大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

4年目を迎えたMouseProの「これまで」と「これから」

〜マウスコンピューターの法人向けビジネスを追う

 マウスコンピューターの法人向けPCブランド「MousePro」が、2011年2月の発売以来、4年目を迎えた。事業を開始した時点で掲げた「3年を1つの括りとして捉える」とした節目に到達したことになる。

 マウスコンピューターの小松永門社長は、「やりたいことはまだまだある。だが、この3年間で、法人向けビジネスの土台は、しっかり作り上げることができた」と自己評価する。3年間の自己採点は90点と極めて高い。日本品質を実現する法人向けPCというコンセプトも徐々に市場に定着してきたようだ。2014年度には、さらに製品ラインナップを拡充。ワークステーション分野やエンベデッドOS搭載製品への取り組みも本格化。MouseProブランドでのタブレット投入も視野に入れる。MousePro事業のこれまでとこれからを追った。

3年間の自己採点は90点

小松永門氏

 マウスコンピューターが、法人向けPCブランド「MousePro」シリーズをスタートしたのは2011年2月だ。発売から3年を経過し、マウスコンピューターの小松永門社長は、「MouseProシリーズの方向性を固めることができ、ターゲットとする中小企業およびSOHOユーザーに対して、最適な製品を提供できる環境が整った。法人向けビジネスの土台を、しっかり作り上げることができた」と自己評価する。

 実際、同社の法人向けビジネスは順調に拡大している。「MouseProブランドのPC事業をスタートした際に、法人向けビジネスを今後3年間で2倍に拡大することを目標にした。その目標についてはクリアできた」と、小松社長は胸を張る。

 そして、3年間の自己採点を「90点」とする。小松社長は、法人向けビジネスに対する高評価の理由をいくつかの観点から説明する。

 1つは品質の高いPCを市場投入してきた点だ。マウスコンピューターでは、国内生産、国内サポートを前提として、MouseProの品質強化にこだわり、これを「日本品質」として表現して展開してきた。「法人市場に対して、しっかりと認めていただける製品品質を持つPCを目指して開発したのがMousePro。この製品ならではの品質基準による部品選定や、生産時における検査工程の強化、徹底した品質管理体制の構築、問題発生時の迅速な対応といった点に力を注いだ。初期不良率は当初目標の半分以下に留まり、ユーザーからも高い評価を得ている」と小松社長。「この成果は、当社PC全体の品質向上にも繋がっている」と、MouseProを起点に、品質向上の成果が広がっていることにも言及する。

 周知のように、現在、PC市場は、Windows XPのサポート終了に伴う買い換え需要と、消費増税前の駆け込み需要によって、特需とも言える状況となっている。同社のPC生産拠点である飯山工場では、前年比1.5倍の増産体制を敷いて、この需要に対応しているところだ。

 「3年前にMouseProによる法人向けPC事業に本格的に踏み出した成果が、この需要の波に乗ることができた理由の1つ。MouseProがなければ、個人向けの買い換え需要だけへの対応になっていたのではないか」とする。マウスコンピューターが法人向けPC市場において、着実に地歩を固めた結果が、増産体制に繋がっていると言えよう。

ディストリビュータとの連携強化も奏功

 2つ目は、ディストリビュータとの連携強化である。事業開始当初は、直販が中心となっていたMouseProだが、ディストリビュータと全国規模での法人市場の拡大に取り組み、MouseProが狙う中小企業およびSOHO市場にターゲットを当てた共同展開が効を奏している。「ある大型案件では、Mouseブランドで導入検討が進んでいたものが、ディストリビュータとの連携提案によって、MouseProへと切り替えてもらった例がある。ディストリビュータやユーザー企業における、MouseProの価値が理解され始めている」と小松社長は語る。

 もともと、旬の技術を最速で、最適な価格で提供するのがマウスコンピューターらしさであり、場合によっては発売1週間後には価格改定や仕様変更するという例すらある。だが、法人向けPC市場では、見積もりを検討している段階で、価格や仕様の変更が発生すると途中で検討が打ち切られることもある。MouseProでは法人市場の動向に合わせて長期化した製品戦略を採っているのが特徴であり、これもディストリビュータから評価されている要因の1つとなっている。

 3つ目は、製品ラインナップの拡大である。MouseProは、タワー型PCの「MousePro i/iSシリーズ」およびノートPC「MousePro NBシリーズ」、サーバーの「MousePro SVシリーズ」、省スペースデスクトップPCの「MousePro Mシリーズ」、液晶一体型PCの「MousePro Aシリーズ」をラインナップ。さらに、このほどMシリーズにおいて、Windows Embedded 8.1 Industry Proを搭載した「MousePro-M385B-EMBD」を追加し、より幅広い要求に対応できるようにしている。

 「WEB経由で当社製品をご購入される法人ユーザーの内、MousePro製品を選択される比率が40%を超えた。昨年と比べると、法人ユーザーに対するMouseProの認知度が高まっている。ラインナップの広がりも認知度を高める要因の1つになっているのではないか」とする。

 現在でもWindows 7搭載モデルを標準製品としてラインナップ。Windows XPのサポート終了に伴い、買い換えを検討している法人ユーザーから高い評価を得ている。

 だが、製品ラインナップの点では反省材料もあるとする。「省スペースデスクトップのMシリーズを標準製品とラインナップしたほか、ノートPCのラインナップを積極的に強化。さらにNVIDIA Quadroを搭載したハイエンドPCの強化にも力を注いだという成果はあったが、まだまだラインナップを広げていく必要がある。気持ちとしては1年遅れの感覚がある」とする。

 ただ、これは言い換えれば、4月から始まる2014年度以降、さらなるラインナップの広がりが期待できるといってもいいだろう。では、どんな形にラインナップが広がっていくのだろうか。

2014年度に取り組む5つのポイント

 2014年度のMouseProの製品展開について、小松社長は5つのポイントがあるとする。

 1つ目は、メインストリームとなるスリムタワーおよびノートPCのラインナップ強化だ。特にスリムタワー型PCについては、「意欲的な製品の投入を計画している」と小松社長は宣言する。詳細については言及しなかったが、「拡張性を維持しながらも、小型化を図り、より購入しやすい価格設定での製品投入を予定している」ことを明かす。現行のスリムタワー型PCでは、筐体容量が14Lあるが、これを8.5Lまで小型化する考えだという。「約40%減という小型化によって、企業におけるユーザーの使い勝手をより高めることができる」というわけだ。

 だが、「小型化を徹底的に訴求するという手法は採らない」とも語る。「あくまでもMouseProに求められているのは安心感。これはスリムタワー型PCに限らず、MouseProシリーズとして第1に訴えていくポイントになる」とする。

金子覚氏

 省スペース化という観点では、Mシリーズも戦略製品の1つに位置付ける。ボックスタイプという小型軽量の筐体を活かして、液晶ディスプレイの裏側や机の裏側などに設置するといった提案も行なっていくことになる。「これは、当社社内の端末としても導入するが、タッチディスプレイのコントローラ、オークション会場での端末利用としての導入、インフォメーション端末としての利用のほか、在宅ワーカー向けの端末としての導入も見込まれる」(マウスコンピューター コーポレート営業部・金子覚マネージャー)という。

 安心感を訴求しながらも、ラインナップ強化を図るのはノートPCでも同じだ。「法人ユーザーが購入しやすい価格設定でありながら、最適な性能、企業に置いた際にも使いやすいデザインをバランスしたノートPCをラインナップしていく」という。ここでは機能的に尖った製品よりも、まずは安心感を優先した製品ラインナップの強化に取り組む考えだ。

新たにワークステーション製品を投入

 2つ目は、ワークステーション領域への本格展開である。これまでにもQuadroを搭載し、CADでの利用、3DCGの制作に適したハイエンド製品を投入してきた経緯はあったが、新たにWシリーズの型番によるワークステーション製品を投入。新デザインを採用して、この分野への本格参入を図る。

有藤俊氏

 「デジタルコンテンツ市場における4Kコンテンツ制作の活発化や、3DCADの活用など、高性能グラフィックに対する需要が高まっている。デザイン事務所や専門学校などを対象に、高性能グラフィック需要に対応したハードウェアをきっちりと提供していきたい」(マウスコンピューター コーポレート営業部・有藤俊氏)。

 3つ目は、組み込み用途での提案である。先頃発表した「MousePro-M385B-EMBD」は、Windows Embedded 8.1 Industry Proを搭載した製品。これを皮切りに、この領域の製品強化を図っていく1年になるという。「マウスコンピューターの特徴は、エンドユーザーのこだわりの要求に対して、きめ細かく対応する点にある。組み込み用途は、まさにその姿勢を一歩進めたものになる。パートナーとの連携によって、エンドユーザーの細かな要求に対応していくことができる」(小松社長)とする。

 この領域においては、タブレット製品もその1つに位置付けるという。これまでMouseProブランドのタブレットは製品化していないが、Windows OSを搭載した通常モデルに加えて、エンベデッドOSを搭載したタブレットの製品化についても、市場投入に向けて検討を開始している段階だという。2014年度中にはMouseProブランドのタブレットが製品化される公算が高そうだ。

 そして、4つ目がサーバー製品の強化だ。「初めてサーバーを導入する25人以下の中小企業やSOHOに対して、Windows Server 2012 R2 Essentialsを軸に展開していく。クライアントPCを利用しながら、NASによるデータ共有などを行なっている法人に対して、サーバーによる高い管理性のメリットなどを訴求していく」とする。Windows Server 2003のサポート終了が2015年夏に訪れるが、同社では、これに伴うリプレース需要よりも、新たな顧客開拓に力を注ぐ考えだ。

 そして、最後がISVパートナーとの連携によるソリューション提案の加速だ。現時点では具体的なパートナーシップを発表できる段階にはないというが、「ISVが開発したソフトウェアと、MouseProの高性能、高信頼性のハードウェアとを組み合わせたソリューションモデルを提案し、具体的な利用シナリオを提示する形で展開していきたい」(小松社長)という。2014年度中には、ソリューションモデルとしての提案を開始し、2015年度以降には、このビジネスをさらに加速する考えだ。

2014年度は飛躍に向けた地盤固めの年に

 こうした製品ラインナップの強化を通じて、「2014年度は、5年目以降の飛躍に向けた基盤固めの年になる」と小松社長は語る。「これまでの3年間は、ホップ、ステップ、ジャンプでいえば、ホップに当たる期間。2014年度と2015年度の2年間は、ステップの期間と捉え、それ以降の飛躍に向けての基盤固めを重視する」と述べる。

 ディストリビュータとの連携強化、ISVパートナーの協業拡大、そして製品ラインナップの拡大が2014年度から2年間の取り組みということになりそうだ。「MouseProの営業体制の強化に加えて、ラインナップ拡大に伴う開発体制の強化にも投資をしていきたい」とする。

 そして、サポート体制の強化にも余念がない。2013年12月からは、法人ユーザー自らがパーツ交換できる「部品配送サービス」を開始。「自ら部品を交換してもらうことで、データ保護の観点から、社外にPCを持ち出したくないという法人ユーザーの要望にも応えることができる。こうした法人ユーザーならではの要望にも柔軟に対応したい」という。埼玉県春日部の埼玉サービスセンターでは、即日対応が可能な持ち込み修理サービスも用意しており、これも法人ニーズに対応したものだと言える。

 法人向けビジネスの次なる飛躍に向けて、MouseProの製品強化、サービス強化、そして連携強化がますます促進されることになりそうだ。

(大河原 克行)