■平澤寿康の周辺機器レビュー■
「Entry Storage System SS4200-E」 |
前回は、Intelのストレージサーバーキット「Entry Storage System SS4200-E」の、基本的な機能などを紹介したが、今回はNASの枠を超えた使い方を見ていくことにしよう。
●ビデオカードやキーボード・マウスを接続すれば一般的なPC相当に
Intelの「Entry Storage System SS4200-E」(以下、SS4200-E)は、前回紹介したように、基本的にはストレージサーバーキットだが、内部のハードウェアは限りなく一般的なPCに近いものとなっている。もちろん、搭載されているマザーボードはNASとして必要のない機能(映像出力やサウンド機能など)は搭載されておらず、そのままではPC相当として利用することはできない。
ただ、マザーボードを見ると、PCI Express x1コネクタが用意されており、そちらが利用できれば、PC相当として利用することもかなり現実的となるはず。そして、実はSS4200-Eには、PCI Express x1-x16変換アダプタが付属しているのだ。NASとしてのみの利用しか考慮されていなければ、こういったアダプタを付属する必要はない。あえてこの変換アダプタが付属しているということは、IntelもNAS以外の利用を想定しているからだ。事実、IntelはSS4200-E向けにWindows Home Server用のデバイスドライバを配布している。
では、SS4200-EにWindows Home Serverをインストールするにはどうすればいいのか。その方法を順に紹介していこう。
マザーボードに映像出力はないが、PCI Express X1コネクタが用意されている | ご丁寧にも、PCI Express x1-x16変換アダプタも付属している。これは、“試せ”と言っているようなものか |
●ビデオカード、USB接続のDVDドライブとキーボード、マウスを接続
まず、ハード面の準備から。Windows Home Serverをインストールするには、インストールディスクを利用するための光学式ドライブ、操作のためのキーボードとマウスの接続とともに、インストールの状況を表示する映像出力機能が必須となる。光学式ドライブやキーボード、マウスは、USB接続のものを用意して接続すれば問題ない。また、光学式ドライブは、SATA接続のものを用意し、マザーボードのSATAコネクタに接続してもいいだろう。
では、映像出力はどうするのか。これも実は簡単に解決する。そのカギとなるのが付属のPCI Express x1-x16変換アダプタだ。PCI Express x16対応の一般的なビデオカードを、この変換アダプタを利用して、マザーボード上のPCI Express x1コネクタに取り付け、ディスプレイを接続すればいいわけだ。
今回筆者は、USB接続の光学式ドライブとキーボード、マウス、Radeon HD 2400 Pro搭載のビデオカードを用意し利用した。
次に、マザーボードのIDEコネクタに取り付けられているフラッシュメモリドライブを取り外す。このフラッシュメモリドライブは、Windows Home Serverでは活用できないうえ、NAS OSがインストールされているため、いつでも標準のNAS機能に戻せるよう、外して保管しておいたほうがいいだろう。
メインメモリは、Windows Home Serverの最小システム要件が512MBということから、標準で搭載されている512MBのままで問題ない。とはいえ、できれば1GBまたは2GBモジュールを用意して交換しておきたいところだ。今回は、1GBのPC2-6400 DDR2 SDRAMに交換して試すことにした。
あとは、用意した機材と、Windows Home Serverインストール用のHDDを接続すれば、ハードウェアの準備は完了となる。
【編集部注】1月13日時点で、このPCI Express x1-x16変換アダプタは製品版には付属しないことが判明しました。
●あらかじめドライバをダウンロードしておく
Intelは、SS4200-E向けのWindows Home Server用ドライバを公式に配布しているので、あらかじめ全てダウンロードしておこう |
ハードウェアの準備が完了したら、次にWindows Home Server用のドライバをダウンロードする。SS4200-E向けのWindows Home Server用ドライバは、Intelのホームページの「ダウンロード・センター」から入手可能。ここに掲載されているドライバを、別のPCを利用して全てダウンロードする。ダウンロードしたドライバは、SS4200-Eで利用できるよう、USBメモリなどに転送しておく。
ちなみに、ビデオカードは、Windows Home Serverインストール後に外してしまうため、利用するビデオカードのドライバは用意しなくていい。
●BIOS設定は、基本的には変更の必要なし
用意した機材を接続し、ドライバのダウンロードが完了したら、SS4200-Eの電源を投入することになるが、基本的にビデオカードは固定せずに利用していることもあり、ビデオカードがケースなどの金属部分に触れてショートなどを起こさないようにするとともに、通電後はビデオカードなどに一切触れることのないよう注意する必要がある。SS4200-EでWindows Home Serverの動作がサポートされているとはいっても、このようなインストール作業が保証されているわけはなく、全て自己責任で行なう必要がある。当然、トラブルが発生してハードがダメージを負ったとしても、保証は受けられないので、それこそ細心の注意を払って取り扱うようにしよう。
さて、電源を投入すると、一般的なPCと同じように、ディスプレイに起動メニューが表示されるはずだ。ここで、キーボードの[Delete]キーを押せば、BIOSセットアップメニューに切り替わる。BIOSセットアップメニューが表示されれば、接続したHDDや光学式ドライブが認識されているかどうかも確認できるので、ここでハードウェアの最終確認を行なう。
ハードウェアの接続などに問題のないことが確認できたら、BIOS設定をチェックする。基本的には、標準設定のままでWindows Home Serverのインストールを進められるが、一応一通りBIOS設定をチェックしておこう。
ちなみに、SATAポートは、標準でAHCIモードに設定されているが、Windows Home Serverは、標準でAHCIモードに対応しておらず、インストール時に、あらかじめダウンロードしたドライバに含まれる「SATA AHCI “F6” installation driver for Windows」を読み込ませる必要がある。もし、この作業が面倒というのであれば、SATAポートの動作モードをIDEモードに変更すればいい。
●Windows Home Serverのインストール手順は、通常のPCと同じ
これ以降の、Windows Home Serverのインストール作業は、通常のPCでWindows Home Serverをインストールする場合と全く変わらない。詳しいインストール手順は省くが、Windows Home Serverのインストールは、全く問題なく行なえた。
Windows Home Serverのインストールが終了したら、あらかじめダウンロードしておいたドライバを導入するとともに、Windows Updateなどのアップデート作業を行なう。以上が完了すれば、インストール作業は終了となる。
インストール作業が終了したら、SS4200-Eをシャットダウンして、ビデオカードや光学式ドライブ、キーボード・マウスを取り外し、サイドパネルを元に戻せば、全ての作業は完了だ。これ以降の、Windows Home Serverの設定などは、クライアントPCからリモートデスクトップなどを利用して行なえばいい。
ところで、Windows Home Serverのインストールは問題なく行なえたが、これだけではつまらないので、試しにWindows 7もインストールしてみた。今回は、Windows Home Serverをインストールした場合とほぼ同じ環境で試したが、メインメモリだけは2GBモジュールに交換して行なった。
結果は、インストール自体は大きな問題もなく行なえた。とはいえ、ビデオカードを固定できないため、使えるかというと、全く使えないと言わざるを得ない。SS4200-EにわざわざWindows 7などをインストールして、クライアントPCとして利用することは、想定している利用方法を大きく逸脱しているし、そういった使い方をしたいなら、通常のPCを用意した方がいい。
今回は、Windows Home Serverを利用して試してみたが、搭載されているデバイスはわかっているため、それぞれのデバイスドライバが用意できれば、Windows Home Serverだけでなく、様々なサーバOSをインストールし利用できるはずだ。標準のNAS OSを利用するだけでなく、Windows Home Serverをはじめとして、自由にOSを選択して利用できるという点は、他のNASキットにはあまり見られない特徴であり、魅力的な部分でもある。
現時点では、市場に潤沢に供給されていないようで、販売自体もかなり少ないようだが、価格も比較的安価な点もあわせ、手軽に利用できるNASキットとして、またWindows Home Serverのベースユニットとして、十分にオススメできる製品だ。
(2010年 1月 6日)