元麻布春男の週刊PCホットライン

ヴァレンティーノ・ロッシの名を冠した
Gatewayのライトノート「VR46-H22B」を試す



VR46-H22B

 モータースポーツがそれほど盛んではない日本において、二輪のレースは決してメジャーな存在ではない。ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキと、世界に名だたるメーカーを擁しながらの現状には、ちょっと淋しいものがある。

 それはさておき世界、特にヨーロッパ、中でもスペインやイタリアといったラテン系の国々で、二輪のレースは圧倒的な人気がある。その頂点、ロードレース世界選手権「MotoGP」に君臨するのがヴァレンティーノ・ロッシだ。

 '96年にMotoGP 125ccクラスでデビューして以来、125ccクラス、250ccクラス(当時)のワールドチャンピオンを経て、当時の最高峰500ccクラス(2ストローク)を制覇、規定が変わり4ストロークとなったMotoGP最高峰クラスの4連覇(500ccから数えて5連覇)を含む、最高峰クラス計7度の世界チャンピオンに輝く、イタリア・モータースポーツ界最大のスーパースターである。特にMotoGPクラス4連覇に際しては、当時、無敵と言われ、自身が2連覇を果たしたホンダのエースライダーの座を捨てて、ヤマハに移籍した上でさらに連覇を達成したことで、高い評価を受けた。

 といっても、決して気むずかしい人物ではなく、むしろその真逆。若い頃は、仮装してウイニングランを行なうなど、茶目っ気タップリの憎めないヤツだ。デビューしたての頃は、ひょろ長い背格好で、小型の125ccバイクに、器用に長い手足を折りたたんでライディングしていたのが印象に残る。まだ日本の景気もそれほど悪くなかった時代で、坂田和人、上田昇、青木治親といった日本人ライダーと、激しいバトルを繰り広げていた。それがあれよあれよという間に頂点へと登り詰め、今もその頂点に君臨し続けている。今年もすでに第1戦のカタールGPで、幸運に助けられた面もあるものの、見事に優勝を飾った。

 お父さんも二輪のライダーで、デビュー当時は二世ライダー的なことも言われたが、今では誰も話題にさえしない。話題になるのは、果たして史上最強のライダーなのかどうか、ということだけで、おそらくそうだろう、というのがコンセンサスではないかと思う(ライバルの不在を指摘する人もいるが、それは本人の責任ではない)。オフには、四輪の耐久レースやラリーにも参戦、たびたび「ごほうび」のテスト走行を行なっているF1のフェラーリチームからも、レギュラードライバーとして熱心な誘いを受けていると言われている(実際、過去に1度正式に断ったことがある)。


●ヴァレンティーノ・ロッシの名前を冠し「VR46-H22B」

 そんなヴァレンティーノ・ロッシの名前を冠したノートPCが発売されると聞いて、早速借用してみることにした。発売したのはAcerグループのGatewayだ。

パッケージにもアルド・ドルディ氏のデザインを採用するパッケージ裏面にはヴァレンティーノ・ロッシ氏の写真が印刷されているパッケージを開けたところ

 Acerと言えば、F1のフェラーリチームとのコラボレーションノートPCを発売していることでも知られる。モータースポーツとの浅からぬ縁を感じさせるが、それはおそらくAcerの現社長兼CEOがイタリア人のGianfranco Lanci氏であることと無関係ではないだろう。実際、同じAcerグループのPackard Bellは、2009年から2シーズンにわたって、ロッシが所属するFiat Yamahaチーム(ヤマハのワークスチーム)のスポンサーとなっている。同ブランドを展開しているヨーロッパを中心とする地域では、ここで紹介する「ヴァレンティーノ・ロッシ」モデルのノートPC「VR46-H22B」をPackard Bellブランドで発売中だ。もちろん型番のVR46は、ヴァレンティーノ・ロッシ(Valentino Rossi)の頭文字と、ロッシのゼッケンである46を組み合わせたものである。

 というわけでこのVR46-H22Bだが、CPUにIntelのCeleron SU2300(デュアルコア、動作クロック1.2GHz)を採用した、いわゆるCULVノートだ。同等のスペックを持つCULVノートは、日本エイサー扱いの製品だけでも、EC1400-41(Gateway)、Aspire 1410(エイサー)、Aspire one 752(エイサー)とすでに3機種ある。本体サイズも同じであることから、四兄弟的な位置づけとなるのだろう。

 この四兄弟のうち、EC1400-41とAspire 1410の販売は事実上終了している。EC1400-41の後継がVR46-H22B、Aspire 1410の後継がAspire one 752と見ることができる。Gatewayブランドの製品は、国内ではケーズデンキと上新電機、2つの量販店での取り扱いとなっていることが多かったが、VR46-H22Bについては、この2カ所に加え、ソフマップ、ビックカメラ、ヨドバシカメラでも購入することができる。これが大きな違いだ。

 表1は、今回試用したVR46-H22Bの仕様をまとめたもので、メモリを除くと四兄弟でほぼ共通だ。他の3モデルがDDR2-667となっているのに対し、このVR46-H22BだけがDDR2-800になっている。実際、試用機でCPU-Zを使ってみたところ、メモリクロックはDDR2-800を示す399MHzとなっていた。DDR2-667とDDR2-800の性能差を体感できるとは思えないのだが、これもプレミアムということなのだろうか。

【表1】試用機の仕様
OSWindows 7 Home Premium 64bit
CPUCeleron SU2300(1.2GHz/1MB L2キャッシュ)
チップセットIntel GS45 Express
グラフィックスIntel GMA4500MHD (チップセット内蔵)
メモリ2GB DDR2-800(空きスロット1/最大4GB)
ディスプレイ11.6inch HD(1,366×768ドット)
HDD2.5inch SATA(250GB/5,400rpm)(MK2555GSX)
USBポート左側面×1、右側面×2
外部ディスプレイVGA+HDMI
Webカメラ30万画素
メモリカードスロット4 in 1(SDカード/XD/MMC/MS)
LANGigabit Ethernet(Atheros AR8131)
無線LANIntel WiFi Link 1000BGN(802.11b/g/n)
Bluetoothv2.1 + EDR
バッテリ6セル(公称6時間駆動)
サイズ(幅×奥行き×高さ)285×204×30mm
重量1.4kg(公称)

 それはともかく、この1点を除けば、ほかの3モデルと仕様はほぼ同じ。ネットブックに比べると、HDMIの標準装備やネットワークのGigabit Ethernet対応といった部分が明らかに上回る。試用機にはHDDとして東芝の「MK2555GSX」が使われていたが、後述のベンチマークを見ても分かるように、なかなか優秀なドライブのようだ。なお、重量については表2にまとめておいたが、ACアダプタの軽量さに対し、ケーブルの重さが気になる。持ち歩くユーザーは、サードパーティ製のケーブルやプラグを検討した方が良いだろう。

【表2】VR46-H22Bの重量
本体1,118g
バッテリ324g
ACアダプタ140g
ACケーブル171g

 さて、本機の最大の特徴は、こうした細かなスペックではなく、筐体のデザインにある。この派手なマーキングをデザインしたのは、ロッシのヘルメットデザインを手がけるアルド・ドルディ氏。ロッシは比較的頻繁にヘルメットのデザインを変えることで知られているが、最近はドルディ氏のデザインを愛用しているようだ。液晶ディスプレイの右上にも、ロッシのゼッケンである46が印されている。

 この筐体デザイン以外にも、壁紙やスクリーンセーバーがロッシをモチーフにしたものになっているのが本機の特徴だが、残念なのは素顔を見せたものが1枚もないこと。また、「ヴァレンティーノ・ロッシ」モデルという以上は、筐体にサインのプリントくらいは欲しかった。ロッシ・モデルという割にはプレミア感が少なめだが、価格の面でのプレミアも最小に抑えられている(本機の実売価格は通常モデルとほぼ同じ59,800円)ことを考えれば、やむを得ないのかもしれない。

VR46-H22BVR46-H22Bを象徴するのは、天板に描かれたアルド・ドルディ氏によるマーキングヴァレンティーノ・ロッシのライディングが描かれた壁紙
付属のACアダプタはコンパクトだが、電源ケーブルが太く、重い左側面のインターフェイスはミニD-Sub15ピン、HDMI、USB 2.0右側面のインターフェイスはGigabit Ethernet、USB 2.0×2、音声入出力、マルチカードリーダ
パッケージには、VR46と描かれたインナーバッグも含まれる

 さて、CULVノートとしてみた場合の本機だが、表1を見れば分かるように、特に変わった点はない。キーボードは一番右の1列(¥、[、])のキーが小さくなっているが、11.6型液晶モデルでは珍しいことではない。強いて珍しい部分を挙げれば、無線LANとBluetoothのオン/オフを行なうハードウェアスイッチが、それぞれ独立して用意されていることだろうか。

 本体底部には、HDDベイとメモリスロットが用意され、ネジを外すことでアクセス可能になっている。スペック表には、空きメモリスロットが1つあることが明記されているのだが、メモリスロットにアクセスするには、WARRANTY VOIDのシールを外さなければならない。つまり、ユーザーがメモリを増設するには、保証をフイにする覚悟が必要になるわけだ。また、本機ではリカバリディスクが付属せず、ユーザーが作成せねばならないが、それには外付けの光学ドライブが必須となる。

比較的キートップサイズが確保された日本語キーボードメモリベイやHDDは、保証シールで封印されている
本機のWindowsエクスペリエンスインデックス

 最後に性能だが、今回は手持ちのCULVノート(IdeaPad U350)と比較してみた。U350はシングルコアのCeleron 723(1.2GHz)搭載で、チップセットも下位のGS40となる。要は、クロックが同じでコア数が違うプロセッサということになる。

 その比較は歴然で、FINAL FANTASY XIオフィシャルベンチマークのようなシングルスレッドのものを除き、5割近い性能向上が見られる。上述したようにHDDの性能も優れているほか、メモリの性能も本機の方が良いようだ。実際、使っていても、不愉快なほど処理速度が低下する頻度が少ない、という印象を受けた。

【表3】ベンチマーク結果

VR46-H22BIdeaPad U350
(Celron 723/GS40)
CrystalMark 2004R3
Mark4285531076
ALU104946077
FPU97445186
MEM90187198
HDD74596498
GDI46184391
D2D579713
OGL9431013
PCMark Vantage v 1.0.2.0(x86)
PCMark21421484
Memories14651118
TV and Movies1924851
Gaming1280883
Music29072041
Communications21061393
Productivity19461564
HDD32472483
PCMark Vantage v 1.0.2.0(x64)
PCMark23961600
Memories15331144
TV and Movies1894857
Gaming1369973
Music29932093
Communications25431607
Productivity19921772
HDD32402446
FINAL FANTASY XI for Windows オフィシャルベンチマーク
Low17731769
High12331229

 また、U350ではちょっと厳しいYouTubeのHD動画も、本機では問題なく再生可能だった。Blu-ray Discの再生も、映画等、一般的なタイトルの多くは再生できる。しかし、タイトルによっては音声が間に合わず途切れたり、音声が追いつくのを待つことで、映像再生が破綻する例も見られた。こうした問題は、すべてフルスクリーン再生に生じたもので、ウィンドウ再生(縮小再生)に切り替えるとほぼ解消する。

 内蔵する冷却ファンは、アイドル時は停止しているが、Webブラウザの利用等でも、比較的すぐに回り出す。音量は平均的な大きさだと思うが、静音を求めるユーザーは、店頭で確認した方が良いだろう(周囲がうるさい店頭は、このようなテストに不向きではあるが)。

 このVR46-H22Bに、ヴァレンティーノ・ロッシにちなんだ特別な何かを求めると、物足りなく感じるかもしれない。ファンであれば、プロセッサもCore 2 Duoにアップグレードして、もっとプレミアムな内容を、と期待するだろうが、それを欲するユーザーは日本にはあまり多くないハズだ。それでも、持ち歩き用に人とは少し違ったノートPCが欲しいユーザー、さらにはモータースポーツに興味があるというのであれば、VR46-H22Bを選ぶのは悪くない。通常デザインモデルに対し価格はほとんど変わらないし、効果のほどはともかく、メモリが少しだけ高速になっているからだ。