元麻布春男の週刊PCホットライン

ディスプレイが取り外せるユニークな「Lenovo IdeaPad U1」



 今回のCESでは、Intelが新しいCore i7/i5/i3プロセッサの発表を行なったこともあり、多くのPCベンダーが新製品の発表をしている。その中でも20種類の新製品(もちろんIntel以外のプロセッサを採用した製品も含む)を発表したLenovoは、発表点数の多いベンダの1つだろう。

 Lenovoが発表した新製品20点のブランド別の内訳は、IdeaPad(デスクトップのIdeaCenterを含む)が11種類、ThinkPadが9種類。中には国内での発売が未定のモデルもある。ここでは特に注目される機種をいくつか取り上げることにするが、これらの注目機種が国内発売されることを強く願っている。

 今回発表された新製品の中でも、最も革新的なデザインを持つのがIdeaPad U1だろう(写真1)。この写真を見ただけでは、本体エッジが丸い12型液晶のサブノートPC(シングルスピンドル)にしか見えない。ところが、この液晶を取り外すことが可能だ(写真2)。しかも、取り外した液晶は単体でマルチタッチをサポートした「端末」として利用できる(写真3)。もちろん残された本体は、外部ディスプレイを接続すればPCとして使い続けることが可能だ(写真4)。この分離型液晶ディスプレイを採用した本機を、Lenovoではハイブリッド・ノートブックと呼んでいる。

【写真1】IdeaPad U1。この写真からは一般的なサブノートPCにしか見えないが…… 【写真2】なんと液晶ディスプレイ部分が分離できる。
【写真3】分離したディスプレイは、マルチタッチに対応した端末として利用することが可能だ 【写真4】ディスプレイを奪われた? IdeaPad U1。この状態でもHDMI端子に外部ディスプレイを接続すれば、通常のPC(キーボード一体型デスクトップPC)として利用することができる

 こうした本体部とキーボード部が分離可能で、ディスプレイ側をタブレットPCとして利用可能な製品に、HP Compaq Tablet PC tc1000があった。が、ディスプレイ側のみにCPUを備えていたtc1000(キーボード部を単独では使えない)に対し、U1は本体(キーボード側)とディスプレイ側の両方にCPUを搭載していることが大きな違いだ。タネを明かしてしまえば、本体側にはIntelのCore 2 Duoを、ディスプレイ側にはARMプロセッサを備えている。本体側ではWindows 7、ディスプレイ側ではLinuxベースのLenovo OS(コードの90%以上をLenovoが新規に書いたものだという)が動作する。

 本体のIntelプロセッサとは別に、ARMアーキテクチャのプロセッサをディスプレイに搭載するというアイデアは、タブレットPCと同じ頃に登場したMicrosoftのスマートデイスプレイ(開発コード名Mira、覚えているだろうか?)に例があるが、解像度が低かったことや、スタンドアローンで使うというよりWindows CEベースのリモートデスクトップ端末だったことなどもあり、成功したとは言い難い。

 また、IntelのCore 2 DuoとARMプロセッサの両方を搭載したノートPCとしては、DellのLatitudeに例があるが、PCとしてスリープしている間も、メール等の受信やPIMの参照を行なおうということが狙いだった。U1のように、分離してそれぞれが独立して動作可能な製品はこれが初めてだろう。感心したのは、合体状態でPCとしてWindows上のIEで開いていたページ(ラスベガスのホテルThe Venetianのホームページ)が、ディスプレイを分離した後もLenovo OS上のFirefoxでそのまま表示されていたことだ。やるなぁという印象である。上に掲げた、何かしら似通った部分を備えた先人に比べ、U1ははるかに完成度が高いし、分離式ディスプレイという機構はマニア心をくすぐる。なお本機は6月1日から北米で販売が開始される予定で、予想価格は999ドルからということであった。

 ディスプレイを単体で動かす仕組みがあるのであれば、それだけ単体でも売れるのではないか、とは誰しもが考えることだろう。それを実現したのがLenovo Skylightだ。ARMアーキテクチャのSnapdragonプロセッサをベースに、U1のディスプレイ部が採用するのと同じLenovo OSを搭載する(このことからするとU1のディスプレイ部もSnapdragonかもしれない)。ARMベースのインターネット端末であるSmartBookと呼ばれるカテゴリーの製品で、こちらは4月からの販売を見込む。

 ハードウェアとしての特徴は、とにかく薄く、軽いこと。詳細なスペックはまだ発表されていないが、10型のワイドHD液晶ディスプレイを採用して2ポンド(約900g)以下。薄型であること、丸み(R)の大きなデザインと合わせ、女性がバッグに入れるのにも適している(写真5)。

 その一方で、マニアの心をつかむこともLenovoは忘れていない。写真6は動作中のSlylightだが、ヒンジ部の付け根に内蔵式の専用USBメモリ(StorageStick)スロットを備える。標準でSkylightには4GBのStorageStickが、本体内蔵の16GB NANDメモリと合わせて提供されるが、会場ではオプションとして16GBのStorageStickも見かけた。さらに2GBのオンラインストレージも提供されるという。

 このSkylightのソフトウェア環境だが、すでに述べたようにU1のディスプレイ部の内蔵OSと基本的に同一。スタートアップ画面(写真7)には6つのガジェットが表示されている。インターネットアプライアンスとしては、とても分かりやすい。

【写真5】大きくRをとったデザインのLenovo Skylight。この手はマネキンだが、片手で楽々と持てるように薄型で軽量なことは間違いない 【写真6】Skylightのヒンジ部には、折りたたみ式の専用USBメモリ内蔵機構を備える。「もうUSBメモリを忘れないで済むでしょ」とは担当マーケティングディレクターのNinis T Samuel氏。ここにSIMカードスロットもある(写真で小さくオレンジ色に見える部分)。本体左側のケーブルはHDMI出力だ 【写真7】Skylightのスタートアップ画面。6つのガジェットが表示される

 それは間違いのないことだが、同時にこの画面からいくつかの問題、特に日本人にとっての問題が浮かび上がってくる。それは、コンテンツの入手先として、音楽をAmazon、映画をCinemaNowから入手するよう想定されていることだ。SkylightやU1を日本で販売するには、Lenovo OSを日本語化するだけでなく、こうしたサービスを提供する会社を国内向けに確保しなければならない。それはLenovoだけで解決できることではないだけに、余計に両製品の日本における展開が心配になる。

 この問題をクリアできれば、Skylightもおもしろそうな製品だ。通信機能(インターネット接続)としてWiFiと3Gネットワークに対応しており、常時接続を前提とする。これもあり、米国でSkylightはAT&T Wirelessの独占販売になる見込みだ(本体価格499ドル〜、データ回線の契約別)。

 ネットワークの常時接続が前提だけに、画面上のガジェットが表示する内容は常時リフレッシュされ、わざわざ更新する必要はない。この状態で約10時間のバッテリ駆動が可能だという。また飛行機の機内などで、無線接続を停止し、その代わりに映画を再生させた場合でも約7.5時間のバッテリ駆動ができるという。4月に予定されている発売までにはFlash Player 10互換も達成できる予定だが、果たして日本での発売はどうだろうか。日本のLenovoは、旧IBMの面影を濃く残すだけに、こうしたコンシューマ系製品をあまり得意にしていない印象があるのも懸念されるところだ。

 さて2機種でだいぶスペースを使ってしまったので、残る注目機種を駆け足で見ていこう。IdeaCenter A300は、世界で最も薄い一体型デスクトップPCを標榜する(写真8)。モバイル向けのIntelプロセッサを採用し、厚みはわずか18.5mm。21.5型のLEDバックライトFull HDパネルを採用し、HDMI入力と出力の両方を備える。HDMI入力機能は、本体をシャットダウンすると利用できないが、スリープ中の利用なら可能だ(1つの電源スイッチで、すべての電源がオフになるという分かりやすさを優先したという)。Bluetooth対応のワイヤレスキーボードとマウスがバンドルされて、価格は699ドルからとなっている。

 IdeaPad S10-3Tは、この型番からも分かるようにAtomベースのNetbook。最大の特徴は型番末尾のTが示すタブレットPC機能で、コンバーチブル型のタブレットPCとして利用することが可能点にある(写真9)。ただし、ペン入力ではなくマルチタッチ機能での利用が想定されている点が2010年型というところだろうか。499ドルで1月にも発売になる見込みだ。

【写真8】IdeaCenter A300。液晶ディスプレイのベースに見える本体の上にキーボードを収納することも可能 【写真9】コンバーチブル型のタブレットPCであるIdeaPad S10-3T

 IdeaPad Y560は、Y550を発表されたばかりのCore i7ベースにリフレッシュした製品(写真10)。SSDとHDDの両方を搭載するハイブリッド型のストレージ(Rapid Drive)を採用し、システムやアプリケーションを高速に起動することができる。2スピンドルで外付けグラフィックスとしてRadeon HD 5470を選択することも可能など、メディア指向の強い製品となっている。価格は849ドルからで、3月から発売される予定だ。

 ThinkPadブランドの製品として目についたのは、国内では未発表の「ThinkPad Edge 13"」のIntelプロセッサ搭載モデル(CULV)と、ThinkPad Edgeの14型モデル(6月発売予定、549ドル〜)。14型モデルはAMD製プロセッサを採用する。同じくAMD製プロセッサを採用したThinkPad X100eは国内でも発表されたばかりだが、こちらは専用のスリングパック型のPCバッグ(片ひもタイプ)とともに展示されていた(写真11)。

【写真10】2スピンドルノートのIdeaPad Y560 【写真11】ThinkPad X100e専用のスリングパック型PCバッグ

 従来のThinkPadがどちらかといえば大企業/政府向けであったのに対し、ThinPad Edge、ThinkPad X100eとも、中小規模の企業をターゲットにしている。現在の不況下にあって、このジャンルが最も成長力があると考えていることの証だ。世界各国の政府の政策として、このセグメントに対する支援が最も手厚いことがその理由なのだという。

 というわけでLenovoの注目製品を紹介してみたが、Ideaブランドのアグレッシブさが目立つ。これも不況下にあって、個人向け市場が上向きになっていることが理由なのだろうが、U1などを見ているとまだPCでやれることは残っていると強く感じる。国内PCベンダーからも、ユニークな新製品の発表を期待したいところだ。