山田祥平のRe:config.sys

全部入りケータイ見参2010




 携帯電話を買い換えた。30カ月ぶりだ。今日まで使っていた機種への買い換えは、その前の機種から23カ月後だったので、さらに長く使ったことになる。今回は、新しい携帯電話として選んだドコモのN-04Bについて、そのインプレッションをお伝えしたい。

●ガラケー買うのもこれが最後か

 こういう商売をしているのだから、本当は、もっと短期で携帯電話を買い換えるべきだとは思うのだが、なかなか食指が延びる機種が見つからず、ダラダラと前機種のP905iを使い続けてきた。今回、機種変更に踏み切ったのは入手するかもしれないiPadの通信手段のためと、ドコモが外部機器を接続したときのパケット上限額を値下げしたからだ。きっと、いわゆるガラケーを買うのは、これが最後になるだろうなと思いつつ、発売日の今朝、新宿のヨドバシカメラにでかけて購入してきた。

 購入手続きに20分程度を要し、そのまま最寄りのカフェで待機する。たった1時間とはいえ携帯電話を販売店に預ける形になる。カフェで支払いのために、ポケットの中を探っても携帯電話がないことに気がつき、いかに、おサイフケータイに依存慣してしまっているかを痛感した。指定された1時間後に店頭で端末を受け取り、その足で、最寄りのドコモショップにでかけてICカードデータの移行を済ませる。

 移行はセルフサービスになっている。ショップ内のキオスク端末を使って、新旧の端末を接続、おサイフケータイのデータを移行させる。SIMは旧端末に入れておかなければならないので、新端末から旧端末に入れ替えだ。ここがややこしい。買ったばかりの状態で、バッテリの残り容量がほとんどなかったので、ちょっと心配だったが、何とか持ちこたえてくれた。

 モバイルSuicaとEdyは移行サービスに未対応だったので、その場でデータをサービス側に預け入れ、他のICカードデータを移行したあとで、預け置いたデータを元に戻す。プリインストールされていないiアプリはダウンロードが必要だ。Edyがプリインストールからはずれたので、探すのがたいへんだった。特に問題なく作業が完了し、帰りの電車には新しい携帯電話で乗ることができた。ちなみに今回は、Wi-Fiを使ったときにバッテリの消費が激しいことが予想されるので、予備のバッテリをあわせて購入した。

 それにしても、ほとんどを自動でやってくれるとはいえ、おサイフケータイの移行はとてもめんどうな作業だ。ドコモショップを訪ねることなく、クラウド経由でスンナリ終わるようにしてほしいものだと思う。ガラケーの取り柄の最たるものが、このおサイフケータイなのだから。

 さて、自宅に戻って充電をしながら、オリジナルマナーモードの設定や、着信音、画面やメールソフトの振る舞いなどを設定した。今朝まで使っていた機種と、あまり違いがないので、そんなに苦労はしなかった。

 今回の機種選択の決め手はWi-Fi対応だ。N-04BはWi-Fiアクセスポイントとなり、外部から無線LAN対応機器を接続し、FOMAのパケット網を使ってインターネット接続ができる。これまでは、BluetoothのDUNを使ってPCを接続していたのだが、それに加えて無線LANでの接続が可能になる。

 設定していて気がついたのは、接続先をPCなどを使って設定する必要がなくなっていることだ。3G携帯のデータ通信では、端末にcidと呼ばれる番号を用意し、そこに接続するプロバイダーのAPNと呼ばれるアドレスを割り当てておき、実際のダイヤルはcidを使う。今まで使っていた端末は、cidに対してアドレスを割り当てるには、FOMAの設定ユーティリティをPCにインストールして、それを使ったり、モデムの初期化コマンドに入れて書き込んだりする必要があったが、今回の端末では、端末自身で個々のcidにアドレスを設定することができるようになっていた。購入直後に1回だけやればいいことなので、どうでもいいといえば、どうでもいいのだが、気が利いていると感じた。

 アクセスポイントモード(APモード)に移行するには、端末側での操作が必要だ。ただ、待ち受け画面にアイコンをおけるので、それを実行するだけの操作なので簡単だ。

 これまでのBluetooth接続では、端末に一切触れることなく、ポケットの中に入れたままでダイヤルさせることができたが、APモードでは、一手間増えることになる。ただ、平均して5分に1通はメールが届くので、その受信中はBluetoothでのDUNが失敗する。だから、ダイヤルする前に、iモード通信が行なわれていないかどうかを確認していたので、まあ、それに少し手間が加わる程度のことかなとも思う。

 ちなみに、APモードは、一定時間通信が行なわれないと自動的に終了する。デフォルトでは15分になっていたが、これは、5分に再設定した。従って、ノートPCを使い終わってスタンバイさせれば、5分でAPモードが終了する。APモード時は、パケット通信が行なわれているので、iモードは使えないし、音声電話の発信もできない。それどころか過去のメールを読むことさえできない。ただし、音声電話の着信はできる。

 設定としては、接続できる機器の台数をデフォルトの1台から4台に変更した。SSIDやセキュリティを設定し、自分にしか使えない状態にしたら準備は完了だ。APモードを起動して、端末がAPNに接続し、他機器の接続待ち状態になるまでに約8秒かかる。APモードの起動後は端末をポケットにしまい、カバンからノートPCを取り出したり、ポケットからiPod touchを取り出してスリープから復帰するころには接続待ち状態になっている。特に待たされる感じはない。

 ノートPCを無線LANで接続して転送速度等を確かめてみたが、おおむね3Mbps以上は出ているようで不満はない。携帯と併せていつも持ち歩いているiPod touchもこれでiPhoneのようにどこでもインターネットに接続できるようになった。こうなると、iPod touchの新機種が楽しみになるし、いったんは買う気が失せていたiPadも買ってもいいかなという気になってくるから現金なものだ。ただ、APモードを起動すると、BluetoothがOFFになってしまうのは使いにくいと感じた。次回、Bluetoothで接続するためには、手動でONにする必要がある。つまり、BluetoothとWi-Fiは、使用が排他ということだ。できれば、APモードの終了後には、Bluetoothの状態を元に戻すような仕様になっていてほしかった。

●ワンストップですべてのインターネット接続を

 APモードを使って外部機器をFOMA網経由でインターネットに接続する場合、ドコモの料金体系では、パケホーダイダブル定額料を使うのが普通だ。帯域等の制限がない接続での上限額は5月末まで13,650円だったが、6月からは10,395円となる。3,000円以上の値下げは大きい。すべてのデータ通信をまかなうための費用を計算すると、

1. パケホーダイダブル定額料 10,395円(6月から)
2. iモード利用料 315円
3. プロバイダとしてのmopera U スタンダードプラン 525円
4. 公衆無線LAN利用料 315円
5. ISPセット割り引き料 -315円

となり、合計額は11,235円となる。iPod touchやiPadをつなげられるようになったのに、約3,000円の値下げがあったので、料金は今までよりも安くなる。ちなみに、この料金体系では、PCを接続せずに、iモードだけを使った場合の上限額は4,410円だ。転送されてくるインターネットメールだけでこの上限額に達する。フルブラウザを使った場合は5,985円だが、個人的にフルブラウザを使うことはないので、実質的には、約6,800円分で、外部機器のインターネット接続をまかなっている計算になる。

 この料金の中には、地下鉄駅や街のカフェなど、あちこちで使えるドコモの公衆無線LANスポットの使用料も含まれる。他サービスのように、2年縛りとか、そういうこともなく、いつでもやめられる。気持ち的には、もうちょっと安くしてほしいところだが、次の値下げまでは、しばらく時間が必要かもしれない。個人的には音声通話に加え、iモード接続、外部機器のインターネット接続まで、すべてを1つの契約でワンストップにできるのがいい。

●外部機器を拒む通信機器はいらない

 まったく期待していなかったのだが、この機種に新搭載されたDLNA機能が、それなりに便利なのでちょっと得をした気分だ。

 Wi-Fi機能はAPモードに加え、無線LANクライアントとして、自宅内のアクセスポイントに接続することができる。接続して、サーバーとなる機器を探すと、電源が入っているWindows 7 PCが見つかる。そして、そこに保存されたコンテンツから任意のものを選んでダウンロードすることができるのだ。ストリーミング再生に対応していないことから、残念ながら、Windows 7のトランスコード機能には使えない。したがって、TSファイルなどをダウンロードすることはできないが、MP4ファイルなら大丈夫だ。大きな動画ファイルは、自動的にmicroSDにダウンロードされる仕様だ。

 そのフォルダに手動でMP4ファイルをコピーしておけば、その再生も可能だ。ただし、ファイル名には制限があり、MOL01.mp4 、MOL02.mp4 ... と、連番を振っておかなければならず、動画の内容を想像させるようなファイル名をつけることはできない。とりあえず、640×360といったMP4ファイルはコマ落ちもなく問題なく再生できるようなので、HD動画撮影機能が搭載されていることの恩恵を受けているようだ。

 すべての設定が終わって、通信に関する一通りの機能を試した上で、この原稿を書いているが、店頭で端末を受け取ったのは午前11時なので、おおよそのことを把握するのに約6時間が必要だったことになる。さすがに多機能だ。それでも、まだカメラ機能やGPS機能、新たなサービスであるbodymoなどは試す余裕がなく手つかずだ。これでしばらくは遊べそうではある。

 外部機器をつなぐことができない通信機はつまらない。だからそれができるようになるまでiPhoneは買わない。iPadの3G版も同じだ。