大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

富士通、サーバーの生産拠点「富士通アイソテック」を公開
~2010年度にサーバー国内生産20万台を目指す



 富士通株式会社は、同社サーバー製品の生産拠点である福島県伊達市の富士通アイソテックを報道関係者に公開した。

 富士通アイソテックの代表取締役社長である増田実夫氏は、「2010年度には国内生産20万台を目指す。今、そのための生産革新を進めている。台湾、中国を凌駕するモノづくりの再構築、従業員の製造プロフェッショナルとしての発想および意識の改革を通じて、世界トップレベルの製造会社を実現する」と意気込む。

 富士通アイソテックのサーバー生産への取り組みを見た。

福島県伊達市にある富士通アイソテック富士通アイソテックの増田実夫社長
富士通アイソテックで生産されているサーバー製品であるPRIMERGY富士通アイソテックで生産される静音ラック。富士通アイソテックの独自企画製品だ

●サーバーとデスクトップPCの生産拠点

 富士通アイソテックは、'57年に、富士通信機製造(現・富士通)と黒沢商店が共同出資会社として、黒沢通信工業を、大田区蒲田に設立したのが始まりだ。印刷電信機、電子計算機用端末機の開発および製造でスタート。その後、東京都稲城市南多摩に本社を移転し、通信機器の製造を開始。'75年には、福島県伊達市に生産拠点を移転して、プリンタの生産を開始。'85年に現社名へと変更し、'94年から個人向けデスクトップPCの生産開始。'99年には企業向けデスクトップPC、2001年からはサーバー「PRIMERGYシリーズ」の生産を開始していた。2002年には個人向けPCの修理も開始。2003年には、本社機能も福島県伊達市に移転した。

 富士通アイソテックの敷地面積は79,800平方m、延床面積は43,851平方m。802人の従業員が勤務し、さらに今年9月時点では361人の請負・派遣社員が勤務している。

●生産効率の向上によって生産数量を倍増に

 2008年度実績では、サーバーの生産台数は年間8万台、2009年度の計画は12万台。デスクトップPCでは2008年度は年間91万台の生産、2009年度は86万台の生産見通しとなっている。

 2003年度から独自の生産革新活動を開始したが、2005年5月からトヨタ生産方式の導入により、整流化、標準作業化、1個流しといった体制を構築。これらの体制をベースにして、20万台体制への再構築を開始している。

 「2007年度から2008年度までは正確な流れをつくることを目指してきたが、2008年度から2009年度にかけては、強い流れづくりを目指し、生産ラインをレベルアップをさせてきた。ラインの流れ分岐したり、合流したりといった形は仕掛かり品を増やし、効率的ではないため、一本で流れるラインを作り、さらに異機種製造が可能な混流化を実現した。個別最適の考え方ではなく、入荷から部品倉庫、製造に揃え、出荷に至るまでの全体最適を実現することで、リードタイムの短縮、在庫削減、原価低減などに結びつけた」という。

 従来のサーバーラインでは、1ライン当たり、1日75台のサーバーの生産が可能だったが、これを1日150台の生産が可能なラインへと改善を図っている。

 2008年度実績で8万台だった生産能力を、2010年度に20万台へと倍増以上にする基本的な考え方は、このラインあたりの生産量を倍増するところにある。

 「これまでは28時間、日数でいえば4日間で生産していたものを、出荷から梱包の工程で3時間減、ライン外で行なっていた作業をインライン化することで12時間減、試験における手作業を自働化することで2時間減とし、合計で17時間減となった。これにより、リードタイムは11時間となり、製造日数は2日間となった。また、タクトタイムは、従来の6分から3分へと短縮し、製品棚、部品棚の位置変更などによる歩行距離の削減といった組立作業におけるムダどりの効果で組立工程では6人から5人へと1人削減、試験の自働化でも1人削減することができ、ライン全体で従来は12人だったものを10人体制とした。これにより、生産ラインそのものを6ラインから4ラインへと削減しながらも、12万台への増産体制を確保できた」という。

 現在稼働している4ラインのうち、3本が新ライン。1ラインは従来の日産75台の生産ラインが残っているが、これも需要動向などを見ながら新ライン化する考えだ。また 年明けにかけて、さらに1本新ラインを稼働させるという。

 日産150台のラインは、従来の日産75台ラインの48mに比べて、54mとやや長くなっているが、「本来ならば生産量を2倍にすれば、ラインの長さは2倍になるという単純計算が成り立つ。2倍の96mから逆算すれば、42m減という計算になる」というわけだ。

 また、ソフトのインストール工程および試験工程での削減が大きく、高温と常温に分かれていた2つの工程の環境を一本化。さらに、高温ランニングテスト用の製品収納棚を、従来の2段から3段に増やし、1台あたりのスペース幅を1mから70cmへと縮小することで、6台しか設置できなかったスペースに9台を収納。50mあった試験ラインおよびインストールラインを18mも短くすることができたという。

 2008年度には、スペースが1,940平方m、ライン数6本、生産能力が日産440台、ライン人員が47人だったものが、2009年度の12万台体制では、1,370平方m、4ライン、日産600台、49人体制へと移行。さらにこれが、2010年度の20万台体制では、1,940平方m、6ライン、日産900台、73人体制となるという。

 サーバーの生産を行なっているのが、富士通アイソテックの第5組立棟の1階である。その様子を写真で見てみよう。

サーバーが生産されている第5組立棟サーバーは1階で、PCが2階で生産されるキッティングの工程。ケースが包まれたダンボールを開梱する
ケースは一カ所に置かれており、その他の部材は左手奥側にある開梱されたケースは台車に乗せられる150台/日の組み立てが可能なサーバー生産ライン
空になった台車は自動的にラインの最初に戻る空になった台車をラインの先頭にする人がキッティング工程に戻す代わりに、キッティングで部材がワンセットされた台車を搬入
部品が乗った台車を組み立てラインの先頭に組み込む組み込んだ時点で情報を登録1つのサーバーに2つの部品ケース。上側のケースが組立ラインと同じ速度で移動する
製品ごとに異なる部品もこのケース内にすべて収納される3分間のタクトタイムで移動する。色分けされている部分が作業者1人のスペース1個流しを実現している生産ライン。さまざまなサーバーが流れている
HDDを組み込んでいる様子共通部品については、作業者の後方から投入するネジや電動ドライバーなどが用意されているステーション。ラインから出る袋などのゴミもここに捨てる
稼動式となっているのは、進行の遅れを取り戻すためにヘルプに入る人も自由に使えるようにしているため組みあがったサーバーを、インストール工程用の台車に乗せかえる左が組み立て工程。すべてが空になった台車は、組み立て工程の裏をとって、ラインの最初に戻る
組み立てられたサーバーはインストール工程に投入されるソフトウェアのインストール工程の様子インストール工程の次は高温ランニング試験。収納箱を3段としてスペースの効率的を図った
今はさまざまな高さの台車を用意して、次の工程である梱包ラインへの投入部を上下させる仕組み。今後は高温ランニング試験の棚そのものを上下するように改良する梱包ライン。まずはマニュアルなどの書類を添付梱包ラインの様子。このあと出荷される
手前が150台/日の組立ラインの最終梱包工程。右奥が月75台の既存ライン。新ラインはちょうど梱包工程分ぐらい長い工場内に設置されたORT装置。3週間に渡り高温および低温、高湿などの環境でテスト。1.5年後の経年劣化を測定できる

●ITインフラデリバリーサービスのインフラ工場を設置

 また、富士通では、ITインフラデリバリーサービスを実施しているが、富士通アイソテックでは、それを実現するインフラ工場を設置している。

 ITインフラデリバリーサービスは、富士通が持つ構築実績ノウハウ、製造工場品質管理ノウハウ、生産ノウハウを活用することで、顧客にサーバーを納入する前に、ブレードやストレージをラックへ組み込むほか、ケーブリング、RAID構築、ソフトウェアインストール、顧客ごとの各種設定を工場内で行ない、すべて組み込んだ状態でユーザーに納品する。

 ユーザーが大量にITインフラを導入する際に、設置する場所に構築作業スペースを用意しないで済むこと、セッティングに伴い大量の梱包材の処理を行なわなくてもいいというメリットがある。また、納品までのリードタイムを50%も削減でき、SEやCEが出向いても現地調整にかかる時間を削減できるといった効果もある。

 ITインフラデリバリーサービスは、2008年4月からサービスを開始。富士通アイソテックでは、サーバーの製造ラインに隣接する形でインフラ工場を設置し、PCサーバーおよびブレードサーバーのサービスを担当している。

 インフラ工場のスペースは約830平方mで、年間26,000台までの対応が可能だという。

 「富士通アイソテックで生産される全サーバーの3割を、ITインフラで対応できるように体制を整えていく」(増田社長)という。

ITインフラデリバリーサービスを行なうインフラ工場の様子インフラ工場の入口はセキュリティ管理が厳しくなっている
インフラ工場ではブレードの案件も増えているインフラ工場ではラックへの搭載、ケーブリングなどを行なうほか、ユーザー固有のソフトのインストールも行なう

 なお、今回は公開しなかった第5組立棟の2階で生産しているPCの生産革新についても、増田社長は言及した。

 増田社長によると、これまで14ラインあったPCの生産ラインを、8ラインまで削減。また、従来は個人向け、企業向け、単体型、一体型と4種類に分かれていた生産ラインを、単体型、一体型のラインの2種類に統合。個人向けと企業向けを混流ラインとした。さらに、8ラインのうち、3ラインを単体型と一体型が混流生産できるコモンラインとし、所要変動にも柔軟に対応できようにしたという。

 「組立工程、試験工程ともに、ラインを短くし、さらに生産効率の改善を図っている。サーバー以上に価格競争が激しい分野であり、生産台数が縮小したなかでも、より生産性を高める努力が必要」とした。

●敷地内にリサイクルセンターを設置

 一方、富士通アイソテックの敷地内には、富士通東日本リサイクルセンターを設置している。

 富士通東日本リサイクルセンターは、富士通アイソテックの100%出資子会社である株式会社エフアイティフロンティアが運営する使用済みPCのリサイクル拠点だ。

 つまり、富士通アイソテックは、PCおよびサーバーの生産から、修理、再生、リサイクルに至るまで、ライフサイクル全般をサポートする体制が整っているというわけだ。

 これまでは1カ所の建物で、リサイクルを行なっていたが、2009年6月に、新たに2棟増やし、余力がある形でリサイクル作業を行なえるようにした。

 従来の棟は、720平方mの広さだったが、新棟はそれぞれ1,296平方m、432平方mの広さを誇り、従来棟をリサイクルPCの受入用およびリサイクル済みの再生材料の出荷用の倉庫に、新棟はそれぞれリサイクル作業用、梱包材料やプラスチックなどの処理施設として利用している。

 写真でその様子を紹介する。

同じ敷地内にあるが、入口は厳しく管理されている新たに設置された棟。搬入口を大きくとっている
リサイクル施設内には余力がある。制度的に対応できる余力がないと新規の受け入れは不可能リサイクルされる廃棄PC
PCのリサイクル工程の様子手作業によって基板なども分類される
筐体のカバーもこのとおりに分類されるATMもリサイクルを行なっているリサイクルされたペレット。入庫した総量の80%がこの形になるという
HDDの破壊処理は管理された部屋で行なわれる破壊する装置は工程内では3台が使われているHDDの破壊装置。同センターでは穴開け、切断、磁器破壊の3種類の破壊を行なえるようにしている
情報が漏洩しないように、実際に破壊したHDD破壊されたHDDの山
梱包材料もリサイクルされる。サーバーやPCの生産ラインから出る不要な梱包材も処理される約20種類に細かく分類された廃プラスチック類も破砕する。騒音が作業者に伝わらないように、破砕する機械は壁の向こう側にある