元麻布春男の週刊PCホットライン

ディスプレイがAndroidタブレットになる「Lenovo IdeaPad U1」



 前回、2010年のCESで、最も野心的な製品発表を行なったPCメーカーの1つがLenovoであることは間違いない。一般的なクラムシエルタイプのノートPCのディスプレイ部を分離し、Linuxベースのタブレットとしても使えるようにした「IdeaPad U1」は、中でも特に野心的なプロダクトだった。しかし、あまりに野心的過ぎたのか、ついに2010年に製品として姿を現すことはなかった。

 今回、2011年のCESに、再び「IdeaPad U1」の姿があった。大きな変更点は、Windows PCのディスプレイとして使える以外に、分離してタブレット端末としても使えるディスプレイ部を駆動するOSがLenovo OS(Lenovoが独自に手を入れたLinux)から、Androidになったことだ。ほかにも、より堅牢性を高めたデザイン、CPUのアップデート(本体側をCore 2 Duoから第2世代Core i5に、ディスプレイ側をSnapdragon 1.3GHzに)など、改良が加えられている。

 また、昨年(2010年)展示されていたU1は、ディスプレイ部を取り外すと自動的にLinuxタブレットに、本体と合体させると自動的にPCディスプレイに切り替わっていたが、今年のモデルはディスプレイを本体に合体させた後、スイッチでモードを切り替える必要があるようだった。合体状態でもAndroidタブレットとして使えるように、ということなのだろうか。

IdeaPad U1のディスプレイ部。取り外して単体でAndroidタブレットとして使えるディスプレイを合体させたIdeaPad U1

 このIdeaPad U1は、今度こそ4月に1,200ドルで販売されるという。昨年筆者はLenovo OSとLenovo OSで利用するネットワークサービスの問題から日本国内での販売に疑問を呈したが、Androidベースになった今回は、日本国内で販売されるチャンスはかなりあると感じている。何とか国内販売にこぎつけて欲しいと思う。

 このIdeaPad U1以外にも、Lenovoのプライベートブース(会場に隣接するホテルのカフェを貸し切って設けられた展示スペース)には、いくつか興味深い新製品が見られた。その中からモバイルノートを中心にいくつか紹介することにしたい。

IdeaPad U260は、オレンジとブラウンの2色展開

 IdeaPad Uシリーズは、超低電圧版プロセッサ(Sandy Bridgeからはプロセッサー・ナンバー末尾が7のプロセッサ、ということになる)を採用したコンシューマ向けのモバイルPCだが、その一番新しいメンバーが「IdeaPad U260」だ。Core i7プロセッサと12.1型のHD解像度ディスプレイを組み合わせたこの新製品は、筐体にマグネシム合金を採用、18mmの薄さと1.38kgの重量を両立させている。筐体デザインは、それほど厚くない書籍を摸したもので、ほぼ厚みは一定、オレンジとブラウンという、ノートPCとして比較的珍しい2色での展開となる。

 このU260よりワンサイズ大きい13.3型HDディスプレイを採用した新製品は2機種、「IdeaPad V370」と「IdeaPad Z370」だ。IdeaPad V370は、シングルスピンドルのSMB(小・中規模ビジネス)向けのモバイルノートPC。最上位でCore i5プロセッサを搭載する。LenovoのSMB向けPCは、ThinkPadブランドですでに2種、ThinkPad Edge(今回の新製品からThinkPad Eシリーズとなる)と、ThinkPad SLシリーズがある。そこにこのIdeaPad Vシリーズが加わった。一番伸びしろが期待できる市場ということなのかもしれないが、1社で3ラインは多すぎるような気もする。基本的に日本の大和事業所が設計を受け持つThinkPadに対し、IdeaPadの設計を受け持つ北京もビジネスノートを手がけたい、ということなのだろうか。


同じ13型モデルでもSMB向けのIdeaPad V370は落ち着いた印象強烈な赤に身を包んだIdeaPad Z370

 一方、IdeaPad Z370は、同じ13.3型HD液晶ベースでも、2スピンドル構成のコンシューマ向けモデル。IdeaPad Yシリーズの下位に位置づけられる。コンシューマ向けということで、筐体は赤や青(しかもかなり強烈)を含む、3色展開となっている。YシリーズとZシリーズに共通する特徴の1つは、ワンタッチでPCのセッティングを変更するユーティリティ。画面の表示モードやシステムのサーマル/ファンを簡単に用途に合わせて設定することができる。例えば、夜なのでファンの音を抑える、映画向きに画面のコントラストや明るさを最適化する、といったことが簡単にできる。

AtomベースのスレートPC、IdeaPad Slate

 以上のような一般的なノートPCに対し、異彩を放つのが「IdeaPad Slate」だ。IntelプロセッサとWindows 7を採用したタブレットPCで、10.1型サイズのHD液晶を採用する。本機は、細かなスペックが明らかにされていないコンセプトモデルだが、持った感じは意外に軽い。Atomベースとのことなので、パフォーマンスに若干の懸念があるが、価格さえ適切ならイケルかもしれない。

 これら北京の繰り出してくる新製品に対し、ThinkPadブランドのモバイル向け新製品は2モデル。うち1つがThinkPad Edgeシリーズ改めThinkPad Eシリーズの「ThinkPad E220s」だ。12.5型というあまりなじみのないサイズのHD液晶を採用、重量3.5ポント(約1.59kg)となっている。金属のフレームで囲われた天板など、デザインはこれまでのEdgeシリーズを踏襲しており、キーボードもアイソレーションタイプが採用されている。

 もう1機種のモバイルノートPCは、「ThinkPad X120e」。型番で分かるように、ThinkPad X100eの後継モデルで、AMDのBrazosプラットフォーム(AMDデュアルコアプロセッサE-350)を採用する。引き続きIntel製の無線LAN/WiMAXモジュールも提供される見込みだ。


ThinkPad Edige改めThinkPad EシリーズのThinkPad E220s。12型は従来のEdgeにはなかったディスプレイサイズThinkPad X120eのロゴ
Lenovo Enhanced Experience 2.0のロゴ

 こうした新製品の多くで共通して採用されているのが、「Lenovo Enhanced Experience 2.0」だ。従来もLenovo製のPCには、Windows 7の起動とシャットダウンを高速化するものとして、Enhanced Experienceが採用されていた。今回の新バージョンも、基本的にはやっていることは同じで、BIOSのチューニング、組込み順を含めたドライバの最適化などを地道に積み重ねているという。それにより、Windows 7の起動時間は速いマシンで6秒台、多くのマシンで10秒以内に高速化されている。

 このEnhanced Experience 2.0の発表に合わせ、Lenovoではあるチャレンジを実施している。それは、Enhanced Experience 2.0を搭載したLenovo製PCより高速にWindows 7が起動するシステムのユーザーに1万ドルを差し上げるというもの。言い換えれば、それほど自信があるということだ。