 1487 | 871 |
Memory Score | 2459 | 2468 | 2344 | 1018 |
Graphics Score | 566 | 568 | 547 | 293 |
HDD Score | 5917 | 23223 | 5768 | 3928 |
HDBENCH Ver3.40beta6 | ||||
All | 48678 | 62938 | 40144 | N/A |
CPU:Integer | 97366 | 97362 | 94278 | 53633 |
CPU:Float | 67364 | 67396 | 64792 | 38271 |
MEMORY:Read | 50095 | 50104 | 48106 | 17629 |
MEMORY:Write | 50499 | 50549 | 48569 | 44205 |
MEMORY:Read&Write | 88980 | 89016 | 85545 | 31658 |
VIDEO:Recitangle | 17587 | 17585 | 16721 | 3762 |
VIDEO:Text | 7177 | 7161 | 6945 | 2767 |
VIDEO:Ellipse | 4720 | 4736 | 4273 | 3717 |
VIDEO:BitBlt | 142 | 143 | 192 | 34 |
VIDEO:DirectDraw | 29 | 29 | 29 | 58 |
DRIVE:Read | 86122 | 125798 | 71160 | N/A |
DRIVE:Write | 81854 | 102297 | 47473 | N/A |
DRIVE:RandomRead | 28992 | 72778 | 28992 | N/A |
DRIVE:RandomWrite | 35032 | 45169 | 21988 | N/A |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | ||||
LOW | 1474 | 1459 | 1409 | 737 |
結果を見ると、ストレージ関係以外の結果はほぼ同じとなっている。内蔵ストレージの種類以外の仕様が全く同じなので、これは当然の結果と考えていい。ただ、ストレージ関係の結果が大きく異なっている以上に、体感の快適度の違いが大きく感じる。先に紹介したOS起動時間の差のムービーでも歴然だが、OSやアプリケーションの起動速度は圧倒的にSSD搭載モデルの方が高速で、まるで1ランク異なるスペックのマシンを利用しているかのような感覚だ。利用時の快適度優先なら、SSD搭載モデルのほうが断然有利だ。
次に、バッテリ駆動時間をチェックする。こちらは、省電力機能を切ってフルパワーで動作させつつ、液晶輝度を最大に設定し、無線LANも動作させた状態で、動画ファイル(WMV9、ビットレート1156kbps、640×480ドット)をWindows Media Player 11を利用して連続再生させた場合と、省電力機能を有効にし、無線LANを動作させた状態で、液晶輝度を約40%の明るさに抑え、海人氏製作のバッテリベンチマークソフト「BBench V1.01」を利用し、Web巡回とキー入力をONにして計測するという、2パターンで計測した。
【表3】バッテリー駆動時間
HDD搭載モデル | SSD搭載モデル | |
フルパワー時 | 1時間47分 | 2時間01分 |
省電力設定時 | 2時間28分 | 2時間57分 |
結果を見ると、フルパワー時、省電力設定時双方とも、HDDモデルよりもSSDモデルの方がバッテリ駆動時間が長かった。利用時の快適度だけでなく、バッテリ駆動時間の点でもSSD搭載モデルの方が有利になるわけだ。ただ、駆動時間という点で見ると、一般的なネットブックとほぼ同等で、特に長いというわけではない。それでも、オプションで用意されている、6セルの大容量バッテリを利用すれば、単純計算でこの2倍の駆動時間が実現されることになり、外出先の電源を確保できない場所で利用することが多いという場合でも安心して利用できるはずだ。今回は、6セルバッテリでのテストは行なえなかったが、6セルバッテリ搭載時でも重量は約1.3kgと大幅な重量増にはならないので、バッテリ駆動時間を優先させたい場合には、6セルバッテリの購入を検討すべきだろう。
●まとめHP Mini 5101は、一般的なネットブックに近い新デザインのボディが採用されたことで、従来モデルから印象が大きく変わった。従来のデザインもなかなか好評だったものの、HP Mini 5101の、どちらかというと自己主張が少なく落ち着いたデザインの方が、ビジネスシーンでの利用に適しているように思う。また、標準で高解像度液晶を搭載するとともに、キーピッチが広がるとともに、表面が滑りにくくコーティングされたことでタイピングしやすくなったアイソレーションキーボード、クリックボタンがパッド面下に配置されて大きく使いやすくなったタッチパッドなど、使いやすさという面での進化も大きい。加えて、奥行きこそ増えたものの、薄型化と軽量化を実現するとともに、優れた堅牢性も兼ね備えており、従来モデルに比べて魅力が大きく向上していることは間違いない。
強いて要望を挙げるとすれば、もう一回り大きい液晶パネルを搭載してもらいたかったことと、Windows 7へのアップグレード権を付属してもらいたかったことだが、それを実現した場合には間違いなく価格が上昇してしまうはずで、価格と性能とのバランスを考えると、大きな不満はない。
販売価格は、HDD搭載モデルが69,930円から、SSD搭載モデルが79,800円からとなる。価格差が1万円弱ということを考えると、やはりSSD搭載モデルの方がおすすめだ。ちなみに、HP Mini 5101はビジネス向けとして位置付けられているものの、個人でも購入可能だ。スペック面での隙がほとんどなく、ビジネス用途から個人用途まで柔軟に対応できるネットブックとして、広くおすすめしたい製品だ。
(2009年 9月 18日)
[Text by 平澤 寿康]