元麻布春男の週刊PCホットライン

IDFで明らかにされた「Sandy Bridge」の概要



1人でメインストリームプロセッサすべてを担当したダディ・パルムッター主席副社長

 今回のIDFで、CPUなどのハードウェア製品に関する基調講演は2本。初日、オッテリーニCEOに続いて登壇したダディ・パルムッター主席副社長と、2日目に登壇したダグ・デイビス副社長によるものだ。デイビス副社長が、Atomプロセッサ全般をカバーしたのに対し、パルムッター主席副社長が第2世代Coreプロセッサ(Sandy Bridge)を受け持つという配分だった。

 しかし、よく考えてみれば、パルムッター主席副社長がカバーする範囲は、モバイルPC向けプロセッサ、デスクトップPC向けプロセッサ、サーバー向けプロセッサにまたがる。オッテリーニCEOの言う、Transform前の「半導体を売っていたIntel」のIDFなら、基調講演3本分の範囲に相当する。人間の体力には限界があるから、1人が受け持つ基調講演の長さはそう大きくは変えられない。乱暴な言い方をすれば、メインストリームのプロセッサに費やされる基調講演スピーチの量は、“最盛期”の3分の1になったことになる。現在は、以前と比べてデスクトップPC向けプロセッサとノートPC向けプロセッサの差異が小さくなっており、その分は時間の減少を補えるわけだが、それでも絶対的な情報量が減ってしまうのはやむを得ないことだろう。

 という時間的な制約もあって、パルムッター主席副社長の基調講演は、コンシューマクライアントに偏っていた印象が強い。サーバー向けプロセッサに関連したプレゼンテーションはわずかに2枚である。また、クライアントPC向けのSandy Bridgeの紹介にしても、概念的なものが主体で、ロードマップなど製品に近い情報、プラットフォームに関連した情報、クロックやベンチマークなどスペックに関連した数字による情報は、ほとんど含まれていない。

【図1】クライアントPC向けSandy Bridgeの概要

 IDF全体を見渡せば、こうした製品に関する情報は、テクニカルセッション、展示パビリオン、ショウケースなどでいくらか見つけることができるのだが、散在していることもあって、インパクトに欠ける感は否めない。おそらく一番まとまった情報は、Next Generation Intel Microarchitecture Codename Sandy Bridgeと呼ばれるトラックに含まれる、4本のテクニカルセッションだが、アーキテクチャの詳細解説が中心。目玉はCPUコア、L3キャッシュ(Last Level Cache)、グラフィックスコア、メモリコントローラーを結ぶリングバスアーキテクチャ、というところだろう(図1)。

 もう1つ、基調講演からサーバー分が少なくなった理由を挙げるとすれば、このSandy Bridgeがモバイル向けのプロセッサの開発に従事してきた、Israel Design Centerの手によるものであるからだろう。上述したテクニカルセッション等でスピーカーを務めたのは、Senior Principal Engineerの肩書きを持ち、Sandy Bridgeのインターコネクトとインテグレーション(Uncore)を担当したOpher Kahn氏、同じくSenior Principal Engineerの肩書きを持ち、AVXの定義やインプリメンテーションを担当したBob Valentine氏、Intelフェローでグラフィックスを担当したThomas Piazza氏、Senior Principal EngineerでSandy Bridgeのグラフィックス機能中のメディア機能を担当したHan Jiang氏、Staff Platform Applications Engineerの肩書きでQPIを担当するBob Maddox氏、そしてSenior Software Engineerでソフトウェアの最適化について話したPallavi Mehrotra氏の計6名だったが、プロセッサコアに近い部分の仕事をしたKahn氏とValentine氏はIsrael Design Centerに所属する。

【図2】ダディ・パルムッター主席副社長が示したXeonプロセッサのロードマップ

 図2は、パルムッター主席副社長の基調講演にあった、サーバー向けプレゼンテーションの1枚で、Xeonプロセッサのロードマップを示したもの。Entry 1S(シングルソケット)の項にあるSandy Bridge-H2は、図1で示したクライアントPC向けと同じアーキテクチャを採用し、現行のLynnfield/Clarkdaleベースのサーバー向けプロセッサ(Xeon X3400番台)の後継と目される。市場投入のタイミングも、クライアントPC向けプロセッサとほぼ同じで、チップセットも同じ(Intel 6xシリーズ)だ。言い換えれば、サーバー向けの本命プロセッサはSandy Bridge-EPで、それは2011年後半まで登場しない。

 このSandy Bridge-EPがどのようなプロセッサになるかだが、組み合わせられるチップセットはPatsburg、プラットフォームとしてはRomley(Romley-EP)と呼ばれる。図2より詳細なロードマップが図3となる。この図で興味深いポイントは、4ソケットサーバー向けプロセッサであるSandy Bridge-EXと2ソケット対応のSandy Bridge-EPでチップセットが共通であることだ。現行のXeon 7500番台(Nehalem-EX)のチップセットは、Itaniumと共通化(Intel 7500チップセット)されており、それは次世代のWestmere-EXにも継承される。このWestmere-EXより下位にSandy Bridge-EXが位置づけられ、Westemere-EXの後継となっていない。

【図3】より詳細なロードマップ 【図4】2ソケットサーバー向けRomley-EPプラットフォーム

 図4はこのRomelyプラットフォームの概要に関するものだが、PCI Expressの接続ポイントが、現行Xeon 5600番台のチップセットから、プロセッサに移っている。これに伴い、QPIはプロセッサ間接続用だけとなり、チップセット(Patsburg)との接続には、現行のDMI(10Gbps)より帯域を拡張したものであろうDMI 2.0が採用される。QPIも、帯域とパワーマネージメントを改善したQPI 1.1となっている。おそらく4ソケットのSandy Bridge-EXにおいても、この原則(PCI Expressの接続ポイントはCPUで、チップセットとの接続はDMI 2.0)は守られるだろう。Patsburgのフィーチャーとしては、6GbpsのSATAに加えて、6GbpsのSASを標準サポートすることが挙げられる。またこうした変更により、必然的にSandy Bridge-EPは、現行のXeon 5600番台とピン非互換となる。クライアントPC向けも、グラフィックスの統合などにより、ピン配置が大きく換わっており、ピン互換性は持たないから、Sandy Bridge世代はすべてピン非互換ということになる。

 PCI Expressの統合、チップセット接続にDMIを採用など、Sandy Bridge-EPの外部インターフェイスは、クライアントに近づいているように見えるが、内蔵グラフィックスを持たないこと、8コア(Hyper-Threadingで16スレッド対応)であること、メモリとしてLR-DIMM(Load Reduced DIMM)を採用するなど、プロセッサコア以外の部分(Uncore)がクライアントPC向けとは大きく異なる。このUncore部に関しては、サーバー事業部(オレゴン)で独自に開発しているようだ。おそらくこれ(独自のUncore開発とその検証)も、Sandy Bridge-EPの提供時期が、クライアント向けよりも遅くなる理由の1つだろう。

 今回発表されたクライアントPC向けのSandy Bridgeは、すべてグラフィックス統合で、4コアもしくは2コアとされる。このスペックは、Lynnfield/Clarksfield(4コア)、あるいはClarkdale/Arrandale(2コア)の置き換えには十分だが、コア性能の向上を踏まえても6コアのCore i7-980X(Gulftown)にはおそらく性能で及ばない。その後継をどうするのかについてパルムッター主席副社長に質問してみたところ、将来提供する可能性を示唆する(明言しない)回答だった。可能性として、Sandy Bridge-EPと同じタイミングで、クライアント向けExtreme Editionの更新というのがあるかもしれない。

【図5】クライアントPCおよび1ソケットサーバー/ワークステーションに使われるIntel6シリーズチップセット

 さて、クライアントPC向けのSandy Bridgeだが、新たに6シリーズのチップセットが登場する。そのI/O機能として挙げられているのは、SATA Gen3 at 6Gbps、PCI Express Gen2 at 5GT/s、最大14のUSB 2.0ポート、ディスプレイ出力の強化(デジタル出力同時2系統まで。ただし内蔵グラフィックスはPCI Expressスロットのグラフィックスカードとマルチディスプレイによる共存可能)といった点だ(図5)。

 やはり事前のウワサ通り、SATA 6.0Gbpsは採用されたが、USB 3.0の標準搭載は見送られている。会場にはいくつか6シリーズのチップセットを用いたマザーボードがあったが、USB 3.0を採用したマザーボードでは、すべてNECロゴの入ったUSB 3.0ホストコントローラ(現ルネサスエレクトロニクス製)が採用されていた。ちなみにクライアントPC向けでは、DMI 2.0を明記したプレゼンテーションはないようだ。

【図6】Sandy BridgeによるBlu-ray 3Dの再生。ローンチ時点で内蔵液晶ディスプレイによるフレームシーケンシャル方式による再生は標準サポートされない。

 またSandy Bridgeの内蔵グラフィックスによるBlu-ray 3Dのサポートだが、とりあえずはHDMI 1.4経由で外部TV等へ出力する形となる(図6)。会場ではノートPCを使ったデモが行なわれていたが、ノートPCの内蔵液晶ディスプレイでは3D表示はできていなかった。説明員の話では、性能的にはSandy Bridgeの内蔵グラフィックスで、120HzのフレームシーケンシャルによるBlu-ray 3D表示は可能なハズだが、Sandy Bridgeの内蔵グラフィックスに対応した液晶パネル(120Hz)やシャッターメガネ、液晶シャッター同期用のトランスミッタといったエコシステムが整わないのだという。ユーザーの多くが求めるのは、とりあえずBlu-ray 3Dを見ることができるオールインワンの再生環境としての3D対応ノートPCだろうから、これでは期待に応えられない。エコシステムを整備したプラットフォームのリフレッシュを期待したいところだ。

Intel製のH67チップセット採用のMini-ITXマザーボード。USB 3.0対応で、マザーボードの左下隅にルネサス製のUSB 3.0ホストコントローラが実装されている ショーケースに展示されていたQ67チップセットベースのIntel製Mini-ITXマザーボード。CPUを保持するバックプレードの左上にルネサス製のUSB 3.0ホストコントローラが貼られていた