山田祥平のWindows 7カウントダウン

ゆるやかにパーソナルコンピューティングを変えていくWindows 7



 Windows 7のライブラリは、ファイルを保管した任意のフォルダーを束ねることができる。つまり、散在する情報を統合して参照できる仮想的なストレージだと考えればいい。ライブラリを駆使することで、ファイリングにまつわるさまざまな場面での不便が解消する。今回は、Windows 7のライブラリについて見ていくことにしよう。

●種類別にファイルを保存することを推奨するWindows

 アプリケーションを使って作成したファイルは、PCに内蔵されたストレージに、しかるべきフォルダーを作り、そこに保存しておく。それは、ファイルサーバーかもしれないし、家族のPCにある共有フォルダーかもしれない。また、最近はNASも普及している。それらにネットワーク経由で保存するケースもあれば、LAN内のみならず、クラウド上のストレージに置くケースもあるだろう。

 ファイリングの体系は人それぞれだ。時系列が重要というユーザーもいれば、テーマが重要というユーザーもいる。あるいは、クライアントなど、相手先別といった分類をするユーザーもいるし、アプリケーションごとといった分類もある。

 Windowsは、どうやら種類別にファイルを保存することを推奨しているようだ。Windows 7では、ツールバーにデフォルトで常に表示されるようになっているエクスプローラのボタンをクリックすると、一般のフォルダーウィンドウではなく、ライブラリのウィンドウが開く。そしてそこには、「ドキュメント」「ピクチャ」「ビデオ」「ミュージック」という4つのアイコンが並んでいる。

ライブラリフォルダーにはデフォルトで4つのライブラリが用意される。ここにはファイルやフォルダーをドロップすることはできず、できるのは新しいライブラリを追加することだけだ

 これらのアイコンは、フォルダーのように見えるが、実際には、複数のフォルダーを場所として設定したライブラリだ。デフォルトでは、それぞれ、個人用フォルダー内で「マイ~」のつく当該フォルダーと、そのPCのパブリックフォルダー内にある当該フォルダーの双方が場所として設定されている。たとえば、ドキュメントライブラリを開くと「対象フォルダー 2か所」と表示されるので、そこに表示されているファイル群は、2つのフォルダーに分散していることがわかる。ちなみに、個人用フォルダーは、スタートメニュー内のユーザー名をクリックすれば開き、その中の用途別フォルダーを一覧することができる。

ドキュメントライブラリのプロパティを見ると、2つのフォルダーが場所として登録されていることがわかる。チェックマークのついているのが保存場所となるフォルダー

 さて、これらの任意のライブラリに対して、別のフォルダーからファイルをドロップすると、設定された複数のフォルダーのうち「保存場所」として指定されたフォルダーに保存される。たとえば、ライブラリ「ピクチャ」にファイルをドロップすると、個人用フォルダー内の「マイ ピクチャ」にファイルが保存されるわけだ。また、ピクチャライブラリを開いたウィンドウ内で、右クリックをすれば、フォルダーやファイルを新規作成できるが、これらも保存場所として指定されたフォルダーに作成される。

 したがって、普通に使っている限りは、これまでと変わらない。ただ、ライブラリ直下にファイルやフォルダーをドロップすることはできない。ライブラリ直下に作成できるのは、ライブラリだけだ。

●フォルダー名をタグとして活用する

 もし、書店や図書館の書棚が、書籍の判型別、厚み別に整理されて本が並んでいたら、棚の収納という点では効率的かもしれないが、その中から目的の書籍を探し出すのは至難の技だ。ファイルを種類別に分類しておくというのは、それに近いものがある。こうした面に、Windowsのプログラムオリエンテッドな傾向が見て取れる。ファイルの種類は、それを作成したプログラムの種類であり、ユーザーは、それが何なのかを、きちんと把握しておく必要があるわけだ。

 だが、実際のワークフローでは、プログラムの種類というのは、あまり重要な要素ではない。たとえば、「2009年夏の北欧旅行」というフォルダーを作成したら、本当だったら、その中に計画のために参照したWebページのショートカット、実際の旅程表、旅行会社から送られてきたメール、パンフレットをスキャンしたファイル、現地での現金出納を記録したExcelのファイル、旅行の印象を綴ったWordのファイル、そして、撮りに撮った数千枚の写真、そしてビデオ……と、さまざまな種類のファイルをそこにまとめて置いておきたいと思うだろう。

 それを実現するには、いろいろな方法がある。ファイルは種類別にしかるべきフォルダーに置いておき、そのショートカットを1つのフォルダーにまとめておけば、少なくとも、そのフォルダーを開けば、各種の関連ファイルを参照することができる。でも、この作業は結構めんどうだ。

 もっともリーズナブルな方法は、種類ごとのフォルダーに、同じ名前を持つフォルダーを作り、そこにファイルを置いておくことだろうか。マイピクチャにもマイドキュメントにも「2009年夏の北欧旅行」というフォルダーを作っておき、ファイルを分散して保存しておくわけだ。

 ライブラリを使えば、こうして分散して格納されているファイルを、効率的にまとめて参照することができる。

 ライブラリを開き、ウィンドウ右上の検索ボックスに「2009年夏の北欧旅行」と入力する。他に似たフォルダーがないことがわかっていれば、「北欧」などキーワードだけを入力してもいい。

 これで、ライブラリウィンドウは、ピクチャ、ドキュメント、ビデオ、ミュージックの中から、「北欧」というキーワードが含まれる要素をすべて取り出して並べてくれる。その中には、親フォルダーの名前に「北欧」というキーワードを持つものも含まれる。つまり、写真やビデオ、各種アプリケーションのファイルを、同じフォルダーに入れて保存しておいたのと同じ結果が得られるわけだ。

ライブラリを「機密」というキーワードで検索すると、親フォルダーに「機密」が名前に含まれるファイルも列挙される

 これらの分類は、本来、個々のファイルにしかるべきタグをつけておくのが正当なのだろうが、これから新規に作成していくものは別にしても、これまでに蓄積された膨大な量のファイルに、丹念にタグをつけていくという作業は億劫だ。でも、自分のロジックで、きちんとフォルダー名をつけていれば、タグをつけていたのと同じ結果が得られるはずだ。

●インデクシングサービスは止めるな

 その処理の重さから、Vista以降では、検索のためのインデクシングのサービスを停止させるのが、パワーユーザーのテクニックとして紹介されることが多かった。だが、インデクシングは止めない方がいい。もちろん、膨大なファイルのインデックスを作成するためには、ある程度の時間が必要だ。ただ、VistaよりもWindows 7のインデクシング処理は、高速化され、従来ほどの時間はかからない。といっても、一般的なパソコンで数十万件を処理すれば、やはり一昼夜は覚悟しなければならないだろう。だから、インストール直後は、とりあえず、シャットダウンやスリープをさせず、稼働させたままで放置しておく。

 いったんインデクシングの処理が完了してしまえば、あとは、新規に追加されるものだけなので、その処理の存在を忘れるくらいに軽くなる。それでいて、検索結果は瞬時に出てくるのだから、このサービスを利用しない手はない。インデックスはいらないというユーザーがいるとすれば、ほぼ完璧なフォルダーツリーでファイルを分類しているか、ファイルの数がよほど少ないかのどちらかだろう。そして、そもそもファイルの数が少ないなら、インデクシングの処理も、短時間で終了するはずだ。

インデックスの作成には時間がかかるが、終わってしまえば、処理は軽くなる。このサービスは止めずにフル活用しよう

 ライブラリはインデックスの力を使ってこそ快適に機能する。そして、利用する側が、それなりの工夫をすれば、検索ノイズも除去し、S/N比の高い検索結果が得られる。たとえば、デフォルトで用意されたライブラリ以外に、マイドキュメントとマイピクチャ、使い方にもよるがデスクトップを含むライブラリを作り、その中で検索するといった方法だ。あるいは、グループで特定のプロジェクトに取り組むような場合は、個々のメンバーが専用のフォルダーをファイルサーバーに作り、各メンバーは、それらのフォルダーをまとめたライブラリを作成しておけば、各メンバーの作業状況を1カ所で参照することができる。何がどこにあって、誰がそれを作ったかということを考えなくてもすむようになるわけだ。

 Windows 7は、フォルダーにファイルを保存するというレガシーなファイリングの概念を、大きく変更せずに、新たなファイリングの概念を提供する。こうして、ゆるやかに、パーソナルコンピューティングを変革していこうとしているのだろう。

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(2009年 7月 29日)

[Text by 山田 祥平]