山田祥平のRe:config.sys

2TBの小宇宙




 DVDのブランクメディアを買うのも、これが最後になるかもしれないなと思いながら、50枚パックのDVD-Rを買ってきた。4.7GBという容量は、録画したアナログテレビの番組なら約2時間という容量で意外に使いやすかった。でも、もうそういう時代ではないかもしれない。

●DVD-R、BD-R、HDDという3世代のメディアの容量単価が同列に

 BDAによれば、この11月、国内のBlu-ray Discドライブ搭載PCの販売シェアが過去最高の23.6%に達したそうだ。民生用のレコーダーにおいては69.7%と、搭載PCのシェアを圧倒している。

 今回購入したDVD-Rの50枚パックは1,400円程度だった。総容量で比較するのはナンセンスかもしれないが、単純に計算して200GB強を1,400円で手に入れたことになる。その一方で、同じ店で購入した片面一層BD-Rの10枚パックは1,200円だった。つまり、容量あたりの価格としてはDVD-Rより安い。探せばもっと安いものはあるのだろうし、国産かそうでないか、ブランドなどによって価格はかなりのバラツキがあるとは思うが、今回の買い物では、なんとなく、BDとDVDのコストが同列に並んだ印象を受けた。ちなみに、この間買い置きした2TBのベアHDDは13,000円前後で購入できたので、結果としてDVD-R、BD-R、HDDという3世代のメディアの容量単価が同列に並んだといえるかもしれない。

 今、仕事をしている自分の部屋では、数台のデスクトップPCが稼働しているが、BD-Rを読み書きできるドライブは1台だけで、現時点では、比較対象のために残してあるWindows Vista機に内蔵してある。このPCにはディスプレイをつないではいるものの、使う場合はたいていリモートデスクトップで、キーボードやマウスをダイレクトに操作することは、ほとんどない。それに、残しておかなければならないファイルをコピーしておくためには、たいていメイン環境にUSB接続した裸族のお立ち台に装着したHDDを使うので、あまり不便を感じることはない。そういう意味では、HDDさえ、手元の環境では、消耗品としてのメモ帳的な使い方をしていることになる。容量あたりの単価が似たようなものなら、そういう使い方もありだと思う。

 ただ、裸のHDDは衝撃に弱いという欠点がある。やはり気軽には持ち歩けないし、扱いにも気を遣う。DVD-RやBDが、未来にわたってそこに保存したデータを守ってくれるかどうかは定かではないが、HDDよりはラフに扱っても大丈夫なような気がする。気がするだけで、本当はどうなのかは歳月がたってみないとわからないというのが悩みどころではある。

●四半世紀が2TB

 自分だけのデータという点に着目すれば、ほぼ四半世紀パソコンを使ってきて手元に残ったデータは2TBのストレージがあればすっぽりと収まって、まだまだ余裕がある。こうして書く原稿のファイルなどは膨大な量にも感じるが、単なるテキストファイルなので、容量という点では、ほんのわずかだ。原稿等を保存しているフォルダには多少は画像等も含まれているが、それでも10GBには満たない。撮りためたデジカメ写真も500GBを少し超える程度だ。

 iTunesを使ってリッピングした手持ちCDのデータは100GBを少し超えたところだ。厳密には、自分オリジナルのデータではないが、あのリッピングの手間を考えると、もう二度とやりたくはないし、おそらくは3,000枚近いCDを持ち運ぶこともできないので、自分だけのデータということにしておこう。このように、音楽データ合算はちょっとズルだとしても、つまり、全部合わせたって2TBあれば余裕でおつりがくる。スチル以外に、ビデオムービーカメラで撮影を楽しんでいるユーザーなら、少し事情が異なるだろうが、ほとんどムービーを撮らないぼくとしては、そんな感じのストレージ事情が現状だ。

 ただ、地デジ番組の録画は、否応もなくストレージを圧迫する。なにしろ、普通に録画するだけで、1時間のドラマが6GB近い容量になるのだ。とりあえず、運営方法としてはドラマなどは、ワンクール分は外付けHDDに録画しておき、全話終了した時点で、サックリと消し去るか、まあ、BDにムーブするか、はたまた、別のHDDに待避しておくかだ。これらのデータは、たとえ、失われてしまったとしても、ちょっと残念には思うだろうけれど、致命的なことにはならない。PC用の地デジチューナ用ソフトは、外付けUSBドライブに録画する場合、ドライブ名を固定してフォルダ構造を同じにしてやれば、HDDを交換しても視聴はできるので、この方法で特に困らない。といっても、残しておいた番組をもう一度見るかどうかは別の問題で、今のところ、新しいコンテンツを消化するのに手一杯で、とても、過去の番組をもう一度見るといった余裕はない。まさに、老後の楽しみといったところだろうか。

●ノートPCに超えて欲しい課題

 こうして身の回りのストレージ事情を分析していくと、BD-Rの存在意義が、かなり希薄であることに気がつく。ドラマを待避しておくとしても、ワンクール約10話分が1枚に収まらないようでは中途半端過ぎる。2層のBDを使ったとしても50GBなので、どうしても容量が不足するのだ。ビットレートを落とせばいいのだろうが、過去において、大事に撮りためた3倍速録画のVHSテープをあとになって見て、あまりの悲惨な画質にガッカリして捨ててしまった経験を考えると、とりあえずは、保存するなら、放送時のビットレートでおいておきたいと思う。

 年末年始の時間を利用して、新しいPCを組み上げようと、目下、パーツを少しずつ物色しているのだが、その中にBDドライブを入れるかどうかは微妙なところだ。場合によっては、ドライブの次の世代交代を待つことにするかもしれない。

 いずれにしても個人的にはPCのストレージは1TB、ワーク用に余裕を見てその倍の2TBあればことが足りることが実感できているのだが、まだ、ノートPCにおいてはそれがかなわない。もはや、持ち運ぶノートPCにおいてSSD以外は考えられないと自分では思っているので、1TB、まして2TBはかなり先の話になるだろう。現在、もっとも頻繁に持ち歩いているLet'snote R8やVAIO type Pは、双方ともに128GBのSSDを内蔵しているが、すでに書いたように、これではデジカメ写真や音楽データが収まらない。せめて256GBとも思っていて、次のノートPC入れ替えでは、そうしたいところだが、どうしたって2TBには届かない。その一方で、SSDは512GBを超えるあたりから、急激に消費電力が高まり、そして、読み書き速度が落ちるという懸念があるという話も聞こえてくるので、テクノロジーの次のブレークスルーを待つ必要もあるだろう。日常的に持ち歩くノートPCに2TBというストレージは、相当先の話になるかもしれない。

 立って半畳、寝て一畳。人間とはその程度のものだ。そして、人生は2TBでことが足りる。たぶん、それが足りなくなるころには、ネットワーク帯域がモバイル環境を含めてスループットを拡大し、ストレージを持ち運ぶこと自体が無意味になっているはずだ。