大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

パナソニック、Let'snoteブランドのUltrabook投入に強い意志
〜2014年度にPC事業全体で100万台の年間出荷を目指す



 パナソニックのLet'snote事業が好調だ。2012年2月から発売した「Let'snote SX1」では、従来の「軽量/長時間」、「頑丈」、「高性能」に加えて、第4世代のコンセプトとして、「タフ」および「クリエイティブ」の特徴を付加。これが高い評価を得ている。

 また、神戸工場で生産する強みを活かした、「1台からの多品種少量変量生産」にも企業ユーザーからの高い関心が集まっている。「2014年度には年間100万台突破を目指す」とするパナソニック AVCネットワークス社ビジネスソリューション事業グループITプロダクツビジネスユニット ビジネスユニット長の原田秀昭氏と、同ITプロダクツビジネスユニットプロダクトセンター・清水実所長に、パナソニックのPC事業の取り組みを聞いた(以下、敬称略)。

●お客様の声を反映するLet'snoteの高評価

−−パナソニックは、2012年度のPC事業の販売目標を84万台としています。過去最高の出荷台数となった前年度実績の72万台から、さらに2桁増となる意欲的な目標です。この好調ぶりの要因はなんでしょうか。

パナソニック AVCネットワークス社ビジネスソリューション事業グループ ITプロダクツビジネスユニット ビジネスユニット長の原田秀昭氏

【原田】パナソニックのPC事業は、「常にお客様の声を聞き、その声を製品に反映する」という姿勢を貫いてきました。Let'snoteでは、これまでも、お客様の声をもとにして、「軽量/長時間」、「頑丈」、「高性能」といったビジネスモバイルに求められる要素を徹底的に追求してきました。

 2月に発売した「Let'snote SX1」および「Let'snote NX1」では、Let'snoteの第4世代として、これまでの要素に加えて、「タフ」および「クリエイティブ」といった要素を新たに追求した。他社のPCにはない、こうしたLet'snoteならではの特徴が受けていると考えています。SX1の発売以降、お客様のところにお邪魔すると、タブレットではどうしてもクリエイティブな業務ができない、モバイル環境で「作成」するような業務を行なうにはLet'snoteしかないという声を数多くいただきました。クリエイティブのコンセプトに評価が集まっているわけです。

 また、細かい話ですが、2種類のアダプタと2種類のバッテリを付属し、シーンにあわせて使い分けられるようするといった配慮にも評価もいただいています。これもお客様の声をもとにした結果です。

 PCがコモディティ化する中で、同質化競争をしていては、ビジネスモデルが成り立ちません。Let'snoteは、単にデザインで競争するようなプロダクトアウト型のモノづくりはしません。お客様が欲しいと思うものをしっかりと提供する、作り込みに徹したモノづくりを続けていきます。

Let'snote SX1

−−SX1の発売では量販店店頭における「一夜城作戦」および垂直立ち上げの実施、アジアに進出する日本の企業に向けたクロスボーダー・セールスという新たな戦略を打ち出しました。これらの成果はどう自己評価していますか。

【原田】SX1の製品発表会では、従来のLet'snoteにはない大規模な演出をしました。また、神戸工場ではLet'snoteとしては初めてとなる出荷式を行ない、多くのマスコミの方々にも参加していただきました。さらに、「一夜城作戦」として、1月25日の発表翌日には、東京、名古屋、大阪の主要量販店約10店舗で新製品の展示を行ない、その時点から予約販売を開始しました。発売当日には全国の店舗に展示を拡大するなど、発表直後から認知度を高め、発売日にはそれを最大限に持って行き、垂直立ち上げを行なうといった仕掛けも行ないました。

 一夜城作戦とは、もともと薄型テレビの「ビエラ」などで展開してきたもので、発売日にあわせて一気に展示を入れ替える手法です。これはLet'snoteでは初めての試みで、量販店の方々とのトップ商談によって実現したものです。パナソニックとしても、当時のデジタルAVCマーケティング本部(現AVCマーケティング本部)や、パナソニックコンシューマーマーケティングCE社のトップが直接Let'snoteの商談の席に付き、まさに総力戦の姿勢で、SX1の発売を迎えたわけです。こうした我々の本気ぶりをご理解いただいたことが大きかったといえます。

 その後、不思議なことが起こったんです。Let'snoteはもともと価格が高いとは言われますが、量販店店頭でのSX1の価格は、なかなか下がらなかったのです。他社製品の価格下落の影響を受けなかったという点でも、量販店の方々が、我々のメッセージをしっかりとお客様にお伝えいただき、他社との同質化競争から離れた形でビジネスができたことが背景にあるといえます。

 一方で、クロスボーダー・セールスについては、少しずつ商談が始まっている段階にあります。2012年度は、Let'snoteでは年間1万台、2013年度には3万台の出荷を目指します。

●日本企業をターゲットとしたクロスボーダー・セールス

−−Let'snoteで展開するクロスボーダー・セールスは、これまでのTOUGHBOOKによる海外ビジネスとはどこが異なるのですか。

【原田】欧米では、TOUGHBOOKが持つ堅牢性に高い評価が集まっていますが、Let'snoteのようなビジネスモバイル領域の製品は、やはり日本のユーザーに受け入れられています。そうした日本のユーザーが海外に進出する際に、Let'snoteを導入したいという声が少なくありません。200台導入したいが、そのうち10台はアジアで使いたいという商談も増加しています。ここをターゲットに展開するのがクロスボーダー・セールスとなります。つまり、Let'snoteで海外市場に進出するのではなく、あくまでも海外に進出する日本の企業を対象としたビジネスと位置づけています。ですからこのビジネスを担当するのは、国内営業グループです。組織体制からも、ターゲットが日本の企業であることが分るかのではないでしょうか。

 また、神戸工場にあるコールセンターにおいて、海外からの問い合わせにも、日本語で対応するようにしています。これからは、欧米に進出するよりも、中国、アジアに進出する日本企業が増えるのは明らかです。さらに中南米への進出も増加するでしょう。TOUGHBOOKのビジネス拠点だけでなく、日本の企業を対象にしたLet'snoteのサポート拠点を海外に置くことで、海外における日本企業への販売を強化していきたいと考えています。

 実は、ロンドンオリンピックでは、日本から訪れた報道関係者を対象にしたLet'snoteの特別サポート拠点を会場内に設置しました。報道関係者の間ではLet'snoteが数多く使われていますから、北京オリンピックの時よりも人員を増加して対応しました。

−−9月からはLet'snoteのアジア向けモデルを投入しますね。

【原田】これはアジアに進出する企業向けのモバイルノートPCと位置づけています。日本で購入したPCを、中国にそのまま送っても関税で止められてしまうため、企業ユーザーからは、これをなんとかしてほしいという声をずいぶんといただいていました。アジア向けモデルでは、アジアに拠点を持つ企業の現地社員向けに設計するとともに、各国の法規制にも対応。Let'snoteを現地で購入でき、日本語でのサポートが受けられるというものです。9月からは、現地のSIerとのパートナーシップによって、日本語でサポート対応できる体制を整えます。まず、対象となるのは、中国、香港、韓国、台湾、インド、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシアなどです。

 余談になりますが、8月上旬に、アジア向けモデルの展開に関して、日本経済新聞の国際版に記事が掲載されたのですが、私が13年間海外駐在員をやっていた経験から言えば、現地ではとにかく日本語に飢えていますから(笑)、日本の新聞はじっくり読むんですよ。本当に端から端まで(笑)。その点で、Let'snoteのアジアモデルの紹介が、海外の日本人に発信されるメディアに掲載されたことは、ターゲットとなる人たちへの認知度を高めるという点で大きな意味があったと思っています。

−−一方で、TOUGHBOOKのビジネスはどうですか。

【原田】海外ビジネスは堅調に推移しています。先進国での成長に加え、中国やインド、ASEANなどの新興国ではこれから伸びしろがある市場として注目しています。2012年度は84万台の出荷計画のうち、海外で44万台、国内で40万台の出荷を予定しています。海外ビジネスのほとんどはTOUGHBOOKによるものになります。

●ワンストップ型のソリューションを提供

−−パナソニックでは、昨年(2011年)来、ソリューションという言葉を積極的に使い始めていますね。Let'snoteにおけるソリューション展開はどんな進捗をみせていますか。

パナソニック AVCネットワークス社ビジネスソリューション事業グループ ITプロダクツビジネスユニットプロダクトセンター・清水実所長

【清水】お客様の声を聞きますと、パナソニックともっと近い関係を持ちたいという声があります。つまり、メーカーであるパナソニックに、ワンストップであらゆる要求に対応してほしいというものです。また、SIerにおいても、Let'snoteの提案に関して、パナソニックのカスタマイズメニューを活用したいという声もあります。こうした要求にお応えするために、ハードウェアのビジネスだけでなく、ソリューションの付加価値を追加することが必要になってきています。Let'snoteのビジネスにおいて、単品ビジネスからソリューションビジネスへの転換を目指していく必要があるのです。神戸工場では、日本のお客様を対象に、これまでにも「一品一様」でのモノづくりをしてきましたが、この体制をさらに強化していきます。

 現在、神戸工場では、1台からの「多品種少量変量生産」に対応できるように体制を構築し、お客様が箱から取り出せば、すぐに利用できる状態でLet'snoteをお届けすることができます。

 ここにきて、実際にお客様のもとに出向き、そこで直接カスタマイズの作業をするといったことも開始しています。いわば、オンデマンド・カスタマイズともいえるもので、「セキュリティの観点から、神戸工場ではなく、社内でやってもらいたい」という要望に対応したものです。

【原田】我々の基本姿勢は、「手間のかかることこそ、我々がやるべきだ」というものです。効率的なモノづくりを追求するだけでなく、細かいモノづくりにも挑戦していく。それが、エンドユーザーの利益や、SIerをはじめとするパートナーのビジネスにも貢献できるものになると考えています。

−−ソリューション型のビジネスは、Let'snote全体のどのぐらいの比率を占めますか。

【清水】事業構成比は公表していませんが、安定的な成長をしています。事業全体が成長していますから、ソリューション提案の構成比が高まるというよりも、成長にあわせて事業を拡大しているという言い方が適しているのではないでしょうか。

●Windows 8時代のLet'snoteとは

−−10月26日には、いよいよWindows 8が発売になります。また、PCメーカー各社からはすでにUltrabookが登場していますが、パナソニックはまだこの分野への製品投入は行なっていません。Windows 8時代のLet'snote、そしてUltrabookへの取り組みはどうなりますか。

【原田】まだ詳細は明らかにはできませんが、パナソニックがUltrabookを作る以上、軽量、長時間駆動、頑丈、高性能、タフ、クリエイティブという要素は外すことはできません。机と同じ76cmの高さから落とした落下試験、30cmの高さから26方向で落とす衝撃試験など、これまでのLet'snoteで行なってきた試験内容をクリアしたものとなりますし、100kgの加重に耐えることができ、満員電車で通勤する際も液晶が割れるといったことはない、堅牢性を兼ね備えたものになります。そして、同時に長時間駆動や高い性能を実現します。

 また、Windows 8では、モバイル環境における利用をかなり想定したものとなっています。その分野においてパナソニックには長年のノウハウの蓄積があり、Windows 8と親和性の高いものを出すことができます。いわば、Windows 8時代の到来は、パナソニックにとって、絶好のチャンスが訪れたと考えています。「パナソニックが作ると、Ultrabookはこうなる」というものを、みなさんにお見せできると考えています。ぜひ。楽しみにしていてください。