山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

マウスコンピューター「MADOSMA」で電子書籍を試す

〜Windows Phone 8.1 Updateを搭載した国内唯一のWindows Phone

「MADOSMA」。個人ユーザー向けには本稿でレビューするホワイトモデル(Q501WH)が、法人向けにはブラックモデル(Q501BK)が用意される

 マウスコンピューターの「MADOSMA(Q501WH)」は、Windows Phone 8.1 Updateを搭載したSIMロックフリーの5型スマートフォンだ。本稿執筆時点では国内で入手できる唯一のWindows Phoneであり、実売3万円前後で入手できるリーズナブルさが特徴だ。

 今回は、日本ではまだ利用者の少ないWindows Phoneで、電子書籍がどの程度快適に閲覧できるかについて、このMADOSMAを例に、操作性およびアプリにフォーカスしてチェックしていく。

5型にしては軽量、かつ性能も十分

 6月に登場した本製品の詳細については、既に西川和久氏の連載で紹介されているので、詳しくはそちらをご覧いただくとして、ここでは市販品を購入した直後の開封プロセスなどを写真で補足しつつ、筆者なりの使用感をざっと紹介する。

外箱。ライトグリーンとホワイトのツートンで、側面にはWindowsのロゴも見える
国産スマートフォンということでパッケージや説明書、注意書きの類も全て日本語表示で分かりやすい
最初から保護フィルムが貼られている親切仕様。ちなみに保護フィルムの上に、この注意書きのシートが貼られるという2層構造になっている
同梱品一覧。左から、取扱説明書、MADOSMA本体、microSDカード、USBケーブル、バッテリ
背面パネルを外してバッテリを装着する仕様。容量は2300mAh。バッテリを装着する凹みの上にはMicro SIMスロットとmicroSDスロットが見える
左側面。音量ボタンを備える
右側面。電源ボタンを備える
上面。イヤフォンジャックとMicro USBコネクタを備える
下面。マイクの穴以外は何もなくすっきりしている
背面上部。背面カメラは800万画素、前面カメラは200万画素となる
背面下部。スピーカーの上に「Windows」ロゴが印字されている
ホーム画面。Windows 8系列ではおなじみのタイル表示を採用している

 ハードウェアを手に持っての感想は、5型にしては軽いということだ。公称値は125gで、Nexus 5(5型)の130g、iPhone 6(4.7型)の129gと比べてそう開きはないはずだが、実際に持つと数値以上の差を感じる。プラスチックのカバーの質感がそう感じさせる要因かもしれないが、2台目のスマートフォンとしてバッグに放り込んでおく分には軽さは利点だ。特に電子書籍ユースでは、軽量であることイコール端末を長時間手に持ったままでも疲れにくいわけで、大きな強みとなる。

 タイル表示を中心としたインターフェイスはWindows 8.1と同様の操作性で、Windows Phoneの知識が全くない中で初めて使っても、そこそこ操作方法の見当がつけられる。ちなみに筆者自身は現在所有しているマシンのほとんどがWindows 7であり、Windows 8.1のタイル表示はどちらかというと苦手な部類に入るのだが、本製品は特に抵抗なく使える。操作方法についてあまり学習を要しないのは利点だろう。

 低価格な端末ではあるが、特に動きがもっさりしているわけでもなく、よい意味で普通に使える。ネット上では容量1GBのメインメモリに懐疑的な目を向ける人も多いようだが、低スペックのAndroidスマートフォンでよく見られるもっさり感は使っていて全く感じない。動作まわりで唯一気になるのは、画面を上下にゆっくりスクロールする際、表示が若干上下にぶれることだが、これはチューニングの問題のように思える。今回は動画やゲームなど、あまり負荷をかける使い方をしていないので短絡的な判断は禁物だが、実用性は十分という印象だ。発熱もあまり感じない。

 表示面で気になるのが、フォントの一部が俗に言う中華フォントのままであること、また日本語フォントもシンプルなゴシックで、見た目がかなり野暮ったいことだ。画面自体は輝度も高く美しいが(むしろ電子書籍ユースでは輝度を下げた方がよい)、こうしたフォント周りに関してはまだまだといったところ。これから日本語環境への最適化が進む中で、改善を期待したいポイントだ。

プリインストールされているアプリの一覧。標準アプリに加えてFacebookやOfficeなどが見える

現時点で唯一正常に動作するのは「電子書店パピレス」のみ?

 では電子書籍の閲覧について見ていくことにしよう。本製品の5型という画面サイズは必ずしも電子書籍の閲覧に十分な広さではないが、4型クラスのスマートフォンと比較するとさすがに快適さは段違いだ。解像度は1,280×720ドットということで、あまり小さな文字を見るのには不向きだが、これはコンテンツ次第だろう。

 さて、Windows Phoneというプラットフォームは、現状ではアプリ数がiOS/Androidに比べて圧倒的に少なく、日本語対応のアプリはさらに数が限られる。SNS系やオンラインストレージ系など、メインどころはひと通り揃っているが、機能が限られていたり、チューニング不足による表示の乱れも散見される。地図に至っては、ブラウザ上でGoogleマップを呼び出して使った方が専用アプリより快適という有様だ。

 電子書籍についても状況はほぼ同じで、アプリストアの「電子書籍」を開くと、真っ先に「Amazon Kindle」が目に入るが、これは海外版(Amazon.com)のアプリで、Amazon.co.jpのアカウントではログイン自体が不可能だ。またKoboのアプリもあり、ログインしてライブラリを表示するところまでは可能だが、テキスト表示は横書き限定、またコミックもページめくりの向きが反対という、典型的な日本語環境非対応の症状を示しており、しかもページをめくるたびに数十秒待たされる。これはアプリの不具合というより、もともと日本語表示を想定していないアプリが、うっかり日本から見えてしまっているというのが、実態に近そうだ。

「書籍&参考資料」をタップすると一覧が表示されるが、著作権的にNGと見られるアプリや、違法に流通している書庫ファイルをダウンロードして読むための海外製アプリもかなりの割合を占める
「書籍&参考資料」というジャンルはストアを表示した下の方にある。ちなみに後述するPDFビューアについては、「ツール&ユーティリティ」の中にもある
公式の「Amazon Kindle」がインストール可能な状態で表示されるが、これはAmazon.com用
Amazon.comのアカウントがあればログイン可能。これは購入済みライブラリを表示したところ
英語コンテンツは特に問題なく表示される。ハイライト機能のほか、フォントサイズや行間、余白、背景色、明るさなどの調節にも対応する
Koboも見つかる。Koboはもともと国内/海外の区別はないので既存アカウントでログイン可能
ホーム画面。購入済みコンテンツがおなじみのインターフェイスで表示される
日本語コンテンツ(夏目漱石著「坊っちゃん」)を表示したところ。横書き限定で、ルビなどもご覧の通り。フォントなどのオプションも日本語表示を想定していない内容
コミック(うめ著「大東京トイボックス 10巻」)を表示したところ。図版を画面いっぱいに表示する機能がないのか、ページが極小サイズで表示された。ドラッグすれば拡大はできるが、ページをめくるたびに長時間待たされるなど、快適な読書には程遠い

 各ストアの専用アプリがほぼ皆無の中、動作する可能性があるのがブラウザビューアだが、試しに使ってみたところ「ビューアを準備中です」の画面が表示されたまま先に進まなかったり(Reader Store)、立ち読みはできても購入済みコンテンツが表示できなかったり(GALAPAGOS STORE)、購入済みコンテンツは表示できるがページがめくれなかったり(BookLive!)と、こちらも散々だ。中には問題なく閲覧できるコンテンツがあるかもしれないが、それをわざわざ探しながら読むのは、現実的ではないだろう。

 今回試した中で唯一、ログイン後に購入済みコンテンツをきちんと表示でき、ページめくりやオプションの設定まで行なえたのが、電子書店パピレスだ。ただしこれにしてもEPUBベースの独自フォーマットであるMEDUSA形式のコンテンツ限定で、かつ縦書き表示での組版にはかなりの違和感がある。パピレスをふだんから愛用しているなら試してもよいが、積極的におすすめするレベルではない。このパピレスも含め、どのストアもWindows Phoneでの動作をサポートしているわけではなく、たまたま動くかそうでないかだけの差だろう。

IEを搭載しているのでブラウザビューアは使えそうなものだが、多くのサイトは実用レベルに達していない。例えばソニーのReader Storeは「ビューアを準備中です」の画面が表示されたまま先に進まない
こちらはGALAPAGOS STORE。無料で読める「ブラ読み」は動作するが、購入済みコンテンツを読むことができない。これはブラ読みで公開されているうめ著「スティーブズ」
BookLive!は、購入済みコンテンツも表示できるが、肝心のページめくりが動作しない
ブラウザビューアで唯一きちんと動作したのが電子書店パピレス。MEDUSA形式限定、かつ縦書の組版はやや違和感があるものの、購入済みコンテンツを開いて読むところまで正常に動作する
電子書店パピレスではフォントサイズの調整、文字列や背景色の切替、ルビのオン/オフ、横書きへの切替にも対応する。ちなみにPCのブラウザビューアで可能なフォント変更はサポートしない
eBookJapanのサイトには「Windows Phone対応」との表記があるが、説明に書かれた機種名は2009年発売の東芝T-01A(Windows Mobile 6.1/6.5)であり、もちろん手順通りに操作してもビューアのインストールは不可能。同ストアについてはブラウザビューア「楽読み」も動作しなかった

青空文庫は「青空文庫WP」、自炊本は「Cover」がおすすめ

 以上のように、電子書籍ストアで購入したコンテンツを利用するのは難しいのだが、こうした中、Windows Phoneで電子書籍を楽しみたい場合、以下の2つの方法が考えられる。

(1)専用アプリを使って青空文庫を読む
(2)自炊データを読む

 まず(1)についてだが、青空文庫を読むためのビューアについては、有志が作成したアプリがいくつか存在している。これらを利用すれば、青空文庫のデータをダウンロードして読むことができる。複数のアプリを使い比べてみた限りでは、「青空文庫WP」の実用性が高いと感じた。

青空文庫WP」。青空文庫の全作品に対応。初回起動時のみデータベースの作成が必要になる
著者や作品名から青空文庫を検索できる。これは著者→作品名と絞り込みつつ探しているところ
太宰治「グッド・バイ」を表示したところ。上部の余白およびノンブル表示に違和感がなくはないが、本文の組版はしっかりしている。ページめくりはタップには対応せずスワイプでのみ可能。スライダによるページ移動にも対応している
オプション画面。フォントサイズは3種類から選択でき、ナイトモードも備える。あまりカスタマイズ性は高いとは言えないが、必要最小限の設定変更は行なえる

 (2)については、ストアの「書籍&参考資料」カテゴリを丹念に探していくと、ZIP書庫やPDFファイルの閲覧に適したアプリが見つかる。ざっと試した範囲で、お勧めできるアプリを紹介しよう。

 まずZIP対応アプリ。無料という条件なら「Cover」がおすすめだ。タップおよびスワイプによるページめくりに対応し、ページめくりの向きも変更可能、背景色も白黒を切り替えられる。

 また一部のPDFにも対応するので(後述)、PDFはまずこのアプリで開いてみて、うまくいかなければほかのアプリを使うといった、二段構えで利用するのにぴったりだ。DropboxやOneDriveから直接ファイルを開けるのも利点だ。表示できる本の数は25冊までで、150円で250冊、300円で無制限と拡張できるので、大量の書庫ファイルを所有しているなら、300円を払って無制限にすることをおすすめする。

Cover」。今回試用したバージョンは2.2.559。ZIPやCBZのほか、試験段階ではあるもののPDFの表示にも対応する。無料で25冊まで表示でき、300円で無制限になる
ホーム画面。ローカルストレージのほか、DropboxやOneDriveからも読み込める。拡張子が表示されないのと、長いタイトルが最後まで入りきらないのがネック
タップおよびスワイプによるページめくりに対応。背景色は白黒いずれかから選択できる
画面下部をタップするとスライダなどのオプションが表示される。ピンをタップするとWindows Phoneのホーム画面にピン留めできる
マンガモードをオンにすると右綴じがデフォルトになる。垂直のページ送りも可能

 ZIP書庫に限定すれば「コミックシャンプー」もおすすめだ。ZIPのほかCBZ、CBRに対応しており、タップとスワイプによるページめくりが可能、オプションからはページサイズの調整やめくり方向の切り替えなどがすばやく行なえるほか、ページの進行方向を水平と垂直で切り替える機能もある。PDFには非対応だが、起動も速く、自炊データを読むには重宝する。有料アプリ(200円)だが、6ファイルまでは無料で試用できるので、購入前に試してみることをおすすめする。

コミックシャンプー」。今回試用したバージョンは1.6.0.16。有料アプリ(200円)だが、6ファイルまでは無料で試用できる
指定したフォルダの中から書庫を自動的に読み込み、サムネイルで表示する。OneDriveやDropboxとも連携する
タップおよびスワイプによるページめくりに対応。背景色は白で固定されている
オプションではページサイズ調整、向き切替、見開きデータの表示切り替えが可能
起動パスワードも設定可能。なおPDFには対応しない

 もう1つ「readia」もZIP書庫ファイルを読むのに適したアプリだ。100円の有料アプリで、初回起動時に書庫をキャッシュするため初回のみ表示が待たされるのが難点だが、ページめくり方向の切り替えやタッチの反転に対応するほか、アプリ側で明るさやコントラスト、シャープネスを調整できるのは珍しく、また表示位置などのオプション設定も豊富だ。レスポンスも高速で、サムネイルを見ながらページを移動できるのも分かりやすい。PDFビューア機能はないが、PC版には実装済みとのことなので、将来の対応に期待したい。

readia」。今回試用したバージョンは2015.716.1136.2341。PC版と違ってスマートフォン版はPDFには非対応
指定フォルダから書庫ファイルを読み込む。初回起動時にはかなりの時間がかかる。書庫をアップロードする機能も備える
タップおよびスワイプによるページめくりに対応。背景色は黒で固定されている。明るさやシャープネス、コントラストの調整が可能
サムネイルを見ながらページを移動できるのは分かりやすい
ページめくり方向の切り替えやタッチの反転のほか、デフォルトの水平位置や垂直位置、横長の画像の表示方法の指定など、オプションは豊富だ

 以上のように、候補が目白押しのZIP書庫対応アプリに比べ、PDFビューアは及第点に達するアプリがほとんどない。単にPDFを表示するだけなら「Adobe Reader」などでももちろん可能だが、それらはスクロールが縦方向に限定されているなど、ドキュメントビューワとしての性格が強い。横方向のページ送りに対応するアプリを探すだけで一苦労、さらにその中で右綴じに対応しているアプリはほぼ皆無だ。

 最も理想に近いのは先ほど紹介した「Cover」だが、PDF表示はまだ試験機能とのことで、ファイルによっては開けないこともあり、現時点では万能ではない。

 ページめくりの方向が左右逆になるものの、表示および基本的な操作については問題なく対応するのが「OneReader」だ。PDFのほかCBZにも対応し(ZIPは非対応)、メモリカードのほかOneDriveかの直接読み込みにも対応する。コンテンツによっては著しく低解像度で表示されるケースがあるのが気になるが、数十MBを超える自炊ファイルにも対応するなど、PDFビューアとしての安定性は高い。何よりも無料ということで、試してみるのにはよいだろう。

OneReader」。今回試用したバージョンは2.6.5.0。Microsoft社のアプリと勘違いしかねない名称およびアイコンデザインだが、特に関係はないようだ
他のアプリのように特定のフォルダをホームとして扱うのではなく、最近開いたファイルがホームに表示される。左右にスワイプすることでOneDriveやメモリカードから開くことも可能
スワイプによるページめくりに対応するが、ページめくりの方向とは一致しない。この例もそうだが、コンテンツによっては低解像度で表示されるケースがあるのが気になるところ。背景色は黒で固定されている
画面上をタップするとオプションが表示される。PDFビューアとしては安定しており、サイズが大きいPDFファイルも快適に表示できる
定画面はかなり淡白で、背景色など細かい設定は不可能

 PDFビューアではもう1つ「Tucan reader」というアプリもあり、タップ/スワイプの方向も入れ替えられるが、どう設定してもページめくりのエフェクトが左右逆のまま残るほか、動作はやや緩慢、また数十MBを超えるファイルの読み込みに失敗する確率が高いなど、信頼性はいまいちだ。ただし既読位置表示の分かりやすさや、目次表示、背景色の変更、明るさ調節などオプションの豊富さは折り紙つきで、今後のバージョンアップで化ける可能性もあるので、候補の1つとして挙げておきたい。

Tucan reader」。今回試用したバージョンは3.2.0.0。PDFのほか多彩なフォーマットに対応するとされているが、試した限りではZIPは表示できなかった
さきほどの「OneReader」と同じく履歴がホーム画面として扱われる。左右スワイプで他のソースからの読み込みなどに対応する
タップおよびスワイプによるページめくりに対応。背景色は白黒いずれかから選択できる。明るさの調節機能なども備える
ページめくりのエフェクトとタップエリアを指定する画面。エフェクトが左綴じを前提とした選択肢ばかりで、オフにできないのが惜しい
OneDriveやDropboxのほか、Box、Googleドライブなどさまざまなソースからの取り込みに対応する

端末を持て余しているなら自炊ビューアとして活用を。ストアの対応は今後に期待

 以上のように、既存の電子書籍ストアの利用に関しては多くを望める状況にないが、自炊データを読むにはそこそこ使える、という結論になる。間違っても電子書籍を読むために購入する端末ではないが、今回紹介した自炊系のビューア、特にZIP書庫対応のアプリは実力派揃いで、意外に侮れない印象だ。

 もし、物珍しさもあってWindows Phoneを買ったが、その後うまく活用できずに持て余しているという人は、ぜひ前述の「Cover」や「readia」などをインストールして、自炊本のビューアとして使ってみて欲しい。自炊したZIP書庫が手元にあることが前提になるが、思いのほか立派に活用できることに驚くはずだ。

 またこれは、逆に言えば、アプリさえきちんと出揃えば、有望なプラットフォームであるということでもある。Windows Phoneはこの先の展開が読みにくいだけに、電子書籍ストア事業者にとっても本格的に取り組むのはなかなか難しいだろうが、長いスパンで見ればニーズは高まっていくと考えられるだけに、Windows 10 Mobileのリリースを目前に控え、動作確認の取れたブラウザビューアや専用アプリが徐々に増えていくことを期待したい。

(山口 真弘)