~10.1型ワイド液晶とHDMI搭載の最新ネットブック |
デルから登場した「Inspiron Mini 10」は、同社のネットブックInspiron Miniシリーズの第3弾となる製品であり、サイズ的には8.9型ワイド液晶搭載の「Inspiron Mini 9」と12.1型ワイド液晶搭載の「Inspiron Mini 12」の間に位置する。Inspiron Mini 10は、Inspiron Mini 9とInspiron Mini 12の両方の長所を併せ持っており、携帯性と使い勝手のバランスがとれていることが魅力だ。
今回は、Inspiron Mini 10を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、今回使用したのは評価機であり、製品版とは細部やパフォーマンスが異なる可能性がある。
●光沢のある美しいボディ、カラーバリエーションも充実Inspiron Mini 10のボディデザインは、Inspiron Miniシリーズを踏襲したものとなっており、角が丸みを帯びているため、柔らかな印象を与える。キーボード部分のカラーはブラックとシルバーだが、天板のカラーバリエーションが豊富なことも魅力の1つだ。カラーバリエーションは、オブシディアン・ブラック、パール・ホワイト、チェリー・レッド、プリティ・ピンク、ジェイド・グリーン、アイス・ブルーの6色で、明るめのパステルカラーが多く、若い女性にも似合うだろう。なお、ジェイド・グリーン、アイス・ブルーは直販モデルのみとなる。
本体サイズは261×182.5×25.3~28mm(幅×奥行き×高さ)で、A4変型の雑誌よりも一回り小さく、気軽に持ち運べる。重量も最小構成時で1.17kgと軽く、携帯性は良好だ。
いわゆるネットブックでは、CPUとしてAtom N270(1.6GHz)を搭載しているマシンが多いが、Inspiron Mini 10では、Atom Z530(1.6GHz)またはAtom Z520(1.33GHz)を搭載する。Atom N270とAtom Z530は、マイクロアーキテクチャは同一であり、性能も同じだが、前者がネットブック向け製品であるのに対し、後者はMID向け製品であり、後者の方がわずかにTDPが低い(Atom N270のTDPは2.5Wだが、Atom Z530のTDPは2.2W)。また、組み合わせるチップセットもAtom N270では、Intel 945GSE Expressであるのに対し、Atom Zシリーズでは、System Controller Hub US15Wとなる。他のInspiron Miniシリーズの場合、Inspiron Mini 9はAtom N270+Intel 945GSEだが、Inspiron Mini 12はAtom Z530(またはZ520)+US15Wという構成になっている。つまり、Inspiron Mini 10の構成はInspiron Mini 12と同じだ。今回の評価機には、Atom Z530が搭載されていた。なお、メモリは1GBで、CPUとメモリ、チップセットが直接実装されたモジュールとして組み込まれているため、増設はできない。
ストレージとしては、2.5インチの160GB HDDまたは120GB HDDが搭載されている。Inspiron Mini 9では4GB~64GBのSSD(Windowsモデルでは8GBまたは16GB)が、Inspiron Mini 12では40GB/60GB/80GBの1.8インチHDDが搭載されていた。そのため、Inspiron Mini 10ストレージは、Inspiron Miniシリーズで最大容量となるほか、パフォーマンス的にもInspiron Mini 9やInspiron Mini 12に比べて有利だ。
Insprion Mini 10の上にInsprion Mini 9を乗せたところ | Inspiron Mini 10の底面。メモリスロットのカバーなどは用意されていない |
●1,366×768ドット液晶を選択可能
液晶ディスプレイのサイズは10.1型ワイドだが、解像度を1,024×576ドットと1,366×768ドットから選べることもウリだ。なお、アスペクト比はどちらも16:9となる。ほとんどのネットブックは、液晶解像度が1,024×600ドットまたは1,024×576ドットであり、横方向はともかく、縦方向の解像度がもう少し欲しくなる場面がよくある。Insprion Mini 12は、一般的なネットブックよりも解像度が高い1,280×800ドット液晶を搭載していたが、その分ボディサイズがやや大きくなっていた。1,366×768ドット液晶なら、一度に表示できる情報量は、1,024×576ドット液晶の約1.78倍になり、Webブラウズなどもより快適に行なえ、仕事の能率も向上する。ただし、今回の評価機では1,024×576ドット液晶が搭載されていた。液晶表面には、額縁部分もあわせてカバーする光沢パネルが装着されているため、額縁部分との段差がなく、スッキリしていて美しい。
Inspiron Mini 10の液晶は10.1型ワイドで、解像度は1,024×576ドットまたは1,366×768ドットから選べる(評価機は1,024×576ドット) | 左がInsprion Mini 10、右がInspiron Mini 9。Insprion Mini 10のほうが発色がやや緑がかっており、Mini 9はやや赤っぽい |
●使いやすいキーボードと多彩な機能を備えたマルチタッチ対応タッチパッド
Inspiron Mini 10は、10.1型ワイド液晶を搭載しているため、8.9型ワイド液晶を搭載したInspiron Mini 9に比べてボディが大きく、キーボードにも余裕がある。Inspiron Mini 9は、一般的なキーボードよりも1列少なく、ファンクションキーが独立しておらず配列もかなり変則的で、キーボードが最大の弱点だったといってもよいだろう。しかし、Insprion Mini 10では、ファンクションキーが独立した6列キーボードになっており、配列も標準的なものになった。キーピッチも約15mmから約17.5mmに広がり、快適にタイピングできる。また、キーの数も68キーから、86キーに増えている。キーボードについては、Inspiron Mini 12も改良されていたが、Inspiron Mini 10のキーボードは、Insprion Mini 12に比べても、不等キーピッチがなくなっていることなど、さらに使いやすくなっている。
ポインティングデバイスとしては、タッチパッドを搭載しているが、このタッチパッドは、Inspiron Miniシリーズで初めて複数の指でのマルチタッチ操作に対応していることが特徴だ。タッピングは1本指、2本指、3本指のそれぞれに別の機能を割り当てることができるほか、iPhoneのように2本指によるピンチ操作で拡大や縮小、回転も可能だ。さらに、3本指でのスワイプ操作やパッドを手のひらで覆うカバージェスチャ操作にも機能を割り当てられる。使いこなせば、効率よく作業ができるだろう。ただし、Inspiron Mini 10のタッチパッドの左右クリックボタンはパッドと一体化しており、パッドの手前右隅と左隅を押すことで、クリック操作ができるようになっている。そのため、パッドが元々横長になっていることとあわせ、パッドの縦方向のサイズが小さく、複数の指でタッピングしたりスワイプする際に、パッドがやや窮屈に感じた。ここは、Insprion Mini 9などのように、クリックボタンを独立させて欲しかったところだ。
Inspiron Mini 10のキーボード。ファンクションキーを含む6列キーボードで、配列にも無理なところはない。キーピッチは約17.5mmで、全86キー | Inspiron Mini 9のキーボード。こちらはファンクションキーが独立していない5列キーボードで、「半角/全角」キーや「む」キーの位置などが変則的だ。また、キーピッチも約15mmと狭く、全部で68キーしかない |
Inspiron Mini 10のタッチパッド。Elantech製で、2本指や3本指でのマルチタッチ操作に対応。パッドと左右クリックボタンが一体化している。パッドはかなり横長であり、縦方向が短い | Inspiron Mini 9のタッチパッド。こちらはマルチタッチ操作には非対応。左右クリックボタンは独立しており、パッドの手前に配置されている |
●ネットブックでは珍しくHDMI端子を搭載
インターフェイスとしては、USB 2.0×3、LAN、マイク、ヘッドフォンの各ポートを備えているほか、ディスプレイ端子としてHDMI端子を備えていることが特徴だ。従来のInspiron Miniシリーズでは、一般的なアナログRGB出力端子(ミニD-Sub15ピン)を搭載しており、HDMI端子の装備はInspiron Miniシリーズで初となる。他社のネットブックでもHDMI端子を備えた製品は珍しい。HDMI端子はデジタル出力なので、アナログRGBに比べて高画質で、ディスプレイの調整が不要なことが利点だ。最近の液晶ディスプレイや大画面テレビの多くはHDMIに対応しているため、気軽に外部ディスプレイに接続して、高解像度大画面でネットサーフィンなどを楽しめる。
なお、メモリカードスロットとして、SDメモリーカード/MMC/メモリースティック対応スロットを搭載しているが、メモリカードを挿入しても、半分くらい外にはみ出すようになっている。持ち歩くことを考えると、ここは改善して欲しかったところだ。ワイヤレス機能として、IEEE 802.11b/g対応無線LAN機能を搭載するほか、Bluetooth 2.1の搭載も可能だ。
カメラで静止画や動画を撮影するためのユーティリティソフトが付属 |
バッテリは、11.1V/24Whの3セル仕様で、公称バッテリ駆動時間は約3.1時間(構成による異なる)と、あまり長くはない。6セルバッテリも後日提供予定とのことなので、AC電源のない場所で使うことが多いのなら、6セルバッテリを選ぶべきだろう。ACアダプタは比較的コンパクトだが、ACプラグがアダプタ本体から直接出ており、ACプラグが折りたためないのが残念だ。使わないときにはACプラグを折りたためるようになっていれば、より携帯しやすくなる。
バッテリは、11.1V/24Whの3セル仕様である | CDケース(左)とバッテリのサイズ比較 |
付属のACアダプタ。比較的コンパクトだが、ACプラグが折りたためないのが残念 | CDケース(左)とACアダプタのサイズ比較 |
●ネットブックとしての完成度は高い
参考のためにベンチマークを計測してみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」で、比較対照用として、デル「Inspiron Mini 9」、エプソンダイレクト「Endeavor Na01 mini」、NEC「LaVie Light」での値も掲載する。
結果は表にまとめた通りで、PCMark05のCPU Scoreの値は、他のネットブックとほぼ同じだ。HDD Scoreの値は、SSDを搭載したInspiron Mini 9より高いが、同じ2.5インチHDDを搭載したEndeavor Na01 miniやLaVie Lightに比べるとやや低くなっている。3D系ベンチマークは描画が乱れてしまったり、エラーが出たりで、正常に動作しなかった。US15Wの内蔵グラフィックスコアであるGMA500は、Intel 945GSEの内蔵グラフィックスコアであるGMA950に比べて、3D描画性能が低く、サポートしているファンクションも少ない。その代わりUS15Wには、H.264やWMVなどのデコードを支援する機能が搭載されているのだが、今回試した限りでは、その効果は感じられなかった(グラフィックスドライバの問題のようだ)。どちらにせよ、描画性能にはあまり期待しないほうがいいだろう。とはいえ、ネットサーフィンや文書作成などの軽めの作業を行なうには、十分なパフォーマンスを持っており、他のネットブックと比べても性能面での遜色はない。
Inspiron Mini 10 | Inspiron Mini 9 | Endeavor Na01 mini | LaVie Light | |
CPU | Atom Z530(1.6GHz) | Atom N270(1.6GHz) | Atom N270(1.6GHz) | Atom N270(1.6GHz) |
メモリ | 1GB | 1GB | 1GB | 1GB |
ビデオチップ | US15W内蔵コア | Intel 945GSE内蔵コア | Intel 945GSE内蔵コア | Intel 945GSE内蔵コア |
PCMark05 | ||||
PCMarks | N/A | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 1469 | 1484 | 1472 | 1454 |
Memory Score | 2233 | 2358 | 2374 | 2348 |
Graphics Score | N/A | N/A | N/A | N/A |
HDD Score | 3819 | 2843 | 4335 | 4246 |
3DMark03 | ||||
1,024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks) | 計測不可 | N/A(1,024×600ドットでは628) | N/A(1,024×600ドットでは741) | N/A(1,024×600ドットでは720) |
CPU Score | N/A(1,024×576ドットでは121) | N/A(1,024×600ドットでは232) | N/A(1,024×600ドットでは245) | N/A(1,024×600ドットでは238) |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | ||||
HIGH | N/A | N/A | N/A | N/A |
LOW | 描画が乱れる | 1426 | 1466 | 1378 |
Inspiron Mini 10は、デルの3機種目のネットブックだけあり、Inspiron Mini 9やInspiron Mini 12で不満だった点が解消されており、完成度の高い製品となっている。特にキーボードの使い勝手はよく、ボディの質感も満足できる。1,366×768ドット液晶も選べるので、ネットブックは欲しいが、液晶解像度の低さが気になっていたという人も検討対象になるだろう。
(2009年 4月 13日)
[Text by 石井 英男]