大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

LaVieにブランド統一するNEC PCが新たに打ち出した「D3」の意味とは?

〜NECパーソナルコンピュータの留目常務に聞く

 NECパーソナルコンピュータは、2015年1月20日に開いた新製品発表会において、6シリーズ41モデルの2015年春モデルを発表した。ここでは、La Vie Zの進化版となる「LaVie Hybrid ZERO」、そして、フリースタイルという新たなコンセプトのPCとして投入した「LaVie Hybrid Frista」の2機種が、大きな関心を集めた。

 だが、この発表会は、そうした新製品の発表とともに、NECパーソナルコンピュータにとっては、もう1つ重要な意味を持った会見だった。それは、LaVie発売から20周年という節目を迎え、NECが改めてPCの原点に戻った製品作りへと回帰したこと、それに伴い、LaVieへと製品ブランドを一本化。そして、LaVieのブランドメッセージとして、「Digital Dramatic Days(=D3)」という言葉を新たに提示してみせたことだ。

 NECパーソナルコンピュータの留目真伸取締役執行役員常務は、「これらは、業界のリーダーであるNEC PCだからこそ、これまでの取り組みを反省し、原点に戻ることを打ち出したものである。そして、PCベンダーから脱却し、デジタルライフプロバイダーへと変革することを示したものである」とする。変革の節目を迎えたNECパーソナルコンピュータ(NEC PC)の新たな方向性を留目取締役執行役員常務に聞いた。

NEC PCが発表した春モデル
La Vie Zの進化版となる「LaVie Hybrid ZERO」
新たなコンセプトの製品と位置付ける「LaVie Hybrid Frista」

「生活の中に浸透するPC」を作れていなかった

−−1月20日の新製品発表会見は、「新生LaVie発表会」と銘打ちました。LaVie発売から20周年を迎えた今年、LaVieはどう生まれ変わったのでしょうか。

留目 LaVieブランドのノートPCは、今から20年前に誕生しました。その時に、フランス語で「生活」を意味するLaVieのブランドに込めた狙いは、「生活の中に浸透するPCを目指す」ということでした。しかし、ここ数年のNECのPCを見てみると、本当に生活に浸透したPCを提供できていたのか、という反省があります。この20年間でPCは広く利用されるようになり、市場も活性化してきた。その中でNECはトップシェアを維持し続けている。その点では、それなりの役割は果たしているでしょう。

 しかし、本当にそれで満足していいのか。そんな疑問が私にはありました。数年前、NEC PCから登場するPCには面白味がないと言われました。毎年、決まった時期に新製品を発売して、そこには必ず新たな技術が搭載されている。でもそれだけでは決して面白いと思ってもらえるPCにはなりません。むしろ、利用する人の環境と、技術の立ち位置とに大きな乖離ができてしまったのではないか。言い換えれば、技術の進化に、利用者がついて行っていないのではないないか。そんなことを2013年頃から感じていました。

−−利用者と技術の乖離というのは、具体的にはどんなところで感じていましたか。

留目 例えば、クラウドサービスが広がり、オンラインストレージが登場し、気軽に写真や音楽などのデータをアップロードできるような世界が訪れています。しかし、それを利用している人はわずか3%です。同じように、ホームネットワークを活用して、どこの部屋でもTVが見られるようにしている人は7%、PCを活用したTV電話によるコミュニケーションを行なっている人はわずか9%に留まっています。技術は進化しているが、それを使っている人はごくわずかなのです。

 ではなぜこんな状況が生まれているのか。それは、一言で言えば、楽しくないからです。オンラインストレージという技術が用意されても、そこにデータを格納するだけでは、これまでの作業をオンラインに移行させただけに過ぎません。ワクワクしませんよね(笑)。PCも一緒です。家庭内でノートPCを使うスタイルは、20年前と一緒。机に向かって、そこでキーボード操作する使い方は変わりません。携帯音楽プレーヤーも、自分で好きな音楽を選んで、それをダウンロードして聞くというスタイルは、最初のウォークマンが登場したときから何も変わっていないとも言えます。もちろん、デバイスが小型軽量化して持ち運びやすくなった、もっと手軽に利用できるようになったのは明らかです。しかし、基本スタイルは変わらない。生活を変えるほどのインパクトが与えられていないのです。

 しかし、オンラインストレージに格納した写真の中から、ランダムに昔の懐かしい写真を選んで自動的に表示してくれるオンラインストレージサービスになったらどうでしょうか。また、聞き慣れた曲だけでなく、自分が好きそうな曲を自動的に選んでくれて、それを自動的にダウンロードして聞くことができたらどうでしょうか。ニュースも検索して見るのではなく、自分に興味があったり、必要なものがリアルタイムに表示され、関心をもったらもっと詳しい内容を簡単に調べることができる。そんな世界になれば、ワクワクしたり、生活が楽しくなったりといったことに繋がるはずです。

 実はこうした技術は、もう既に世の中にあります。ところが利用者と技術に乖離があるために、ワクワクしたものになっていません。それを実現できなかったのは、PC業界のリーダーであるNEC PCにとっての反省点でもあります。もともとLaVieで、生活の中に浸透するPC作りを目指していたはずなのに、この20年間で、その意識が薄れていった。デジタルライフは実現しているが、デジタルライフを楽しむことにまで及んでいなかったのです。

家庭におけるノートPCの利用形態は20年間変わっていない
最新技術を活用したデジタルライフの利用は限定的だ

−−それはPCメーカーとしての危機感とも言えますね。

留目 シェアを獲得していながらも、生活を変えられていない。利用スタイルを変えられていない。このまま楽しいデジタルライフを提供できなければ、つまらない製品しか出せない会社になってしまう。それではPC産業は縮小していくだけですし、そこでシェアが増えても意味がない。そうした危機感はありました。我々がやりたいことは、シェアを取ることではなく、多くの人たちにデジタルライフを楽しんでもらう環境を提供すること。その延長線上でシェアが取れればいい。だからこそ、LaVieの登場から20年目の節目において、NEC PCは、我々が目指した原点に戻ることを徹底しました。ここでいう原点とは、まさにLaVieが20年前に、自らのブランド名に込めた「生活の中に浸透するPCを目指す」ということなのです。

−−NEC PCでは、「安心、簡単、快適」というキーワードを使っていますね。これと原点回帰とはどう関連しますか。

留目 安心、簡単、快適は、NEC PCが原点に戻るための構成要素だと言えます。技術を簡単に、そして快適に使ってもらう。そのためには安心して使ってもらえるものでなくてはならない。分かり切った技術の使い方や、想定できる技術の使い方ではないものを、安心、簡単、快適に提供していくことが必要です。

なぜ、LaVieにブランドを統一したのか

−−そうした方針の中で、NEC PCは、LaVieへと製品ブランドを統一したわけですが。

留目 LaVieへのブランド統一は、製品ブランドの数が多いから統一するといった理由で行なったものではありません。原点に戻って、PCのあり方を考えたときに、NEC PCは、デジタルライフソリューションを提供する会社にならなくてはいけないといった考え方の上で決断したものです。最初は新たなブランドを作るという検討もしました。しかし、議論をしていくうちに、「やはり、LaVieで行こう」ということになりました。20年前にLaVieで目指した原点こそが、我々が今目指すものであると考えたからです。

−−裏を返せば、同じ20年の歴史を持つVALUSTARのブランドがなくなることになりました。

留目 もちろん、VALUESTARのブランドにもこだわりはありました。ただ、基本的な考え方は、我々がデジタルライフを提供する上では、もはやデスクトップPCも、ノートPCも関係ない。ノートPCのブランドはLaVie、デスクトップPCのブランドはVALUESTARというような分類そのものが全く意味を持たなくなっていました。そうした観点からブランドを統一するという流れは必然でもありましたし、その中で、我々が目指す世界と、LaVieがもともと目指して世界が同じであったということも、LaVieにブランドを統一した背景にあります。

 もちろん、ノートPCの方が出荷台数が多いということもあり、認知度という点でも、LaVieの方が高かったという背景もあります。新たなLaVieというブランドは、ノートPCのブランドでは無くなったという点が、従来とは大きく異なりますが、そのブランドで目指すものは、まったく変わらないと言えます。そして、今回のLaVieへのブランド統一では、ソフトウェアにもLaVieのブランドを冠しました。これまでコンテンツナビとしていた製品は「LaVieフォト」とし、そのほかにも「LaVie動画なび」(旧動画なびplus)、「LaVieアプリナビ」(旧ソフト&サポートナビゲーター)、「LaVieアシスト」といった具合です。ここにもLaVieブランドで目指す世界が広がっていることを感じていただけると思います。

−−ちなみに、LaVieのブランドの下には、Note、Hybrid、Tab、Deskという4つのカテゴリがあり、さらにその下に、SatandardやAdvance、あるいはAll-In-OneやTower、FristaやZERO、UやW、Sといったように分かれています。形状を示したり、機能としての水準を意味したり、ブランドや型番など、統一感がないように感じるのですが。

留目 UやW、Sといった型番は、継続モデルであるため従来の名称を使っています。そして、FristaとZEROは、独自の世界観を持った製品ということで特別に製品ブランドを使っています。新たなブランドにおける基本的な考え方は、聞いた瞬間にどんな製品なのかというイメージが分かるということです。従来のようにSやLという型番では、多くの人が、どんな製品なのかイメージが沸きません。新たな名称で、それを聞いただけでなんとなく、どんな製品かが想起できる。現時点では、全体を網羅できる形になっていますから、このカテゴリに分けたブランド名は、このまま続けていく考えです。LaVie Noteには、Satandardというブランドしかありませんが、ここにAdvanceという名称を追加するような予定はありません。

1月20日の新製品発表会見は、「新生LaVie発表会」と銘打った
留目取締役執行役員常務は新生LaVie始動を宣言した

「Digital Dramatic Days」は脱PCベンダーへの狼煙

−−一方で、新製品発表会見では、「Digital Dramatic Days」という言葉を新たに提示しましたね。ここにはどんな意味を込めていますか。

留目 「Digital Dramatic Days」は、新生LaVieのブランドメッセージとして打ち出したものです。Digitalというのは、まさしくデジタルライフを指します。しかし、単にデジタルライフを実現するのでは意味がありません。驚いたり、感動したり、ワクワクしてもらえるようなデジタルライフを実現しなてくはならない。できなかったことができる、それによって思いも寄らないサービスを実現したい。そこに「Dynamic」という意味があります。

 そして、Dynamicを実現するには、ハードウェアの技術だけでは成立しません。LaVieは、今から20年前に、当時の技術を使い、その当時としては最も最適な「生活の中に浸透するPC」を作り上げたと言えます。しかし、今の時代における「生活の中に浸透するPC」を考えた場合、ハードウェアを提供するだけでは、それを実現できません。ハードウェア、ソフトウェア、サービスまでが必要になります。構成要素としてのハードウェアは大変重要であり、そこに力を注ぐことは変わりません。そして、欠けているピースは、エコシステムによるハードウェアやソフトウェア、サービスで埋める。それでも埋まらないところは自分たちで作る。

 今回、新たに、写真やビデオ、年賀状といったアナログ資産をデジタルに変換する「My Treasureサービス」、デジタル化した写真をタイムラインビューで表示するといった機能を提供する「My History」といった新たなサービスを発表しています。こうした地味なところはなかなかやる企業がありませんから(笑)、NEC PCが自ら開発したわけです。

 これもDynamicを実現する要素の1つになります。そして、こうしたワクワクしたデジタルライフを、特別なものではなく、日常の生活の中で体験してもらいたい。ここに最後の「Days」に込められた意味があります。つまり、Digital Dramatic Daysは、PCベンダーというハードウェアだけを提供する立場では、もはや実現できない。エコシステムを巻き込んだ形で、ソフトウェアやサービスを提供するデジタルライフプロバイダーでなくてはならない。今回、LaVieへのブランド統一にあわせて、ソフトウェアにも、LaVieブランドを使ったことは、NEC PCが、単にハードウェアを提供するPCベンダーに留まらず、デジタルライフを提供するプロバイダーに転換を図るんだ、という姿勢の表れです。

 実は、この言葉は社内公募をして決めました。NEC PCが目指すべき方向性を社内に説明し、デジタルライフを視野に入れた形で最適なメッセージを考えほしいと呼びかけました。最終的には数百の候補が集まり、その中から選んだものです。私も応募したのですが、残念ながら却下されましたよ(笑)。

LaVieのブランドメッセージとして「Digital Dramatic Days」打ち出す
「Digital Dramatic Days」はD3と表現。今後継続的に使用していくという

−−Digital Dramatic Daysは、NEC PC自身が、本当の意味でのデジタルライフを提案できていなかった反省に基づいた言葉だとも言えそうですね。

留目 その通りだと思います。これは、LaVieのブランドメッセージでありますが、言い換えれば、NEC PC全体が、今目指すべき方向を示したものだと言えます。そして、大きな意味では、日本のPC産業が目指すべき方向性を代弁したものであるとも言えるのではないでしょうか。デジタルライフを実現する上での問題解決に、産業全体が目を向けてもらうきっかけになればと考えています。NEC PCでは、当面、このメッセージを使っていくことになります。PC本体には入れませんが、外箱やカタログ、あるい名刺などに刷り込んでいきたいですね。

 これからレノボNECグループとして、国内市場にスマートフォンを投入する予定です。PC、タブレット、スマートフォンというハードウェア、そして、日本のユーザーが求めるソフトアェア、サービスを通じて、本当の意味でデジタルライフを楽しんでもらいたい。それに向けたメッセージがDigital Dramatic Daysということになります。

 今回、発表したハードウェア、ソフトウェア、サービスは、Digital Dramatic Daysを実現する第1号製品群。まだまだやらなくてはならないことが多く、満足はしていません。ただ、第1号製品群という意味ではひとまず合格点に達したのではないかと思っています。

−−2月5日から、「LaVie Hybrid ZERO」や「LaVie Hybrid Frista」といったユニークな製品が発売になりました。NECパーソナルコンピュータにとっては、2015年はどんな1年になりますか。

留目 新生LaVieにとって、最初の1年になります。製品もこれから面白いものが登場しますし、ソリューションでも大きな進化を遂げる1年になります。「NECパーソナルコンピュータは変わったな」と、言ってもらえるような1年になるはずです。いや、必ずそう言ってもらえる1年になる。NECパーソナルコンピュータは、生活の中に浸透するPCを提供し、それによってデジタルライフを大きく変えていくことを、社会に対してコミットしていきたい。PCベンダーから、デジタルライフプロバイダーに変わっていく1年になると思います。ぜひ、期待していてください。

(大河原 克行)